インタビュー

手のひらに収まる、背広が似合う、高い射撃性能と隠密性が新しい楽しさをもたらす! 東京マルイ「コンパクトキャリーシリーズ」、広報・島村氏インタビュー

【固定スライドガスガンコンパクトキャリーシリーズ】

発売日・価格未定

【グロック17 Gen.4】

5月28日発売

価格:16,800円(税別)

 東京マルイが「マルフェスONLINE」で発表した「固定スライドガスガンコンパクトキャリーシリーズ(以下、「コンパクトキャリーシリーズ」)」。手のひらに収まる非常に小さいガスガン。今回は「LCP」と「ボディガード」の2機種が発表されたが、今後もシリーズとして展開するという。東京マルイの商品で、固定スライドの小型のガスガンはこれまでなかった。「コンパクトキャリーシリーズ」は東京マルイの新戦略だという。

 昨今、東京マルイが力を入れて展開していたエアソフトガンは、ガス圧で発射する毎にスライドが稼動する"ブローバックガスガン"や、バッテリーで安定したセミ/フルオート射撃が可能な上に、射撃時のリコイル(反動)を再現した「次世代電動ガン」に力を入れていた。しかし「コンパクトキャリーシリーズ」はあえてブローバックをさせず、シンプルにBB弾を発射するだけの固定スライドガスガンである。

 東京マルイが、2020年に改めて、固定スライドガスガンの「コンパクトキャリーシリーズ」世に送り出す意図は何なのか? 筆者はここに疑問を持った。今回も"デカ広報"こと、東京マルイ広報の、島村優氏に「コンパクトキャリーシリーズ」の魅力と狙いを聞いた。

 合わせて5月28日に発売されたガスブローバックガン「グロック17 Gen.4」の魅力にも迫ってみた。グリップのカスタマイズが大きな特徴の楽しいハンドガンだ。

向かって右「LCP」、左が「ボディガード」となる
弊誌でもおなじみの東京マルイ広報の島村優氏

昨今の盛り上がりもあって選択された、手のひらに収まる小型オート

 「LCP」と「ボディガード」はどちらも手のひらサイズで、グリップ部分などは手の中にすっぽりと隠れてしまう。「マルフェスONLINE」では島村氏がこの2つの銃を熱く語っている。印象的なのはやはり手に収まる小ささ。そしてマガジンやトリガーなどに金属を使うことで重量もあり、小さいながら本格的なガスガンというイメージだ。実際に手に握ってみると小ささと、本格的な武器としての雰囲気のない交ぜとなった感触が独特の魅力を感じさせる。

【新たにラインナップに加わる次期新製品を、詳しくご紹介!】

 「LCP」はいわゆる「小型オート」として、オートマチック拳銃をそのまま小型化したような、かなりスタンダードな三角形のフォルムだ。全体的に保守的でクセの無いデザインといえるが、ところどころ丸みを帯びているところが面白い。商品ではこの外見の特徴を忠実に再現している。握ってみると現在主流のオートマチック拳銃の太いグリップに比べると、圧倒的に手に馴染む。

 一方、「ボディガード」は、対象的にエッジの立ったデザイン。「威圧感のある無骨さがある。実銃ではレーザーサイトが標準装備されているだけあって銃身部の厚みもあり、モダンなイメージ。グリップの前後もやや幅があるが、それでもしっかり握れる。

【LCPとボディガード】
丸みを帯びた「LCP」と角張ったデザインの「ボディガード」。内部のメカシステムは共通のものだ

 かつて小型オートは、安価で玩具然としたチープな外見という製品も少なくなかったが、マットに仕上げられた黒いボディは、マルイスタンダードのガスブローバックと遜色ない高級感を漂わせている。スライド、フレームは別体で、各パーツも立体感あるモールドが施され、固定式だと言われなければ、思わずスライドを引いてしまいたくなる。「LCP」と「ボディガード」ともに目の前にすると、固定スライドガス式小型オートのイメージを刷新するかっこ良さがあるなと唸らされた。

 それぞれマガジンを抜いた状態で早速手にしてみると、想像以上に重みがある。固定スライドの小型オートは銃本体にガスを注入する事が多かったが、「LCP」、「ボディガード」ではダイキャスト制のマガジンにガスを注入する。

