レビュー

エアコッキングスナイパーライフル「VSR-ONE」レビュー

隠密性と機動性を兼ね備えたアクティブスナイパー爆誕の予感!

 ではいよいよシューティングレンジでの実射とサバイバルゲームでの実戦を行う。発売日の4月15日と翌16日に、これまでも何度か利用させていただいた千葉県印西市の「東京サバゲパーク」に「VSR-ONE」を持ち込んだ。折からの台風1号接近により、15日は終日雨と強風、16日も朝方小雨という生憎の天候となったため最高のパフォーマンスを発揮するコンディションとは言いがたかったが、ポテンシャルは充分感じることができた。

・シューティングレンジ実射

【東京マルイ「VSR-ONE」、シューティングレンジでの射撃】

 雨と強風で、BB弾が微妙に流れてしまい、精密射撃には不向きな環境だったが、東京マルイのホップシステムによる弾道の安定性で充分試射が行えた。また、肌寒いぐらいの気温で、雨が降っていた。これだけ気温が低いとガス式であればガス圧の低下で作動が不安的になる。電動式だと雨中の使用は回路の漏電の恐れもある。そういう天候でも安定して射撃できるのはエアーコッキング式の大きなメリットと言える。

 BB弾を装弾したマガジンを装填し、撃ち始めると、まずコッキングの軽さ、連射のし易さに驚かされる。「VSR-10」も特許技術「シリンダーサポートリング」によってボルトアクションコッキングエアーのイメージが変わる引き易さだったが、より操作し易い。ポンプアクション式に匹敵するのではないかと思える連射性だ。

 構えやすさと相まって、立て続けにターゲットに狙いを定めて速射が可能となっている。コッキング式でありながら、30発をアッと言う間に撃ち尽くせるイメージなのだ。早くサバイバルゲームで使ってみたい、そう思わされた。

【シューティングレンジでの射撃】
シューティングレンジにて。40mを超える遠くの的はフロントサイトの陰になってしまって狙うのが難しかった
私物のズームスコープを載せた状態。今回は製品版のレポートなのであえて使わなかった

 また、当然のことながら弾道も安定している。横風に煽られながらも20~30m先のターゲットに弾幕を張れる実射性能を持っている。

 なお、「VSR-ONE」には、0.20g~0.28gのBB弾を使用できる。横風が強い場合や、遠くのターゲットを狙う場合はより重い弾を使った方が安定する。0.2g、0.25gを撃ち比べてみたが、ホップを適切に掛ければ20mぐらいでまでは大きな差は出ない様に感じた。30mを超える精密射撃であれば、重量弾が有効だろう。

・サバイバルゲームでの実戦

 ここで「VSR-ONE」でのサバイバルゲーム参加レポートの前に、コンパクトなスナイパーライフルの魅力について語っておきたい。現代では、スナイパーライフルと言えば大口径で高貫通力を備えた大型の物が標準となっている。長射程を利して、ターゲットの射程外からアウトレンジ戦法を採ることが多いのだ。

サバイバルゲーム場の筆者
東京マルイで製品化している「M40A5 ブラックストック / O.D.ストック / F.D.E.ストック」は、現代スナイパーライフルの代表だ

 1960年代~1970年代には、秘匿性の高い分解可能な小型ライフルを持ち運び、中~近距離で狙撃するスナイパーの作品が数多く創られた。中でも代表的なのが、1973年に世界的に大ヒットした、フレデリックフォーサイスの原作による「ジャッカルの日」である。

 「ジャッカル」と呼ばれる暗殺者が、フランスのドゴール大統領暗殺の為に松葉杖に偽装したボルトアクションライフルを使用し、センセーションを巻き起こした。何しろ半世紀前の映画にもかかわらず、YouTubeで2440万登録者数を誇る「WatchMojo.com」の「Top 10 Movie Snipers」でも、堂々9位にランクインしていることからも、その影響力はお解りいただけるだろう。

