インタビュー
アオシマ、「1/450 伝説巨神イデオン」開発者インタビュー
プロポーション・可動重視のイデオンが誕生! シリーズ展開も!?
2022年10月28日 00:00
- 【1/450 伝説巨神イデオン】
- 11月発売予定
- 価格:10,780円(税込)
アオシマは「伝説巨神イデオン」の主役メカ、「イデオン」のプラモデル「1/450 伝説巨神イデオン」を11月に発売する。同社が現代のニーズに合わせた最新のクオリティを目指して展開するキャラクターメカプラモデル「ACKS(アックス/AOSHIMA CHARACTER KIT SELECTION)」として発売する全高240mmのサイズを誇る巨大なイデオンで、放映当時の「アニメスケール」や「合体シリーズ」以来のプラモデル化である。
迫力のサイズだけでなく、あえて合体をオミットして劇中の印象的なシーンを再現できる可動域の広さを重視した設計、波導ガンやイデオンソード、ミサイル全弾発射など多数の武器やエフェクトが付属するといった、たくさんの魅力を備えたキットとなっている。
5月の静岡ホビーショー、9月の全日本模型ホビーショーと、それぞれに出展され、大きな注目を集めたこのキット。なぜ今イデオンがこのような仕様で発売されるのか、企画経緯や商品コンセプト、そして将来の展望などについて、アオシマ企画チームの開発陣に話を聞いた。
「伝説巨神イデオン」放映開始と「アニメスケール」の40周年が企画立案のきっかけとなる
――今回、このような大きなサイズで可動重視のイデオンのプラモデルを発売するに至った経緯をお聞かせください。
金田氏:アニメの放映が1980年で40年でして、企画もそのときに発足しました。弊社も当時「アニメスケール」という名前で「伝説巨神イデオン」のプラモデルを発売しておりまして、それが放映開始から1~2年後のことでしたので、そちらも40年なんです。
弊社では5年ほど前から「ACKS(AOSHIMA CHARACTER KIT SELECTION)」というキャラクタープラモデルのブランドを展開していまして、こちらがアニメや特撮のメカプラモデルに改めて注力するブランドで、これまで「レーバテイン」や「ガンバスター」、「機龍」といったラインナップで経験を積んできました。そこでいよいよイデオンが放映40周年を迎えて、メカプラモデルのノウハウもある程度培ったところで、そろそろイデオンのプラモデルをやってもいいのではないか、というのが始まりでした。
――満を持しての発売というわけですね。
金田氏:そうですね。現行のロボットプラモデルの設計を成立できるようになりましたので、現在のACKSの集大成として、弊社がここまでできるということをアピールする意味も込めて企画しました。
――今年の静岡ホビーショーで初お目見えされましたが、反応はいかがでしたか?
齋藤氏:昔からプラモデルファンのユーザーさんには「アオシマといえばイデオン」というイメージを持たれている方も多くて、そこに対して「やっと出るんだ」という反響がありました。このスケール感についても、当時のアニメスケールの大きなサイズのイメージで思い出されていた方もいたようです。その一方でイデオンを知らない層の方から「こんなのあるんだ」という声もありましたね。
――イデオンといえば合体変形する巨大ロボットという印象も強いですが、あえてそこを外したのはなぜなんでしょう。
金田氏:ACKSシリーズは、どちらかといえば合体変形よりも、プロポーションと可動に重きをおいてシリーズの展開するというコンセプトがあるんです。このイデオンもその流れに沿った設計を追求する方向性を目指しました。
もちろん昔のアオシマをご存じの旧来のユーザーさんには「合体シリーズ」などを筆頭に、合体プラモデルのイメージも強いので、企画検討中にはこれが本当に正解なのか悩ましいとこもありましたが、ACKSのコンセプトは既に決まっていましたし、企画者も比較的若い世代ということもあって、仕様が決まるのは早かったです。
――開発は若い方が多いんですか?
金田氏:ACKSシリーズは若い世代が開発しています。年齢は私が一番上で、他のメンバーも30代~40代が中心で、イデオンのジャスト世代よりは全体的に若いです。アニメ作品に対して何かをきっかけに過去の作品が好きになるということはあって、リアルタイム世代でなくても情熱を持って企画を進められる環境は揃っていますからね。そこはユーザーさんについても同じで、今はリアルタイム世代でなくても受け入れてもらえる土壌はあって、ACKSもそこに受け入れられるコンセプトで作っています。
現在展開中のACKSシリーズのコンセプトに則り、プロポーション・可動重視の方向性を模索
――今回のイデオンは要所にデザイン的なアレンジやディテールが入っていますよね。原作に忠実に立体化しているパトレイバーなどとは印象が違いますが、この仕様とした理由はあるんですか?
