レビュー
「Figure-rise Standard 仮面ライダーアギト グランドフォーム」レビュー
限りなく進化する力「アギト」がプラモデルに宿る
2021年7月19日 00:00
- 【Figure-rise Standard 仮面ライダーアギト グランドフォーム】
- 開発・発売元:BANDAI SPIRITS
- 発売日:2021年7月10日
- 価格:3,520円(税込)
- ジャンル:プラモデル
BANDAI SPIRITSが展開中のキャラクタープラモデルシリーズ「Figure-rise Standard」。その中で展開されている「仮面ライダー」シリーズで、筆者が待ち望んでいた「仮面ライダーアギト」が7月10日に発売した。
筆者は少年時代、リアルタイムで視聴した「仮面ライダーアギト」のカッコよさに憧れた。そして、大人になって改めてそのドラマ性に惹かれた。そんな「仮面ライダーアギト」のプラモデル化は非常に喜ばしい。「Figure-rise Standard」というシリーズは、価格がリーズナブルで手に取りやすいことも魅力だ。
本稿では、記事前半で特撮「仮面ライダーアギト」の紹介とプラモデルの組み立て工程をお見せする。記事後半ではキット完成後のディテールやポージングの検証を行なう。
目覚めろ、その魂!特撮「仮面ライダーアギト」の魅力
「仮面ライダーアギト」は、2001年に放送された特撮テレビドラマで、平成仮面ライダー2作目。物語は不可能犯罪によって変死する事件を起こす正体不明の怪人「アンノウン」。
その「アンノウン」と対峙するのが「仮面ライダーアギト」こと記憶喪失の青年、津上翔一。「アギト」のほかにも、警視庁「未確認生命体対策班」に所属する氷川誠が装着する「仮面ライダーG3」や水泳選手・葦原涼が変身してしまった「仮面ライダーギルス」と3人のライダーを軸にドラマが展開されていく。
筆者は放送当時リアルタイムで見ていたが、大人になって「仮面ライダーアギト」を改めて見た。ほとんど内容を覚えていなかったのもあって、ドラマの作りこみの深さに驚かされた。
「既に仮面ライダーである男」津上翔一、「仮面ライダーになろうとする男」氷川誠、「仮面ライダーになってしまった男」葦原涼と一人一人のドラマの密度や「仮面ライダー」として「アンノウン」と戦う理由、そして「アンノウン」と「アギト」の真実に迫るストーリーラインは中盤から加速度が増し、大人になってみると子どものころには気づかなかった「物語」に心が震わされた。
そして、4人目のライダー「アナザーアギト」の木野薫や氷川誠にライバル心をむき出しにする北条透など子どもの視野は捉えづらかった魅力も知ることができた。「限りなく進化する力」である「アギト」の意味など、大人の視点から見ても本作は神秘的で先が気になる内容となっていた。
何よりも筆者は「仮面ライダーアギト」の戦闘シーンを子どもの時以上に食い入るように見ていた。今回プラモデル化された「グランドフォーム」は「仮面ライダーアギト」の基本形態で、その戦闘スタイルは洗練された徒手空拳。動きのキレや相手のいなし方など、無駄な動きを少なくして的確に攻撃していく姿はCGエフェクトとは違った迫力があった。
それだけに「プラモデルでその戦闘スタイルを再現できるのか?」と思いつつ、筆者はパッケージを開けた。
パッケージ、中身を確認。ランナーやシールは最低限
最初はパッケージデザインを確認。イラストは、第1話のライダーキック時のワンシーンとなっている。頭部の角・クロスホーンを展開し、足元には「アギト」の紋章が浮かび右足にエネルギーを集中させる瞬間が描かれている。
物語の始まり。謎に包まれた「仮面ライダーアギト」の戦いと「グランドフォーム」の必殺技が炸裂する寸前の高揚感が伝わってくる。
それでは、中身を見ていこう。ランナーは全部で8枚。そのうち1枚は専用台座で、もう1枚はエフェクトパーツとなっており、「Figure-rise Standard 仮面ライダーアギト グランドフォーム」本体は6枚のランナーで構成されている。そして、取扱説明書とシールが付属する。
金色のランナーはメッキパーツとなっており、高級感ある金色となってる。銀色のランナーはツヤが抑えられた成形色で黒いランナーと合わせて落ち着いた色合いとなっている。エフェクトパーツの「アギトの紋章」は半透明の成形色となっている。シールは最低限の量となっており、貼った個所も浮いた印象を抑えた配置となっている。
