インタビュー

モデルガン「LIBERTY CHIEF .38special」開発者インタビュー

コルトとS&Wの"いいとこ取り"を狙った「リバティチーフ」

 モデルガン「LIBERTY CHIEF .38special」は、「Mark Ⅵ」と言われる、最も全米に行き渡った、生産ロットのモデル化となっており、初期モデルから改良を加えられているバージョンを再現したものだ。

 北米のリボルバーとしては「コルト」と「S&W」が大きなメーカーである。リバティチーフは1962年当時大きな人気を集めていた「S&W M36」と「Colt Detective Special」の"いいとこ取り"だと松岡氏は語った。リバティチーフは「スナブノーズ(獅子鼻)」と呼ばれる2インチの短銃身のリボルバー型小型拳銃で、S&W M36や、Colt Detective Specialとよく似た外見をしている。使う弾も「.38スペシャル弾」と同じものだ。

【S&W M36】
画像はタナカのモデルガン「S&W M36 チーフ・スペシャル HW モデルガン バージョン2」。M36はモデルチェンジや改良がなされながら現在でも人気の高い小型リボルバー。日本の警察もこの拳銃のバリエーションモデルである「S&W M360J “SAKURA”」、「S&W M37 J-police 警察仕様」を使っている。

 S&W M36は、1950年の発売当初は「チーフスペシャル」と呼ばれ、国際警察長協会(IACP)の大会で発表された。その名の通り警察が使用する前提での設計がなされており警官が携行しやすい小ささと、強力な.38スペシャル弾の発射に耐えうる堅牢性を実現している。S&W M36は改良が加えられ、現在でも軽量モデルのM37が日本の警官用拳銃として使用されている。

 「Colt Detective Special」は1927年に初期モデルが発表された。4インチバレルの「コルトポリスポジティブ」のコンセプトを受け継ぎつつ、銃身を半分にし携行性を高めた銃で、スナブノーズの流行を作り出した。その名の通り探偵が使うトレードマークとしてドラマにも多く登場し、人気が高かった。

【Colt Detective Special】
画像はタナカの「COLT ディテクティブ・スペシャル 2inch HW モデルガン」。携行性を重視し、銃身を短く2インチにした「スナブノーズ(獅子鼻)拳銃」という流行を造り出した銃だ

 リバティチーフはこの2つの銃から強い影響を受けている。銃身のデザインはM36に近く、上についているフロントサイトの形状もそっくりだ。一方、シリンダーをスイングアウトさせるための「シリンダーラッチ」はディテクティブスペシャルの"コルト系"のデザインだ。リバティチーフはさらにシリンダーラッチに指がかかりやすい溝が掘られている。

 ちなみにS&Wでは「サムピース」という名前で大きく形状が違い、引っかかりやすいようにチェッカリングが刻まれている。ラッチをコルト式にするメリットは銃身の下のバレル下部のエジェクターロッドのロック機構が省略できるところだという。エジェクターロッドが長い方が操作がしやすいのだ。

【コルトとS&Wのいいとこ取り】
リバティチーフは当時人気の高かったM36とディテクティブスペシャルを参考にしている。銃身のデザインはM36だが、その下のエジェクターロッドはディテクティブスペシャルと同じように固定されていない
シリンダーをスイングアウトするためのサムピースはコルトデザインだが、指が引っかけやすいように溝が掘られているところに工夫がある

 シリンダーには.38スペシャルを6発装填できる。M36は5発、ディテクティブスペシャルは6発入るのでここが大きく異なる部分だ。装弾数は銃を選ぶ際の重要なポイント。リバティチーフはこの時代人気の高かったスナブノーズリボルバーというジャンルにおいて、6発の装弾数を選んだというわけだ。

 今回モデル化されたリバティチーフの「Mark Ⅵ」というバージョンではリアサイトは溝状のシンプルなものだ。これは服の中から一気に引き抜き射撃をするという護身用と速射性を重視した設計のためだという。ハンマーを起こし、狙いを定めて射撃をするシングルアクションももちろんできるが、引き金を引くだけでハンマーが上がり、射撃ができるダブルアクションでの射撃を重視している。有事には、起伏に引っかからず銃を引き抜き、引き金を引くだけで発砲できる、この時代こういった銃が求められた。その時代の要望に応えた設計思想というわけだ。

