インタビュー

「西川伸司プロデュース 究極可動 ゴジラノホネ」レビュー/インタビュー

"西川伸司イズム"満載の、怪獣としての解釈が楽しい骨格モデル

 今回話は開発者に本企画の立ち上げの経緯や、お気に入りのポイント、西川氏の関わり方などを質問していった。

 本企画の立ち上げについては、「ゴジラノホネ」は"前身"となる企画があったという。2018年8月に発売された「究極可動大恐竜」というガシャポンフィギュアで、ティラノサウルスなどの恐竜の骨をフィギュア化したという。

 「このフィギュアを触って次の企画を考えているとき、そういえばゴジラは劇中でも骨になるシーンがあったな、と思いついたんです。『究極可動大恐竜』のゴジラ版は、自分自身でも欲しいな、そう思いました」と開発者は語った。

【究極可動大恐竜】
本企画の前身となる「究極可動大恐竜」。2018年に発売された。価格は500円(税込)

 「ゴジラノホネ」の可動は「究極可動大恐竜」から受け継ぐ大きなセールスポイントだ。手足の基部だけでなく、首、尻尾の基部など各所をジョイントで接続しておりダイナミックなポーズもとれる。レビューの方で触れたが、ポージングによっては強度や体のバランスで難しさが生じるが、ぐりぐりと動かす楽しさは大きい。

 はじめて形になった試作品を前に担当者が強く印象を受けたのはその大きさ。「ゴジラノホネ」はゴジラが全高105mm、キングギドラに至っては150mmとガシャポンフィギュアとしてはかなり大きい。「ディテールやスタイリングもかなり自信がありますが、やはりこのサイズ感を実現できたのが良かったですね」。

 このサイズ感を実現しながらきちんとカプセルに収まるというのもお気に入りのポイント。骨格標本だからこそ各パーツの厚みが抑えられ、カプセルの中にぎっしり詰まったパーツを組み立てることで大きなサイズのフィギュアとなる。ガシャポンフィギュアならではの楽しさを感じられる商品にできた。

「ガシャポンフィギュアは長い歴史を持っていますし、キャラクターや商品企画も"出尽くしている"といえるほど本当に多彩な商品が出ています。そのなかで『ゴジラの骨のフィギュアを作ろう』というアイデアはなかなかこれまでにない切り口だったと思います。そしてカプセルから出して組み立てたときの大きさ、これまでのガシャポンフィギュアの常識を越えた商品になったと思います」と開発者はコメントした。

骨格モデルでありながらきちんとゴジラの持つ迫力が伝わってくるのは、「VSシリーズ」でもデザイナーとしても関わった、西川伸司氏だからこそのこだわりが込められているからだ

 ゴジラには様々な怪獣が登場するが、商品化の際、社内から「キングギドラも欲しい」と言う声が大きかった。知名度はもちろんだが、3つ首の怪獣なため、骨格にするとどういう構造になるか、"骨"としての面白さが決め手になったとのこと。首自体がグニャグニャと動くような構造ではないが、根元と首回りを動かすことでダイナミックな可動を生み出している。

 西川伸司氏がプロデュースという形で本商品に関わっているのは、西川氏がデザイナーでありアイディアを具体的な絵として描き起こせることはもちろんなのだが、2002年の『ゴジラ×メカゴジラ』、2003年の『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』に登場するメカゴジラ「機龍(3式機龍)」をデザインしたということが決め手になった。

 機龍はオキシジェンデストロイヤーで骨となったゴジラの骨格を機体のメインフレームとして、劇中の特生自衛隊が開発した対ゴジラ兵器という設定である。この際にゴジラの骨格という設定を膨らまし、西川氏の監修の元に骨格をデザインしたとのこと。

「VSシリーズ」のキングギドラは3匹の未来の動物が融合している。背骨などの解釈で、その設定を活かしている
「超合金 魂MIX メカゴジラ(生頼範義ポスターVer.)」でインタビューさせていただいた西川伸司氏。写真は前回のインタビュー時のもの

 キングギドラに関してもVSシリーズに登場したキングギドラの設定を盛り込んでいる。1991年の『ゴジラvsキングギドラ』では未来からつれてこられた3匹の動物が融合、怪獣化したものという設定になっており、「ゴジラノホネ」のキングギドラも3体の生き物が融合化したという設定を骨格デザインに活かしている。

