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【静岡ホビーショー】圧倒的な力量の作品達! 「モデラーズクラブ合同作品展」レポート

「あまりに異質な重機動メカ」、「木製の巨大メカゴジラ」、「極小LEDをフル活用」

【第60回 静岡ホビーショー】

開催日
業者5月11~12日
小中高生5月13日
一般5月14~15日
入場料:無料

場所:ツインメッセ静岡(静岡市駿河区曲金3丁目1-10)

 ある意味、静岡ホビーショーの最大の目玉は、「モデラーズクラブ合同作品展」といっても過言ではないだろう。モデラー達の作品は本当にカッコイイし、圧倒される。その素晴らしい作品達が、広い会場一面に凄まじい数の展示をされているのだ。初めて見た人には「これほどまでにすごく、ディープな世界があるのか」と圧倒されずにはいられない世界、それが「モデラーズクラブ合同作品展」である。

 「模型の聖地静岡」は、特にモデラーの多い場所だ。街にはプラモデルを販売するお店もいくつかあるし、市の公共施設もモデラーズクラブのためにスペースを貸し出してくれ、定期的に集会を行なっている団体もいる。静岡ホビーショーだけでなく、模型イベントが行なわれる機会が多いし、趣味を学べる生涯学習に「プラモデル」の項目がある。模型やモデラーに触れる機会が多い土地柄なのだ。昨今ではSNSを通じてのつながりも多い。

 そういったモデラー達が作品を発表する場所として「モデラーズクラブ合同作品展」はやはり特別だ。最新の模型情報を得るため、自分の想いをメーカー開発者に伝えるため、日本のみならず世界中から模型ファンが集まる「静岡ホビーショー」の来場者に自分の作品を見せることができる。ファンにとっても、モデラーにとっても特に重要な場所なのである。新型コロナウィルス感染拡大防止の自粛で、ホビーショーとの合同開催ができなかった状況もあり、今回は特にモデラー達は気合いが入っていたのではないか? 今年は南館と西館2階の2会場での展示が行なわれた。

 本稿では特に印象的だった展示をピックアップしたい。

ツインメッセ南館の2/3を占める広大なスペースが会場に。視界を埋め尽くす作品は、本当に素晴らしいものばかりだ
西館2階のスペースでも力作がたっぷり展示されている

異星人の戦闘機械の“異質さ”を、凄まじいこだわりで表現

 筆者が強く興味を惹かれたのが、下関の模型クラブ「巌流会」のJustice25氏の作品「アブゾノール」である。「伝説巨神イデオン」の敵メカ、アオシマが販売していたプラモデルに手を加えたものだ。

「伝説巨神イデオン」の敵メカ、「アブゾノール」をアレンジ。その存在感に強く目が惹きつけられる
凄まじいまでの情報量。豪華な細工ものを見ているかのようだ
曲線が主体の地球の乗り物とはかけ離れたデザイン。真鍮のような色合いがその不気味さを際立たせている
異質だからこそカッコイイ、そのセンスには本当に感心させられる

 まず真鍮でできたかのような金属的な質感に驚かされる。そして極限まで入れられたディテール。見ただけで地球人類と全く異なる“異星人”のメカであることが伝わる“異質感”が凄まじい。赤道直下の巨大昆虫に不意に直面してしまったような、迫力と近寄りがたさも感じる。元々イデオンの敵メカ「重機動メカ」は異星人のメカという異質さがコンセプトだが、そのテーマをさらに推し進めたような作例だ。

 全体的な迫力に加え、細部の表現の細かさに驚かされるが、実はここには「意外なテクニック」があるという。翼の細かい表現は爪楊枝を束ねたもの。バーニア残ったディテールは水切りの小型ネット、他にも樹脂スプーンを束ねたものなど、様々な材料を活用し、模型の密度を上げるために活用しているとのこと。ダイソーなどで「この部品はどう使えるか」と考えるのが楽しいとJustice25氏は語った。

