レビュー

モデルガン「プロテクター パームピストル」レビュー

19世紀末に生まれた奇抜なデザインの暗殺/護身用小型拳銃

【プロテクター パームピストル】

9月12日発売

価格:27,280円

全長:約130mm

重量:約275g(カートリッジ含む)

装弾数:7発(7mmキャップ火薬使用)

材質:ヘビイウェイト樹脂、亜鉛合金

 ハートフォードが9月12日に発売したモデルガン「プロテクター パームピストル」は非常に奇妙な形をしている。円形の胴体から銃身が突き出し、使用者はこの胴体を握り込むようにして使う。銃は親指の付け根辺りを押し当て、握り込むようにして押し込むことで作動する。拳銃の"トリガー"は通常"引き金"と和訳されるが、この銃のトリガーは他の拳銃とは大きく異なる機構となっている。

 弾は非常に小さいカートリッジが7発装填されている。筆者の周囲の銃に詳しい何人かの知人も「初めて見た」といっていたが、この銃は1882年にフランスで生まれ、1890年にはアメリカでライセンス生産されている実在の銃なのだ。

 モデルガン「プロテクター パームピストル」は実銃の機構を再現、7mm火薬をカートリッジに詰め発火も可能な商品だ。今回はこのモデルガンの魅力を取り上げていきたい。合わせて本商品を生み出したハートフォード代表・コネティ加藤氏にこだわりを聞いたメールインタビューも行った。併せて紹介していきたい。まずは火薬を作動させた発火動画からお見せしたい。

【響く火薬音! ハートフォード「プロテクター パームピストル」、手の中に収まる小型拳銃を作動させる】

護身用や暗殺要に有用な、従来とは大きく異なる機構を持つ拳銃をモデルガンに!

 実銃である「プロテクター パームピストル」は、フランスでジャック・タボア氏によって1882年に特許が取得されている。「西部を征した銃」といわれる「コルト・シングル・アクション・アーミー」が活躍しているのは1875年。この時代、"拳銃"の形はしっかり固まっている。その中でこの「プロテクター パームピストル」は手の中で握り込み、強く握ることで弾丸を発射するという非常にユニークなデザインをしている。

「プロテクター パームピストル」はユニークな形をした銃だ。手の中に握り込むことでトリガーが作動し弾丸が発射するという射撃方法も独創的。19世紀後半は様々なデザインのリボルバー拳銃が生まれ、色々な機構が試されたが、その中でも特異な設計と言えるだろう
パームピストルが使うカートリッジは左側の小さなもの。中央が.38スペシャル弾、右が.45ロングコルト弾。火薬の総薬量も非常に少ないのがわかる。パームピストルは威力もそれほど高くなかったと想像できる

 丸い胴体の中には7発の弾丸が放射状に配置されていて、中央にハンマーがある。握り込むことでダブルアクションの拳銃のようにハンマーが引かれた後リリースされ、勢いよくカートリッジの尾部を叩き発火薬を作動させ、銃弾が発射される仕組みだ。

 一見銃には見えない外見は、懐中時計のようにチェーンを付けて懐に入れての運用を想定しているという。小ささもあって銃として気づかれない秘匿性もあり、"プロテクター"の名前で護身用を名乗りながらも暗殺にも使われたのではないか? と想像させられる銃だ。

 弾丸は通常の拳銃弾と比べても小さく、射程距離、正確さ、威力は期待できないが相手をひるませたり奇襲用にはもってこいだ。西部開拓時代の小型銃としては「デリンジャー」が有名だが、デリンジャーが他の銃でも使用する拳銃弾を使うのに対し、パームピストルは非常に小さな弾であるところと、装弾数が違う。デリンジャーの装弾数はわずか2発。威力が大きい弾を2発装備するデリンジャーと、小威力の弾丸を7発装填できるパームピストルは銃の運用方法でも大きく異なるだろう。

写真はマルシンのエアガンのデリンジャー。西部開拓時代の小型拳銃として有名なデリンジャーは拳銃弾を2発装填できる。こちらも射程距離や命中精度などはあまり期待できないが、小型拳銃には独特のロマンがある

 小さなボディで大きな弾丸を撃つデリンジャーは反動も大きそうだが、パームピストルの場合弾丸が小さく、手の中でしっかりと握り込むので、近距離ならば当てやすかったかもしれない。こういった想像を膨らませるところも面白いところだ。

 モデルガン「プロテクター パームピストル」は、安全装置がついているのが特徴。この部分を握っておかないと尾部のトリガーが作動しない。この安全装置と32口径カートリッジを7発収納する仕様は、ライセンスを受けアメリカで1890年にシカゴ・ファイアーアームズが製造・販売したモデルで、ハートフォードはこのタイプを再現している。

 ハートフォードは「マニアック・レプリカモデルガンシリーズ」の一丁としてこのモチーフを選んだという。シリーズのコンセプトは「製造数が極端に少ない銃」、「マニアックすぎてメーカーがやらないような銃」、「変わり種銃」などで、弊誌が以前取り上げた「リバレーター」もシリーズの1つ。他にもコルトM1860アーミーを銃身を切り詰めて小型化した「ギャンブラーズ・モデル」や、ウォーカーからドラグーンへの過渡期モデルの「ホイットニービルドラグーン」などがある。

