レビュー
モデルガン「プロテクター パームピストル」レビュー
19世紀末に生まれた奇抜なデザインの暗殺/護身用小型拳銃
2023年9月30日 00:00
- 【プロテクター パームピストル】
- 9月12日発売
- 価格:27,280円
- 全長:約130mm
- 重量:約275g(カートリッジ含む)
- 装弾数:7発(7mmキャップ火薬使用)
- 材質:ヘビイウェイト樹脂、亜鉛合金
ハートフォードが9月12日に発売したモデルガン「プロテクター パームピストル」は非常に奇妙な形をしている。円形の胴体から銃身が突き出し、使用者はこの胴体を握り込むようにして使う。銃は親指の付け根辺りを押し当て、握り込むようにして押し込むことで作動する。拳銃の"トリガー"は通常"引き金"と和訳されるが、この銃のトリガーは他の拳銃とは大きく異なる機構となっている。
弾は非常に小さいカートリッジが7発装填されている。筆者の周囲の銃に詳しい何人かの知人も「初めて見た」といっていたが、この銃は1882年にフランスで生まれ、1890年にはアメリカでライセンス生産されている実在の銃なのだ。
モデルガン「プロテクター パームピストル」は実銃の機構を再現、7mm火薬をカートリッジに詰め発火も可能な商品だ。今回はこのモデルガンの魅力を取り上げていきたい。合わせて本商品を生み出したハートフォード代表・コネティ加藤氏にこだわりを聞いたメールインタビューも行った。併せて紹介していきたい。まずは火薬を作動させた発火動画からお見せしたい。
護身用や暗殺要に有用な、従来とは大きく異なる機構を持つ拳銃をモデルガンに!
実銃である「プロテクター パームピストル」は、フランスでジャック・タボア氏によって1882年に特許が取得されている。「西部を征した銃」といわれる「コルト・シングル・アクション・アーミー」が活躍しているのは1875年。この時代、"拳銃"の形はしっかり固まっている。その中でこの「プロテクター パームピストル」は手の中で握り込み、強く握ることで弾丸を発射するという非常にユニークなデザインをしている。
丸い胴体の中には7発の弾丸が放射状に配置されていて、中央にハンマーがある。握り込むことでダブルアクションの拳銃のようにハンマーが引かれた後リリースされ、勢いよくカートリッジの尾部を叩き発火薬を作動させ、銃弾が発射される仕組みだ。
一見銃には見えない外見は、懐中時計のようにチェーンを付けて懐に入れての運用を想定しているという。小ささもあって銃として気づかれない秘匿性もあり、"プロテクター"の名前で護身用を名乗りながらも暗殺にも使われたのではないか? と想像させられる銃だ。
弾丸は通常の拳銃弾と比べても小さく、射程距離、正確さ、威力は期待できないが相手をひるませたり奇襲用にはもってこいだ。西部開拓時代の小型銃としては「デリンジャー」が有名だが、デリンジャーが他の銃でも使用する拳銃弾を使うのに対し、パームピストルは非常に小さな弾であるところと、装弾数が違う。デリンジャーの装弾数はわずか2発。威力が大きい弾を2発装備するデリンジャーと、小威力の弾丸を7発装填できるパームピストルは銃の運用方法でも大きく異なるだろう。
小さなボディで大きな弾丸を撃つデリンジャーは反動も大きそうだが、パームピストルの場合弾丸が小さく、手の中でしっかりと握り込むので、近距離ならば当てやすかったかもしれない。こういった想像を膨らませるところも面白いところだ。
モデルガン「プロテクター パームピストル」は、安全装置がついているのが特徴。この部分を握っておかないと尾部のトリガーが作動しない。この安全装置と32口径カートリッジを7発収納する仕様は、ライセンスを受けアメリカで1890年にシカゴ・ファイアーアームズが製造・販売したモデルで、ハートフォードはこのタイプを再現している。
ハートフォードは「マニアック・レプリカモデルガンシリーズ」の一丁としてこのモチーフを選んだという。シリーズのコンセプトは「製造数が極端に少ない銃」、「マニアックすぎてメーカーがやらないような銃」、「変わり種銃」などで、弊誌が以前取り上げた「リバレーター」もシリーズの1つ。他にもコルトM1860アーミーを銃身を切り詰めて小型化した「ギャンブラーズ・モデル」や、ウォーカーからドラグーンへの過渡期モデルの「ホイットニービルドラグーン」などがある。
