レビュー
コトブキヤ「武御雷 Type-00R Ver.1.5」レビュー
『マブラヴ オルタネイティヴ』の戦術機独特のカラーリングとプロポーションを素組みで忠実再現する逸品プラモデル
2021年10月7日 00:00
- ジャンル:プラモデル
- 発売元:コトブキヤ
- 価格:6,380円(税込)
- 発売日:2021年9月24日(再販)
- サイズ:全高約180mm
âge(アージュ)の伝説的アドベンチャーゲーム『マブラヴ オルタネイティヴ』が17年の時を経てファン待望のTVアニメ化。本稿掲載後間もなく、フジテレビで10月6日25時25分(初回放送のみ)より、ほか系列各局でも放送予定となっている。今回は同作の放送開始を記念して、作中に登場する人型兵器「戦術歩行戦闘機」(以下、戦術機)のプラモデルレビューを実施したい。題材は、コトブキヤから9月24日に再販されたばかりの「武御雷 Type-00R Ver.1.5」だ。
『マブラヴ オルタネイティヴ』は、原作ゲームを知らない人にとっては秋アニメの1本だが、あの「進撃の巨人」の原作者・諫山創氏もオフィシャルの場で作品に影響を受けていると明言するほどの名作なのだ。滅亡の淵に立たされた人類の奮闘、醸成された奥深い世界観、時を経てもなお惹きつけられるスタイリッシュなメカデザインといった数々の魅力を備える。実はこの作品、長年アニメ化の話は「出ては消え」を繰り返していただけあって、ファンにとってはエヴァンゲリオンの完結なみに待ち望まれていた感涙モノの企画である。
今回、このような『マブラヴ』ブレイクの年を予感させる中、コトブキヤの名作キットながら入手困難となっていた「武御雷 Type-00R Ver.1.5」が、ついに再販されることとなった。ほかの旧キットも順次再版されるほか、「不知火」や「吹雪」も商品化されるので、今後の展開に期待できる。そこで今回はHOBBY Watchの『マブラヴ』番を自称する筆者が、「武御雷 Type-00R Ver.1.5」に挑戦することになった。
以前レビューした「PLAMAX サーバイン」でも書いたが、自分はモデラーではないので「欲しいメカの立体物をフィギュアではなくプラモを見つけたので素組みしてみた」というスタンスで、あくまでプラモになじみがないけど造形物は欲しい、でも作れるか不安な人が参考になる記事を目指すぜ。
なお、今回のレビューではコトブキヤに協力いただき開発中のサンプルをお借りして撮影している。製品版とは一部仕様が異なる可能性がある点にはご留意いただきたい。
『マブラヴ オルタネイティヴ』ってナンダ?
『マブラヴ』シリーズの主軸となるのは、âgeが2003年に発売したADV『マブラヴ』と、2006年に発売した『マブラヴ オルタネイティヴ』この2作を合わせて一つの大きな物語を構成している。
『マブラヴ』シリーズでは舞台を同じくする多くのタイトルが展開しており、『トータル・イクリプス』、『シュヴァルツェスマーケン』と先んじて映像化された派生作品もある。今回アニメ化するのはシリーズ原点にあたる『マブラヴ オルタネイティヴ』。ゲーム『マブラヴ』のリリースから17年を経て、まさしくファン待望の映像化となる。
物語のあらすじを簡単に説明すると、第1作の『マブラヴ』は2部構成で、前半のEXTRA辺では平和な学園生活を送っていた主人公・白銀武だったが、後半のUNLIMITED編で突如並行世界へと移動してしまう。そこでは、BETA(ベータ)と呼ばれる「人類に敵対的な地球外起源種」によって地球が侵略されている。並行世界では立場も生い立ちも異なるが見知った姿の同級生たちがBETAとの戦いに身を投じており、武も戦術機に乗り込み人類の存亡をかけた戦いに加わることとなった。
続編『マブラヴ オルタネイティヴ』は、UNLIMITED編での戦いを経た武が、その経験をそのままにUNLIMITED編冒頭、すなわち並行世界へと降り立ったタイミングへとタイムリープしたところから物語がスタートする。武は『マブラヴ』での結末から決意を新たにして、再び戦火へと飛び込む。
