レビュー

「HG 1/72 ダンバイン」レビュー

令和の空にダンバインとぶ!曲線主体の造形の美しさが光る、リブート版ダンバイン

【HG 1/72 ダンバイン】

開発・発売元:BANDAI SPIRITS

発売日:2023年11月16日発送(1次予約分)

価格:3,850円

ジャンル:プラモデル

サイズ:全高約155mm

プレミアムバンダイ販売商品

 「聖戦士ダンバイン」の主役機「ダンバイン」のプラモデル「HG 1/72 ダンバイン」がプレミアムバンダイのホビーオンラインショップで発売され、昨年11月に1次予約分が発送された。価格は3,850円。

 ダンバインのプラモデルがBANDAI SPIRITSから発売されるのは、バンダイ時代の「HGAB ダンバイン」から実に23年ぶりのこと。この「HG 1/72 ダンバイン」には、近年の同社のプラモデル設計技術が導入され、ガンプラ以上に大きな進化を遂げることとなった。

「HG 1/72 ダンバイン」。2023年11月16日発送(1次予約分)。価格は3,850円。プレミアムバンダイ販売商品

 成形色による色分けや特殊技術による質感の表現、劇中の活躍シーンを再現できる広い可動範囲など、実際に組み立ててみることでその完成度の高さが明らかになった。ここでは11月に発送された1次予約分の製品版を使ったレビューをお届けしよう。

メーカーの金型改修の顛末があったダンバインのプラモデル。あれから41年が経過し、大きな進化を遂げた

 昨年放映40周年を迎えた「聖戦士ダンバイン」。異世界「バイストン・ウェル」へと召喚された主人公ショウ・ザマらが駆るメカ「オーラバトラー」は、宮武一貴氏や出渕裕氏がメカニックデザインを担当。曲線を主体として設定された機体は、随所に昆虫を思わせる意匠があり、それまでのロボットアニメのメカとは一線を画す美しさがあった。

【祝40周年「聖戦士ダンバイン」名場面ダイジェスト『ダンバイン とぶ』スペシャルPV】

 そんなオーラバトラーの立体化は、当時の技術では難易度がかなり高かったようで、バンダイからもプラモデルは発売されたものの、1983年5月発売のシリーズ第1弾「1/72 ダンバイン」はその完成度がユーザーから不評で、後に頭部や翅など一部パーツの金型が改修され、それを理由に一時的に品切れが続いたという話がバンダイ公式情報誌の「模型情報」(Vol.48 1983年8月号)に記されていた。筆者も前年の「戦闘メカ ザブングル」のプラモデルには大きな魅力を感じて実際に買ったり作ったりしていたが、ダンバインのプラモデルに関しては、パッケージの完成見本を見た限りでは、食指があまり動かなかった記憶がある。

同梱の説明書には1983年発売の「1/72 ダンバイン」のパッケージとプラモデル完成品の写真があった
こちらは、昨年9月の全日本模型ホビーショーに展示されていた、2000年発売の「HGAB ダンバイン」

 その後プラモデルとしては、2000年に「MG 1/35 ダンバイン」と「HGAB ダンバイン」が発売され、作品放映から40年が経過した2023年に、同じ1/72スケールでリブートされたこの「HG 1/72 ダンバイン」が発売となった。BANDAI SPIRITSはサンライズ作品のプラモデルを特集する「サンライズプラモコレクション」の特設サイトを立ち上げていて、このダンバインを含む9作品の新作/再版のプラモデルを特集している。

 届いた商品を手にしてまず驚いたのはパッケージだ。41年前に開田裕治氏がイラストを手がけた「1/72 ダンバイン」のパッケージをオマージュしたデザインで、森下直親氏による描き下ろしイラストのタッチや全体の色使い、文字フォントの書体なども当時のものに近い近い内容でレイアウトされているのだ。プレバン販売商品のパッケージは商品写真を使った単色のものも多いので、手にしたファンにとってこの仕様は嬉しい限り。

「HG 1/72 ダンバイン」パッケージ。イラストは森下直親氏が担当。そのデザインに懐かしさを感じた人もいるはず
オーラコンバーターなど、大きめのパーツもあるため、パッケージはかなり厚みがある

 パーツには現代の最新技術が投入されていて、鏡面仕上げでありながら透けて見える「ハーフミラーメッキ」を施したE2パーツ、パール素材を混ぜた集光樹脂で成形されたE1パーツなどが用意され、完成後の質感を高めている。

A1パーツ、A2パーツ
B1パーツ、B2パーツ
C1パーツ、C2パーツ
D1パーツ、D2パーツ
E1パーツ、E2パーツ、シール、リード線
集光樹脂を使ったE1パーツ。光に当てると翅の翅脈(しみゃく)がよく見える
E2パーツはクリア樹脂に特殊なメッキを施したものだ

新素材や色分表現で進化した最新のダンバイン

 最初に組み立てる頭部は、形状やパーツの色分表現に強いこだわりが感じられる。合計7パーツで、眼、マスク、額の模様、側頭部のラインなどが組み立てるだけで表現される仕組み。40年前に発売された同じ1/72スケールのダンバイン頭部が改修された顛末を知っていると、この仕様はとても感慨深いものがある。

頭部の組み立て。中心のパーツに眼やマスクを取り付けていく
頭部下側の装甲を取り付ける
頭部上側の装甲に額の模様のパーツを取り付け
上側の装甲を取り付ける
アンテナの下側のパーツを取り付けて完成

 胴体の腹部は、ダンバインのコクピットがある場所。組み立てると隠れてしまうものなのに、内部メカが表現されているのはBANDAI SPIRITSの商品らしい作り込みだ。キャノピーは前述のハーフミラーメッキを施したパーツで、組み立て時に工具などで傷を付けないように注意したい。

首のパーツを組み立て
首パーツを組み込んで胸部組み立てていく
首回りと肩関節の組み立て
装甲のラインにはシールを貼る
背中の装甲と中央のパネルを取り付け
腹部の組み立て。コクピットのシートらしきディテールが見える
キャノピーの下部のパーツを取り付け
胸部のジョイントに腹部を取り付ける
胸部にキャノピーのパーツを取り付ける

 腕は手首以外左右共通で、同じものを2個組み立てる。肩に見えるパイプはリード線で、組み立て自体は難しくないが、中に極細のワイヤーが入っているため、切るには金属が切れるニッパーかカッターナイフを使うようにしたい。腕もまた肩の模様を表現するための設計がよく考えられている。完成後の各所の模様にも注目いただきたいところ。

腕は肘から組み立て。二重関節になっている
肘の装甲を取り付ける
爪を手首のジョイント部分に取り付けて組み立てる
肘関節と装甲を取り付ける
付属のリード線は実測84mm。半分に切って使用する
肩の装甲の穴にリード線を通しておく
関節を組み立てて取り付ける
肩内側の模様のパーツを取り付け
肩のボールジョイントと上腕を取り付け
上腕を取り付けて腕が完成。同じものをもう一つ作る
手首を組み立てて取り付ける