レビュー

自然が生む造形の美しさ! 「REVO GEOオオスズメバチ」レビュー

驚きの巨大サイズで様々なシチュエーションを再現! 写真映えもバッチリ

ジャンル:アクションフィギュア
開発・発売元:海洋堂
価格:8,000円(税別)
発売日:8月28日

 海洋堂の魂ともいえる、「ネイチャーフィギュア」界の第一人者・松村しのぶ氏が造形総指揮を務める「REVO GEO(リボジオ)」シリーズ。生物系フィギュアに、可動フィギュアとして定評のある「リボルテック」のノウハウを活用し、昆虫や甲殻類などの生き物を立体表現することを目的としている。

 これまで「ダイオウサソリ」と「アカテガニ」がリリースされているが、その第3弾として8月28日に発売されるのが今回レビューする「REVO GEOオオスズメバチ」である。筆者はこの前に本商品のインタビューを行なっているが、今回発売に先がけて試作品を触ることができたので、レビューしていきたい。

今回発売される「REVO GEOオオスズメバチ」は、全部で25カ所も可動させることができる

 オオスズメバチの働き蜂をモチーフにした「REVO GEOオオスズメバチ」だが、実際の働き蜂は最大40mmほど。フィギュアはその4.5倍ほどのサイズに該当する180mmと、かなり巨大化されている。写真などでは見ていたが、実際試作品を手に持ったときに、そのあまりの大きさに最初は驚いた。だが、しばらく触っているうちに、その素晴らしさに感心してしまうところがいくつもあったのだ。

 今回はインタビューで聞いた本作の最大のポイントである「可動」、そして「造形」と「塗装」、さらにはプレイバリューといった点から「REVO GEOオオスズメバチ」の面白さを語っていきたいと思う。

2年もの開発期間をかけた新関節「GEOジョイント」を実感!

 フィギュアのモチーフとなったオオスズメバチと言えば、日本では北から南まで広く分布している生体で、その大きさは働き蜂になるといわれている。持って生まれた体格の良さを活かして、ミツバチやキイロスズメバチといった他のハチを襲うことでも有名だ。数年前からアメリカでも目撃情報が増えており、殺人蜂として恐れられている。まさに、リアルな世界に実在するクリーチャー的な存在といえるだろう。

 今回の「REVO GEOオオスズメバチ」の最大の特徴は、なんといってもシリーズとしては初めて脚が動かせるようになったところだ。実は、「ダイオウサソリ」と「アカテガニ」では脚を動かすことができなかった。これはどちらかというと、鑑賞用という点に重きを置いた仕様であったからだ。

 しかし、フィギュアの楽しみ方はSNSの発展と合わせて多様化してきている。単体で飾るよりも、様々なフィギュアと組み合わせていろんなポーズを取らせて写真を撮るということも多くなった。「アクションフィギュアとしての楽しさ」を追求するユーザーも増えてきているという。

 今回、「REVO GEOオオスズメバチ」はアクションフィギュアとしての楽しさ、そして今後の「REVO GEO」シリーズの展開を見越し、2年もの歳月をかけて新しい関節パーツ「GEOジョイント」を開発したという。それがどのようなものか、筆者はインタビューした時から一番気になっていたのだ。まずはこの関節を見ていこう。

 試作品では検証用に、従来製品で使われていた4mmジョイントも一緒に付属していたが、こちらは可動がスムーズな代わりに保持力が弱く、ポーズを固定させるにはやや心許なく感じた。「GEOジョイント」の大きな特徴は"シブみ(関節の硬さ)"だ。関節を動かすと樹脂がこすれる音がするグリップ感があり、自分の思った角度で固定できるのだ。力を込めると折れそう、というほどの固すぎるところもなく、ちょうどいいバランスになっている。

 この新ジョイントでは素材の組み合わせでこのシブみを実現しているとのこと。関節の保持力を上げるために、海洋堂は「リボジョイント」というラチェット機構により、カチカチという感触でグリップを生み出す構造を開発しているが、これだとどうしても大きくなり目立ってしまう。「GEOジョイント」は素材同士がこすれる独特なグリップ感になっており、より小さい関節でもシブみを実現できそうだ。この「素材の開発」という驚きを実感できたのは楽しかった。