 BB弾の入っていない事を確認してマガジンを装填すると、さらに手に馴染む丁度いい重さとなる。家の中でもホルスターに銃を入れて生活して肩がこるというマニアの笑い話があるが、2丁携行しても苦にならず、それでいて「持ってる感」は満たされそうだ。

 全体はしっかり実銃から採寸しており一部にデフォルメがあるものの、おおむねリアルサイズとなっているとの事。一方、商品には、実銃には無いマニュアルセーフティ(安全装置)が組合の自主規制に準じて付いている。実は、「LCP」、「ボディガード」共にグリップ周りに若干のデフォルメを行なう事で、内部パーツとマガジンボディーの共通化を図り、コストダウンを可能にするためだ。トリガー、マガジンキャッチ(固定ボタン)は無論、内部パーツにも金属を多用して、強度を確保しつつ、手にした時にしっくりくる様に重さを稼いでいる。

 ここで島村氏は、「マルフェスONLINE」で”2つの銃のマガジン(弾倉)は共通”という発言を補足した。「『マガジン』には互換性はないです。ボディの部分は一緒なんですが、マガジンバンパー(底部)の位置が若干変わっています。なので"共通"という言葉はあくまでマガジンボディーのことで、それぞれ個別のマガジンが必要です」とのことだ。

 この仕様に関して島村氏は、「ダイカスト(合金成形)のマガジンのボディって、ガスブローバックは機種にあわせて金型を新しく作って時間もコストもかかるんですけど、このボディのところが共通であれば、使い回しができるのでコストダウンができ、開発スピードも早くなります。マガジンバンパーを変えるだけで済む様にしました。ただ、この先全てが共通と言うことでもありません」と、開発の意図を語った。

ダイカスト製のマガジン。樹脂製の底部に違いがある

 ここから「コンパクトキャリーシリーズ」発売の意図に迫っていこう。本来火薬で発射する銃のギミックを、安全な"玩具"としていかに再現するか? そこに各メーカーは力を入れてきた。最初期に生まれたのが、手動で縮めたスプリングの解放力を空気圧に変えてBB弾を発射するものである。この時は1発1発弾を撃つために準備が必要な単発式(コッキング式)であったが、1980年代に誕生したガス圧を利用するガスガンで半自動式(セミオート)の連射が可能になった。

 実銃の半自動式拳銃は「スライド」と呼ばれる上部が、火薬の爆発で前後して弾丸を給弾する仕組み(ブローバック)になっている。しかしガスガンが実用された当初は、スライドが動かず弾を撃ち出すので、弾を発射するという本来の機能そのものは問題が無かったが、「リアルではない」とされていた。実銃に憧れるユーザーにとって、物足りなさがあったのだ。

 そこでガス圧でスライドを動かす事でよりリアルにBB弾を発射しようとしたのが"ブローバックガスガン"で、東京マルイはおそらく世界で初めて「M59」を昭和61年にモデル化して発売した。一方で「ブローバックを再現しないエアハンドガン」としては、パワーソースをバッテリーとモーターによる電動化というポイントで進化していったため、東京マルイの固定スライドガスガンは2002年の「ソーコムMk23」を最後にかなり長い間新製品が発売されなかったのである。

 「何故今固定スライドで小型拳銃という、ユニークな新ジャンルに挑戦する事になったのか?」筆者がこの疑問をぶつけると、島村氏はまず、「コンパクトキャリーシリーズ」のモチーフとして「LCP」や「ボディガード」といった小型オートを選んだ理由について「実銃で.380ACP(弾丸のサイズ。9mm×17mm弾)のカテゴリーは何年も前から、かなり盛り上がってきてたんですよ」と話し始めた。

銃を構える島村氏。小型オートはサバイバルゲームの戦闘服より、背広姿が似合う

 「小型オートはかつては『PPK』(ワルサーの名小型拳銃)とか数えるほどしかなかったんですけど、護身用の銃、あるいは女性が持ちやすいという事で、ワーッと売れてきたのがこの4、5年の北米市場の実銃のトレンドでした。つい最近の『ショットショー』(北米の実銃の発表会)なんかでも各メーカー出してきてましたね」。