 多くのゴジラ映画に参加した西川氏だからこそできる骨格へのこだわり。随所に込められた"西川イズム"は商品の大きな魅力だ。西川氏が関わったゴジラ映画の設定を活かした骨格デザインになっているとのことだ。

 商品に関しては通常の「bone color」に加え、ゴジラは「clear red」、キングギドラは「clear yellow」のカラーバリエーションがあるが、「clear red」はVSシリーズでのメルトダウンするゴジラ。「clear yellow」は光線で攻撃する際の金色に輝くキングギドラのイメージを込めている。「ゴジラノホネ」は直接の作品モチーフのないオリジナル商品だが、様々な作品へのリスペクトを込めて製作されているとのことだ。

【2つのカラーバリエーション】
「ゴジラ clear red」はVSシリーズでのメルトダウンするゴジラをイメージ
「キングギドラ clear yellow」は光線で攻撃する際の金色に輝くキングギドラのイメージ

 「僕はまさにVSシリーズの世代で、子供の時にゴジラ映画をよく見ていたのですが、入場特典としてクリアカラーのフィギュアがもらえたんです。そのフィギュアの製作がまさにベンダー事業部でして、クリアカラーの特別バージョンはかつての映画の販促物への想いも込められています。"クリアカラーの怪獣フィギュア"というところでも当時の映画の思い出を重ねているところがあるんです。『bone color』はまさに骨格標本として楽しめますが、カラーバリエーションでも楽しんでいただけると思います」と開発者は語った。

 商品化の上で苦労したのはやはりカプセルに入れるための変形をどこまで防ぐか、そのためのパーツ分割が大変だったとのこと。またガシャポンフィギュアとしては複雑な組み立て説明書をあえてカプセルに同梱せず、スマホでQRコードを読み込ませることで、web上で見せるという仕様に決定するまでは葛藤があったとのことだ。

 今回は"今後のガシャポン"というテーマの話も聞いた。「ゴジラノホネ」は1,000円(税込)のガシャポンフィギュアである。ベンダー事業部は2021年1月から今までより大きい80Φ(直径80mm)のサイズのカプセルによる商品提供、500円(税込)という従来の価格帯の上限を超えた価格設定が可能な「プレミアムガシャポン」という新しい商品フォーマットをスタートした。またオンラインでのガシャポン展開もスタートしており、新しい形でのビジネスがスタートしている。

 単に価格や商品サイズを大きくするだけでなく、これまでとはひと味違う商品展開が可能になった。商品コストも上がっているが、これまでは省略せざるを得なかった彩色を細かく施せるなど、従来の商品のクオリティアップも可能となる。例えば「アルティメットルミナス」シリーズはこれまではフィギュアと発光ユニットを別々のカプセルで展開していたが、1つのカプセルで提供することも可能となる。しかしだからこそ従来の商品のブラッシュアップにとどまらない、ユーザーを驚かせる商品展開を今後もしていきたいと担当者は語った。

 今後の夢として開発者は「様々な怪獣の"骨"」という構想も持っているとのこと。怪獣図鑑などでもおなじみだが、たとえば「ガメラ」は劇中に海底の墓場があり、ガメラの骨が並んでいるという描写もあった。具体的には何が決まっているというわけではないが、今後の展開も期待できそうだ。

 最後にユーザーへのメッセージとして開発者は「ゴジラやキングギドラの骨格や、体の表現は映画の中で今回とは違うものでも様々なものが登場しています。ですので『ゴジラノホネ』も商品を組み立てて動かして終わり、というわけでなく、ジオラマにしてみたり、海の中に沈んでいる姿を再現してみたり、様々な遊び方をしてもらってSNSにアップするなど、その遊び方を発表していただければ、開発者としてうれしいです」と語った。

 今回開発者の話を聞いてサンプルを触ることができ、非常に楽しかった。ボリューム感はもちろん、各関節を動かして遊んだり、ポーズを決めて飾るにはどういう風にするのが良いか、さらに骨の質感を追求するのはどんな塗装が良いのかなど、モデラーならばさらに楽しくなる商品だと感じた。筆者は子供の頃、怪獣図鑑での様々な怪獣の解釈にワクワクさせられた。今後「○○ノホネ」シリーズが展開するならば、とても楽しみだ。