レビュー

「KRISS VECTOR ガスブローバックモデル」レビュー

電動に続きリリースされた実銃同様のアクションを楽しめるガスブロモデル

【KRISS VECTOR ガスブローバックモデル(JASG認定モデル)】

2023年12月20日 発売(セカンドロット2024年2月下旬発売予定)

価格:85,800円

全長:616mm/396mm(折りたたみ時)

銃身長:120mm

重量:実測2,815g(空マガジン含む)

弾丸:6mm BB

動力源:専用ガス

装弾数:60発

 「KRISS VECTOR」は電動ガンモデルが2017年に発売されサバイバルゲーマーから人気を博しているが、それに引き続き待望のガスブローバックモデルがリリースされ、実銃同様のアクションを楽しめるなど熱心なファンから熱い注目を集めている。今回LayLaxより本製品の実機を借用したので、スペック、外観、性能などについて徹底レビューをお届けしよう。

 LayLax(ライラクス)は、実銃を開発したKRISS USAのエアソフトブランド「KRYTAC」よりガスブローバックガン「KRISS VECTOR ガスブローバックモデル(JASG:日本エアースポーツガン協会認定モデル)」を2023年12月に発売。既に第2ロットの2024年2月下旬発売も予定されている。

 それでは早速レビューに入る。なお、本稿では製品の外観や機能の詳細から確認していき、最後に実射性能についてみていく。

そもそも実銃の「KRISS VECTOR」とは?

 「KRISS VECTOR」はKRISS USAによって開発されたサブマシンガン。V字型機構により反動の伝達を下に逃がす独自の吸収システム「KRISS SUPER V」を採用しており、リコイルを効果的に制御できると謳われている。ただ実際には、銃身とグリップが一直線上に並ぶレイアウトのほうが、リコイル制御に大きく貢献しているとされている。

 「KRISS VECTOR」が一躍有名になったのが、映画「バイオハザードV リトリビューション」の1シーン。ストックレスの「SDP」モデルを、アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が軽々と振り回すシーンがあまりにも印象的。筆者自身もその未来的なルックスに目を奪われてしまったひとりだ。

 実銃については、ほかのサブマシンガンに比べて重く、銃身が短いため射程距離が短い、そしてなによりも高価であるという弱点もあるが、そのデザイン性は唯一無二。バイオハザードVは記事執筆時点においてNetflixで配信されているので、興味のある方はぜひご覧いただきたい。「KRISS VECTOR」が活躍するシーンは36分以降だ。

画像は今回レビューするKRYTAC製「KRISS VECTOR ガスブローバックモデル」
「バイオハザードV リトリビューション」より

初速は日本向けが最大85m/s、ガスは「HFC134aガス」を使用

 「KRISS VECTOR ガスブローバックモデル」は、JASG認定モデルのエアソフトガン。動力源は海外モデルではグリーンガス/CO2を利用とされているが、日本国内モデルでは「HFC134aガス」を使用する。

 全長は伸長時で616mm、ストック折りたたみ時で396mm。重量は本体が実測2,394g、マガジンが実測420g、合計実測2,815g。ボディーはアルミニウムのスケルトンフレームを備えた、繊維強化プラスチックで作られており、高い剛性を実現している。

 銃身長(インナーバレル)は120mm、内径は6.05mm。23段階のホップアップ調整システムを採用。専用マガジン(7,480円)には60発の6mm BB弾を装填可能だ。初速は日本とイタリア向けが最大85m/s(0.73ジュール)、イギリス向けが110m/s(1.24ジュール)、それ以外の販売国では120m/s(1.45ジュール)に設定されている。

 実銃同様の装備も充実しており、ボタンを押すだけで折り畳めるフォールディングストック、両利き用のセレクター、折りたたみ可能なフロント・リアサイト、上面に実測33cmのピカティニーレール(32スロット)、ハンドガード左面・下面には実測8.5cmのピカティニーレール(7スロット)が用意。下面のピカティニーレールは取り外し可能だ。

 なおLayLaxからはKRISS VECTOR用のさまざまなカスタムパーツが販売されている。インナーバレルなど電動ガンの内部機構に依存するパーツは利用できないが、外観を彩るハンドガードやストックは利用可能。購入する際にはLayLaxの問い合わせフォームから確認してほしい。

左側面
右側面
前面(左)と背面(右)
上面(上)と下面(下)
マガジンの前面・前面(BB弾フルチャージ)・背面・左側面・右側面
マガジンの上面と下面
本体の重量は実測2,394g
マガジンの重量は実測420g
製品パッケージ