 「現在、このカテゴリー(.380口径の小型拳銃)はいっぱいあります。Kimber(北米)からSIG(スイス)他色々なメーカーがリリースしてますが、さらに女性受けするって事で玩具みたいな外観だったり、シルバーとかブラックのツートンとか原色のグリーンとかカラーバリエーションも豊富、本当に色々な機種があります」と言葉を重ねた。

 その中から「LCP」と「ボディガード」が選ばれたのは、新しいチャレンジの、「一番最初の顔」的な機種として最適、と判断された為との事。特に「LCP」は現状の実銃における.380隆盛をもたらした始祖という事で迷わず選定されているという。

 ここで島村氏は「コンパクトキャリーシリーズ」について、"実は4機種同時発売にしたかった"という驚くべき計画を話してくれた。「東京マルイにとっても新しいカテゴリーなんで、どーんと4機種見せたかったんです。小型だし、数があるほうがインパクトあるんで」ということで、「コンパクトキャリーシリーズ」のラインアップはさらに続くことが明らかになった。残り2種が何になるか、楽しみに待とう。

 「LCP」と「ボディガード」の実射性能に関しては、東京マルイの基本的なメカニズムとノウハウに基づき設計されており、心配無用とのこと。サバイバルゲーマーとしては気になるホップ(飛距離を伸ばすための回転)は固定式となっているが、「『マルフェスONLINE』では10mの試射でしたが、20mフラットで飛ぶのを目指してやってます。15から20mはスーッと飛ぶ弾が目標です」との事で、廉価なエアコッキングハンドガンシリーズでも実証済みの素直な弾道が思い描ける。パワーに関しては、小型化でもしっかり18歳以上用のものを採用している。サバイバルゲーマーなど実射性能を求めるユーザー向けの商品というわけだ。

セーフティをかけた状態

あえて選択した固定スライドは価格を抑えるため。コレクションの楽しさも

 モチーフについては理解できた上で、「何故固定スライドなのか? ブローバックは可能ではないだろうか?」という疑問をぶつけてみた。島村氏は「実は固定スライドのガスガンは人気が高いんです。特に、『ソーコムMk23』が、東京マルイの総てのアイテムの中でトップ10に入るぐらい売れ続けているという事があります。定価15,800円でガンケースとサイレンサーと(ライト)モジュールが付いててお得感がある、サバイバルゲームでハンドガンナーとして隠密行動を狙うには最高のウエポンっていう事もあるとは思うんですが、ガスの消費や故障も少ないという点で、根強い固定スライドが好きな人達が居るんだろうと思います」と答えた。

 しかし実はベストセラーならではの苦労もあったと島村氏は語った。東京マルイに限らず、固定スライド=危険な改造をされるイメージがあるという。それは改正銃刀法が施行される原因となったのがまさに他社の"固定スライド式ガスガン"だったからだ。実は東京マルイの「ソーコムMk23」は開発の段階、つまり改正銃刀法が施行されるはるか前から安全対策を厳重にほどこして、マガジン内のガスを無理矢理高圧にしたらガスが抜けるといった機構も入れていた。

 こういった対策にも気を配っているからこそ、東京マルイの商品は「安心」して使えるのである。しかしこういった苦労をする時代があり、固定スライド式ガスガンは、社内的にも、業界的にも、そして古くからエアガンに触れているファンにとっても、固定スライドガスガンのイメージが良くなかった時代があったとのことだ。こういった背景が、"東京マルイにとっての2000年代の固定スライドガスガン空白期"となったというのだ。

【ソーコムMk23】
ヒット商品となった固定スライドガスガン「ソーコムMk23」。サイレンサーやL.A.M.(=ライト・アタッチメント・モジュール)、ガンケースまでついて価格は15,800(税別)

 しかし、時代は変化した。様々なユーザーがエアガンを手にし、サバイバルゲームなどで楽しむ現在、もう1度、安価で親しみやすい固定スライド式ガスガンに挑戦しようと思ったという。そして「小型サイズ」という新しい価値観を盛り込んで、チャレンジしてみたくなったという。さらに小型サイズであれば、改造される恐れは少ない。安全面も考え、小型の固定スライドガスガンの開発というのが始まったという。