【関節を動かす】
胸部に近い方の関節はあまり可動範囲が広くないが、第2関節は「GEOジョイント」のおかげもあり、かなり自由に動かすことができる
関節を動かすときのグリップ感がたまらない
尾の部分もかなり内側に曲げることができる

 一方、ネイチャーフィギュアは「関節を動かしたくない」というこだわりのユーザーも多く、"鑑賞派"向けに無可動のジョイントも用意されている。こちらもきちんと黒いパーツになっており、使うことで昆虫の脚の感じが表現できる。関節を固定してしっかり飾る、そういう遊び方も可能となっている。

 関節の付け替えは非常に細かく、神経を使う。しかし、実際に脚のジョイント部分を「GEOジョイント」から無可動のものに変えてみたのだが、思いのほか取り外しやすくなっており、簡単に変更を行なうことができた。ただしむしろパーツ自体が小さいため、なくしてしまわないように気を付ける必要がある。箱の中などで作業を行なう方が安全かも知れない。

【関節を交換】
ジョイント部分の取り外しは簡単。初心者でも、容易にパーツを付け替えることができる

 「REVO GEOオオスズメバチ」の可動でもうひとつ忘れてはいけないポイントが、毒針を出し入れする機構だ。尾の先が磁石で止められており、パカリとめくれるようになっている。その後、先端を開いて毒針を引っ張り出せるようになっている。こちらはリアルな生体の再現よりも、おもちゃ的な面白さがあって楽しい。

【毒針の展開】
磁石で止められた尻尾をめくり上げたあと、先端を開いて毒針を出し入れできる
尻尾を曲げることで、攻撃態勢を取らせることが可能だ

見る度に新しい発見がある、造形の豊かさ

 関節は「一番のセールスポイント」とのことで真っ先にチェックしたが、やはりフィギュアとして気になるのは全体の造形だ。恐ろしいオオスズメバチの細部をチェックできる機会は殆どない。「REVO GEOオオスズメバチ」はそのスズメバチを4.5倍に拡大して、じっくり鑑賞することができるのだ。

 チェックして改めて驚かされた1つが翅の部分。この「REVO GEOオオスズメバチ」には、地面に止まって閉じているときと飛翔時の2種類の翅が用意されており、取り替えることでそれぞれの形態が再現できるようになっている。

 この翅を取り替えるときに、どちらに付けるか迷ったのだが、そのときに外側の翅が跳ね上がっていることに気が付いた。これまでの人生のなかで、ハチの翅の構造がどうなっているのかなんていうことは、1度も意識したことがなかった。フィギュアはその驚きを感じることができた。「うーむ……さすが海洋堂」と、うなってしまったところである。自然の造形の細かさ、生き物としての複雑さが改めて実感できた。

 ちなみに後から気が付いたことだが、翅の取付け部分はお椀型になっているので、取り付ける向きが間違いにくいように作られている。取り付け部分をどう処理するかは自然界ではなく、開発者の腕の見せ所である。こうしたユーザーへの配慮をきちんとしているところも海洋堂ならでは、というところだろう。

【翅の付け替え】
形態に合わせて翅の付け替えができる
片側2枚の翅があるように見えるが、本物のスズメバチ同様に分離して動かすことはできない

 フィギュアでは、翅だけではなくオオスズメバチを普段見られないような角度からいろいろとなめ回すように見るとこで、新たな発見をすることができた。個人的に面白かったのは、腹側から頭部を見る角度だった。虫の身体の構造はこうなっているのかと、角度を変えることで改めて感心した。

 どうなっているのかよくわからない口のなかの構造も、しっかりと確認することができる。もちろん毒針と合わせて、オオスズメバチのもうひとつの武器である強力なアゴも自由に動かすことができるので、開いたり閉じたりしながらその動きや造形を楽しむことが可能だ。

【口の中をチェック!】
オオスズメバチは、口の中の構造も外側以上に複雑だ

 もうひとつ忘れてはいけないポイントに、塗装がある。フィギュアはすべて素材むき出しの成型色ではなく、塗装で色づけされているのだが、思わず笑いが出てしまうほど、信じられない細かさで彩色されている。

