インタビュー

モデルガン「LIBERTY CHIEF .38special」開発者インタビュー

歴史に埋もれた幻の銃を手に取って欲しい! 新興モデルガンメーカーの熱い想い

【LIBERTY CHIEF .38special 2インチモデル】

発売中

価格:55,000円(税込)

口径:38spl

全長:164mm

重量:500g

装弾数:6発

素材:ヘビーウェイト樹脂

 トイガンでの「モデルガン」と「エアガン」は大きな違いがある。エアガンは"弾が出る"というのを最大の魅力としている。バネなどで空気を圧縮する「エアーコッキング」、ガスを噴出して弾を飛ばす「ガスガン」、モーターで空気を圧縮する「電動ガン」などがあるが、的に当てる、サバイバルゲームで活用するといった遊び方がなされ、現在大きな人気を得ている。

 モデルガンは"銃の模型"である。弾は出ない。内部機構まで銃を精密に再現しているモデルもあるが、銃口には仕切りが設けられており、銃口をのぞき込めば模型だとわかる。銃そのものの魅力にフォーカスしたモデルガンは銃の玩具としてかつて大きな人気を集めていたが、銃刀法の改正により金属でフレームを作ることが制限され、それまでの技術が使えなくなったことで大打撃を受けた。その後エアガンが人気を得ていく中、トイガンメーカーもエアガン主体に生産するようになり、結果としてモデルガンメーカーは減少している。

 しかし、モデルガンを求めるユーザーも少なくはない。特に火薬を使う発火(カートリッジに火薬を詰めてモデルガンを作動させること)はまるで実銃を撃ったような迫力があり、大きな魅力となっている。モデルガンユーザーはもっとモデルガン市場が活発になり、様々なモデルガンが発売されないか願っているのである。数を減らしたモデルガンメーカーだが、金属を練り込むことで金属のような質感と重みを持つ「ヘビーウェイト樹脂」を開発、向上した成型技術と、綿密な実銃取材により、近年のモデルガンはこれまでになかったほど精密なものとなっている。

【ヘビーウェイト樹脂】
ハートフォードのモデルガン「リバレーター2022」は、黒い部分がヘビーウェイト樹脂となる。この樹脂は鉄のような質感と樹脂のみよりずっと重くなる。ヤスリで磨くことで練り込まれた金属部分が多く露出するので、実銃のような「ブルーイング(さび止めの表面処理)」も可能だ

 そんな現状の中、"新興のモデルガンメーカー"が誕生した。あえてモデルガンで、しかもその第一弾は"幻の日本製リボルバー拳銃"として知る人ぞ知る「ミロク リバティチーフ」である。この銃は現在も猟銃などを開発・製造している日本の銃器メーカー・ミロク製作所が1962年から1968年まで北米で販売し、3万丁という売り上げたリボルバー拳銃なのだ。

 エム・アイ・イー総研 アクション事業部は、この「リバティチーフ」をモチーフとしたモデルガン「LIBERTY CHIEF .38special 2インチモデル」を、2021年11月に発売した。今後も様々なモデルガンを開発していく。さらに東京都内にモデルガンを見ながらお酒が飲めるショールーム「UNTOUCHABLE」をオープン。他のモデルガンメーカーとも協力しモデルガンを盛り上げていきたいという。今回、エム・アイ・イー総研CEOの松岡誠二氏に、「LIBERTY CHIEF .38special」やモデルガンそのものへの思い入れ、モデルガンメーカーとしての意気込みを聞いた。

【LIBERTY CHIEF .38special 2インチモデル】
エム・アイ・イー総研 アクション事業部が2021年11月に発売したモデルガン第1弾。1962年から1968年まで北米で販売し、3万丁という売り上げた日本製リボルバーを精密に再現したモデルガンだ

歴史に埋もれた「メイドインジャパンの銃」をモデルガンにしたかった!

 やはり最初に聞いてみたかったのは、アクション事業部設立までの経緯と、今モデルガンメーカーを立ちあげる事への意義だ。なぜ「モデルガン」を新規事業として選択したのだろうか?