齋藤氏:パトレイバーとイデオンではスケールが大幅に違うことが大きいです。パトレイバーの1/43に対してイデオンは1/450で、完成した状態も240mmと大きいので、原作のシンプルなデザインのままではちょっとのっぺりしてしまう恐れがあったんです。情報量的にも昔と変わらない印象になってしまうので、そこに対してメリハリをつけるために、細かいところにディテールや意匠を増やしました。
金田氏:逆にあまり意匠を増やしすぎてゴテゴテしてしまうのもまた違いますから、その塩梅はデザイナーとやりとりをしながら現在の形に仕上げました。
――デザイナーさんとは具体的にどんなやりとりをされたんでしょう。
金田氏:弊社の企画担当がコンセプトを伝えて、最初に立ち姿の3面図を起こしていただいて、そこに対して企画担当がイメージするボディラインなど要望を出して、それを繰り返してブラッシュアップしていきました。
弊社の場合、企画したコンセプトに対して担当者が納得できるデザインまで詰めるという点を重視していて、今回も担当が格好いいと思えるイデオンを立体化するために外部のデザイナーに依頼をして、特に3面図からのプロポーション起こしは我々も加わって密に詰めていきました。
――全体的なプロポーションとしては、頭が小さめで脚が大きい印象を受けますね。
金田氏:イデオンの場合は巨大なロボットということで、昔のパッケージイラストなどもそうですが、下から煽る構図の印象が強いですよね。キットも下から見上げたときに迫力を感じてもらうために、下半身にボリュームを持たせて、よりイデオンらしさを強調しました。
――もう一つ印象深いのは肩の形ですよね。まっすぐだったものがブロック状になっていて、かなりアレンジされていました。
金田氏:肩のラインについては、設定をそのまま採用してしまうと角張ったボックスのような形になってしまいますから、かなり味付けをしています。可動にも干渉する場所ですから、引き出し式の関節を設けて独立可動させて、自然なポージングができるように設計しました。合体を意識しない中で、プロポーションと可動を重視して、ブロックごとのデザインで調整をかける手法で設計した結果ですね。
――脚の一部分などに、違う色のディテールが入っていますが、これはどういうイメージなんでしょう。
金田氏:現代解釈、というわけではないですが、造形として情報量を増やすために色を追加するというイメージですね。色ゆえのチープさが出やすい商品なので、そこに対して味付けとして色を足して、できるだけチープさを抑えるようにしたんです。ただこの色分けパーツについては、弊社のオンラインショップ限定版として、本体と同じ赤成形のランナーを特典として追加したものを販売しますので、お好みでそちらを購入いただければと思います。
齋藤氏:成形色にも実は結構こだわったんですよね。昔のイデオンのキットのままの成形色ですとチープさが際立ってしまうんですが、それが出ないように少し明度を落として、未塗装でも重厚感が出るような色に調整しました。
金田氏:アニメのイデオンはもう少しオレンジに近い色なんですよね。そこで今回、ガイアノーツさんとコラボして、劇中に近い本体色のカラーを販売していただくことになりました。もし塗装ができるモデラーさんでしたら、お好みでそちらを使っていただいて、劇中に近い色で再現するのもいいかもしれません。
――パーツ構成や接着剤不要のスナップキットなど、プラモデルとしての設計でこだわった点はありますか?
齋藤氏:イデオンはデザイン的にはシンプルなメカなんですが、その分アニメでは相応にして動きますので、アニメのスチールやイラストなどで代表されるポージングに対して柔軟に動くような設計は強く意識しました。ミサイル発射や波導ガンを持つポーズなど、皆さんがイメージされるイデオンのポーズが実現できる可動は、このキットの目指すところでしたね。
金田氏:イデオンは色分けがそんなに複雑ではないので、色によるパーツ構成もそれほど複雑にする必要がないんです。細かいパーツがないので、接着剤なしのスナップキットの仕様に則った素組みの場合でも、完成させてからブンドドして遊ぶのにも向いています。関節強度も動かすことを念頭に入れているので、素組みで組んでガシガシ遊ぶ方向性も十分ありだと思います。
――パーツ構成はそれほど複雑ではないんですね。
金田氏:はい、場所によって機構を単純にして強度を優先していて、無理な構造はほとんど採用していません。そこは合体変形をにしなかった強みで、わかりやすい機構構造としたうえで、強度をしっかり確保して、アクション可動モデルとしては優秀なのではないかと自負しています。
――開発において苦労されたところはありましたか?
齋藤氏:イデオンソードを持たせるのがちょっと大変でした。長くて重心が変わってくるので、特別なポーズをするときの関節の強度出しをどこの塩梅にするかは結構調整しましたね。あまり強すぎても遊ぶのに支障が出ますし、弱いと強度不足で破損しちゃったりもしますからね。
金田氏:関節強度のようなプラモデルならではの調整はどのキットでもありますから、想定の範囲内ではありました。実際の設計自体はそんなに複雑な構成を含んでないので、コンセプトとデザインが決まってからは、それほど苦労はしたところはなかったです。そういう意味でこのイデオンは、総合的にもまとまったいいキットになったと思います。
――ユーザーの作りやすさなども意識されましたか?
金田氏:はい、そこは弊社としても目指すところですからね。弊社営業などにテスト的に組んでもらっているんですが、組みやすいという感想は上がっています。大きいゆえの組みやすさというのもありますよね。
齋藤氏:今回はシールもありませんからね。それも組み立てやすい要因かと思います。
スケールにおける検討事案もあるが、シリーズ展開は前向きに検討して行きたい
――今後のお話しも伺えればと思うのですが、このイデオンの発売後の構想などがありましたら、お聞かせ願えますか。
金田氏:ACKSのブランド展開の中に、マクロスやパトレイバーといったラインナップにイデオンが仲間入りするわけですが、おかげさまで予約の段階からがセールスが好調なこともありましたので、需要があるのであればシリーズ展開は考えていきたいです。ただイデオンの場合はスケールが大きく、さらに登場メカのサイズにも大きな差があるので、もし敵メカなどを出すのであれば、クリアしなければいけない部分も少なくないので、そこは慎重にしていきたいです。
――ユーザーとしては、色々な方向性を期待したいところですね。
金田氏:ありがとうございます。ACKSシリーズとしても、ユーザーさんからの要望は可能な限り受け入れて、このイデオンの発売後の反響なども考慮しつつ、今後のラインナップに反映させていただければと思いますので、今後とも応援していただきたいですね。
――ありがとうございました。発売を楽しみにしています。
(C)サンライズ