レビュー
モデルガン「リバレーター2022」レビュー
"弾を1発撃つための大量生産簡易銃"というロマン武器を手にする楽しさ
2022年1月20日 00:00
「リバレーター」はその形状から独特の存在感を放つ銃である。トイガンが並ぶショーケースで展示されていても、思わず目を惹く。他のリボルバーやオートマチック拳銃、ライフル、アサルトライフルなど、「優れた工業製品」の雰囲気が強い他の銃と全く異なり、無骨で、弾を撃つだけの機能を集約しただけのようなデザインは強く"異質感"を放つ。「なんだこの銃は?」と、目が吸い寄せられてしまう。
ハートフォードが1月中旬に発売したモデルガン「リバレーター2022」は、製品を通じてその銃が持つ歴史背景を楽しめる「ビンテージ・レプリカ・モデルガン」の1つで、こだわりに満ちた、なおかつ"しっかり遊べる"、"手に入れやすい価格帯"を目指した製品となっている。海外での綿密な取材、文献調査による精密な設計と、ハートフォードのモデルガン技術を活用した本製品は、マニュアルを読み、そして実銃を調べることで楽しさが大きく膨らんでくる。
リバレーターというユニークな拳銃、そしてハートフォードが本製品にどのような想いを込めたか、今回サンプル品を手にしてレビューしていきたいと思う。箱を開けてみて、手に持ってみて、発火させてみて思わず笑みが浮かんでしまう、とても楽しい製品だ。
最小限の機能を持たせた大量生産の銃という、特殊な設計思想で生まれた簡易銃
リバレーターはその設計思想や、生い立ちも非常に独特のものだ。この銃が生まれたのは第二次大戦の終わり頃、ドイツに対抗するレジスタンス支援のため、アメリカが空中投下用に製造した。その拳銃は「1発だけ弾丸を発射できる銃」として設計され、リバレーターを手にしたレジスタンスが、これを使って占領軍から"まともな武器を奪う"ことを期待してのものだった。
設計の大きな目的は「安価に、短期間での大量生産」というもので、フレームを含め多くの部品がプレス加工で生産され、刻印なども見られない。部品点数はわずか23個、銃口にはライフリングは刻まれておらず、徹底的にコストを抑えた設計となっている。本銃を生産したゼネラルモータースはわずか数カ月で100万丁の生産を実現した。
45ACP弾を使用する単発式拳銃で、弾を詰め替えれば複数弾丸を発射できるが、排莢をするためには銃口から棒を突っ込んで掻き出さねばいけないという原始的な方式となっている。グリップの底面にはスライド式の蓋があり、グリップ内部に10発ほどの予備弾薬が入れられるようになっている。
リバレーターは100万丁生産されたものの、その詳細な運用は歴史には記されていない。期待されていたヨーロッパのレジスタンス向け空中投下は、アメリカの「M1カービン」や、イギリスの短機関銃「ステンガン」というはるかに実用的な銃で実現されたため、リバレーターの空中投下は行なわれなかった。ヨーロッパよりも中国に多く供給されたという。
軍であまり使用されなかったこの銃をアメリカの戦略諜報局が引き取り使用したが、職員からはこの安価で粗末な銃は安売雑貨店ウールワースにちなんで、「ウールワース・ガン」と呼ばれたというエピソードもある。結局、戦後に大量に余ったリバレーターはスクラップとして廃棄処分となったという。
他の銃がより高性能、使いやすさを重視し進化していく中で、リバレーターは「安価に大量生産、1発だけ弾が撃てればそれでいい」という非常に思い切った、あえて言うならばいびつな設計思想の元生まれた武器であると言える。まさに時代が生んだモンスターと言えるべき銃だが、だからこそ独特のロマンがある。「この銃のレプリカを手にしてみたい」と思う人も多いだろうし、この異様な銃のモデルガンを手にしてから、「この銃はどんな背景から生まれたんだろう?」と考える人もいるだろう。
ハートフォードはリバレーターのモデルガン製作に際し、アメリカで本銃を研究し「リバレーターブック」を著作したラルフ・ヘーガン氏に取材し、図面のアドバイスももらって製品を開発したという。そのこだわりはパッケージまでにみなぎっている。今回のレビューではこのハートフォードのこだわりも細かく紹介していきたいが、まずは銃本体を見ていこう。