というわけで原作ゲームをプレイするならEXTRA→UNLIMITED→オルタネイティヴの順だが、アニメではいきなりオルタネイティヴ編からスタートとなるものの、割と世界観を丁寧に説明しているので見進めていくうちに、いろいろわかってくると思う。もちろん、EXTRAで恋人候補の女の子たちが、ほぼ同じ容姿と性格を持ちつつも、BETAのいる世界で色々背負わされているところももの悲しい。だから、キャラクターについてきちんと味わうなら、できればEXTRA→UNLIMITEDをプレイしておくと感情移入できてさらに楽しめる。
ちなみに筆者はEXTRAを全キャラクリアしてからプレイしているので、メインヒロイン以外の背景も含めて世界の違いを楽しめた。余談だが、オルタには『マブラヴ』以外にも、『君がいた季節』、『君が望む永遠』のキャラたちも登場するので、こちらもプレイしたいところだが、さすがにそこまでは難しいかもしれない。
今でこそよくある設定だが、当時のノベルゲームにおいて異世界転生したうえでロボットSFものに派生し、さらには人類が滅亡の危機にあり、その世界設定も重厚に練られたものであるというのは衝撃的だった。しかもリリース時点でそういった設定は一切伏せられて『マブラヴ』はごく普通の学園ハーレムものとして売り出されていたのだ。冒頭で「進撃の巨人」の諫山創氏を例に挙げたが、本作に影響を受けたクリエイターは数知れない。
なんだか、まったく『マブラヴ』の説明になってない気もしてきたが、要するにギャルゲーの主人公が世界滅亡の危機を救うために戦う「あいとゆうきのおとぎばなし」なんですよ!
「武御雷 Type-00R Ver.1.5」を作ろう!
キット作るまでの導入が長いのが、さいとうの記事特性だが、語らせるとキリがないので、「武御雷 Type-00R Ver.1.5」の制作を開始しよう。「武御雷」は、日本帝国斯衛軍が使用する戦術機で、搭乗する身分によって性能と色が異なる。中でもこのType-00Rはチューニングされた機体で、政威大将軍専用機となっている最高の機体、つまりは一国の最高指揮官用カスタム機である。色も高貴なイメージを想起させる紫だ。
戦術機というのは、オルタの世界での「戦闘機」だと思ってくれればいい。実際、跳躍(ジャンプ)ユニットなどは、戦闘機のデザインイメージに似てるし、外国の戦術機の名前には「ファントム」とか「ラプター」とか付いているくらいだ。なお、この戦術機は国によって設計思想が異なるので、武装や各部の設計が色々と異なっていて楽しい。このあたりが好きな人は戦術機の開発物語でもある『トータル・イクリプス』が楽しいだろう。
この「武御雷 Type-00R Ver.1.5」そんな「武御雷」をノンスケールモデルとして立体化したもので、最初に発売したノンスケール「武御雷」に1/144スケールの「武御雷」で培ったノウハウを投入して改良したのが「Ver.1.5」だ。面白いのは、金型を一部流用しているので、無印「武御雷」のパーツとVer.1.5「武御雷」のパーツの両方が入っている。だからVer.1.5「武御雷」のパーツは使い切るが、無印「武御雷」のパーツは一部余る感じだ。なので、箱を開けた後、あまりのパーツの多さに「そっと閉じたくなる」かもしれないが、意外と作るのに時間がかからない。
戦術機独特のプロポーションと色分けを忠実に再現!多重関節で可動もバッチリ
早速作り初めてみると、驚くほど簡単に組める。とにかく接着剤がなくても「パチパチ」はまっていくのが気持ちいい。「ここどうすんの?」と思える部分も、裏からハメて固定したりできるので、「ナルホドなぁ」とうならせる。
腕や脚は多重関節になっているが、これをプラパーツとポリキャップを上手に組み合わせているので、なかなかいい動きをする。さすが富嶽重工と遠田技研……じゃなくて、コトブキヤが頑張って作ったプラモデルだけのことはある。ディテールもかなり細かくて、足裏のモールドまでバッチリだ!
頭部や胴体は中心を作って周囲に装甲をハメ込んでいくスタイル。腕や脚と違って複数作らなくていいから楽。
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