 「このサイズでブローバックさせようと思えば、出来なくはないです。でも開発にお金がスゴくかかりますし、価格に反映せざるを得ない。小型オートができました、はい、じゃあ値段は16,800円です……ってなったら、中々買っていただけない現実があります。これは日本のお客様の好みといえるもので、自動車でもなんでも同じカテゴリーであれば大きな物より小さい物はより安くないと納得されない。だから固定スライドで、価格を抑えて提供しようと考えました」と島村氏は答えた。

 つまりは固定スライドガスガンという、熟成されたがそのシンプルさ故に時代に翻弄された技術が、小型オートの隆盛という僥倖を得て誕生したのが、今回の「コンパクトキャリーシリーズ」シリーズという事になる。

 「値段はそんなに高くはしないです。2機種まとめて買う人がいると思いますし、皆さんが想像してるよりは安くしようと考えてるんで。イメージ的にはこれの半分ぐらいでは出したいな……」と、傍らの「ガスブローバック グロック17 Gen4」価格は16,800円(税別)を示し、「『マルフェスONLINE』でお客様から『1万円以下ですか』っていう声があったんですけど、1万円では全然高いです! 高過ぎる。スライドも動かさないんだし……
僕の今のイメージとしては7,000円以下。Webや量販店で2割引にしてもらって、『6,000円ちょっとぐらいで買えるんだったら買って見よう』、ビジネスとしてはそういうイメージです。かなり安い所をめざしてます」と語った。

当初は4種同時発表も考えていたという

 あえて価格は抑えユーザーにアピールする一方で、東京マルイが想定する「コンパクトキャリーシリーズ」のメインターゲットは全くの初心者ではないという。「コレクション性というか、2丁全部買う様な方が多いんじゃないかと思ってます。『解ってる』人、それなりにエアガンを知ってて、ガスブローバックも知ってて持っていて、380.の発売を待っていた人が『お、来たよ!』、『待ってたよ』という、ある程度年齢が高い方が買うイメージですね。あとは実銃同様女性に気に入って頂きたいのと、電動ガンの長物を買って、レジで横にあるのを見てついでに買う感覚。サバイバルゲームでは、メインウェポン、サイドアームがあって、もう一丁隠し持つイメージですかね」とその狙いを語った。

 「マルフェスONLINE」で注目されたのが、「コンパクトキャリーシリーズ」を隠し持てる本商品がぴったり入るホルスターだ。これは実銃のものを使っていて、流通量が少ないため実売は2万円前後とのこと。「LCP」や「ボディーガード」と一緒に買いたくなる商品だ。

【実銃のホルスター】
番組でも使用したホルスターは実銃用のもの
ホルスターに入れて隠し持つイメージ

 このホルスターも東京マルイで販売するかどうか聞いてみたのだが、島村氏は「できればやってみたいのですが、弊社ではノウハウもないですし、このジャンルが盛り上がってくればホルスターメーカーさんの展開に期待したいですね」と語った。東京マルイとしては「コンパクトキャリーシリーズ」という新しい挑戦にユーザーが興味を持ってもらい、それに連動してそれに連動してエアガン業界全体が盛り上がって欲しいという考えだという。

 「コンパクトキャリーシリーズ」に対して、島村氏の個人的なお気に入りポイントを聞くと島村氏は、「やっぱり小さいし、タクティカル(戦術的)じゃないんですよ。軍で使ってるMIL SPECの銃って言うよりも、一般的なもので、『ボディガード』は標準でレーザーサイトが付いたりしてますけど…迷彩服は似合わないですね。要人警護とかSPが持つのには良いんじゃ無いかなと。ポスターを作るにあたってモデルを女の子に頼んだんですけど、彼女もスゴい気に入ってるし、『峰不二子』じゃ無いけですど、コスプレイヤーさんとか、ガーターベルトに釣ったりするのが似合う、そういうイメージですね」と、「デカ」の2つ名に相応しく、非軍事シチュエーションで映える小型拳銃の魅力を語ってくれた。

