インタビュー
ゾイド「AZ-07 デスザウラー」開発担当者インタビュー
「破滅の魔獣」が復活! ムービングキット「ゾイド」の新たな歴史が幕開ける
2024年4月17日 00:00
- 【AZ-07 デスザウラー】
- 4月10日 予約開始
- 11月下旬 発売予定
- 価格:33,000円(税込)
タカラトミーは、同社の玩具シリーズ「ゾイド」より恐竜型ゾイド「デスザウラー」が25年の時を経て、「AZ-07 デスザウラー」として11月に発売する。価格は33,000円(税込)。
本商品はシリーズ40周年を記念したムービングキット「40th Anniversary ZOIDS」シリーズを経て、タカラトミー100周年ともに進化した(アドバンスド)した「ADVANCED Zi」シリーズとしてゾイドごとに設定したテーマを元に「再構築」・「洗練」・「練磨」を内包した最高峰ブランドとして立体化された。
「デスザウラー」は「ゾイド」シリーズの中でも圧倒的な強さを誇り、ジオラマストーリー「ゾイドバトルストーリー」では「死を呼ぶ恐竜」、アニメ「ゾイド -ZOIDS-」では「破滅の魔獣」と呼ばれ、帝国軍の最恐ゾイドと名高い機体だ。
ティラノサウルスのような巨躯に、両腕のハイパーキラークロー、尻尾の加重力衝撃テイルなどの格闘戦兵装に加え、各部に備わったビームガン、腹部のビーム銃座、尾の付け根にある16連装ミサイルランチャーなど射撃武器も搭載されている。
そして最大の武器である荷電粒子砲を備え、共和国軍のゾイドを一掃する圧倒的な強さを見せつけた。
「AZ-07 デスザウラー」の予約開始に合わせて、アニメ「ゾイド-ZOIDS-」にて「デスザウラー」を復活させた帝国のギュンター・プロイツェン(CV.大塚芳忠さん)によるPVが公開。さらに、「ゾイド」初期のCMを彷彿とさせるジオラマを使用したCMも公開。
昭和、平成で共和国軍の最大の敵として立ちはだかった「デスザウラー」が令和の時代に再び蘇り、どのような進化を遂げているのか?
今回「AZ-07 デスザウラー」の試作品の写真を交えつつ、本商品を担当されているタカラトミー ホビーキャラクター事業室コレクターズ事業部のスペシャリスト・中瀬崇嗣氏にお話を聞いた。
中瀬崇嗣氏は「AZ-01 ブレードライガー」から「AZ」シリーズを手掛け、今回も新たな仕掛けが仕込まれている。
ムービングキット「AZ」シリーズの新たな幕開けを飾る「デスザウラー」
――最初に「AZ-07 デスザウラー」立体化の経緯をお聞かせください。
中瀬氏:「AZ」シリーズ(40th Anniversary ZOIDSシリーズ)のラインとしてアニメの主役機である「ブレードライガー」から「ライガーゼロ」、「ムラサメライガー」、「シールドライガー」、「セイバータイガー」、「ライガーゼロフェニックス」を進めてきました。
その中でも「ゾイド」の「AZ」シリーズが過去に発売されました「マスターピースゾイド」(MPZ)シリーズの流れを汲んでいます。この流れを汲みつつ、アニバーサリー仕様ということで新しく作ってきました。一方で「40th Anniversary ZOIDS」シリーズからの続きで、ライバル機を出すというよりも先に‟動くゾイド”のラインとして、「これぞ‟ゾイド”だよね」という動力を搭載したキットを作ろうという話が上がりました。
中瀬氏:その中で「どのゾイドを最初に立体化するか?」という話に加え、今年はタカラトミーが100周年を迎えたこともあり、「最初にドーンっと凄いものを作ろう!」という流れになりました。
僕は開発当時は「ゴジュラス」を推していました。しかし、長年「ゾイド」シリーズに携わり、かつて月刊コロコロコミックで「ドクターT」としても活躍された田島豊さんが「デスザウラーだ」と推して意見が割れました(笑)。ただ「これぞゾイド」という意味でキャラクタライズはもちろんデザイン的にも「デスザウラー」は悪役的な造形となっていますし、アニメでも印象的だったということもあって決定しました。
デザイン、機構まで言い出した田島と二人で数10年ぶりに一緒に開発しました。