 内部機構はM36に近い機構になっているとのこと。大きく異なる部分はメンテナンス用の蓋「サイドプレート」がM36では右側面に設定されているのに対し、リバティチーフは左側面が開くようになっている。左側面が開く設計はコルト式のものだ。サイドプレートはM36は曲線で構成されているが、リバティチーフは直線の設計で生産性を重視している。ちなみにコルトの内部機構は設計的に耐久性が弱い部分があり、メーカーメンテナンスに出されることが多いところがあるという。こういった問題もあり、リバティチーフではS&W M36の内部機構を採用したのではないか、というのが松岡氏の考えだ。

リアサイトは簡素なモノとなっていて、服に引っかからないようになっている
ダブルアクションで、引き抜いてすぐに射撃できる
M36より1発多い6発の弾丸を装填できる

 .38スペシャル弾を6発収納するシリンダーは5発しか収納できないM36に比べ大きなものとなる。リバティチーフのシリンダーは6発装填できるディテクティブスペシャルよりもさらに大きなものを採用することとなった。内部機構はM36に近いものなので、このシリンダーに合わせて各部品を調整している。このためグリップとシリンダーまでの距離がわずかに長く、間延びしているような印象を与えるものになっているとのことだ。「6発のシリンダー、左側が外れるサイドプレートの構造はコルト式なのに、内部機構はS&W方式。設計はかなり大変だったと思います」と松岡氏は語った。

 しかしだからこそ松岡氏にとってリバティチーフは特別な銃だった。ミロク製作所という日本の企業が北米で販売した銃であるという歴史的特徴、設計としての特異性……。「リバティチーフは日本人のモノ作りここにあり、という銃だと思っています。だからこそ私が生み出すモデルガン第1号であり、ミロク製作所と同じ日本の工場がその技術を結集して生み出す銃に宇ふさわしいと思いました」とのことだ。

 ちなみに1968年では、ディテクティブスペシャルは85ドル、M36が76.2ドルに対し、ミロク製作所のリバティチーフは59.95ドルだったとのこと。松岡氏は協力者と共に銃のシリアルナンバーを細かく調べ上げ、リバティチーフは北米で3万丁以上が販売されたと推察している。古い銃のためミロク製作所自体にも記録はなく、今回の調査ではじめてわかったことだという。

 受け入れられたのは当時流行していたスナブノーズリボルバーというジャンルであり、"いいとこ取り"である設計思想、そして価格設定も大きかっただろう。細かく改良を加えたモデルチェンジも含め、この時期ミロク製作所はかなり積極的に北米でこの銃を販売し、受け入れられたこととなる。

 ただ、撃ち比べてみることでわかることもあったと松岡氏は語った。それは銃としての命中精度だ。松岡氏は現在も北米で流通していたリバティチーフを入手し撃ってみたがその反動の大きさを実感した。リバティチーフの2インチの短い銃身では弾道が安定しない上に、小型のボディに対し.38スペシャル弾の反動は強力で撃つと手の中で暴れるという。

 面白いのが、M36とディテクティブスペシャルと撃ち比べたときは、同じ.38スペシャルでも反動による銃のブレはリバティチーフに比べ小さく、撃ちやすかったとのこと。この反動の違いに松岡氏はS&Wやコルトの銃開発のバランスなどノウハウのすごさを実感したとのことだ。こういったところはリボルバー拳銃の開発経験の差がはっきり出たところと言えるかもしれない。

【3インチモデル】
ミロク製作所が2インチモデルの後発売した3インチモデルも、アクション事業部はモデルガンとして商品化している。2021年12月発売で、価格は2インチモデルと同じ55,000円(税込)

 ちなみにミロク製作所はリバティチーフにさらに改良を加えた3インチモデルも発売している。こちらは銃身を延長することで命中精度を向上させている。アクション事業部ではこちらのモデルも販売している。ちなみにミロク製作所はこの3インチモデルでリバティチーフの生産を終了、「スペシャルポリス」という新しいリボルバー拳銃を製作し、北米で販売することになる。