ハートフォードの「マニアック・レプリカモデルガンシリーズ」の一丁である「リバレーター」。"工場で大量生産できる拳銃"という開発背景も設計もユニークな銃だ

 次章では「プロテクター パームピストル」の細部や内部機構を細かく見ていこう。

7発の弾丸を収納したシリンダーの中央にハンマー、ユニークな内部機構

 モデルガン「プロテクター パームピストル」は銃口からトリガーまでが約13cm、ボディの丸い部分の直径が6.5cm、厚みが2.4cm、重さが275g。本体は金属を練り込んだヘビーウェイト樹脂を使い、内部には金属パーツを使用している。

 中央とトリガーの茶色いところも樹脂部品を使っている。細かいチェッカリングが入っていて、特にトリガー部分は握り込むときに滑り止めの役割をして手のひらにひっかかり射撃をスムーズにしてくれる。円筒形のボディには3つの突起があり、しっかりと指で銃をホールドすることができる。手の中にすっぽりと収まり、握りやすい。

【外観】
黒光りする銃身。銃口からはインサートが見える
中指で握り込むセイフティ。このセイフティを握り込んでおかないとトリガーが動かない。1890年にシカゴ・ファイアーアームズが製造・販売したモデルの特徴の1つだ
トリガーを押し込むことでハンマーが動作、弾丸が発射される
ボディ中央には刻印がある

 突き出した銃身はしっかり磨かれたヘビーウェイト樹脂で金属のような質感がある。のぞき込むことでモデルガンの特徴であるインサートが見える。銃身、円筒形のボディ、曲線を描くトリガーと、改めてみても独創的なデザインで、「小型拳銃だ」といわれればなるほどと思うが、前知識がなければこれがなんなのかわからないだろう。とても面白いデザインだし、拳銃をこのような形にしようと発想するところが面白い。

 「プロテクター パームピストル」は片側の蓋が外れる。蓋を外すことでカートリッジを収めているシリンダーを取り出すことが可能になる。そのままだとシリンダーはハンマーによってロックされているので、トリガーを押し込みハンマーを浮かせた状態であいた部分を下にして上下に振るとシリンダーが外れる。

 シリンダーには7発のカートリッジを装填できる。カートリッジは真鍮製で金色に輝く。尾部には発火薬のモールドが入っているのが楽しい。実銃ではこの発火薬をハンマーで叩くことで薬莢内部の火薬を爆発させ弾丸を発射するのだ。金属薬莢と発火薬という発明があったからこそこのような小型の薬莢、そしてそれを使用する小型拳銃が生まれたというのがよくわかる。

 モデルガンではカートリッジに7mm火薬を装填し発火させることができる。カートリッジはシリンダーの内側から挿入する。シリンダーの外縁にはピンが仕掛けられており、カートリッジを瞬間的に強く押すことでこのピンに火薬が押しつけられ爆発する仕組みだ。

【シリンダーとカートリッジ】
蓋は回転させることで外れる
トリガーを少し押し込むことでハンマーのロックが外れ、シリンダーを取り外せる
シリンダーには7発のカートリッジを収納可能。中央部分から外側に向かって挿入する
カートリッジ。尾部には発射薬のディテールが入っている
7mmのキャップ火薬を使用可能

 ちなみに、「プロテクター パームピストル」はシリンダーを本体に入れるときが難しい。カートリッジはシリンダーの奥までしっかりと入れ込まないとはまらないのだが、シリンダーをはめ込むとき傾けてしまうとカートリッジが滑り落ちてしまう。このためシリンダーは水平になっているか注意が必要だ。ちょっと傾くだけでカートリッジがずれてしまったりする。

 これは実銃でもシリンダーの装着には苦労したんじゃないかな、と思ってしまう。こういった「実銃の苦労」を感じさせられるのもモデルガンの面白いところだろう。デザイン上素早い再装填も難しい。この機構が大きく普及しなかった理由であるかもしれない。

 内部機構に話を戻そう。「プロテクター パームピストル」は押し込むだけでハンマーが引かれ、シリンダーが回転、押し続けることでハンマーが解放されカートリッジの尾部を叩くダブルアクション方式だ。トリガーを作動させるだけで連続発射が可能になっている。

 「プロテクター パームピストル」の面白いところはこの仕組みを極めて"薄い"機構で実現していることだろう。シリンダーが入っている円筒形のボディ内部でシリンダーを回転させ、ハンマーを引き、リリースする機構を実現している。今回シリンダーを外した状態で機構の作動を録画してみた。動画を見ることで中央のハンマーが作動しているのが確認できる。この機構の設計も「プロテクター パームピストル」の見所だ。

 次ページではコネティ加藤氏へのメールインタビューを紹介したい。「プロテクター パームピストル」における加藤氏のこだわりポイントはどこだろうか?

【内部機構】
薄い金属板で作られた内部機構で、ハンマーの作動や、シリンダーの回転を行う。懐中時計を思わせるメカニズムだ。モデルガンで苦労したポイントの1つとのこと
【ハートフォード「プロテクター パームピストル」、ハンマーを動作させる内部機構】