特別企画

「全日本選手権 東日本大会 タミヤRCカーグランプリ」レポート

瞬間的な加速と急減速、ライン取り……RCカーを楽しむ人達の見事なレース

9月27日開催

会場:タミヤ掛川サーキット

 タミヤは9月27日、静岡県掛川市のタミヤ掛川サーキットにて、「全日本選手権 東日本大会 タミヤRCカーグランプリ」を開催した。タミヤは毎年全国様々な場所で「タミヤRCグランプリ」の予選を開催し、東日本大会、西日本大会を経て全国で一番のプレーヤーを選出する。RCグランプリはRCカー愛好者にとって、憧れのイベントだ。

 しかし今年は新型コロナウィルス感染防止のためレースが自粛され、きちんと管理して開催できる「タミヤ掛川サーキット」で、東日本、西日本大会の開催となった。当面は静岡県内でのみRCカーグランプリの大会が開催されるという。

RCカーは瞬間的に時速30km以上に加速する。小さい車体も相まってその迫力はスゴイものがある

 タミヤ掛川サーキットは、“世界最大級の全天候対応サーキット”としてこちらもRCファン憧れの場所だ。筆者自身いつか取材をしたいと思っていたが、今回奇しくもこの掛川サーキットでの開催になった。

 イベントでは1人が複数のクラスにエントリーできるが、7クラスで250もの参加車がその鍛えられた技量を披露する、非常に見応えのあるレースが繰り広げられた。本稿ではこのイベントの模様をレポートしていきたい。

タミヤ掛川サーキットは雨の日でも走れる全天候型。その規模は世界最大級と言える大きなもの

様々なクラスでRCカーの魅力を満喫できるレース

 いささか個人的だが、筆者の年代40代後半から50代半ばは、「RCカーブーム」があり、RCカーに憧れがある。当時の金額で数万もするRCカーは子供には中々買えなかったが、ブームを受け低価格(それでも1万円以上)のRCカーも登場し、中高生はお年玉などお金を貯めて自分の“愛車”を手にする人も多かった。

 RCユーザーの憧れとして“タミヤRCグランプリ”があった。RCカーレース専用の舗装されたレース場で、高速で駆け抜けるRCカーの姿はものすごい魅力だった。ちょっとした空き地や、駐車場の隅などでちょこちょことRCカーを走らせる“普段の遊び”とは全く別次元の、RCカーのポテンシャルを最大限に活かした、F1レースさながらの風景は強い魅力があった。

本格的な道具など、今回集まった選手達は全力で趣味のRCカーを楽しんでいる。親子で来ている人達も多かった

 筆者より下の世代では「ミニ四駆ブーム」で、より間口が広く、親しみやすいレースが大きく流行るが、それでもRCカーレースの魅力は色あせない。自分のこだわりのマシンを、専用のレース場で思いっきり走らせる。RCカーは瞬間的に時速30kmを超えるスピードを出す。もちろんそんなスピードを出せば長いレースコーナーも一瞬で走り抜け、コースアウトしてしまう。

 選手達は素早く速度を切り替え、スムーズにコーナーを曲がり、長いコースを何周もして競う。1レースは3~4分ほど。決して長い時間ではないが、その時間は一瞬の気の緩みも許されない。非常に競技性の強い、本格的なレースだ。かといって専門的なスポーツのように限られた人しかできないようなものではなく、年配の人から小学生まで、練習すればスムーズに走れるようになる間口の広さを持っている。

 筆者は選手達の練習走行や予選を見てRCへの憧れを強く思い出した。とんでもないスピードで、急カーブ、連続カーブを超えていく。「こんな風に走れたら、すごく気持いいだろうな」と思った。もちろん特別にうまい人だけではない、荒い走りやスピードを出しすぎてしまう人もいる。しかし全体的にレベルが高かった。

【全日本選手権 東日本大会 タミヤRCカーグランプリ・フォーミュラーE予選】
予選でも選手達の“走りの本気”がしっかり伝わってくる。その素晴らしいドライビングテクニックは憧れを感じさせる

 それはやはり掛川サーキットという立地や、朝6時過ぎからの受付、8時前から練習走行というスケジュールもあって、熱心なRCファンが集まっていた、ということもあったと思う。筆者は前日に掛川駅周辺で宿泊し、朝早くに掛川駅からタクシーで15分ほどのこのタミヤ掛川サーキットに来たが、参加選手は自家用車や、チームで揃って会場に来ていた。本格的なバッテリーチャージャーを始め装備も揃っており、全力でRCカーを楽しんでいる人が多かった。

 話を聞いてみた数人は長くRCカーを趣味とする人達で、毎週のようにRCカーレース場で練習をしているとのこと。静岡にはこのタミヤ掛川サーキットだけでなく、タミヤサーキットなどもある。実は関東近郊にも調べると数カ所サーキットはある。「趣味」の人達はお気に入りのRCカーを作り込み、そしてレース場で練習を重ね、この会場に来ている。複数のRCカーを持って会場入りし、いくつかのクラスでエントリーしてその日1日思いっきりRCカーレースを楽しむそういう人が多かった。

クラッシックバギーではコース状にジャンプ台が。舗装道路であるため、セッティングもオフロードとは違うものに
ツーリンググランプリはレースマシンのシャーシ。そのスピード感は大迫力だ