 「現在わかっているリバティチーフのバージョンは全部で4つ。しかしこれだけではないと思っているんです。まだ私が発見できてないバージョンがある。これからもリバティチーフの調査は北米で進めていきます」。松岡氏のリバティチーフへの愛はとどまることを知らない。次項ではこのリバティチーフをモデルガンにしていく過程を聞いていきたい。

作ってみてはじめて知った、実銃とは大きく異なるモデルガン製作のノウハウ

 かつてモデルガンはトイガンで大きな人気を誇っていたが、1977年の銃刀法の改正による材質の規定により、それまでの技術が使えなくなった。その時にモデルガン製作をやめた技術者も少なくないとのこと。トイガンメーカーとして人気を集めていたコクサイ、MGC、CMCといったメーカーも撤退するなどトイガン市場は大きく変化した。

 しかしその変化からモデルガンは大きく進化した。金属を練り込むことでまるで本物の鉄でできているかのような質感を持たせた「ヘビーウェイト樹脂」が開発され、さらに造型、製造技術が上がった。海外への渡航や、インターネットを通じて実銃の資料や情報の収集もグッとやりやすくなった。何よりもトイガンメーカーの努力により、よりリアルで作動も快適な「現代のモデルガン」というフォーマットも確立してきた。特にハートフォードやタナカは近年ユニークなモチーフのモデルガンにも挑戦している。

【ハートフォードの新たな挑戦】
モデルガンメーカーは再販商品も多いが、その中で完全新規設計で製造されたのがハートフォードの「ナガンM1895リボルバー」。19世紀から第2次大戦後まで使われた旧ソ連の制式拳銃で、独特の内部機構まで余すことなく再現している

 また、エアガンメーカーの"モデルガン的アプローチ"も積極的だ。ヘビーウェイト樹脂を使うことで本物に近い質感を追求するメーカーもいるし、東京マルイは「次世代電動ガン MP5A1」において、実銃に使われている樹脂を化学的に分析し、同じような樹脂を開発した。さらに金属部品の溶接方法など当時の工場の工程によって生まれる質感を精密に再現したりと、とことんまで「実銃の質感」にこだわっている。現代のユーザーはこれまでになかったほどのリアルで、質の高いトイガンを手にできる時代になったと言える。

【東京マルイのモデルガン的アプローチ】
東京マルイの「次世代電動ガン MP5A1」は、実銃採寸、重さも実銃に近い。樹脂部分は実銃に使われた樹脂を科学的に分析しその手触りまで再現している。1990年代の工場で生産されていた質感を再現、銃本体の外装の上部、「アッパーレシーバー」も鉄をプレスした"プレス製造"の雰囲気を忠実に再現している。実射性能だけでなく、銃の模型としてのモデルガン的アプローチも非常に高いレベルで実現している

 松岡氏は町工場と二人三脚で「現代のモデルガン」を作り出すため活動を開始した。松岡氏はもちろん、町工場でもモデルガン生産のノウハウはなく、すべてが初めての体験だったという。

 モデルガン生産の際には非常に有用な"お手本"があった。実銃のリバティチーフを部品の1つ1つまで分解し、図面を起こし、設計していった。しかし大きな壁にぶち当たる。モデルガンは法律で製造素材が制限されている。当たり前だが実銃と同じ材質で製品を作ったら実弾が撃ててしまうので製造は許されない。だから強度を持たせた樹脂や亜鉛合金を使うのだが、その材質で実銃の構造をそのまま再現しようとしたら、全く強度が足りないのだ。

 他のメーカーはどうしているのか? ここで現代のモデルガン技術が松岡氏の"夢"を大きく後押ししてくれた。「LIBERTY CHIEF .38special」の生産ではハートフォード代表のコネティ加藤氏が様々な助言をくれたとのことだ。

【ハンマーを動かすための板バネ】
グリップを外すと確認できる板バネ。モデルガンでは樹脂のフレームでは支えきれないため、重りを兼ねたダイキャストでバネを固定している