実銃を想起させるリアルな操作感が心地いい

 それでは各部を見よう。グリップの径は実測で13.6cm。左右側面には滑り止め加工が施されており滑りにくい。比較的手が小さな方でも握りやすいグリップに仕上げられている。

重量に耐えられるのであれば、片手でもしっかりとホールドできるグリップだ

 セレクターはセーフティーとファイアーセレクトのふたつを装備。ファイアーセレクトでは、セミオート、2点バースト、フルオートの3つが用意されている。どちらもアンビ仕様となっており、右構え、左構えのどちらのときも素早く操作できる。

節度あるクリック感が備わっているが、レバー自体が小さいので操作にはやや力が必要

 チャージングハンドルは折りたたみ式で、指3本ぐらいをしっかりとかけられ、操作しやすい。スライド時の適度な固さは実銃もこうなのだろうなと想像させるフィーリングだ。

レバーを離すと、チャージングハンドルがハンドガード側面を叩く。傷を付けたくない方は保護テープなどを貼っておくか、優しく戻すことをお勧めする
チャージングハンドルを引くとエジェクションポートが開く。電動ガンにはホップ調整ダイヤルを隠すカバーが備え付けられているが、ガスブローバックモデルには存在しない

 アウターバレル先端は14mm逆ネジ仕様で肉厚のネジカバーが装着されている。ハイダーは同梱されていないが、好みのハイダーを取り付けられる。もちろん14mm逆ネジに対応するサイレンサー、トレーサーを装着可能だ。

電動ガンでは装備されていたハイダーは実銃イメージに近づけたマズルプロテクターになっている
アウターバレルすぐ奥に金色のインナーバレルが見える。色合いからして真鍮製と思われる

 ハンドガード部には前述のとおり、実測8.5cmのピカティニーレール(7スロット)が装着。右側にはレールは装備されていないが、ネジ穴はあるので移動することは可能。装着する装備の種類によって、さまざまなカスタマイズができるわけだ。

握りやすさを重視するなら左側面のピカティニーレールははずしてしまおう

 フロントサイトは上下の調節機構、リアサイトは左右の調節機構を備えている。またリアサイトについては穴の大きさを2種類から選択できる。折り畳んでしまえば、高さは14.2mmに収まるので光学サイトを邪魔しない。ドットサイト、スコープが万が一トラブルを起こしたときのためにも、ゼロインした状態で装着しておきたい。

フロントサイト
リアサイト

 グリップカバーを開くと、なかにはホップアップ調整ツールが収納されている。ホップ調整ネジはハンドガード上面の穴のなかに設けられており、時計回りでホップ(強)、反時計回りでホップ(弱)となる。クリック感があるので感覚的に操作しやすい。ただしスコープなどを装着した際には配置的に操作しにくくなるので注意。

グリップカバー内部にホップアップ調整ツールが収納。ウレタンでしっかりと固定されている
ホップアップ調整ツールの短いほうを使えばスコープを装着したままでも調整できるように見えるが、レールに当たるので回転させられない

 ストックについては電動ガンとまったく同じものが装着されている。LayLaxから販売されているストックベースをそのまま使用可能と思われる。M4用ストックパイプを装着すれば、自分好みのストックでカスタマイズを楽しめるわけだ。

ストックは形状、操作感ともに電動ガンのものとまったく同じ。金属製のスリングループも装着されている
標準ストックはボタンを押すだけで折り曲げ可能。全長が220mm短くなるので、CQBエリアなどではコンパクトに構えられる
ストックは右側面のツメに引っかけることでしっかりと固定可能。少し持ち上げるだけで素早く展開できる

 刻印・印字は、ハンドガード左右側面、ストック左側面、ボルトリリースレバー下、ロアレシーバー左右、ロアレシーバー下面に印字されている。実銃には存在しない印字もあるが、どうしても気になる方はカスタマイズしてほしい。

「KRISS」ロゴはハンドガード左右側面と、ストック左側面に刻印されている
ボルトリリースレバー下にシリアルナンバーが印刷
ロアレシーバー左に「KRYTAC OFFICIAL LICENSED PRODUCT」、右に「MANUFACTURED IN TAIWAN」の刻印を発見できる
ロアレシーバー下面に「JASG LAYLAX」の文字を配置。日本向けモデルの証だ