次章では「プロテクター パームピストル」の細部や内部機構を細かく見ていこう。
7発の弾丸を収納したシリンダーの中央にハンマー、ユニークな内部機構
モデルガン「プロテクター パームピストル」は銃口からトリガーまでが約13cm、ボディの丸い部分の直径が6.5cm、厚みが2.4cm、重さが275g。本体は金属を練り込んだヘビーウェイト樹脂を使い、内部には金属パーツを使用している。
中央とトリガーの茶色いところも樹脂部品を使っている。細かいチェッカリングが入っていて、特にトリガー部分は握り込むときに滑り止めの役割をして手のひらにひっかかり射撃をスムーズにしてくれる。円筒形のボディには3つの突起があり、しっかりと指で銃をホールドすることができる。手の中にすっぽりと収まり、握りやすい。
突き出した銃身はしっかり磨かれたヘビーウェイト樹脂で金属のような質感がある。のぞき込むことでモデルガンの特徴であるインサートが見える。銃身、円筒形のボディ、曲線を描くトリガーと、改めてみても独創的なデザインで、「小型拳銃だ」といわれればなるほどと思うが、前知識がなければこれがなんなのかわからないだろう。とても面白いデザインだし、拳銃をこのような形にしようと発想するところが面白い。
「プロテクター パームピストル」は片側の蓋が外れる。蓋を外すことでカートリッジを収めているシリンダーを取り出すことが可能になる。そのままだとシリンダーはハンマーによってロックされているので、トリガーを押し込みハンマーを浮かせた状態であいた部分を下にして上下に振るとシリンダーが外れる。
シリンダーには7発のカートリッジを装填できる。カートリッジは真鍮製で金色に輝く。尾部には発火薬のモールドが入っているのが楽しい。実銃ではこの発火薬をハンマーで叩くことで薬莢内部の火薬を爆発させ弾丸を発射するのだ。金属薬莢と発火薬という発明があったからこそこのような小型の薬莢、そしてそれを使用する小型拳銃が生まれたというのがよくわかる。
モデルガンではカートリッジに7mm火薬を装填し発火させることができる。カートリッジはシリンダーの内側から挿入する。シリンダーの外縁にはピンが仕掛けられており、カートリッジを瞬間的に強く押すことでこのピンに火薬が押しつけられ爆発する仕組みだ。
ちなみに、「プロテクター パームピストル」はシリンダーを本体に入れるときが難しい。カートリッジはシリンダーの奥までしっかりと入れ込まないとはまらないのだが、シリンダーをはめ込むとき傾けてしまうとカートリッジが滑り落ちてしまう。このためシリンダーは水平になっているか注意が必要だ。ちょっと傾くだけでカートリッジがずれてしまったりする。
これは実銃でもシリンダーの装着には苦労したんじゃないかな、と思ってしまう。こういった「実銃の苦労」を感じさせられるのもモデルガンの面白いところだろう。デザイン上素早い再装填も難しい。この機構が大きく普及しなかった理由であるかもしれない。
内部機構に話を戻そう。「プロテクター パームピストル」は押し込むだけでハンマーが引かれ、シリンダーが回転、押し続けることでハンマーが解放されカートリッジの尾部を叩くダブルアクション方式だ。トリガーを作動させるだけで連続発射が可能になっている。
「プロテクター パームピストル」の面白いところはこの仕組みを極めて"薄い"機構で実現していることだろう。シリンダーが入っている円筒形のボディ内部でシリンダーを回転させ、ハンマーを引き、リリースする機構を実現している。今回シリンダーを外した状態で機構の作動を録画してみた。動画を見ることで中央のハンマーが作動しているのが確認できる。この機構の設計も「プロテクター パームピストル」の見所だ。
次ページではコネティ加藤氏へのメールインタビューを紹介したい。「プロテクター パームピストル」における加藤氏のこだわりポイントはどこだろうか?