リバレーターはその外観に特徴がある。銃身、グリップ、トリガーにトリガーガード、ハンマーであるコッキングノブと、「銃としての要素」はそろっているが、やはりその構成が異様だ。グリップはつるつる、銃のフレームにも飾り気は全くない。トリガーガードの鉄板が曲がって、銃身に引っかけられている。
トリガーガードの鉄板の先端の出っ張りがそのまま後部の鉄板とで簡易的な照準器になっているところは、シンプルで秀逸な設計とも言える。他の銃と比べ、あまりに無骨なデザインは、密造拳銃のようにも見えるが、必要な部品のみで構成された「いかにも工業製品」という味わいもある。工事現場で使うくい打ち用の「リベットガン」の様にも見える。
弾を込めるには、まずコッキングノブを引きノブを倒すことで固定する。コッキングノブが当たっていた部分にはカートストッパーが見える。照準器を兼ねたカートストッパーを持ち上げることで薬室が現われ、ここに弾丸を装填、カートストッパーを戻して薬室を塞ぎ、コッキングノブを捻って戻すことで射撃準備完了となる。
引き金を引くとコッキングノブが前進、ハンマーとして薬室内の薬莢のプライマー部を叩き、弾丸が発射される。排莢するには再びコッキングノブを引いて捻り、カートストッパーを引き上げ薬莢を排出する。実銃の場合射撃の衝撃で薬莢は熱くなり薬室内で膨張してしまうので、銃口から付属の木の棒をつっこんで薬莢を押し出さねばならない。モデルガンの場合はトイガンであることを表わす為と安全対策で銃口にインサート(仕切り)があるため棒を突っ込む事ができないが、ちゃんと木の棒も付属しているのが楽しいところだ。
もう1つモデルガンとして楽しいのが薬莢のギミックだ。「リバレーター2022」では実弾を模した45ACP弾のカートリッジが付属している。このカートリッジは分解することで内部に7mmキャップ火薬をセットでき、射撃音を再現する"発火"を楽しむことができる。薬莢のリムの刻印まで当時のものを再現したこだわりのカートリッジだ。
このカートリッジは先端に弾丸を模した部品がついているのだが、リバレーターに装填する時にはこの弾丸部分を取り外す。弾丸はネジ止め式になっているのだが、ネジ穴はカートリッジ内部まで貫通しており、これが火薬の破裂音の通り道となっているのだ。カートリッジ内部で爆発した火薬のエネルギーが穴から出てくることで、気持ちの良い発射音を響かせることができる。
モデルガンのカートリッジは火薬音を前方に集中させるため、カートリッジ先端に穴が開いているものが多いが、先端に穴が開いているのはリアルな弾丸と外見が異なってしまう。このためあえて火薬を入れない「空撃ち用ダミーカートリッジ」で丸い弾丸を先端につけた製品も販売しているのだが、「リバレーター2022」に付属しているカートリッジは弾丸を取り外すと音が出せるようになるというギミックで、見た目と機能を両立させている。また弾丸部分がない薬莢が銃から出てくるのも「射撃した後」を感じさせる形になっているので、臨場感がある。このアイディアはかなり面白いと感じた。「実銃の雰囲気をできるだけ再現する」という、モデルガンならではのこだわりだろう。
ハートフォードでは「リバレーター2022」発売と同時に、さらに2発セットのスペアカートリッジを販売する。こちらは880円(税込)。追加の弾薬は実銃同様リバレーターのグリップ底部に納めることが可能だ。実銃では10発予備弾薬が入るが、「リバレーター2022」は2発でいっぱいになってしまう。これは実銃と違い重さを増すためのウェイトがグリップ内部に仕込まれているためだ。
そして「リバレーター2022」を操作すると10発予備弾薬が入っていたとしても1発撃つごとにいちいちコッキングノブとカートストッパーを操作するというのは実戦的ではないな、というのが実感できる。安価で大量生産というのは実現したが、使いにくい拳銃であるということを身をもって確かめられるところがこの製品の魅力でもある。
引き金の重さはかなり重い。グッと引き絞ろうとすると銃口が下を向いてしまう。ライフリングがなく短い銃身でもあり命中精度もかなり低いだろうなということも想像できる。こんな実射能力に疑問のある銃が大量生産されるというところが面白いし、その設計思想、運用、結局使われずに大量廃棄という史実も味がある。優れた洗練された武器とはまた異なる、独特の魅力が手に持ち動かしてみることで何倍にも膨らむのだ。次ページでは火薬を使った発火と、ハートフォードのこだわりが満ちたパッケージをしっかり紹介していきたい。