冬場に実用的に動作させるためにはマガジンウォーマーが必要

 それではお待ちかねの実射テストを始めよう。ただ最初に注意喚起しておきたいことがある。それはガスボンベの互換性。今回LayLaxよりふたつのマガジンを借用したが、どちらのマガジンでも東京マルイの「NEWガンパワーHFC134aガス(400g)」では、口からガスが洩れてフルチャージできなかった。LayLaxの「satelliteハイバレットガス ガスボンベ HFC-134a」では正常にガスを注入できたので、ガス注入口に相性があるのかもしれない。

複数の「NEWガンパワーHFC134aガス(400g)」を試してみたが、ガス洩れが発生した。なんらかの相性問題がある可能性が高い
「satelliteハイバレットガス ガスボンベ HFC-134a」であれば正常にガスを注入可能
ガス未注入時のマガジンの重量は351g
ガスフルチャージ時のマガジンの重量は444g
BB弾は前面からロードする。一般的なBBローダーを使えるので装填は容易だ

 さて今回のレビューはガスブローバックモデルには不利な冬に実施している。まずエアコンをつけた室内(室温23.5℃、湿度39.6℃)でテストを行なった。マガジンには事前にガスをフルチャージし、ある程度室温に馴染ませた状態(表面温度22.8℃)でセミオート射撃してみたが、2発までは発射できたものの、3発目以降はブローバックのストロークが足らなかったためか給弾できなかった。

まずはエアコンをつけた室内(室温23.5℃、湿度39.6℃)で実施
マガジンの表面温度は22.8℃
1発目の初速は53.4m/s、2発目の初速は56.7m/s(BB弾は0.20g)。3発目以降はブローバックのストロークが足らず給弾できなかった

 そこで今度は「食器乾燥機」を使用して、マガジンを表面温度30.8℃まで温めてセミオート射撃したところ、10発で初速は最大76.5m/s、最低72.0 m/s、平均74.4 m/sという結果となった(BB弾は0.20g)。室温23.5℃であればマガジンウォーマーなどを併用すれば、ある程度実用的な動作性を得られるわけだ。

筆者がマガジンウォーマー用に利用している「食器乾燥機」でマガジンを温めてみた
マガジンを表面温度30.8℃まで温めている
10発セミオートで発射した際の初速は、最大76.5m/s、最低72.0 m/s、平均74.4 m/s(BB弾は0.20g)

 つぎに同じ条件でフルオート射撃したところ、33発までは発射できたが、それ以降はブローバックのストロークが足らず給弾できなかった。マガジンウォーマーなどを併用したとしても、フルオート射撃時にはプレーヤーがある程度加減する必要があることになる。

フルオート射撃は33発で止まってしまった。初速は最大56.3m/s、最低0.2m/s、平均38.0m/sとなった。連射速度は後半で14.5~15.1rps
フルオート射撃直後のマガジンの表面温度は22.6℃。このぐらいの温度が実用的に動作するか否かの分かれ目となるようだ

 最後に屋外での弾道をみていく。使用したBB弾は東京マルイの「ファイネストBB 0.25g弾」、ガスはLayLaxのブランド「satelliteハイバレットガス ガスボンベ HFC-134a」。気温は14.8℃、湿度は21.7%。フィールド内のマガジンウォーマーを使用してマガジンを温め、表面温度がおおよそ30~35℃の状態でセミオート射撃している。

 今回は30メートルの距離にあるマンターゲットの胸中央を狙ってセミオート射撃したが、おおむね良好な弾道を確認できた。かなり風は強かったが、数発撃てばマンターゲットを狙える精度を備えている。何発か大きくずれている弾道もあるが、今回の状況ではいたしかたないと言えよう。

 ただ、室内よりもさらに低い気温はガスブローバックモデルには厳しかったようで、今回もセミオート射撃で撃ちきることができなかった。機会があればもう少し気温が暖かくなったときに再度試射してみたいところだ。

【「KRISS VECTOR ガスブローバックモデル」レビュー実射】

冬場は電動、夏場はガスブロと使い分ければ、両モデルのメリットだけを享受できる

 電動ガンに続きリリースされた実銃同様のアクションを楽しめる「KRISS VECTOR ガスブローバックモデル(JASG認定モデル)」。今回ガスブローバックモデルにはもっとも過酷な季節に試用したが、暖かくなれば30メートル先のマンターゲットを狙えるだけの素直な弾道を確認できた。これだけの精度があれば十分ゲームに利用できる。なによりガスブローバックモデルならではのリコイルは、電動ガンでは味わえない快感だ。

 冬場は電動ガン、夏場はガスブローバックと使い分ければ、両モデルのメリットだけを享受できる。「KRISS VECTOR」のファンであれば、ぜひとも電動・ガスの2丁を揃えたくなる魅力がある。