インタビュー

モデルガン「LIBERTY CHIEF .38special」開発者インタビュー

モデルガンを楽しめる空間を! お酒も飲めるショールーム「UNTOUCHABLE」

 松岡氏はアクション事業部での「LIBERTY CHIEF .38special」発売と同時期にショールーム「UNTOUCHABLE」をオープンしている。東京の地下鉄・南北線の麻布十番駅が最寄りのビルの5階にある空間で、イメージは「禁酒法時代の隠れ酒場」。お店の名前そのものも禁酒法時代を扱った映画「アンタッチャブル」から。ビルの1階のインターフォンで入室確認をし、エレベーターで上がって到着する空間だ。

 UNTOUCHABLEはカウンターのみ。数人でいっぱいになってしまう場所だが、ずらりとモデルガンが並べられている。カウンターの奥の棚には松岡氏の私物である絶版のモデルガン。入口側はハートフォードやタナカから提供されたモデルガンが並んでいる。実銃を再現した銃に混ざって、ハートフォードの「戦士の銃 コスモドラグーン」が並んでいるのも楽しい。

【UNTOUCHABLE】
モデルガンを手にお酒が飲めるショールーム。禁酒法時代の隠れ酒場をイメージ
カウンターの向こうは松岡氏の私物のモデルガンを展示。絶版の貴重なものも
タナカやハートフォードからのモデルガンも

 カウンターの反対側のショーケースの中にはハートフォード、タナカ以外にも、タニオコバ、KSC、MULEといったメーカーのモデルガンが展示されているが、これらはこのショールームで販売している。もちろん「LIBERTY CHIEF .38special」も購入可能だ。壁には様々な映画のポスターなども飾られている。

 このUNTOUCHABLEはお酒や、軽食を楽しむことができる。映画にちなんだ食事やカクテルを出している。「ダーティーハリーの屋台のホットドック」、「ゴッドファーザーのクレメンザのパスタ」といった食事メニュー、映画にちなんだお酒やカクテルなどニヤリとさせられるメニューだ。

 「モデルガンをたっぷり楽しみたいけど、家の中ですらコレクションをじっくり楽しめない。僕はお酒呑みながらコレクションを眺めたいんですよ。モデルガンのショールームをやるなら、お酒を楽しめる場所にしたかったんです。また商品を売るにはそれをじっくり眺め、手に取って確かめられるショールームは絶対に必要だと考えていました」と松岡氏は語る。

 もちろん商品を手に取る場合は手袋をして触るなど細心の注意を払う。また"コレクションの持ち込み"も歓迎しているという。自身の愛銃をテーブルの上に出して、有人と酒を飲む、そういう空間にして欲しいとのこと。ただし、直接銃をテーブルに置くと、テーブルはもちろん、銃も傷ついてしまう。それらを保護するためのメンテナンスシ-トも来店時にはしっかり用意してきて欲しいとのことだ。

 実際お店を開くとモデルガンマニアが集まってきている。数十万円のカスタムハンドガンなどを持ってくる人もいる。持ってくる銃は「コルトガバメント」が多いとのこと。お店の入り口で着替えて、雰囲気を重視してお酒を飲む人が多い。映画に出てきた銃を再現する人、銃雑誌の「何年の何月号に掲載された銃」を再現する人など、ものすごいこだわりで松岡氏も圧倒される人がいるとのことだ。

カウンターの後ろのショーケースは販売品。その場で購入可能だ
「LIBERTY CHIEF .38special」は1コーナーを使って展示。もちろん購入可能
映画のポスターなどインテリアも雰囲気たっぷり

 UNTOUCHABLEではカクテルを作り料理をするマスターが出迎えてくれる。松岡氏は客の1人としてお店を訪れることが多い。注意が必要なのはモデルガンを持ち込む際にはメンテナンスシートが必要なことと、お店の中での発火は禁止ということだ。これらを守って楽しんで欲しいと松岡氏は語った。