 筆者はこのコロナの自粛騒ぎで止まってしまっているものの、実は月に1回はゲーム場に行くサバイバルゲーマーである。その「ゲームで使えるか否か」という視点から見ると、この「コンパクトキャリーシリーズ」は"買い”だと判定する。まず、現行のサバイバルゲームでは、信頼性のある東京マルイの電動ガン1丁だけを持って参加する人は少なくない。毎回、使いもしない、そこそこ重いサイドアーム(予備銃)を携行するのは億劫だし、特に夏場は少しでも身軽で居たいのが正直なところだ。だがそうは言っても、メインアームが絶対壊れない補償は無いし、バッテリー切れなど不測の事態でリタイアする参加者は毎回の様に出る。

 その為筆者は固定スライドガスガンのサイドアームを欠かさないが、「コンパクトキャリーシリーズ」の小型で携行性が良いというのは非常に魅力的だ。10発という必要充分な総弾数、20mの射程距離も万が一の場合に心強い。さらに実を言えば固定スライドガスガンには夏場の高温でガス圧が上昇し、パワーが上がりすぎて、法規制内だがサバイバルゲーム場のレギュレーションを越えてしまう可能性がある(筆者も経験済み)という厄介な性質もあるのだが、小型である事でその危険性もかなり軽減される。何よりも価格が抑えられる実用的なサイドアームが手に入るとあれば、買わない手は無いと思う。

グリップの調整がさらなるフィット感をもたらす「グロック17 Gen.4」

 今回のインタビューでは、5月28日に発売されたばかりのガスブローバックガン「グロック17 Gen.4」の話を聞くことができた。「グロック17」はオーストリアの銃器メーカーであるグロック社が開発した自動拳銃。Gen.4は第4世代を指す。グリップのパターンの変更や、グリップ後部の"バックストラップ"の変更が大きな特徴で、商品でも4種類のバックストラップがついているのがセールスポイントだ。

 実銃はスライドとフレームがポリマー(樹脂製)でできているグロック17だけに、日本の規制による樹脂製のスライドとフレームがむしろリアルな事は言うまでもないのだが、表面も以前よりさらに細かな仕上げが施されている事に驚く。一見して実銃と見分けが付かないレベルであろう。

 グリップを握ってみると、フレームと一体化したグリップは近代オートとしては別格に手に馴染む。当初保守層から毛嫌いされながら、今や実銃の市場の主流となったグロック17が売れている理由が、手の平から伝わってくる再現度だ。

【グロック17 Gen.4】
角張ったスライド、樹脂を多用した構造とグロックは従来の銃の常識を大きく変えた存在と言える

 本製品は、2006年11月に発売されたガスブローバック「グロック17 Gen.3」のアップデート版である。東京マルイでは2018年10月に発売された「グロック19 Gen3」において、ガス圧でスライドを動かす為のシリンダーの直径を直径14mm⇒直径15mmに広げ、スライドを前進させるリコイルスプリングを2重にするなどガスブローバックエンジンを大幅に変更した。今回はその「グロック19」から「グロック17」に移植し先祖返りした形となった。

 こう書くと「グロック19のガスブローバックエンジンをグロック17へ載せただけ」と思われるかもしれないが、何と今回のリニューアルにあたりフレームはもとよりスライドを新規で製作し直しているという。

 しかも実銃採寸で若干スリムになり、実銃用のホルスターに入れる事が可能になっている。また、実銃では薬莢を排出する為に必要だがブローバックガスガンでは飾りの「エキストラクター(爪)」をわざわざ金属の別パーツで再現する一方で、スライドの後端は金属だった物を実銃通りに樹脂の別パーツに置き換えられている。ホップ調整もスライドオープンで可能になった。まさにこれまでの商品のノウハウが活かされた最新作だと島村氏は語った。

樹脂を多用した構造なだけに、法規制で金属パーツが使えないエアガンでも実銃の雰囲気を細かく再現できる
2006年の「グロック17 Gen.3」では実銃のホルスターに収まらなかったが、本商品はきちんと収納できる

 シリンダーの直径を1mm広げれば反動が強くなるとは言っても、その為には強度を増し、さらに耐久性を向上させる必要、東京マルイというブランドの責任がある。日本の法規制を順守した上でそれを成し遂げるのに多大な労力を払った事は、島村氏の言葉の端々から伝わってきた。

