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【日本鉄道模型ショー】鉄道模型の魅力を際立たせるジオラマパーツ!

古い建物、鉄橋、資料……。"鉄道が走る風景"を追い求める様々なやりかた

【第47回日本鉄道模型ショー】

10月22、23日開催

会場:大田区産業プラザ

入場料:1,200円

 鉄道模型メーカーが商品を展示販売する「第47回日本鉄道模型ショー」。本稿では鉄道模型を彩るジオラマパーツを取り上げていきたい。

 鉄道模型はジオラマと切っても切り離せない関係にある。鉄道模型の展示では車両単体の展示ではなく、大きなジオラマもセットの場合が多い。やはり鉄道が走る「風景」そのものを提示したいという想いが鉄道模型ファンの中にはあるというのを今回強く感じた。

 「第47回日本鉄道模型ショー」は2つのフロアで出展が行われていたがジオラマ関連の商品出展が多く、特に2つ目のフロアは鉄道模型よりもジオラマパーツ、そして関連パーツを扱うメーカーが多かった。本稿ではこのジオラマパーツにフォーカスしたい。

会場は鉄道模型中心と、ジオラマなど周辺のものが中心のフロアに分かれていた。こちらはジオラマ系が多かったフロア

 鉄道模型は自分で組み立てるプラモデルや、フィギュアとしての完成品モデルと大きく違うところは"動く"ところにある。レールに電気を走らせ車内のモーターを動かす鉄道模型は走ることでその魅力を100%発揮できる。このため個人だけでなく、鉄道をテーマにした博物館やテーマパークには鉄道模型が走る大型のジオラマが欠かせない。弊誌でも鉄道ライター・杉山淳一氏が「鉄道ジオラマ旅情」にて、ジオラマの魅力を紹介している。

 やはり鉄道模型は走る姿が特別だ。蒸気機関車の複雑な動輪とクランク機構によって連動する車輪の仕組みはもちろんのこと、何両の客車も牽引して走る電車、また小さな車体を揺らしながら走る路面電車も走る姿を見ることそのものが楽しい。

 「第47回日本鉄道模型ショー」ではジオラマの展示は少なかったが、ジオラマ製作を請け負うDDFは完成品ジオラマを販売するという形での出展を行っていた。受注生産で同じようなジオラマを作れるといった売り方をしていた。展示物で具体的に値段がついていた江ノ島周辺の情景ジオラマは40万円ほど。DDFは完成品ジオラマの販売だけでなく、ジオラマに使われる様々なオブジェクトも販売していた。

 またスケールモデルやガンプラのような動かさずジオラマに配置してその風景を楽しむというジオラマを販売するメーカーもいくつかあった。さらに情景全体を作るのではなく、いくつかの印象的なオブジェクトを配置させ他は想像力で補完しオブジェクトと車両で風景を楽しむというジオラマパーツもあり、イベントではこちらのラインナップが充実していた。

【ジオラマと鉄道模型】
ジオラマの受注販売
およそ40万円のジオラマ。細かいところもとても凝っている
ジオラマパーツ販売も
こちらは線路とその周辺の小さなジオラマ
鉄道模型を乗せるだけで雰囲気のある風景に
参考出展。ジオラマ製作の技術をアピール
独特の雰囲気

 地方の商店、懐かしい駅、今風のビルやボロボロの駅など生活感や時代間を強調した建物は鉄道模型のそばに配置するだけで独特の雰囲気を生み出す。さびたトタンを貼り合わせた建物などは"昭和"の雰囲気がある。筆者が子供の頃に見た風景で、ここに国鉄時代の車両を置くだけでノスタルジックな風景が浮かび上がる。また給炭設備やメンテナンス用のライトなど鉄道の設備ならではのオブジェクトを製作しているメーカーもあった。

 このほか、例えば線路の周辺に小さく草木だけを置いた「ディテールアップレール」といった小規模のジオラマも販売されていてこれは感心させられた。鉄道模型はレールがそのまま「ジオラマベース」になるのだ。