 「グリップ内部にはハンマーをはじくための板バネがあるのですが、フレームを金属を練り込んだプラスチック樹脂、ヘビーウェイト樹脂で作っても板バネを支えきれない。亜鉛合金でしっかり板バネを固定する構造を作らなくてはいけないんです」。

 「僕もガンマニアだから、モデルガンには小さな不満があったんです。実銃と部品の配置が違う。『板バネを入れるのに実銃にないこんな機構を何で入れるんだ』とか思っていたんです。ところが実際に自分でやってみると、モデルガンにするにはこの設計が一番良い。こういったノウハウはずいぶんハートフォードさんに教わりました」と松岡氏は語った。

 モデルガンは部品も大きく異なる。例えば前述の板バネは実銃のように硬度を上げるため焼き入れを行なったバネを使えば亜鉛合金でも支えきれず銃のものが壊れてしまう。モデルガン用の板バネは、本物に比べると柔らかく、それでいてしっかりと強度のあるものでなければならない。他にも樹脂部品を使うところの設計の変更や部品材質などやってみてはじめて知ることが多かったとのことだ。

「自分の手でモデルガンを作りたい」。松岡氏はその願いを叶えたが、実際に製作してみてモデルガンならではの技術を実感したという
取扱説明書。「市販のものは見にくい」とユーザーの立場では言っていた松岡氏だが、いざ自分で作ってみると各メーカーの工夫がよくわかるようになったとのこと

 「モデルガンは"総合芸術"といえると思います。樹脂、亜鉛、鉄といった素材の加工技術、塗装の技術、こういった様々なノウハウを結集しないと生み出すことができない。"究極のモノ作り"といえると思います。商品化が出来たのは、ハートフォードさんの惜しみない協力がなければできなかったと思いますし、その協力を受け止めてくれる町工場さんの技術的バックボーンがあったからこそだと思っています」。

 「本当に色々自分でやるのは大違いですね。説明書や部品図、1ユーザーだったときは『何でこんなに見にくいんだ』とか勝手に言っていたわけです。ところが自分でやってみるとメーカーの方法が最善で真似をするのが一番いい。改めてメーカーはすごいなと思いました」と松岡氏は語った。説明書を作るにあたっても、知り合いのマニアの人から意見を聞き、銃を全く知らない人に読んでもらってはじめて現在の形にできたという。

 それだけモデルガンにこだわりを持ち、実銃を北米で手にした上で自分が思い描くモデルガンを作る。しかもその第1弾は、歴史に埋もれていたのを松岡氏自身が協力者と共に探し、発見したリバティチーフなのだ。商品化の感想は「最高です」の一言だという。

 何もかも初めてだった松岡氏の挑戦だが、「LIBERTY CHIEF .38special」は非常に高品質のモデルガンとして完成した。外観、内部機構、握ったときの重みや質感も実銃さながらだ。そしてダブルアクション、シングルアクション、弾倉のスイングアウトも快適だ。松岡氏の知識と実銃を細密に分析でき、モデルガンとして再構成させた町工場の技術はやはり驚かされる。なにより惜しみもなく新興メーカーに技術的な支援を行なったハートフォードの「業界全体を盛り上げていこう」という想いがあってこそだろう。

 「LIBERTY CHIEF .38special」には松岡氏だけの「スペシャルバージョン」が存在する。通常の「LIBERTY CHIEF .38special」は金属地がむき出しの様に見える処理がなされている。これはミロク製作所が北米へ出荷する際の状態を再現したものだという。

 ところが北米で出まわっているものは、青くブルーイング(さび止めの表面処理)がなされていた。松岡氏だけのスペシャルな「LIBERTY CHIEF .38special」は、このブルーイングがなされた上で木製グリップが使用されている。残念ながらこのブルーイングバージョンの販売予定はないが、木製グリップは発売予定とのこと。このスペシャルバージョンは後述するお酒が飲めるショールーム「UNTOUCHABLE」で展示されている。ショールームの目玉の1つである。

【松岡氏のスペシャルバージョン】
ショーケースに飾られた「LIBERTY CHIEF .38special」のスペシャルバージョン。北米での流通していたバージョンを意識し、さび止めのブルーイングがなされている。グリップも木のグリップを使用木のグリップは今後販売予定とのこと