中瀬氏:基本的にコンセプトとしては「MPZ」シリーズの「ゾイドをもう一度ブラッシュアップする」というラインが発端で「40th Anniversary ZOIDS」シリーズに続いていきました。今回の「ADVANCED Zi」シリーズでもコンセプトの根っこの部分は変わっていません。
なので、「AZ」シリーズという略称は引き続ぎつつ、新しいブランドとして「AZ-07 デスザウラー」の商品化となりました。
――「ADVANCED Zi」シリーズとして新しいスタートを切るゾイドとして今回の「デスザウラー」が生まれたわけですね。
――「デスザウラー」は過去に2回キット化されていますが、過去商品との変更点や進化した部分を教えてください。
中瀬氏:一つは旧キット(過去のキット)からすでに「デスザウラー」の完成度は非常に高いものでした。発売当時の僕は小学生で、共和国軍推しで「ウルトラザウルス」が出てきて「共和国軍は無敵だ!」と思っていたところに帝国から「デスザウラー」が登場し、「こんなに凶悪なデザインがあるのか」と衝撃を受けました。
デザイン的には当時から完成されていると思っていますが、今回新たにキット化するにあたり「完成されているデザインを現代だったらどのような形になるのか?」というところをリファインしています。
1回目のキット化は昭和時代、40年近く前になり、2回目は1999年、平成時代のアニメ放送時期で「デスザウラー」はそれぞれの時代で圧倒的な敵メカとして大活躍をした印象もあります。アニメから来るイメージであったり、初期のキットを買ってくださったファンのイメージであったり、そうした部分を裏切らないようにそれでいて新しさを感じられる「これが今見える『デスザウラー』の決定版」という方向でデザインを決めていきました。
細かい部分のデザインは変更していますが、パッと見た時のシルエットは「デスザウラー」の恐ろしさ、凄さを感じられるように作っています。
――パーツの色分けも旧キット以上に洗練されているのでしょうか?
中瀬氏:旧キットで言いますと歩行はするけど動く箇所自体が少なかったので、歩行以外の部分でも動くようにブラッシュアップしています。
そのため本製品では旧キットよりもパーツが増えています。カラーリングに関しても細かくパーツ分けしたところを赤と黒の2色という方法もありますが、昭和の初期キットでは明るい赤色のイメージでしたが、平成のキットでは濃い赤、マルーンになっているので「この赤色が実はツートンだったかもしれない」という解釈を取り入れています。
明るい赤と暗いマルーン、濃い赤、クリアレッドを含めて4色の赤で色分けをしています。
また、黒に関しても少しグレーがかった明るい黒と濃い漆黒になっています。お腹周りが漆黒、首回りなどは明るいグレーとなっています。近くで見ると色の違いが分かるようになっています。遠目に見ると黒と赤の2色に見えるイメージを壊さないようにしつつ、パーツが増えた分色数は増やして緻密さを上げています。
――今回の「AZ-07 デスザウラー」でこだわったポイントはどこになりますか?
中瀬氏:こだわっている点はパーツ換装となります荷電粒子コンバーターなどアニメ再現です。元々、企画のスタート時が昭和に発売された初期キットのリファインとなっていまして、本キットの設定画でもキャップ部分がグリーンになっています。
中瀬氏:デスザウラーの決定版を作るにあたり、アニメで表現された荷電粒子砲や胸部のゾイドコアのイメージなどを追加していきました。背中の荷電粒子強制吸入ファンに関いてもアニメの第1部と第2部で劇中の大きさの違いもありますが、造形面で第2部では荷電粒子コンバーターになっているのでこちらも取り入れました。
本当はアニメのサイズ差を表現するために小さいブレードライガーをつけたかったですね(笑)。ゾイドコアも胸部が開いて中が見えるようになっています。
――旧キットや「AZ」シリーズでは1/72スケールとなっていますが、今回の「AZ-07 デスザウラー」はアニメイメージでノンスケールになるのでしょうか?