 その一見伝わり難い内部とスライド周りの変更に比べ、一目で違いが解るのがフレーム部だ。マガジンキャッチが大型化され、さらに左右入れ替え可能なアンビタイプ(両利き)になった。さらに最大の特徴が、グリップ(握り)が梨地から「スクエアドット」になり、さらにそこからつながるバックストラップ(握りの後端部)が別パーツで交換可能になった点だ。

 厚みが違う2種と、後部が延長されて跳ね上がったビーバーテイルの2種、計4種も付いているが、「エアガンで最初から4つも同梱されているのは、世界初じゃないですか」とのこと。「どうせだったらけち臭い事言わないで4枚着けちゃおう」という事で4枚の大盤振る舞いとなったそうだが、パッケージに収めるためのキズ防止用のウレタンも手間がかかっている。その気合いが見て取れる。

【多彩なバックストラップ】
ビーバーテール付きとなしで2種ずつ、全4種のバックストラップ。握り心地を調整できる

 このバックストラップによる細かな調整こそが本商品のウリだと島村氏は熱く語った。「握った時のトリガー(引き金の)コントロールが全然変わるんです。4種類の中で自分に合ったサイズを着ければ命中精度が明らかに変わります。皆さん普段は握った感じとか気にしないで撃ってると思いますが、そこを気付いてほしい。ファッションで、オマケで付いてるわけじゃないんです。しっかりとグリップを握れるか握れないかでちゃんと狙えるかどうか、集弾性が全然変わってきます。実際に触って撃ってもらえると、グリップの形状や太さで、撃ちやすい、撃ちにくい、その違いが解って貰えると思います。特にGen4はノーマルの状態でGen3よりもグリップ幅が短いので。Gen3のグリップを握り比べたりしてもらえると、色々な違いがわかると思います」と、その思い入れを語った。

 今回BB弾を入れない状態でそのブローバックを体験できたのだが、触る前筆者は「そうは言っても実銃に比べて反動の少ないガスガンで、グリップを熱く語ってもなあ」と半信半疑だった。しかし「グロック17 Gen.4」のトリガーを引いてみた。瞬間手の平から全身に伝わって来たのが「ガンッ」と腕が跳ね上がる反動だった。「これが東京マルイのガスブローバックエンジンか!!」と感動した筆者は、心の中で疑っていた気持ちを島村氏に謝った。

 「グロック17 Gen.4」の反動は間違いなく、4種のグリップで最適のポジションを探したくなる、強烈なものだと感じた。もちろん筆者はこれまでも様々なガスブローバックガンを触っているが、「グロック17 Gen.4」は、「男子三日合わざれば刮目して観よ」という言葉が頭に浮かんでしまった。新ブローバックエンジン搭載の「グロック19 Gen.3」以前のガスブローバックしか知らないユーザーには是が非でもこの感動と反動を味わって欲しいと思う。

パッケージは背景のスクエアドットが折り目の角にならない様に計算された拘りの逸品! こちらも是非とっておきたいカッコ良さ
島村氏の言葉からは実銃へのこだわりと共に、安全性、そして品質の高さへの情熱も強く伝わる。こう言うメーカーが業界を牽引してくれるのは、エアガンファンとして心強い

 最後に島村氏は「今回は新型コロナ感染拡大防止のためこのような形での新作発表となりましたが、機会があればイベントで皆さんに触っていただきたいと思っていますし、それができない場合でも様々な形で皆さんに楽しんでいただければと思います。実は今年は様々な魅力的な新製品を用意しています。楽しみに待っていてください」とユーザーに語りかけた。

 改めて今回話を聞いて、しっかり開発に時間をかけ、自社の工場で設計し、銃に対するこだわりを持ちながら、ユーザーが使う商品として安全性、堅牢性といった点もきちんと機を使っていると言うことを実感できた。東京マルイは日本のエアガン業界でトップシェアのメーカーだが、そのメーカーがきちんと安全性や品質に気を配って業界を牽引してくれているのは心強い。今回のインタビューではそれを強く感じた。

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