 お気に入りの車両を買って飾っておく。ここにジオラマパーツを配置することで雰囲気が増すので、ちょこちょこ買いそろえる。そうなるともっと凝りたくなり、いつの間にか大型ジオラマに……。というユーザーがいるかもしれない。ジオラマパーツはミニチュアとしてその単体でもとても魅力的だった。ミニカーなどと組み合わせるのも楽しそうだ。

こちらは台座を回転させ、様々な角度で楽しめる
ジオラマオブジェクトも多数販売されていた
こちらは鉄橋。組立式のキットだという
左右は実は同じ家の模型だ
このトタンパーツを貼ることで雰囲気がガラリと変わる
昔の建物を気軽に演出できる

 また、今回興味深かったのが鉄道模型向けLEDを販売していたメーカー。LEDの普及により鉄道模型の内部など限られた場所でもスペースを取らずに電飾を施せ、さらに色も調整できる。新しい車両なら明るく、古い車両ならレトロな感じの光を演出できる。また車載ライトや照明など情景での光の違いも表現しやすくなったとのこと。

 他にも様々なものが販売されていた。出展者の中にはプラモデルメーカーのプラムもあった。プラムは「重装騎兵レイノス」や「R-TYPE」、「シルフィード」などプラモデルファンのみならずゲームファンもその商品をチェックしているユニークなメーカーだ。

LEDを導入することで鉄道模型の本物感がさらに増す
キットとしての販売も
鉄道模型のコントローラーをコンテナ風に
資料もたくさん販売されていた
工具系も充実。鉄道模型をどう作っていくかなどの話も聞ける

 会場は「ここでしか買えないもの」を求めたファンが非常に多く、その熱量はかなりなものがあった。この会場全体から感じる「鉄道模型への熱」はどういうものだろう? 例えば車やバイクなど「スケールモデル」はジオラマにはここまで注力しない。金属パーツのディテールアップは盛り込むし、内装や外装をこだわりとことんまで実車を追求するが、大きなジオラマを作ったりする人はあまりいない。

 ジオラマ化というところでは、戦車などの「ミリタリーモデル」は近いところはあるかもしれない。その時代や雰囲気を調べ、資料を集め戦場の一場面を再現する。"その車両を中心とした世界を追い求める"というところには近いものがあるかもしれない。しかし一方で、戦闘という"非日常"ではなく、とことんまで生活感、実在感を追求するという点が大きく違う。

 筆者にとって、鉄道模型が描き出そうとしている風景と日常は想像しやすく、共感しやすかった。過去や地方など、車両と共にその時代や場所で生きている人達の生活を描く温かな雰囲気は、鉄道模型の大きな魅力だろう。活躍してる時代を感じたい、描き出したい、というのは鉄道模型の人達の想いとしては間違いなくあって、商品の売り方などにも郷愁を感じさせたり、その地方ならではの車両や建物を強調しているところも感じた。

 かなり奥深い世界であり、今回筆者はそれを本当にちょっとのぞいただけだが、正直今回の大盛況は驚きだったし、改めて鉄道模型という趣味のエネルギーを実感した。会場でファンとも話したのだが、ファンの誰もが線路を繋げて広いスペースで鉄道模型を走らせているわけではなく、お気に入りの車両と情景をちょこちょこアップデートするようなユーザーも多いようだし、モデラー的にディテールアップパーツで1車両にこだわるような人もいるという。資料集めとうんちくにこだわる人ももちろんいて、奥深いだけでなく、その関わり方は様々なのだ。

 「趣味の世界」は面白い。前知識がなくても興味があれば共感できたり感心することがあるし、他のホビーとの共通点や、独自性が見つかる。改めて日本の多彩なホビー文化を実感できたと思う。皆さんもこういったイベントをのぞいてみてはいかがだろうか?