ジャッカルの日。名作スパイ小説で、1973年に映画化、画像はそのDVDジャケットだ。1997年にリチャード・ギア、ブルース・ウィリス主演で「ジャッカル」としてリメイクされており、こちらで知っている人も多いだろう。ただし、リメイクは原作小説とは大きく異なっている

 では「VSR-ONE」で実際にサバイバルゲームに参加してみよう。今回は残念ながら雨で断念したが、オートバイに積める量でサバイバルゲームに参加してみた。中型のスポーツバッグとリュックサックで、「VSR-ONE」の他に、サイドアームで電動コンパクトマシンガンの「スコーピオン」、ゴーグル、マスク、迷彩服上下などを持ち込めた。メインウェポンの長物がコンパクトで、BB弾と予備マガジンがあれば射撃可能なコッキングエアーの「VSR-ONE」ならではの身軽さだ。電車でも充分移動可能だ。また、都市部に多いセミオートオンリーの室内型ゲーム場であれば、さらにコンパクトにできるだろう。

 今回サバイバルゲーム場で弾速をチェックすると80m/s弱、ホップシステムと相まって必要充分な有効射程が得られるパワーだった。

今回使用した装備。コンパクトに収めた
初速はサバゲパークで用意しているマガジンと0.2gBB弾で80m/s弱
【東京マルイ「VSR-ONE」、サバイバルゲームで活用!】

 サバイバルゲームに実戦投入してみてまず感じたのが、とにかく機動性の良さだ。2kg程というガスブローバックマシンガンや電動ガンに比べてかなり軽く、かつ取り回しの良いコンパクトさで動き回れる。

 縦横無尽に移動できると言っても過言ではないぐらい、階段を登って狭い2階部分から狙撃したり、バリケードをすり抜けて突入したりとアクティブに動き回る爽快感は、およそこれまでのスナイパーの概念を覆せる。

 また、再三繰り返してきた連射性を兼ね備えた精密射撃もサバイバルゲームにおいては強みだ。高所から精密弾幕を張ったり、隠密性を活かして味方への支援射撃も可能になるのだ。

 今回スコープを使わなかったのは雨の戦場で防水スコープを持っていなかったこと。スコープを使うには照準と弾道を正確に調整するゼロインの作業に時間がかかることがある。また、スコープを使うと正確に的に当てやすくなって有利と思われがちだが、数十mで撃ち合うサバイバルゲームの場合、スコープで狙って撃つという戦い方が不利な場合もある。今回シューティングレンジで「VSR-ONE」を撃ってみて、「動き回って狙って撃つならスコープはなくても良いな」とも思ったのだ。一方でダットサイトなら、素早く敵が狙えるのでありかもしれない。

遮蔽物際や隙間などに対し、従来のスナイパーライフルでは不可能な動きができる

 この日はサバイバルゲームで活躍する近道である電動ガンを使わず、ボルトアクションエアーコッキングライフル「VSR-ONE」でスナイパーに徹してみた。

 セミオート限定でのゲームはもちろん、フルオート戦にも単発コッキング式で挑んだが、闘い方によって十分な戦果をあげることが出来た。具体的には、コンパクトな取り回しの良さを活かし、2階に登って射撃したり、連射している射線を迂回して側面を突いたりといった戦術である。時には、連射音を聴いて身を隠し、長いスナイパーライフル同様に待ち伏せする場合もあった。

 筆者はスナイパーという闘い方は、参加者が自由に装備や銃を選んで集まることで生じる、サバイバルゲームにおける非対称性、多様性の面白さの象徴でもあると思っている。今回「VSR-ONE」でスナイパーをやってみて、これまで待つことが多かったスナイパーに、起動性という新しい楽しさが加わったと感じた。

 「VSR-ONE」では、今までのスナイパーライフルではできなかった高軌道型狙撃という新しい戦術が採れることがお解りいただけると思う。

前へ出たいスナイパーライフル「VSR-ONE」でポストコロナを駆け抜けろ!

