レビュー
モデルガン「SAA.45ピースメーカー ヘビーウエイト 組立キット」レビュー
2022年5月6日 00:00
SAAを作った技術者の“工夫”が部品からしっかり伝わる組み立て
「"SAA.45ピースメーカー" ヘビーウエイト 組立キット」の組み立ては説明書に従ってパーツを組み合わせるだけでできる。組み立てに使う工具もマイナスドライバー1本でできる。正直組み立てる前は「難しいかも」と身構えていたのだが、それは杞憂だった。
最初の組み立ては「エジェクターチューブ」。SAA.45は近代リボルバーのようにシリンダーを横にスイングアウトして弾を一気に排出できない。エジェクターチューブの中のエジェクターロッドで一発一発押し出して排莢を行なう。チューブの中にスプリングとロッドを入れればOKだ。
次は弾を取り出す「ゲート」を本体に取り付ける。ゲートを本体に取り付け、根元部分にスプリングとゲートキャッチという部品で外れないように固定する。次はカートリッジのリムを叩き、弾丸を発射させる「ハンマー」だ。
このハンマーには動作をなめらかにさせるためのローラーを組み込むのだが、昨今の組み立てキットは箱から出した状態で既にローラーが取り付けられている。この作業はかなり手こずる場合があったので、ありがたかった。
ハンマーを本体に取り付ける際に、ハンマーと連動しシリンダーを動かす「シリンダーハンド」という部品も一緒に組み込む。シリンダーハンドは板バネが取り付けられていて、ハンマーの動きに合わせシリンダーの根元をそのハンドで押す。シリンダーの根元には金具がついていて、このハンドで押されることで回転するのだ。
ハンマーの次はボルトとトリガーの取り付け。ボルトはハンマーが起きたときにシリンダーを固定する部品だ。トリガーは起こされた状態で固定されたハンマーを解放する。ハンマーを起こし(コック)、トリガーを引くことでバネの働きで激しくハンマーの先端であるハンマーノーズがカートリッジのリムを叩くのである。
ボルトとトリガーを取り付けたら、ダイキャストパーツであるトリガーガードと、バックストラップを取り付けていく。ハンマーは板バネの「ハンマースプリング」で作動するのでスプリングは硬く、一見組み付けるのが難しそうだが、実は基部を取り付け、たわめた状態でスライドさせるだけで簡単に組み入れられる。
このあとシリンダーをセットすればほぼ完成である。ハンマーをハーフコック(半分だけ起こした状態)にすることでボルト部分はフリーになるので、ゲートを開ければスポリとシリンダーがはまる。シリンダーを貫通するベースピンを通し、ネジでロックさせればきっちりはまる。この状態で動作確認もしてみた。ハンマーを上げるとシリンダーが回り、ハンマーが固定される。トリガーを引くとハンマースプリングによりガチンとハンマーが打ち付けられる。
最後はグリップの取り付けだ。キットには白く光沢のある樹脂製のグリップが用意されているが、筆者は以前購入してあった木製グリップを取り付けた。……すごくかっこよくなった。「俺の銃」という満足感がこみ上げる。かなりゆっくり作業したのだが、2時間もかからず組み上げることができた。
……実は筆者は「"SAA.45ピースメーカー" ヘビーウエイト 組立キット」を組み立てる前、かなり身構えていた。筆者は以前同じくハートフォードの「S&W M19 2.5inch HWナチュラル 組立キット」に挑戦したことがあり、その複雑さにかなり苦戦したのだ。
以前組み立てたM19は「バネの集合体」ともいうべき非常に複雑な内部構造で、しかも部品をはめ込むためにはバネを押さえておいてからパーツをはめ込んだりと初めての挑戦にはハードルが高かった。こちらの組み立てには6時間以上もかかった。
それに較べるとSAAは楽だ。部品図で較べてみると構造の複雑さが段違いなのだ。SAAはシングルアクションオンリーに対し、M19はダブルアクション、シリンダーのスイングアウトと、近代リボルバーとしての機能が盛り込まれている。SAAは1872年、M19は1955年製造。SAAからM19までは、70年以上の銃の進化がある。
モデルガンの大きな魅力は「実銃の構造を学べるところ」にある。ハンマーを起こすと銃内部の部品がどう動き、どこの部品が機能することでシリンダーが回るのか、ハンマーがロックされるのか、ハンマーのピンがカートリッジのリムをどう叩くのか、それがわかる。それは非常に考え抜かれたシステムであり、様々な部品がなぜそうした形をしているのかがわかる。
特に組立式モデルガンは車やバイクのスケールプラモデルのように、組み立てていくことで様々な開発者達が生み出した「銃の歴史/背景」も学ぶことができるのである。今回筆者は以前組んだM19とも較べてみて、そのシンプルさに驚かされた。
しかし、ただシンプルなだけではない。ハンマーはスプリングをとどめるための溝や出っ張りが造型されているし、ボルトやシリンダーハンドの形状もこの形になるまで当時の開発者は試行錯誤を重ねただろう。そしてハートフォードだ。実銃は強度を考えて材質を選べるが、モデルガンは「遊戯銃」のため、使える材質は制限されている。そのなかでいかに強度を確保し遊べるものにするか、これもまたかなり難しい課題だ。モデルガンを組み立て、動作させることで、色々なことが感じられ、学べる。次ページではこの組み立てたSAAの細部をチェックし、遊んでみたい。