翼部分は楊枝を束ねてカットしている
他にも意外なパーツを流用。今回、「ネタばらし」としてこういった部品を持ってきている。ダイソーなどで買い集めるとのこと

 Justice25氏は今回はイデオンをテーマにいくつかの作品を出展していたが、一貫して追い求めているのが「光の反射」だという。「マジョーラカラー」という、色が入り交じり、見る場所で印象が変わるような塗料の色があるが、それはJustice25氏が追い求める色とは異なるという。

 どのように見えるか、光るかは、“塗装”で再現できる。理想の光り方をしている写真を眺め、自分の模型の塗装で正確にその光り方を再現する。どう色が変化しているか、変わるか。そのためには塗料を拭きかける面が平面でなければならない。そうしないと塗装面で光が乱反射し、望んだ見え方にならない。このため、塗装の前団塊、以下にプラモデルの表面を研磨し、きちんと塗料が乗るようにすることが大事だという。本当に凄まじいこだわりで、聞いていてワクワクしてしまった。

表面処理で異質感を出したイデオン
あえて塗料の反射ではなく、狙った光り方をさせるために色分けをしているとのこと
異星人の技術を表現するために、コクピットという題材を選択

太田機の大乱闘をジオラマで! 「篠原重工98式AVイングラム&タイラント2000」

 会場で見かけて嬉しくなったのが澤武慎一郎氏の作品「篠原重工98式AVイングラム&タイラント2000」。「劇場版 パトレイバー」冒頭のシーンを再現したジオラマである。ボビージャパン編集部の依頼で作成したジオラマで、筆者も雑誌で見た記憶がある。

 編集部からの最初の依頼は映画のクライマックスである「会場巨大建造物『箱船』の中で2号機がスライディングするシーン」だったが、澤武氏は「同じ2号機が活躍するシーンならこちらを作りたい」とこちらのシーンを提案したという。

劇場版冒頭のシーンを再現
首元から太田の顔が見える。腰を落とし銃を構える姿がカッコイイ

 太田巡査が乗るイングラム2号機は、丁寧に機体を扱う主人公・泉巡査の1号機と較べ、かなり乱暴に扱われる。ダイナミックでド派手な、アニメのヒーローロボットのようなアクションをするシーンがあり、“リアルさ”を盛り込んだ「パトレイバー」の場合、機体が壊れたりと失敗するようなシーンも多いのだが、だからこそカッコイイと感じるアクションも多い。会場で澤武氏としばらく「2号機の良さ」について話し込んでしまった。

 冒頭、2号機は謎の暴走をするタイラント2000を止めようと大乱戦をする。大暴れする割には足を止められず周囲の建物はどんどん破壊されていく。業を煮やした太田は、装備された拳銃・リボルバーカノンでタイラントを撃ち抜くが、冷却装置を破壊してしまい、漏れ出した冷却ガスが周囲にまき散らされ、太田機も一気に冷却され霜に包まれてしまう……。ジオラマはその直前のシーンを再現している。擱座したタイラント2000は、「メカトロウィーゴ」のプラモデルを使っているが、ほとんどの部品をスクラッチ、かなり手間がかかったとのこと。

擱座するタイラント
壊れた古い家屋。太田機とタイラントはもみ合って川に落ちてしまったのだ
「よせ太田!」声をかける指揮車も表現

 ジオラマはそのシーンがまざまざと蘇ってくる。コクピットで叫ぶ太田、足下の水の表現、再開発が決まり取り壊される古い家屋の破片、劇中通りタイラントは背中の部品が外れてるなど、本当にアニメ映画を“実写”で見ている気分になる。警察車両である2号機はピカピカで、現場の作業機械であるタイラントは汚れている感じも良いし、見るほどに発見がある見事なジオラマだ。

メカゴジラをあえて木製で表現! その加工技術と見せ方の工夫に感嘆

 山崎和行氏の「メカゴジラ 木製 機龍改」は圧倒的な大きさの木製のメカゴジラだ。その凄まじい迫力は見る者を圧倒させる。映画「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」のメカゴジラ「機龍改」を木製で表現しよう、というコンセプトがまず面白い。

 目を近づけるとその面白さがさらに増す。この機龍改はメープルとウォールナットで作られている。白く光沢のあるメープルを外装に、黒く硬いウォールナットをフレームとして活用している。ウォールナットの骨格部分は筋肉を思わせるスジ彫りが行なわれており、生物感がある。