 胸部の部分はラメが塗られており、見る角度によって黒く見えたり、頭部近くは黄色く見えるところもあったりと面白い。また、脚の塗装もかなり細かく塗りわけられている。なんでこんな色の違う部分が出てくるのだろうか? と、改めてモチーフとなったオオスズメバチの造形や身体の色への思いを巡らせてしまう。

【高い精度と細かさの塗り分け】
全塗装だからできる色の塗り分けの細かさ
脚の部分の塗り分けも、思わず感心してしまうレベルだ

 ボディは全体的につや消し風になっているが、頭部だけはややテカリがある塗装になっている。普通ならば、こうした塗り分けは浮いてしまうのではないだろうか? と考えてしまいがちだ。だが、その頭部の艶っぽさが逆にアクセントになっており、イキイキした感じに見えるのも面白いところである。

 こうした生き物たちの色をフィギュアで再現するために、海洋堂の開発メンバーは実際に成虫を採取しに行っているそうだ。普通ならば写真など手元にある資料だけで済ませてしまいそうな部分だが、自らの目で本物を見ることでしか得られないものがあり、その結果がそのまま製品のクォリティにも繋がっているのだ。

SNS映えもバッチリ!? アイテムとの組み合わせが楽しい

 海洋堂は、この「REVO GEOオオスズメバチ」をほかのフィギュアなどと組み合わせてSNSでいっぱい公開してほしいという。ということで、早速筆者もチャレンジしてみた。購入してきたのは、近所の100円均一ショップに売られていた虫かごや水槽の背景に使うシートと、かぶとむしなどを飼育するときに使う小さな木片だ。

 これ自体はなんていうこともないアイテムだが、オオスズメバチと組み合わせて写真を撮ってみるとネイチャー感が増したような気分になる。フィギュア自体のサイズは異常に大きめではあるが、やはり自然の生き物はこうした自然をバックに組み合わせるのが一番似合う。

【ネイチャー感が増す組み合わせ】
自然に溶け込むオオスズメバチ。ネイチャーな背景がよく似合う

 せっかく大きなオオスズメバチフィギュアなのだから、オオスズメバチの悪役感、クリーチャー感を出すために、RPGの戦闘シーンのようなものを再現してみたくなってきた。本来なら戦闘スタイルの美少女フィギュアなどが似合いそうではあるが、自宅にある戦闘タイプのフィギュアが「ねんどろいど リンク 風のタクトVer.」だったので、そちらと組み合わせてみた。

 ついでに、"ハチの群体"の感じを出すため、バンダイのガシャポンで入手した「キイロスズメバチ」2体と、エポックのカプセルコレクションから「スズメバチ」の幼虫などを合わせてみた。ゼルダというよりも別のRPG感が強くなってしまったが、「REVO GEOオオスズメバチ」のサイズ感からボス感がかなり出る。このように、ほかのフィギュアと組み合わせることでいろいろなオリジナルシーンが作れそうだ。

【リンクと戦闘!】
様々なフィギュアと組み合わせることで、"悪役クリーチャー感”が出てくる
いざ、ボスキャラとの決戦へ!

 フィギュアに限らず、ガチャのラインアップなどを見ても、最近は自然界の生き物を再現したものがかなり増えてきている。あまり意識したことはなかったのだが、元々潜在的なニーズが高かったこともあり、こうした商品の需要も高いのだろう。その中でも、海洋堂が生み出すネイチャー系フィギュアは頭ひとつ以上飛び抜けている感じだ。そこには、作り手の情熱と何年も長い時間をかけてひとつも作品を完成させていくという、芸術作品のような手間と労力が加えられているのである。

 先ほども少し触れたが、まさかフィギュアを触って新たなことを学ぶとは思わなかったところも驚きだ。これまで映画や漫画、アニメにゲームといったサブカルチャーからは多くのことを学んできたが、フィギュアからというのはこれまでの人生で初めてのできごとである。これは、それだけフィギュアのなかに情報量を極限まで詰め込んだ結果ということなのであろう。

 この後も「REVO GEO」シリーズには、様々生物たちがラインアップされている。それらのなかには、予想を超えるものも含まれているそうなので、今後の続報にも期待したい。