レビュー
プラモデル「PLAMAX サーバイン」素組みレビュー
伝説のガレージキットがプラモデルに! そのディテールを実感
2021年6月23日 00:00
「MAX サーバイン」のソフトビニールキットを組んだ者は幸せである。
私達はその存在を知っていたにも関わらず、廃版で手に入れることのできない性を持たされたから。
それ故に、さいとうよしかずが語る「PLAMAX サーバイン」の物語を伝えよう。
……ということで、ダインバインのオープニング風書き出しで始めてみましたが、タイトルどおりマックスファクトリーから販売された、「PLAMAX サーバイン」の素組みレビューっす。
プラモデルを引退して約20年の老眼持ちライターにはチトハードルが高い部分もあるが、数多のオーラバトラーの中でも最高級にカッコいいサーバインであるうえに、元となるモデルが超絶ディテールで伝説級の「MAX サーバイン」とくればやるしかないでしょう! プロモデラーではないので、制作技術に自信はないけど、逆に初心者レベルでキチンと作れるのか?……という参考になると思う。
「サーバイン」を知っているか?
キット制作の前に、サーバインについての話をしよう。というのも、読者の中には「サーバインって何?」って人も多いだろうし、知っていてもスーパーロボット大戦で見たことがある……というレベルかも知れない。
サーバインは、1983年のアニメ「聖戦士ダンバイン」の後日談に当たるOVA「聖戦士ダンバインNew Story of Aura Battler DUNBINE」に登場するオーラバトラー(この世界のロボット)。「New Story of Aura Battler DUNBINE」は1988年に全3巻で発売された。
OVAではTV版から700年後のバイストン・ウエルを舞台に、TV版の主人公・ショウの生まれ変わりともいえる「シオン」が、大人の女性の姿をした上級妖精の“エ・フェラリオ”からおとぎ話そのものの羽の生えた小さな妖精“ミ・フェラリオ”となったシルキーがサーバインに搭乗する。
一応、TV版で描かれた700年前のドレイクの乱(?)の時代から残っていたという設定なので、サーバインはTV版のようにロールアウトしましたって感じのツルツルボディではなく、外装は少しキズだらけのような印象。とにかくTV版とは一線を画すイラストチックな作画もあり、オーラバトラーという存在の畏怖を感じた。TV版ではビルバインに主役の座を奪われたダンバインの、本来あるべき姿なのではなかろうか。とにかくダンバインよりも凄く繊細なディテールを持つサーバインをデザインした出渕裕さんに感謝である。
ちなみにストーリーでは、同じくTV版のショウのライバルであるバーンの生まれ変わりである「ラバーン」も「ズワウス」に乗り込み、戦うことになるのだが、これはTV版のラストでショウがバーンの「俺は人は殺さない、その怨念を殺す!」などと、ぬるいことを言った結果ですな(苦笑) ほかにも、リムルの生まれ変わりのレムルもいるが、ニー・ギブンは存在しない。
伝説の「MAX サーバイン」降臨
そんな感じで、サーバインはとてもカッコイイが、OVASが発売された1988年という時代にはプレミアムバンダイのようなビジネスもなく、OVA作品の登場メカであるサーバインに関しては、玩具が販売されるどころか、プラモデルになることもなかった。ところが、そんな不毛な時代に一石を投じたのが、当時ガレージキットメーカーとして活動していた「マックスファクトリー」で、何と1988年に1/32スケールのソフトビニールキットとして「MAX サーバイン」を発売したのである。当時の価格は4,800円。
ソフトビニールキットなので、当然無可動モデルであるが完成品の神々しさといったらハイパーオーラ斬りレベルである(イミフ)。もちろん各部も繊細なディテールを完全再現してのリリースで、ファンからは「奇跡のソフビキット」とも言われたほどだ。翌年には出渕裕さんによる、新規デザインのオリジナルベイル(盾)も付いたDX版も発売され、いつしか伝説として語られるようになった。
とはいえ、ソフトビニールキットは、誰もが簡単に作れるものではない。しかも、「MAX サーバイン」は1980年代の商品なので、近年のような模型用ツールが揃っていない時代である。技術のない人が組み立てられる難易度ではなく、大半のファンは指をくわえてみているしかなかった。そして700年後……じゃなくて33年くらいの時を経て、プラスチック製のキット「PLAMAX サーバイン」として蘇ることになった。しかも、キットはすべて3Dスキャナで読み込み、当時のサイズではなく150mmに凝縮しての再降臨である。これはもう買うっきゃない!
パッケージと度肝を抜くディテールに感動
ということで、さっそくパッケージを愛でたい。パッケージには、きっちりと塗り分けられたサーバインのりりしい姿をメインに、宝箱のような装飾がデザインされていてとてもカッコイイ。裏パッケージを見ると、「MAX サーバイン」と「PLAMAX サーバイン」とのコンセプトの違いなどについて読むことができる。
中には、組み立て図とキットのほか、チラシが入っている。組み立て図には、今回の「PLAMAX サーバイン」の開発秘話やカラープランなどもある。特にカラープランは、4つのバリエーションが掲載されているので、好きなカラーに塗装してもいいだろう。今回は素組みレビューなので無塗装だが、個人的には白をベースに紫系のパールを混ぜたものを吹いてみたい感じがする。あと、恐竜の甲羅や筋肉を使っている設定なので、そのあたりも塗装で表現できたら楽しそうだ。
キットは6つのランナーで分割されており、白系4つ、緑系と透明が1つずつである。近年の色分けモデルを見なれると少し色分けが足りないように感じるかもしれないが、最小限の色分けであれば、これが最適解であることは明白だ。
とにかく、キットは見ているだけで、その造型の精緻さに心を奪われるだろう。例えば、装甲部分の薄さ、可動部にミッチリと刻まれたオーラマッスルの表現、ベイルのフェラリオを思わせる裸体の柔らかさなど、ため息しか出ない。
元ソフトビニールキットならではの組み立て注意点!
とりあえず、組み立て前の注意点を、写真とともにいくつか紹介していこう。これは、僕がプラモを引退してから20年以上経っているので、ほぼ初心者的な立ち位置ってところもある。だが、あくまで元がソフトビニールキットなので、近年の制作テクニックがそのまま流用できると思ってはいけない。
例えば、このキットは可動モデルではないのは前述したとおりだが、可動モデルでないぶん「各部位にわかれていない」のだ。ちょっと伝えづらいが、可動を前提としたパーツ分けはされておらず、本体も手も足も胴体もバラバラに組むわけではない。本体のコアとなる部分に、ひとつひとつ各部のパーツを貼り付けていくことになるのだ。
まあ、それを聞いても「とりあえず仮組していけば、失敗しないでしょ」と安心するかもしれない。けどな。それ、接続の目安となる凹凸部分、いわゆるダボとダボ穴があるからこそ、簡単にできるのであって、この「PLAMAX サーバイン」に仮組みが可能な要素は基本的に存在しないんだ。頑張ってマスキングテープでグルグル巻きにすればできないことがないかもしれないが、あとでどのパーツか判らなくなる恐れもあるのでオススメしない。基本的に接着一発組み、と言う感じになる。
ということで、最終的に何が言いたいかというと接着には細心の注意を払って行なってくれってこと。ちょっと脅しっぽくなってしまったが、ちゃんと説明書どおりに作れば問題ないので、プラモ慣れをしている人でも「慢心しないで作ってね」って感じです。
(C)創通・サンライズ