レビュー
ガスガン「コルトパイソン 冴羽獠モデル ガスガン」レビュー
タナカワークスの「ワン・オブ・サウザンド」で一流のスイーパーになる!
2020年12月10日 00:00
スマホがブルっと震え、メッセージの着信を知らせた。そこにはHOBBY Watch 編集部から「XYZ」の文字が読み取れた。ナルホド、今回の依頼はアレをレビューしろということか。編集も粋な依頼をしてくるじゃないか!……ということで、今回紹介するのは北条司原作の名作コミック「シティーハンター」の主人公、冴羽獠の愛銃コルトパイソン357マグナムをモデル化した「コルトパイソン 冴羽獠モデル ガスガン」紹介しよう。
漫画で殺し屋というと古くは「ゴルゴ13」、最近だと「ザ・ファブル」などを思い浮かべる人も多いと思う。だが、「シティーハンター」の冴羽獠も一応殺し屋稼業をしており、超一流の射撃の名手である。一応と書いたのは、殺されたパートナーの義妹「槇村香」と組んでから、殺しの依頼は受けていないからだ。伝説的な殺し屋というと、凄く大型の銃を持っていたりする場合もあるが、獠が持っているのはコルトパイソン357マグナムの4インチモデルだ。マグナムとしてのパワーと、4インチという取り回しのいいバレルの長さが、いかにも「機能性」を重視した感じでカッコイイ。
そして獠の357マグナムは伝説的なガンスミスである「真柴憲一郎」がカスタムした、スペシャルなのだ。もう、この設定だけで、ガンマニアでなくても凶器……じゃなかった、驚喜してしまうだろう。
そんな、357マグナムがエアガンのとなって、タナカワークスから発売される。しかも、キチンと冴羽獠仕様だ。これはぜひとも買わねばならぬモデルに決まっている! だが、まずは製品発売前にレビュー用としてお借りできたので、レビューさせていただくとしよう。
「エンジェルハート」じゃなくて「シティーハンター」なのだ!
「シティーハンター」の世界は大きく二つある。それは、「シティーハンター」の世界とパラレルワールド扱いの「エンジェルハート」の世界だ(実はほかにも読み切りで語られた世界もある)。「エンジェルハート」は「シティーハンター」のリメイクといえる作品となっている。どちらも魅力的な世界だが、いくつか設定やキャラクターが異なっている。ここでは基本となる「シティーハンター」の説明をしておこう。
「シティーハンター」の通り名を持つ「冴羽獠」は、新宿を拠点としてスイーパー稼業を営んでいる。基本的には性的に興味を持った女性の依頼をだけを受ける……というスタイルのため、新しいパートナーである「槇村香」に重さ数トンのハンマーで追いかけられる日々だ。そこに、身体を餌に獠に面倒ごとを依頼してくる美人刑事「野上冴子」や、獠のライバルであると同時に仲間ともいえなくもない「ファルコン(伊集院隼人)」などが絡み、ハードボイルドのような、コメディのような、ストーリーが展開していく。
パッケージは両面イラストの豪華仕様!
まずはパッケージだが、両面イラストを使った、ファンも大満足の豪華仕様である。どちらが表面かわからないくらい素敵なイラストで、片面は漫画のコマ割りを再現し、各コマに登場人物たちをあしらっている。もう片面は冴羽獠単独イラストに加え、サイレンサー付きの357マグナムのシルエットが描かれており、「シティーハンター」のハードボイルド面が強調されている。このイラストは、取り扱い説明書の表紙にもつかわれていた。
中箱を開けると、そこには俺の357マグナムが(いえ借物です)ズババーンと、収納されている。撃ちたい、撃ちたい、撃ちたい!……が、そこは仕事なのでグッと我慢し内容物を確かめるために、取り扱い説明書を読むことにした。裏表紙には別売のアップグレードアクセサリーの告知があり、アメリカンウォールナット製のチェッカーグリップが掲載されていた。「こんなん絶対付けたいやつや!」と思いながら、ページをめくる。ちなみに、お値段13,000円(税別)である。
取扱説明書の中身は、一般的な使い方や注意事項に加え、「シティーハンター」についての解説ページが2P用意されている。これは、ファンには嬉しいサービスだろう。
内容は「1.コルトパイソンとは?」で銃そのものの概要が記載され、「2. 獠の使うコルトパイソン」で「なぜ4インチを選んでいるのか?」「使っている弾の種類は?」「サイレンサーの使用ケース」などがわかる。特に、イラスト込みで紹介しているので、「シティーハンター」を読んでいたころを懐かしく感じるはずだ。
さらに「3.ガンスミス 真柴憲一郎」を読めば、このパイソンをカスタムしたエピソードもわかるので、読んでいて愛着をわかせてくれること間違いなし! これらのエピソードを知った上で「4.コルトパイソン 冴羽獠モデル」を読めば、今回新たに設定された銃のシリアルナンバーを含め、タナカワークスがどれほどこのモデルにこだわりを持って作ったかがわかるはずだ。
なお、タナカワークスならではの「ペガサス式」ガスガンを撃ったことがない人は、必ず熟読してから使うこと。内容としては、357マグナムとサイレンサーのほかに、ガス注入用の「チャージバルブ」や、「BB弾」とそれを入れるための「ローダー」、銃口に入れる「マズルキャップ」などが入っている。あとは、ガスさえあれば、いつでも準備OKなセット内容だ。
いよいよ「コルトパイソン 冴羽獠モデル ガスガン」が俺の手に!