これらのパーツによって、「Figure-rise Standard 仮面ライダーアギト グランドフォーム」がどのように完成するのか?続いて組み立て工程を紹介していく。
組み立て開始。サクサク組み立てられて、高い完成度を実現
最初は頭部を組み立て、組んでみると指定のパーツはどこの部分か一目でわかり、組み立ても快調に進められる。特に注目したいのが、目の部分。目は赤いクリアパーツを黒い部分に覆う形になるのだが、それだけだと下地となる黒が透けてしまう。
そこで、反射板となるシールを貼りつけ、目が暗くならない設計になっている。また、目の赤いクリアパーツはクロスホーンと組み合わさっており、展開時のものも同様の作りで脱着がしやすい仕様となっている。
ヒーローの顔は重要だ。劇中のイメージとかけ離れていると、ディスプレイしたときに違和感を禁じ得ないからだ。「仮面ライダーアギト」で最も目立つ顔のパーツはクロスホーンと呼ばれる角。キットでは小さな部品となるが、アンダーゲートを採用し、正面から見たときにもゲート跡が目立ちにくくなっている。また、裏面には小さい裏打ちパーツをはめ込み、後ろから見たときに空洞が見えない仕様となっている。
完成した頭部はほとんどシールなしの状態で、劇中の凛々しい顔が再現されている。プラモデルによく見られるパーツの継ぎ目もほとんど見受けられず、正面から見ると完成品フィギュアにも負けない造形となっている。
続いては胴体の組み立て。首や腕につながりアクションの根幹を支える部分だが、特に人型のものは腹筋可動も見逃せない。
胴体は芯に可動域となるパーツを組んで、腹部となるパーツを被せ、それを胸と背中となるパーツで挟み込む形となっている。
可動部分はパーツは小さいものの、構成はシンプル。肩の引き出しと腹部の可動となる。
胴体の外側となる部分もシンプルな組み合わせ。三色のパーツを合わせるだけだが、その色合いも成形色で劇中のカラーリングを再現している。
また、胸の中央に位置するプレート「ワイズマンモノリス」はクリアパーツを被せることによって、質感や厚みが調整されている。挟み込んだら首周りの装飾などを付け加えて完成となる。
完成した胴体は厚めの胸板や細かいモールドのラインが通った美しい造形となった。
次は腕に取り掛かる。肩、肘、手首と動きの多い箇所で、肩アーマーの可動も気になる部位だ。
基本的には胴体に近い組み立て工程となっている。肩はアーマー部分にも可動箇所が設けられ、腕を上げるときの干渉が抑えられている。
腕は肘の可動に前腕と二の腕を被せるような作りとなっている。非常にシンプルだが、要所の可動を確保しつつゲート跡が目立たない最小限のパーツ構成で組みあがったときの違和感を少なくしている。
腕は肩や腕周りのアーマーが存在感ある造形で完成。左右共に同じ構成となっている。
次に足の組み立て。仮面ライダーを代表する必殺技「ライダーキック」の再現やポージングの要となるパーツで、その可動域は重要だ。腕と同様の構造で可動域をしっかり確保しつつ、外見の造形も綺麗に纏まっている。太ももや脹脛の膨らみなど、人型ならではのラインは力強い印象となっている。
また、脚の裏面には「アギトの紋章」のモールドが施されており、プラモデルでここまで細かく造形されていることに驚かされた。しかし、「Figure-rise Standard 仮面ライダークウガ マイティフォーム」ではあったつま先の可動がなくなっているのが、筆者としては残念な点だ。
いよいよ終盤、腰回りとベルト「オルタリング」を組み立てる。腰回りは股関節のパーツを挟み込み、胴体の左右可動ができるようにしている。
「オルタリング」は成形色とシール2枚で再現することができる。これには筆者も驚かされた。
筆者がイメージしていたのは、基盤となるパーツに細かい色のパーツを寄木細工のようにして配置する感じだった。そのイメージをひっくり返したのは、ミルフィーユのように各パーツを重ねていく組み立て構造。これにより組み立ての手順が格段に短縮されている。
ついにすべての部位が完成し、いよいよ全体の完成へ。
頭から足まですべてを合わせた「仮面ライダーアギト」は、威風堂々とした姿だった。