 この「複数のクラス」というのが、タミヤのRCカーグランプリのとても見応えのあるポイント。レース向けマシンで非常に早いスピードでコースを駆け抜ける「ツーリンググランプリ」というクラス以外にも、舗装路でありながらオフロードカーで走り、コースに仕掛けられた数カ所のジャンプ台を超える「クラッシックバギー」、「コミカルバギー」。さらには3輪のバイクである「ライダー」シリーズが出走する「ライダーグランプリ」もあって、バラエティに富んでいる。

 今回は特に「フォーミュラーE」というクラスが注目である。このレースは8月末に発売された「1/10RC フォーミュラ E GEN2 チャンピオンシップカラー (TC-01シャーシ)」のみのクラスだ。この「TC-01シャーシ」はパーツの配置がこれまでと異なり、かつ非常にカスタマイズ性が高いという注目の新商品で、RCファンが強い期待を寄せている。今回のレースエントリーは全クラスで250程だったが、60エントリーという最大の参加があった。この新商品がRCファン達に活気を与えているのを強く感じた。

ボディを飾り立てるコンクールドエレガンス。こういった楽しみ方もある

車の性能を最大に引き出し、プレッシャーに打ち勝つ決勝戦

 ここからはいくつかの決勝戦の動画を掲載していきたい。非常に早くかつ見応えのあるレースをカメラでうまく追いかけるのは難しい。ちょっと目を離すと先頭を見失ってしまうが今回はレース結果よりもRCレースの面白さを取り上げたいと思う。

 今回注目したレースの1つが「コミカルバギー」。前輪と後輪の幅を狭くデフォルメしたバギーで、「マイティフロッグ」、「グラスホッパー」など、RCカーブームの時に人気のあったRCバギーをリスペクトした車種が多い。8月の新商品「コミカルアバンテ」はRCカーの人気も受けてミニ四駆にもなった車種で、コミカルバギーとなってもカッコイイ。コミカルバギーは急発進するとウィリーをするほか、走る場所を選ばないオフロードバギーであり、狭い場所で走らせても面白いので、人気が高い。

【全日本選手権 東日本大会 タミヤRCカーグランプリ・コミカルバギー決勝】

 一方で今回のようなRCカーレースでは難しさがある。ウィリーをしてしまうと曲がらなくなるためアクセルワークが重要だし、重心が高いのでカーブでのスピードは出せない。比較的初心者も挑戦しやすいクラスだが、それでも走りで気にする点は多く、腕の磨きがいがある。またジャンプ台もポイント。着地をきちんと決めなければ大きなタイムロスとなる。このため敢えてジャンプ台を回避するという選手もいた。こう言った点を注目して決勝戦の動画を見て欲しい。

 そして走る姿が面白い「ライダーグランプリ」である。こちらは車体そのものを大きく傾けて走るのでそのダイナミックな動きが楽しい。一方で切り返す時は重心が大きく動くため、車体の制御が難しくなる。他のレース以上に安定して走ることが難しい。バイクレースのカーブ時のダイナミックな動きをRCカーで表現するという本シリーズのコンセプトがとてもはっきり出ていて非常に見応えがある。

【全日本選手権 東日本大会 タミヤRCカーグランプリ・ライダーグランプリ決勝】

 もう1つが今回最大のエントリー数があった「フォーミュラーE」である。このレースは新商品のみのクラスだが、レース用のRCカーで高速レースを繰り広げるという「RCカーグランプリ」の本来の魅力を満喫できるレースである。

 改めてRCカーを趣味とする人達の熱意、その練習量を実感できるレース展開だ。レース用RCカーは瞬間的に時速30km以上まで加速できるが、直線はわずかしかない。カーブのための減速も極めて速い。実車ではできないような急加速と急減速、そして見事なライン取りだ。うまい選手の見事なカーブ対応は驚かされる。

 しかしそういった冷静なドライビングを続けられないのがレースである。後続車からのプレッシャーは凄まじい。どんなに冷静であることを言い聞かせてもほんのちょっとした判断ミスや、車の接触、縁石の乗り上げなどで車の挙動は乱れてしまう。レース時間の4分、選手達は凄まじい集中を強いられる。このギリギリの戦いの雰囲気を動画から感じて欲しい。

【全日本選手権 東日本大会 タミヤRCカーグランプリ・フォーミュラーE決勝】

 今回、筆者にとって初めての本格的なRCカーレースの観戦となった。やはりとても見応えがある。確かに敷居の高さはあると思うが、一方で気持ちよくコースを走れるだけでもとても楽しいだろううな、とも感じた。レースで優勝を狙う“ガチ勢”だけではなく、RCカーを趣味として、会場で愛車をいじり、複数のクラスに参戦し、楽しく走っている人達が多いと感じた。

 もちろんタミヤというRCカーにおける最大のメーカーの“お膝元”だからこそ、RCカーを楽しむ人達がここまで集まるという状況もあるとは思うが、とても楽しい体験だった。HOBBY Watchでは今後もRCカーレースを取りあげていきたい。最高の走りを見せてくれる選手達だけではなく、趣味として楽しむ人達の楽しみ方を取りあげ、RCカーそのものの魅力をもっと伝えていきたいと思う。

優勝者にはトロフィーが贈られる。勝者だけでなく、会場全体で「レースに参加するのが楽しい」という雰囲気が感じられた