 エム・アイ・イー総研は経営コンサルティングの会社である。様々な企業の相談に乗り、その企業を発展させることを目的としている。コンサルティングの相談内容として寄せられる中に「町工場の後継者不足」というものがある。日本の町工場は高い技術を持ち、日本の企業を支える存在であるが、そのイメージをアピールできず、若者達のアンテナに引っかからない。「その工場はどんなものを作っているのか、どんな仕事ができるのか?」このイメージをきちんと提示するのが必要だと松岡氏は考え、町工場の協力の下「モデルガンメーカー」であるアクション事業部を立ちあげることとなったという。

【松岡誠二氏】
エム・アイ・イー総研CEOの松岡誠二氏。モデルガン製造・販売のためアクション事業部を立ちあげた

 エム・アイ・イー総研はこのようにコンサルティングを進めながら、これまでもいくつものモノづくりビジネスを立ちあげている。製造している人たちが、カー用品やオートバイ商品など「自分たちが何を作っているか」を明確にイメージできるようにしていった。松岡氏の趣味が反映された事業の1つとしては他にルアー製作の事業部もあるとのこと。松岡氏は年に数回北米に行き、釣りをする趣味もあるとのこと。ルアー製作事業部はその知見を活かしたものだという。

 モデルガンも松岡氏の趣味である。子供の頃からモデルガンを趣味にしていた松岡氏はハートフォードなどモデルガンメーカーとも親しく、アドバイスも受けた上でアクション事業部を立ちあげ日本遊戯銃協同組合(ASGK)に加盟。モデルガンを開発していくこととなった。

 松岡氏のモデルガンへの思いは深い。その原動力は「ユーザーとしての希望」である。モデルガンは"銃の玩具"であるだけに、銃になじみのない日本ではあまり知識の深い人はいない上、忌避感を持つ人もいる。実銃を思わせる銃の玩具は、人前で出したらトラブルにもなりかねない。こういった傾向もあり、市場が大きくならず、参入メーカーは少ないというのがモデルガン業界の現状である。結果としてモデルガン化されていない銃が多い。「自分が欲しいモデルガンを世の中に出したい。商品を一番最初に手にしたい」その強い思いが、アクション事業部立ち上げの原動力なのだという。

 その松岡氏の特に思い入れが強い銃が「リバティチーフ」である。前述したが、日本の銃器メーカーミロク製作所が、1962年から1968年まで北米で販売し、3万丁という売り上げたリボルバー拳銃である。日本産の拳銃が北米で大きく受け入れられたという事実は現代ではあまり知る人もいない。銃雑誌で取り上げられることはあっても"歴史に埋もれた銃"といえる存在である。

【LIBERTY CHIEF .38special】
こちらはサンプル品となる。ヘビーウェイト樹脂でずしりと重く、モデルガンならではの"本物感"がある

 この銃を松岡氏が深く知ることになったのは、松岡氏が通っていたアメリカのシューティングレンジでの出会いがあったためだったという。そのシューティングレンジを運営しているオーナーの祖父の方が偶然にも、リバティチーフのアドバイザーだったというのだ。リバティチーフはミロク製作所としてもこれまで開発経験がなかったリボルバーだったため、その祖父の方が自身の経験を活かし様々なアドバイスをしたという。松岡氏はレンジのオーナーからその話を詳しく聞き、当時の資料もたくさん見ることができた。

 偶然の出会いがきっかけだったが、松岡氏はリバティチーフにのめり込んでいく。北米在住の友人知人と協力し北米で流通していたリバティチーフを4丁確保したという。「この4丁はそれぞれ製造時期が違います、比べると進化しているのがわかる。初期の銃はここに不具合があり、ここに手を入れたんだなといったことがわかるんです。このような細かな改良は日本人の技術、物作りの精神だなと思うんです」と松岡氏は語った。

 「リバティチーフはまさに日本の高い技術だから生まれた銃と言えます。この銃のモデルガンを日本の町工場で作り、その技術の高さをアピールする。それはオリジナルの銃のミロク製作所の技術の高さと共に、それを再現した町工場の技術力もアピールできる。そういう銃なんです」と語った。次からはミロク製作所のリバティチーフの特徴と、それを再現したモデルガン「LIBERTY CHIEF .38special」の魅力に迫っていこう。