357マグナムを持った感想としては、ズシリと重い。やはり同じエアガンでも、プラ製のものとはひと味違う。しかも、銃の重量である970g以上に重く感じるのは、さまざまな過去を背負った冴羽獠の「痛みや悲しみ」などの想いが、このモデルに投影されているのかもしれない。いや、むしろ俺に「オマエはこの銃を持つに価する漢なのか?」と、冴羽獠だけでなくカスタムを担当したガンスミス「真柴憲一郎」の声まで聞こえてくるようだ。
銃の形状は、コルト社パイソンの357マグナム(4インチ)そのものだ。バレル上には「ベンチレーテッドリブ」という梁のような放熱板が付いているのがポイントで、一目でパイソンだとわかる。なお、この放熱板はどこまで役立つかよくわからないらしいのだが、カッコイイから全てOKだ! ちなみにパイソンは、「ニシキヘビ」という意味である。
話を商品に戻すと、重さや形状だけでなくカラーがすこぶるいい。渋い黒のスチール感がでていて、銃そのものからパワーというか気迫を感じる。マズルをのぞけば、エアガンらしい真鍮のバレルものぞくものの、本物と見まがうことだろう。特に、付属のサイレンサーを付けるためのねじ切りが、ライフルリングのように見えることも影響しているかもしれない。 グリップはプラ製だが、見た感じでは「木製じゃないの?」と思えるくらいリアル。大きさも丁度いいし、コルトのメダルも埋め込まれている。
軽く撃鉄を起こして見ると、カチリとシリンダーが回り、357マグナムが戦闘態勢に入ったことを知らせてくれる。ダブルアクションもいいが、この撃鉄を起こしてから撃つシングルアクションの動作は、本当にシビレる。オートマチックのブローバックと並ぶ、最高のアクションだろう。撃鉄は少し重めだったが、撃鉄の重みは銃を撃つものが背負うべき重みなのだ。
空撃ちしないように撃鉄を戻し、今度はラッチを押してシリンダーをスイングアウトしてみる。シリンダーを銃本体から横に振り出す操作は、本来は弾を込めやすくするためのものだが、そこに1発1発弾を入れてくのが、たまらなく男心をくすぐる動作なのだ。今回のモデルはガスガンなので弾は必要ないが、スイングアウトしたりシリンダーを回転させたりする操作ができるのもリボルバーならではの楽しみだ。
リアサイト命中精度を上げるために操作可能で、エベレーション・スクリューで上下、ウェンテージ・スクリューで左右に位置を変えられる。これで着弾点を見ながら調整していけば、スティールチャレンジでの優勝も間違いなし! ……とはいかないがサバゲーなどでも戦えるはずだ。なお、弾数が少ないことを気にしてはいけない。リボルバーで戦うということは、半分ロマンで戦うのだ!
