レビュー
モデルガン「リバレーター2022」レビュー
2022年1月20日 00:00
重い引き金と、突き抜ける発射音が楽しい発火
モデルガンといえば"発火"である。カートリッジに7mm火薬を入れて発火をさせる。カートリッジのリム部分をハンマーが叩くという実際の銃と同じプロセスで、火薬を破裂させるのはモデルガンならではの楽しさだ。
コッキングノブを引き、カートストッパーを引き上げ、そこに弾頭部分を外したカートリッジをセット。カートストッパーを下げ薬室に弾丸入れ、コッキングノブを戻せば射撃準備完了だ。重い引き金をぐぐっと引くとコッキングノブが前進、ピンが弾丸の中央を叩くことで内部の火薬が爆発する。
「パーン」という音が気持ちよく響き渡る。再びコッキングノブを引いて捻り、カートストッパーを引き上げる。実銃の場合は薬莢が薬室内で膨らんでしまうので木の棒で押し出す必要があるが、モデルガンの場合は傾けるだけでカートリッジを取り出すことが可能だ。動画では3度の射撃を編集して収録している。モデルガンは発火がやはり楽しい。コッキングノブが銃身を叩く衝撃と同時に発生する発射音は気持ちいい。
「銃を構える楽しさ」も改めてここで触れておきたい。「リバレーター2022」の重さは約490g。ウェイトも入った銃はずしりと重い。ヘビーウェイト樹脂のフレームはつるつるとしていて、チェッカリングが刻まれた銃のグリップとは全く異なる。またハンドガードのむき出しのダイキャストの手触りはざらりとしていて、引き金の無骨さも相まって工具のような雰囲気だ。
銃を構える時は刑事ドラマや戦争映画、ゲームの場面など様々なシチュエーションが銃を構える自分と重なるのだが、「リバレーター2022」はなかなかそういうキャラクターが頭に浮かばない。この無骨で独特な武器を構える、使わなければいけないシチュエーションというのはどういうものか? レジスタンスか、廃棄処分の銃を手にしたアウトローか? 色々なストーリーを想像するのも楽しい。
ディズニーが手がけた説明書ももちろん付属! 開発者の強い思い入れが伝わる"復刻"パッケージ
製品紹介の場合、パッケージと同梱品は最初にさらりと紹介するのが定番だが、「リバレーター2022」のパッケージと同梱品は銃そのものに負けない強いこだわりなのでこちらでしっかりと紹介したい。
パッケージは段ボール製なのだがこれは実銃であるリバレーターが工場から出荷される際に銃を入れていたパッケージデザインそのものを再現したものだ。オリジナルは表面にリバレーターのイラストが描かれただけのシンプルなもので、「リバレーター2022」はこのイラストも再現している。側面に製品情報などを書いているが、オリジナルの逸話を知っている人にはニヤリとさせられるパッケージだ。
内容物もかなり楽しい。取扱説明書、サンドシート、木製のスペーサー、木製のダボ(棒)、そして"小箱"が入っている。取扱説明書、サンドシート以外は当時のリバレーターのパッケージに実際に入っていたものを再現しているという。箱を開ける前からリバレーターの世界にどっぷりと浸かれ、内容物を取り出すとまるで実銃を前にしたような強いこだわりに直面することになる。
特にこの"小箱"がうれしい。この小さな段ボールには弾薬と"マニュアル"が入っていた。このマニュアルはアメリカらしい合理的なもので、文字を一切使わず、イラストのコマ割りで銃の操作方法、弾丸の装填と発射手順、棒を使った銃の排莢までが描かれている。そしてこのイラストを手がけた人物こそ、「ウォルト・ディズニー」なのだ。リバレーターの逸話で欠かすことができない、「ディズニーが手がけたマニュアル」の複製を目の前にできるのは、リバレーター本体と同じくらい楽しい体験といえるだろう。
「大量生産の簡易銃」というリバレーターの背景を表現するには、その出荷されたパッケージそのものを再現する、というハートフォードのこだわりは思わず笑みが浮かんでしまう楽しい前のめりの姿勢がある。正直箱に収めるのに色々段ボールや部品がぶつかってこのパッケージはギチギチすぎるのだが、それも当時の生産者のこの銃への思い、「とにかくつくって出荷しろ!」といっているようで、味わい深い。
そしてオリジナルにない内容物として銃の背景から分解図、内容物まで解説した取扱説明書はもちろん、「サンドシート」がある。このサンドシートも非常に強いこだわりを感じさせるアイテムだ。
今回の「リバレーター2022」は「ナチュラルヘビーウェイト樹脂」のため黒い表面をしているがサンドシートで樹脂表面をしっかりこするとまるで金属のような光沢が生まれるのだ。ヘビーウェイト樹脂は金属を練り込んだ樹脂のため、研磨することで金属部分が表面に現われる。ヘビーウェイト樹脂のモデルガンはこの金属部分に反応する薬品を使って実銃さながらの雰囲気をもたらす「ブルーイング」という塗装を行なうことができる。ヘビーウェイト樹脂をヤスリでこするというのは、モデルガンの完成度をさらに上げる基本なのだ。
実銃のリバレーターは金属の地肌がむき出しになった銀色の表面をしている。「リバレーター2022」はナチュラルヘビーウェイト樹脂のため黒いという違いがある。サンドシートを使うことでより実銃の雰囲気に近づけられるよ、という開発者のメッセージなのである。ハートフォード代表のコネティ加藤氏も自身のブログで研磨した「リバレーター2022」の写真をアップして、「ぜひこうして欲しい」とメッセージを送っている。
リバレーターは実用拳銃としてはその能力が低く、大量生産だけが取り柄の、歴史に埋もれた銃である。大量生産品の設計の合理性、最低限の実射性能、実際の使いにくさ……。一方でしっかりパッケージされ、言語の違う外国でも使うことができる工夫など感心させられるところも多い。複雑な魅力を持った銃だ。だからこそ独特のロマンがある。「リバレーター2022」はそういった背景を学ぶだけでなく、手に持って実感できる。
本当に圧倒され、思わず楽しくなってしまう、むせかえるほどこだわりに満ちた製品だ。やはりその背景が面白いし、その背景をこだわりたっぷりに再現したこの製品が面白い。モデルガンは手がけるメーカーも少ないジャンルだが、こういった開発者のこだわりと、それを支えるファンがいる。ある意味、モデルガンの面白さを凝縮した製品とも言える。今後も注目していきたいジャンルである。