中瀬氏:本商品に関しましては1/72スケールとなっております。このスケールを変えてしまうとユーザーさんの「ゾイド」のイメージからずれてしまうのと並べた時のスケールの違いが出てしまいますから。アニメ版デスザウラーは、大きさの違いもありますが顔のデザインも小さくなっています。それを採用するとアニメ寄りになってしまい、初期のデスザウラーのデザインを捨ててしまうことになるので気を付けました。
そこでアニメとキットの人気の要素を取っていく方法にして、1/72スケールは変えずに立体化しました。
そのうえで旧キットとサイズ感は同じなのですが、足の長さが全然違います。また、尻尾も上げています。
――旧キットでは尻尾は下がっていて、タイヤパーツで支えていましたね。
中瀬氏:そうです。旧キットではタイヤで支えて歩行していましたが、「AZ-07 デスザウラー」ではしっかりとした足取りで尻尾を上げて動かせるようにしています。
中瀬氏:また、腕のパーツに関しても「AZ-07 デスザウラー」ではボールジョイントを採用していまして、表情付けが可能となっています。旧キットであった内側の爪も開きまして、旧キットできるアクションは極力押さえて、アニメで増えた表現を追加しています。
加えて各部シリンダーは動きに合わせて伸縮します。シリンダーに関しては差し色で金色が採用されています。アニメにはなかったカラー表現ですが、構造物やメカ生体として見た時にクオリティを上げるために採用しています。
中瀬氏:そして、本商品ではLEDの発光部分は増えています。目だけではなく、口の中や背中の荷電粒子強制吸入ファンが光ります。また、首の部分もライン部分も光るようになっています。
アニメでもありました荷電粒子を背中のファンから圧縮して首を伝って発射する部分を再現できないかとなと取り入れました。
――足回りの造形密度もかなり高いですね。パーツ点数も増えて、旧キットから歩行の動力の伝達も見直されているのでしょうか?
中瀬氏:そうですね。本来なら胴体から動力を受けて、膝を曲げて動かして歩行と本体を支える必要があります。このやり方法ですと膝が伸ばせなかったり、長さに制約ができてしまったり、足が上がらなかったりします。また、負荷がかかる部位でもあるのでリンク(伝達箇所)が増えるとひずみができてしまい、安定して歩行ができなくなってしまいます。
「AZ-07 デスザウラー」では太い脚部が2本立っていて、足元の内側にあるバランス用の爪部分に繋がっています。この2本を動力となる胴体のクランクに繋げて持ち上げて歩かせるようになっています。この部分ががっちりしているので、構造を単純化しつつ倒れにくいようにしています。
そして、その周りにリンクを組んでいき、足を上げると膝がぐっと曲がるように表現しています。なので、足の動きは動かすための太い柱のパーツで支えて、それと連動して動きを演出するためのリンクを組んでいます。
中瀬氏:この構成は「ゾイドワイルド」の「ゼノレックス」でやっていて、非常にシンプルなリンクでありつつ膝小僧を動かすことができました。これが動きの表現で効果的だったので今回の「AZ-07 デスザウラー」にも同じ方法を取りました。足が上がらないと野暮ったい印象になってしまうので、こうすることで足がぐっと持ち上がっているように見えます。
――首が動くのも旧キットにはなかったギミックですね。
中瀬氏:首の動きにも力を入れておりまして、首の可動軸の位置を前の方に設定してより首が前に出るようにして、動きはもちろんより荷電粒子砲を放つようなイメージに近づけています。
演出的にも首後ろの蛇腹箇所を旧キットだと1パーツで表現されていますが、「AZ-07 デスザウラー」では細かくパーツ分けしております。これによって、首の動きに合わせて伸縮するようになっています。
――これまでの「AZ」シリーズが「ブレイドライガー」をはじめ4つ足による歩行でしたが、「デスザウラー」の動きでこだわった点はありますか?
