レビュー

モデルガン「SAA.45ピースメーカー ヘビーウエイト 組立キット」レビュー

SAAを作った技術者の“工夫”が部品からしっかり伝わる組み立て

 「"SAA.45ピースメーカー" ヘビーウエイト 組立キット」の組み立ては説明書に従ってパーツを組み合わせるだけでできる。組み立てに使う工具もマイナスドライバー1本でできる。正直組み立てる前は「難しいかも」と身構えていたのだが、それは杞憂だった。

 最初の組み立ては「エジェクターチューブ」。SAA.45は近代リボルバーのようにシリンダーを横にスイングアウトして弾を一気に排出できない。エジェクターチューブの中のエジェクターロッドで一発一発押し出して排莢を行なう。チューブの中にスプリングとロッドを入れればOKだ。

 次は弾を取り出す「ゲート」を本体に取り付ける。ゲートを本体に取り付け、根元部分にスプリングとゲートキャッチという部品で外れないように固定する。次はカートリッジのリムを叩き、弾丸を発射させる「ハンマー」だ。

【組み立て開始】
ビニールにはネジ、スプリング、ハンマーにトリガーなど細かい部品がまとめられている。箱の中で開けて、必要な部品を取り出していく
エジェクターロッドの組み立て。チューブにスプリングとロッド部分を通し、「エジェクターロッドヘッド」を取り付ける
弾丸を装填する際に開ける「ゲート」を取り付ける
スプリングとゲートキャッチをゲートの根元部分に取り付け、ネジで蓋をすることで外れないようにする

 このハンマーには動作をなめらかにさせるためのローラーを組み込むのだが、昨今の組み立てキットは箱から出した状態で既にローラーが取り付けられている。この作業はかなり手こずる場合があったので、ありがたかった。

 ハンマーを本体に取り付ける際に、ハンマーと連動しシリンダーを動かす「シリンダーハンド」という部品も一緒に組み込む。シリンダーハンドは板バネが取り付けられていて、ハンマーの動きに合わせシリンダーの根元をそのハンドで押す。シリンダーの根元には金具がついていて、このハンドで押されることで回転するのだ。

 ハンマーの次はボルトとトリガーの取り付け。ボルトはハンマーが起きたときにシリンダーを固定する部品だ。トリガーは起こされた状態で固定されたハンマーを解放する。ハンマーを起こし(コック)、トリガーを引くことでバネの働きで激しくハンマーの先端であるハンマーノーズがカートリッジのリムを叩くのである。

【ハンマーを取り付ける】
ハンマーの組み立て。説明書の赤丸で囲った細かいローラーは組み立て済みだった
本体の溝(赤丸部分)に、シリンダーハンドを入れていく
【トリガーとボルトの取り付け】
トリガー(引き金)とボルトを取り付ける。ボルトはシリンダーをロックするパーツだ
部品を組み込みネジで固定していく

 ボルトとトリガーを取り付けたら、ダイキャストパーツであるトリガーガードと、バックストラップを取り付けていく。ハンマーは板バネの「ハンマースプリング」で作動するのでスプリングは硬く、一見組み付けるのが難しそうだが、実は基部を取り付け、たわめた状態でスライドさせるだけで簡単に組み入れられる。

 このあとシリンダーをセットすればほぼ完成である。ハンマーをハーフコック(半分だけ起こした状態)にすることでボルト部分はフリーになるので、ゲートを開ければスポリとシリンダーがはまる。シリンダーを貫通するベースピンを通し、ネジでロックさせればきっちりはまる。この状態で動作確認もしてみた。ハンマーを上げるとシリンダーが回り、ハンマーが固定される。トリガーを引くとハンマースプリングによりガチンとハンマーが打ち付けられる。

【ハートフォード「SAA組み立てキット」、動作チェック】

 最後はグリップの取り付けだ。キットには白く光沢のある樹脂製のグリップが用意されているが、筆者は以前購入してあった木製グリップを取り付けた。……すごくかっこよくなった。「俺の銃」という満足感がこみ上げる。かなりゆっくり作業したのだが、2時間もかからず組み上げることができた。

【トリガーガードを取り付ける】
まずトリガーガードにハンマースプリングをつける
銃本体に取り付け、スプリングを曲げてハンマーを押し上げるようにする。スプリングはかなり強いが、たわめてスライドするように差し込めば簡単にセットできる
バックストラップを取り付ける
シリンダーを取り付けベースピンを通す
以前購入しておいた木製のグリップをつけて完成だ
キットに同梱されているのは、樹脂製のアイボリーグリップだ

 ……実は筆者は「"SAA.45ピースメーカー" ヘビーウエイト 組立キット」を組み立てる前、かなり身構えていた。筆者は以前同じくハートフォードの「S&W M19 2.5inch HWナチュラル 組立キット」に挑戦したことがあり、その複雑さにかなり苦戦したのだ。

 以前組み立てたM19は「バネの集合体」ともいうべき非常に複雑な内部構造で、しかも部品をはめ込むためにはバネを押さえておいてからパーツをはめ込んだりと初めての挑戦にはハードルが高かった。こちらの組み立てには6時間以上もかかった。

 それに較べるとSAAは楽だ。部品図で較べてみると構造の複雑さが段違いなのだ。SAAはシングルアクションオンリーに対し、M19はダブルアクション、シリンダーのスイングアウトと、近代リボルバーとしての機能が盛り込まれている。SAAは1872年、M19は1955年製造。SAAからM19までは、70年以上の銃の進化がある。

【組立式モデルガン S&W M19との比較】
こちらはSAAの部品図
そしてこっちがM19の部品図。取り付ける部品数が段違いで、複雑なのがわかるだろう。しかもスプリングを多用しているので、手が滑ると細かいスプリングがどこかへ飛んでいきかねない
無塗装で組み上げたM19、ダイキャスト部分にヤスリがけをしてないので油が浮いたような光を放っている。動作をスムーズにするのも苦戦したが、だからこそ思い入れのある銃となった

 モデルガンの大きな魅力は「実銃の構造を学べるところ」にある。ハンマーを起こすと銃内部の部品がどう動き、どこの部品が機能することでシリンダーが回るのか、ハンマーがロックされるのか、ハンマーのピンがカートリッジのリムをどう叩くのか、それがわかる。それは非常に考え抜かれたシステムであり、様々な部品がなぜそうした形をしているのかがわかる。

 特に組立式モデルガンは車やバイクのスケールプラモデルのように、組み立てていくことで様々な開発者達が生み出した「銃の歴史/背景」も学ぶことができるのである。今回筆者は以前組んだM19とも較べてみて、そのシンプルさに驚かされた。

 しかし、ただシンプルなだけではない。ハンマーはスプリングをとどめるための溝や出っ張りが造型されているし、ボルトやシリンダーハンドの形状もこの形になるまで当時の開発者は試行錯誤を重ねただろう。そしてハートフォードだ。実銃は強度を考えて材質を選べるが、モデルガンは「遊戯銃」のため、使える材質は制限されている。そのなかでいかに強度を確保し遊べるものにするか、これもまたかなり難しい課題だ。モデルガンを組み立て、動作させることで、色々なことが感じられ、学べる。次ページではこの組み立てたSAAの細部をチェックし、遊んでみたい。