なお、この357マグナムには、冴羽獠モデルならではの刻印が2つある。ひとつはバレルに刻印されたシリアルナンバー「E1919」だ。これは、今回のモデルのために設定された。そして、ガンスミス「真柴憲一郎」のイニシャルも入っている。一見「KM」ではなく「MK」に見えるかもしれないが、二文字でひとつにデザインしているのだろう。もしかしすると、裏社会では真柴のカスタムガンは高額で取引されるらしいので「偽物防止ということなのかもな」などと妄想してみる。
付属のサイレンサーも、小さいながら、かなり存在感がある。「シティーハンター」本編では、サイレンサーを使用するシーンが多いわけではないが、ファンの中には「このサイレンサーをつけた357マグナムが好き!」という人もいるだろう。だから、タナカワークスが、キチンとサイレンサーを付属させことは、かなり意義深い。ボディ横には357マグナム専用であることがマーキングされているのも嬉しい。
銃本体と同様のカラーリングなので、一見重そうに見える。だが、手に取ってみると、意外に軽く感じた。とはいえ、銃本体とはサイズが違うのだから、軽く感じるのも当然だろう。早速、マズル部分にサイレンサーを付けてみる。ネジ切りしてある部分に合せて回転させていくだけだが、斜めに入れてしまえば溝が潰れてしまい、抜けなくなるかもしれない。抜けたとしても、もう装着することはできなくなるのだ。だから借物というだけでなく、357マグナムを託されている男として、慎重にならざるを得ない。
無事、装着を完了すると、本体同様のカラーで統一されている効果があり、元々そこにあったかのように、357マグナムにマッチする。本来リボルバーは構造的にサイレンサーの効果が薄いが、「シティーハンターの357マグナム」だからこそ大きな意味を持つ。このように、カスタムパーツを付けることで、よりシティーハンターの世界観に没入できるだけでなく、プレイバリューとしてもアップするのがたまらない喜びだ。
実射テストをするとあの曲が聴こえてくる
さていよいよ実射である。この銃を持つ価値があるかどうかが試される(そんなことない)だけに、余計に緊張してしまう。
なお、このガスガンは、タナカワークスならではの「ペガサス式」というシステムが採用されている。具体的にはシリンダーの裏側からガスを直接注入しておき、表側からローダーを使ってBB弾を入れる仕組みだ。始めて使ってみたが、なかなか面白い仕組み。何がいいって、グリップの下とかに、不必要な穴を作らなくていいのだ。装弾数は12発だが、リボルバーを持つのなら、それで十分だろう。むしろ、実物同様6発にしてくれてもいいくらいだ。ということで、今回は6発しか入れずに実射してみた。
実際に撃ってみると、モデルガンのようなパワフルさはないものの、冴羽獠モデルに相応しいだけのパワーを感じた。通常銃を撃つときは立ち止まって撃っているような気がするが、なぜかこのモデルを持っていると、横っ飛びしながら撃ったほうがカッコイイんじゃないかと思えるほど、アクションをしながら撃ちたくなる。
そして脳裏にはテレビアニメ版の歴代の主題歌がガンガンと鳴り響く。「これだ! これだよ!」借物なので、万が一落とさないようにしながらエンジェルダストを打たれた脳内の敵とバトルすること20分。まったくもって至福の時だった。途中、サイレンサーもつけてみたが、結構、音が押さえられるのでビックリした。これはただ者ではない。手持ちのBB弾を撃ちきったら、最後に例の曲が聞こえてきた。そう最近では「退勤」のテーマにする人もいるという名曲「Get Wild」だ。この曲が聞こえた以上、実射はこの辺にしておこう。
依頼……じゃなくて、実射を終わらせたので、部屋に戻って再度じっくり鑑賞してみた。ビジュアルについては申し分ないし、何といってもペガサス式の恩恵で、グリップの底に穴がないのが、泣くほど嬉しい。だが、逆に木製グリップの存在を知ってしまうと、ムズムズと購買欲が刺激される。この銃のオーナーになったら、いつかはGETしたい(しつこい)ところだろう。
使い勝手としては、使用する場所に左右されるかもしれないと感じた。自宅で撃ったり、シューティングレンジで撃つぶんには、ペガサス式の効果でスムーズな射撃が楽しめるだろう。しかし、いざサバゲーに持ち込むとなると、装弾数が少ないことや、ゲーム中のリロードが難しいので、サイドアームの座に甘んじるしかない。もちろん、ハンドガンである以上それもアリなのだが、このモデルに関しては「違う!」と断言したい。なんといってもさ、冴羽獠の357マグナムなのだから、メインアームとして活躍したいよね。だから、あくまでバトルではない遊びや競技をメインターゲットに考えるべきだろう。
ギミックとしては、シリンダーがスイングアウトするし、弾倉も回る。しかし、あえていうならダミーでもいいのでシリンダーに弾丸を入れたり、撃ち終わったあとパラパラと地面に落としたりしたいところ。ここはペガサス式による効率化とギミックがトレードオフしているところなので、仕方がない。逆にいえば、もしそのギミックが欲しいのであれば、エアガンではなくモデルガンが最適解だと思う。タナカワークスはエアガンと同じ銃をモデルガンでも展開することも多い。こちらの発売も待ちたい。
総じて、使う場所と使う人を選ぶ銃なのかもしれないと感じた。エアガンとして美麗なビジュアルと効率的な装弾数を持つモデルなので、やはりファンは手にしておきたいところだ。
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