メカゴジラを木で表現。周囲の人と較べるとその大きさがわかる

 その大きさももちろん、圧倒されるのは木材の加工技術だ。フレームを覆う装甲。特に腿部分の曲線や、脇の下のパイプなど、木材を曲げているのだろうか? 山崎氏は「削り込んでいるんです」と答えた球場の丸みを生じさせるため、大きな木材を切り、そこから曲線を持たせるため削り込みを行なっているとのこと。製作技術もスゴイが、何より手間がスゴイ。こう言う作品を作ってしまうのがモデラーなのだ。

 「メカゴジラ 木製 機龍改」はやはり“木目”がいい。わざと木目を活かした表面処理を行うことで独特の面白さを増している。これは本当に唯一無二の魅力を持ったメカゴジラの模型だろう。「機械のメカゴジラを木で作ってみては?」と思いつく人はいるかもしれないが、これほどの大きさ、これほどの精度、これほどのカッコ良さで仕上げられる人はいないだろう。目の前に本当にスゴイ者がある、それを実感させてくれる作品だ。

 モデラーズクラブ合同展示会では本当に製作者が魂を込めた作品に出会えるが、「大きさ」、「素材」というのは目の惹きやすいポイントだ。アルミ板を組み合わせた作品や、木を組み合わせた作品などもあるが、それらが本当に造型もモチーフに忠実でカッコイイのである。細部にまで魂のこもった、手を一切抜かない作品は、大きな驚きをもたらしてくれる。

メープルの木目が独特の面白さをもたらしている
色の濃い部分はウォールナット。フレーム部分に多用されている
筋肉を思わせるウォールナットに、削り込んだメープルの装甲をかぶせる
尻尾の表現。細部と全体のスタイリングの造型バランスが絶妙だ

ものすごく小さなLEDがもたらす作品表現の可能性「卵VF-1S STRIKE VALKYRIE」

 もう1つ、とても楽しい気持ちになった作品がある。ほび氏の「卵VF-1S STRIKE VALKYRIE」だ。「劇場版マクロス 愛おぼえていますか」での活躍シーンを表現したジオラマだ。ヒロインのリン・ミンメイのフィギュアもあしらわれている。

ユニークなたまごヒコーキだからこそ、派手なミサイル表現が似合う
後ろはさらに電飾がたっぷり詰まっている

 「たまごひこーき」はハセガワの戦闘機をかわいらしい卵形にデフォルメしたプラモデル商品だが、この作品はそのプラモデルに見事な改造を施している。「マクロス」は煙を糸のように引くミサイル描写でも話題を集めたが、この作品ではLEDでそのミサイルを表現、ケーブルをミサイルの煙に見えるように加工し、先端にはミサイルを配置することでミサイルが炎を放ち的に進む姿を再現している。

 また、足部分のメインバーニアには複数のLEDを配置、点滅させることでバーニア内部の揺らめく炎を表現している。翼端のランプもまたLEDを配置、飛行機ならではの翼端灯を表現している。加えて内部にはモーターが仕込まれており、翼の可変ギミックまで搭載しているのだ。小さいボディにあらん限りの機械技術が込められているのが楽しい。

LEDのケーブルを樹脂で覆って固定することで、炎を上げて進むミサイルを表現

 もう1つ、指先に乗るような小さなサイズのF-35Bのホバリングをしているジオラマも、ものすごく小さなLEDが配置されている。こういった技術を自分の作品にどう活かすか、どう見せるか、といった方向で作品を作るモデラーも多い。モデラー達の作品は本当に「センスオブワンダー」をもたらしてくれる。

 そのモデラー達の凄さに触れられる最大級のイベントが静岡ホビーショーなのである。ホビーファンにとって、このホビーショーがいかに魅力的であるか、今回モデラー達の作品を数多く見て、改めてその凄さを実感できた。

バーニアは光るだけでなく点滅し、噴出のすさまじさを表現
指先サイズのF-35B。緑の輝点は極小のLEDだ