 ここからはアクション事業部の"これから"を聞いていきたい。モデルガンメーカーとしてスタートしたアクション事業部には「この銃をモデルガンにして欲しい」という要望が、驚くほど多く寄せられていると松岡氏は語った。お店を訪れる人はもちろん、公式ページにたくさんのメールが来る。スタート当初松岡氏はモデルガンを手にしたり、このショールームに訪れるお客さんの層を自身と同じ50代と考えていたが、要望では若いユーザーも多く、彼らはゲームに登場する銃など、最近の銃をモデルガン化して欲しい、という声が大きいとのこと。

 要望として驚かされたのは「ウェルロッドMk.II」という銃。銃を美少女キャラクターにするスマホゲーム「ドールズフロントライン」で取り上げられた銃だが、イギリスとアメリカの工作員や特殊部隊員が使用した消音器と一体化した銃でその特殊性から資料は少ない。アクション事業部は「実銃を分解して内部機構の図面を引く」というのが開発姿勢のため、このように特殊な銃はどうやっても入手できない。ではどうするか、というところで考えているとのこと。「モデルガンが欲しい」という要望は予想より遙かに多いと松岡氏は語った。エアガンブームの中でこのお客さんの要望は松岡氏の大きな力となった。

【ウェルロッドMk.II】
写真はグッドスマイルカンパニーのフィギュア「ウェルロッドMk.II」。正式な資料も残っていないような銃だが、スマホゲーム「ドールズフロントライン」で美少女化されファンを獲得した。彼女が手に持っているのがモチーフとなった銃で、消音器と一体化した工作員や特殊部隊員が使用した銃である

 「僕個人はモデルガンの最高の楽しみ方は発火だと思っています。動かない、モデルガン化はできない、といわれていた銃にも挑戦していきたい。30発の弾倉が空になるような、そう言うモデルガンも作っていきたいと思っています」。

 松岡氏は現時点ですでに10ものモデルガンの構想を持っているとのこと。すでにそれらのモチーフは実銃を分解してデータを取り、製品プロセスまで進められるように準備している。1年に2商品のリリースを予定し、計画を進めているとのこと。

 そんなアクション事業部が次のモチーフに選んでいるのが「Mauser C96 Red9」だ。"モーゼルC96”と呼ばれる大型の自動拳銃はドイツやフランス、トルコでなどで制式拳銃となり、1896年から1937年まで100万丁以上が生産されたと言われる。英国や日本など各国で使用された。標準で付属する脱着式ストックや、クリップ装填式の固定弾倉など、構造的には小銃に近いものとなっている。

 モデルガンのモチーフは9mmパラベラム弾仕様のM1916と呼ばれるモデルで、補給上の都合から、ワルサーP38、ルガーP08と弾を共有させたとされる。弾薬の混用を防ぐために銃把の部分に赤色で「9」と刻印され、「Red 9」と呼ばれるようになったとのことだ。

 松岡氏はこのように様々な銃をモデルガン化し、歴史やその時代の人々のモノ作りのすごさをモデルガンユーザーに紹介していきたいと語った。

【Mauser C96 Red9】
アクション事業部の次回作は1937年まで100万丁以上が生産されたと言われるドイツの制式拳銃「Mauser(モーゼル) C96 Red9」

 「自分の夢、趣味を形にする」ということはなかなかできない。松岡氏は自分の思い入れと現在のビジネスを見事に結びつけそれを実現した。後継者不足、自社イメージを模索する町工場の高い技術を現在少なくなっているモデルガン製作という業種に注ぎ込み、歴史に埋もれた銃を掘り起こし、紹介する。とても楽しく、夢のある活動だ。

 エアガンにはエアガンしかない楽しさがあるが、銃の魅力により特化し、その世界観を楽しむモデルガンも独特の魅力がある。松岡氏の夢はさらに大きくなっていく。また、「モデルガンが欲しい」とユーザーが強く反応しているところも見逃せないところだ。何よりショールームに並ぶ他社の製品は、「新興モデルガンメーカーを応援したい」という温かい業界の応援を感じる。業界の発展は、間違いなくユーザーである我々の楽しさの可能性を広げてくれる。応援していきたいところだ。