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皮膚、筋肉、骨格……濃密な生物表現を!進化し続ける海洋堂の生物フィギュア「NATURE TALES」【#ワンフェス】

【ワンダーフェスティバル2023[夏]】

開催期間:7月30日10時~17時

開催場所:幕張メッセ国際展示場1~8ホール

 海洋堂の「NATURE TALES」は、「ザトウクジラ」、「シャチ」、「セミクジラ」など海洋生物をモチーフに、40cm以上の大きさでそのリアルな生態を表現する完成品フィギュアシリーズだ。今回、会場では次のラインナップが公開された。

 元々「NATURE TALES」シリーズは生物フィギュアの第一人者である松村しのぶ氏のガレージキットが原型となり、それを完成品フィギュアにするというところでスタートした。背景には中国市場での人気がある。ダイナミックな海洋生物のフィギュアは高級感もあり、かなり人気を集めているという。中国での人気がシリーズの原動力となったとのこと。

 今回会場で聞くことができたのは造型へのこだわり。9月発売の「シャチとアシカ」は価格は55,000円。「海のギャング」という異名を持つシャチは海の中で天敵のいない最強の捕食者。作品はそのシャチの攻撃を間一髪でかいくぐったアシカを描いている。

「シャチとアシカ」。襲いかかってくるシャチを間一髪かわしたアシカ、その一瞬を描いている

 開発者のこだわりは「シャチの目線」。攻撃はかわされたもののシャチは捕食を諦めていない。にらみつけるかのようにその目は体のすぐ横のアシカに注がれている。このフィギュアではその目が大きなポイントだという。

 シャチは白い斑点が目に見え一見かわいらしい印象も受けるが、実際は凶暴なハンターだ。フィギュアではぎょろりとした目でアシカを見ていて意識するとかなり怖い。アシカも油断なくシャチを見ていて、両者の緊迫した空気が伝わってくる。この体の大きさの差は圧倒的で、アシカの命は風前の灯火だ。思わずアシカの無事を願ってしまいそうになる。

 そして大きくなめらかなシャチの体表の造型に注目したい。よく見ればシャチにはきちんと肋骨があり、筋肉がうねっているのがわかる。皮膚も平坦ではなく造型による凹凸がある。本物の生き物の複雑なテクスチャー、生き物のリアルな描写に感心させられる。「NATURE TALES」は全高40cm以上、その大きさは商品の大きな魅力であると共に、悩みどころでもある。小さなフィギュアでは省略できたディテールも、大サイズでは描き込まなければ間延びしてしまう。これらの描き込みにも力を入れているとのこと。

アシカを逃さない目。丸く小さな目だがその視線の意味を考えると非常に恐ろしい
アシカも油断なくシャチを見ている。目をそらせば待っているのは死だ
なめらかに見えるシャチの体表は骨格や筋肉の動きがある
緊迫した一瞬を切り取った立像だ

 「セミクジラ親子」は11月発売予定で、価格は55,000円。セミクジラは北太平洋の温帯から亜寒帯の沿岸などに生息、体長は13~20mで、背中に背びれを持たない背中の美しい曲線からの名前だという。海の上に背中を出し、遊泳し続ける特徴も知られている。頭部の隆起は各個体によって異なり、個体識別の目印にもなっているとのこと。

「セミクジラ親子」。こちらはほのぼのとした風景。親子が泳ぐ姿が描かれている

 商品はこのセミクジラの2体が泳ぐ様を表現している。親子のセミクジラの頭にはフジツボが寄生している。このフジツボの表現は本商品のこだわりの1つで工場出荷状態からさらに手作業で質感を加えているとのこと。手間を掛けた箇所となるという。点線のようにくっつく所や目の上の部分に多くくっつくなど、大きさが違うセミクジラの似たような箇所にフジツボガくっついているのは面白い。

 そしてこの商品の面白いところは2体の親子に混じりイルカがくっついて泳いでるところ。鯨の近くを泳いでるという構図が面白いが、野生ではどういう意味を持つのか興味が惹かれる。原型師である松村氏がどうしても加えたくて実現したとのこと。商業的に見ればイルカがいることで塗装工程、パーツ構成などで手間もコストもかかるが、イルカがアクセントと鳴り生物的特徴が際立たせられる。セミクジラとイルカの関係性も考えさせられ、面白さが増している。

こびりついたフジツボ。体表表現まど随所に力が込められている
子供のクジラ。白い模様がある。クジラのなめらかな曲線がしっかり表現されている
2体が仲睦まじく泳ぐ姿を表現
イルカが一緒になっていることで、フィギュアの生物的な表現が際立つ

 「NATURE TALES」はこの後新展開を迎えるという。会場では「クロカジキ」と「ホホジロザメ」の2体の写真が展示されていた。こちらは別の原型師による商品となるとのこと。これまでは水生哺乳類を扱っていたが、生物的にも別なモチーフとなり商品の幅が広がる印象だ。

 どちらも界面から飛び上がったダイナミックな構図で、魚類ならではの表現、サメとアシカの緊迫感と独特のテーマがある。今後の展開も注目したいところだ。

「クロカジキ」。水の表現がダイナミックだ。魚の群れを追っている構図だろうか? うろこの表現がこれまでのモチーフとは異なる
「ホオジロザメ」。こちらはシャチ以上に獰猛さを前面に出した構図だ。サメならではの表現にも期待したい