レビュー
アクションフィギュア「超合金魂 宇宙海賊戦艦 アルカディア号」レビュー
2020年12月16日 00:00
アルカディア号に乗り込むために必要なもの、それは音声ギミック
さて、一通りアルカディア号の形状における素晴らしさをお話したところで、ギミックについてもお伝えします。まず言わねばならないのは、音声ギミックについてでしょう。
水木一郎さんによる主題歌「キャプテンハーロック」やエンディング曲「われらの旅立ち」はもちろんのこと、コロムビア男性合唱団が重厚な世界観を演出する「さすらいの舟唄」など、どれもTVシリーズを見たことがある方ならば心に突き刺さる7曲を収録。うれしいのは、まゆが登場する際などに流れていたオカリナの曲「子守唄」ですね。この少し寂しいメロディーは、まゆとハーロックのシーンなどで流れていたと記憶しますが、虚空の宇宙を漂うアルカディア号には、とても似合う曲だよなあ! と、思うのでした。
こうした楽曲のほか、さらに嬉しいのが井上真樹夫さんが演じた劇中のセリフ音声ですね。リモコンでは、「砲当選回」つまみを回すと回転音とともに主砲である三連想パルサーカノン2基を独立して左右に回転させられますが、続けて「パルサーカノン」ボタンを押すと「パルサーカノン発射!」の掛け声とともに発射音が、一拍置いて撃破音がするのです。それだけではありません。続けて押せばハーロックのセリフを抜いた形で(いちいち機械的に「パルサーカノン発射!」と言うわけではない)発射音がしますし、さらにハーロックのセリフは別バージョンも飛び出したりして。
また「エンジン」ボタンでは、ハーロックが「これよりマゾーン本隊に突入する。全速前進!」と掛け声をかけつつ、エンジンがギュオーン! と鳴るのです。
これまで音声ギミックを体験していたことはあったのですが、改めて一人だけの空間で体感すると、深い没入感が得られるんですよね。買ったからこそわかりました。これは深い。そして上述したように、連続でボタンを押した場合のリアクションも工夫が凝らされているので、興ざめすることがないのです。まさにハーロックとともにある、この艦の乗組員になっている時間なわけです。
音声以外のギミックとしては、先端の衝角と、艦体底面のハッチがあります。衝角については当時「いったいどうやって出しているんだろう」と子供心に思っていましたが、このギミックは素晴らしいですね。
可動、音声といったギミックのほかに、アルカディア号を彩る艦載機も秀逸です。これらはディスプレイ用の支柱が用意されていますが、艦底ハッチを開けば、そこにジョイントしてディスプレイすることも可能です。
TVシリーズを見た方ならば、オープニングで艦載機のボレットとコスモウイングがアルカディア号の船体をかすめるシーンに覚えがあるはず。小型のボレット・コスモウイングと巨大なアルカディア号の対比に、ざわーっと鳥肌が立った人も多いのではないでしょうか? まさに名シーンのひとつだと思いますが、この製品でも艦載機をディスプレイすることで、同様の対比感を味わうことができます。
次に、発光ギミックについて。これまでも各部の紹介の際にお話してきましたが、単に光るのではなくて、点滅と言うよりは明滅を繰り返すので、航海している感が高まる仕様。そしてなにより美しいのです。
さいごに、この艦の魂をレポートして本項を終えたいと思います。そう、“友”が眠る中枢大コンピューターです。
実を言いますと、この中枢大コンピュータのギミックが、今回の購入の決め手になったとも言えまして、これはまさに物言わぬアルカディア号その人であります(小学生の私は後にトチローという名前を知ることになるのですが)。
当時の私には、時として不可解な行動をとるアルカディア号の、最も謎めいた部分であり、心にひっかかっていた存在でもありましたが、まさか、あの中枢大コンピューターと会話が(まあ、妄想上で)できる日が来ようとは。リモコンの「大コンピューター」ボタンを押せば、複数パターンの音声ギミックが買った者の想いに応えてくれるのです。
これにて、「超合金魂 GX-93 宇宙海賊戦艦 アルカディア号」のレポートを終わります。TVシリーズのエンディングには「いつかなくした夢が、ここにだけ生きてる」というくだりがあります。この製品には、小学生当時「強く優しくカッコいい、ハーロックみたいになりたいなあ」と思っていた私の夢が、まさに生きていたなあ! と、深く深く、思ったのです。
(C)松本零士・東映アニメーション