中瀬氏:「ブレードライガー」の際は前脚のつま先が内側に来る、地面を蹴るような動きで肩幅も狭めてよりネコ科らしい動きを追求しました。
「AZ-07 デスザウラー」では尻尾を大きく振ること、首の動きを入れることでなるべく全身が固くならないよう生物的な動きになるように気を付けました。
4つ足は動く部分が多いので動きが映えるのですが、2足歩行だとやもすると‟突っ立って歩くだけ”になってしまいます。上半身が動いていないという印象があるので、演出を派手にしてしっかり動きが見える様にしています。
――動きの点では胴体の肩口や股関節部分の動力部も回転しているのが見えて、目に見えて動いている箇所が多い印象になっていますね。
中瀬氏:そうですね。全身で動いているという動物的な見せ方や機械的に回っている部分、回転軸部分を見せてみたり、細かい部分では胴体に埋め込まれている円形パーツや装甲も連動して動いてます。
中瀬氏:また、シリンダーのゴールドとシルバーの部分は塗装が施されていますので、動いている時にキラッとしたものが見えるようにしています。アニメ準拠にするなら、シリンダー部分も色を落としてなじませるのですが、動いている部分なのであえて金属らしさを出したいと思い塗装を入れています。
――緻密な造形に動きの迫力と、「デスザウラー」の圧倒的ラスボス感が非常に伝わってきます。
中瀬氏:完全新規造形での開発で今年タカラトミーが100周年を迎えたこともあり、タカラトミーとしてものブランドIPとしても「ゾイド」を盛り上げていきたいと思い、ここで「ゾイドたるものは何か」、「ライガーだけではなく一番強いゾイドを出す」という僕らとしましても「AZ-07 デスザウラー」はひとつの答えかなと思っています。
――今回「AZ-07 デスザウラー」についてお話を聞かせていただきましたが、中瀬さんにとっての「ゾイド」シリーズの思い入れを伺えればと思います。
中瀬氏:そうですね。先ほども少しお話させていただきましたが、僕は「ゾイド」シリーズが好きで、小学4年生の時に買った「レッドホーン」が一番思い入れがあります。
中瀬氏:そこから「ゾイド」シリーズをやりたいと思い、当時のトミー(現タカラトミー)に入社してはや24年、ほとんど「ゾイド」に打ち込んでいる感じです。
また、僕は共和国軍が好きなのですが、「レッドホーン」は帝国のゾイドで「このゾイドはいいやつ。味方の機体」と勝手に設定して遊んでいましたね(笑)。帝国からの鹵獲機みたいな。
その点で「ゾイド」はどのキャラクターも魅力的で主役だと思っています。アニメによって主役機のイメージもあるかと思いますが、アニメ放送前はどのゾイドも主役級、自分が買ったゾイドが主役でした。その中で「デスザウラー」が出た時は衝撃的で「共和国軍が全滅させられる」と思いました。そういった思いもありつつ、今回の「AZ-07 デスザウラー」のデザインに関わらせていただいたことは感慨深かったです。
――「AZ」シリーズが「デスザウラー」を皮切りに新しくなっていくわけですが、今後の展開や目標はありますか?
中瀬氏:そうですね。人気のゾイドであったり、人気ライバル機は考えています。そのうえでやはり‟動くゾイド”、リアルムービングキットを継承していくのが「ADVANCED Zi」シリーズの役割だと思っています。より進化した、アドバンスドした新しいゾイドを出していければと思っています。
その中で新機体を「AZ」シリーズで立体化というよりは「旧キットでゼンマイ駆動だったゾイドが電動になった」、「当時は目が光らなかったのが光ってる」といった‟これをやってほしかった”というような大人になったファンの方が「あの頃の思い出がさらに膨らんで帰ってきた!」といった形も考えています。
――これまでアニメ主役機を中心に展開していたのが、「ADVANCED Zi」シリーズで人気の機体であったり「ゾイドバトルストーリー」で活躍したゾイドといったより幅が広がっていく感じでしょうか?
中瀬氏:ゾイドらしく動いて楽しいキャラクターやアニメに出ていなかった機体とかも展開できればと思っています。その中でも「‟動くゾイド”はこういうものだよね」と思っていただきたい。「ゾイド」の魅力を再認識していただけるようにしたいのでアニメ以外の機体も考えています。
なので、「デスザウラー」とはまた違ったベクトルで驚くようなものがあるかもしれません。
――今後も「ADVANCED Zi」シリーズでは驚きの展開がある?
中瀬氏:そうですね。いっぱい並べたくなる、集めたくなるようなゾイドを期待していただけたらと思います。
――最後にユーザーへのメッセージをお願いいたします。
中瀬氏:「ADVANCED Zi」シリーズとして、僕も旧キットに登場したゾイドを深掘りし続けていきたいと思っています。また、それ以外にも新しいカテゴリーの製品を考えております。ご期待にそえるようしてまりますので、引き続きご期待いただければと思います。
――ありがとうございました。
(C) TOMY (C)ShoPro
※画像は試作品を使用しています。実際の製品とは若干異なる可能性があります。ご了承ください。