 東京マルイの新製品「VSR-ONE」は、コンパクトで持ち運び易い利便性に留まらず、サバイバルゲームや精密射撃での実用性も兼ね備えたボルトアクションエアーライフルだ。

 コッキングエアー式ボルトアクションというポピュラーな機構でありながら、モダナイズドされた拡張性と、コンパクトさが産み出すアクティビティに溢れた新しい価値観を持っている。

 使ってみて気付いた点としては、ノーマルでも充分戦力になるが、やはり拡張性を活かせばより強力なメインウェポンになり得るということだ。今回は手持ちのサイレンサーだけ使ったが、エアコッキング式の静粛性をより高めてくれた。

 今回使わなかった別売りパーツでは、特に「QDスリングスイベル」はマストアイテムだと感じた。

「QDスリングスイベル」2400円(税込)

 今回、ストックに手持ちのリグを付けて運用したのだが、折り畳む時に巻き込んでしまったり不便だった。ストック基部と前部に装着できるスイベルは必須だ。

 また、純正のサイトも悪くないが、やはり良く当たる銃だけにスコープが欲しくなる。接近戦では素早く狙えるダットサイトも有効だろう。今回は搭載しなかったが、付けていればより活躍できたはずだ。必要充分な実用性を備えているが、スコープやバイポッドを併用することでより長射程での精密射撃も可能なポテンシャルも秘めていると言える。サバゲーだけではなく「的当て」に特化してスコープの狙撃にこだわる遊び方も楽しそうだ。

東京マルイ公式動画での「てんこもり」バージョンなどを参考に好みのアイテムを付けていこう
拡張して自分だけのスペシャルウェポンを創る楽しさも大きい
サイドアームの「電動スコーピオン」をほとんど抜かなくても良いぐらい、オールマイティに対応した

 今回レビュー用に「VSR-ONE」を使ってみて、「ロープロファイルアクティブスナイパーライフル」という新カテゴリーと言っていい製品だと感じた。ロープロファイル、つまり取り回ししやすく、コンパクトで、そして積極的に動き回れる新しいスナイパー像の提示、と感じた。

 「VSR-10」は1m超の長さで、持ち運ぶにはライフルケースが必要だ。電車などで背負っていれば、視線を感じることもある。ストックを畳んで62cmほどの「VSR-ONE」を大きめのバッグにすっぽり収めていれば、ライフルを松葉杖に偽装させたジャッカルの気分も味わえる。サバイバルゲームにおいても秘匿性を活かして、長いスナイパーライフルが入れない場所、できない動きでの狙撃が行える。

 また、エアコッキングライフルを短くする場合、比例してシリンダーも短くすることが多いが、「VSR-ONE」は「VSR-10」と同じ容量を保ったまま、スナイパーライフルとしての狙撃性を維持している。それでいて、「VSR-ONE」はより連射性と撃ち易さを追求している。東京マルイはこれまでも、エアガンのバリエーション展開をする場合に基本性能は同じでもその銃のイメージによって味付けを変えてきた。

 「VSR-ONE」は「VSR-10」を踏襲した機関部だが、そのコンパクトさに応じて、機動性と中~至近距離戦での射撃を重視した味付けがなされたのだ。短い「VSR-10」ではない、「VSR-ONE」はロープロファイルアクティブスナイパーライフルという新基軸と感じた所以である。

 結論として「VSR-ONE」はコッキングエアーながら引き易く、操作性も極めて高いので老若男女使用できる製品だ。初めてのボルトアクションライフルとしても最適なのは言うまでもないが、持ち運べる長物が欲しかった都市型ユーザー、従来のスナイパーライフル愛用者、動き回りたいアクティブサバイバルゲーマーまで、幅広くお薦めできる製品となっている。

構えていて、撃ってみて楽しい製品だ