レビュー

モデルガン「SAA.45ピースメーカー ヘビーウエイト 組立キット」レビュー

本体を黒に、トリガーガードを真鍮色に! 塗装と組み立てを楽しむ

【"SAA.45ピースメーカー" ヘビーウエイト 組立キット】

2021年2月発売

価格:16,170円(税込)

全長:260mm

重量:650g

装弾数:6発

付属品:専用スタンダードカートリッジ6発付属

 モデルガンには「組み立てモデル」が存在する。組み立てモデルの大きなメリットは完成品に較べて安価である事だが、それだけではない。ファンはプラモデルのように塗装したり、加工することで「自分だけの銃」を作り上げる。このカスタマイズ性も魅力なのだ。

 今回取り上げるハートフォードの「"SAA.45ピースメーカー" ヘビーウエイト 組立キット」は、"西部劇の銃"を追い求めるハートフォードの看板商品といえるもので、数年に一度再販されるだけでなく、クロームメッキを施した「オール・シルバー」、早撃ち用のカスタム部品を組み込んだ「FDC(ファスト・ドロウ・カスタム)」といった組み立てモデル、さらには塗装加工した完成モデルなども積極的に販売している。

 今回、このキットをただ組み立てるだけではなく、ヘビーウェイト樹脂を黒染めに、トリガーガードとバックストラップ(グリップ部分)の金具を真鍮風に塗装してみた。組み上げるとかなり満足感のある仕上がりになった。組んで始めてわかったが、本キットは構造がとてもシンプルで初心者にもオススメだった。今回の完成写真で伝わると思うが、とても簡単にカッコ良く仕上がる。モデルガンははじめて、という人も、本記事を読んで挑戦して欲しい。

【ハートフォード「"SAA.45ピースメーカー" ヘビーウエイト 組立キット」をヘビーウェイト樹脂対応塗料“キャロムショット”で塗装してみた【モデルガンカスタマイズ】】
【"SAA.45ピースメーカー" ヘビーウエイト 組立キット】
SAAは細かい部品は組み立ててあり、モデルガン組み立てキットの中でも難易度は低いと実感した。再販も行なわれるのでオススメである。今回組み立てたのは銃身が5.4インチの「アーティラリー(砲兵)」と呼ばれるモデルだ
本体の黒色、トリガーガードの金色、木製グリップと質感もかなり良い感じになった

黒光りする銃身! 塗装で大きく変わる質感

 「SAA」は、「コルト シングル・アクション・アーミー(SAA)」という名前で、1872年、西部開拓時代終盤に生まれた回転式拳銃だ。1875年からはアメリカ陸軍に制式採用され、人気を博した。基本は45口径だが、当時のベストセラーライフルであるウインチェスターM1873ライフルと弾薬の互換性を持たせるためのモデルも多く流通し、ウインチェスターと共に「西部を征した銃」と呼ばれる。愛称の「ピースメーカー」という名前でこの銃を知っている人も多いだろう。

 実際の歴史ではSAAが生まれたのは西部開拓時代終盤と言える時代だ。しかし開拓時代後に作られた「西部劇」では小道具としSAAが積極的に使われた。さらにアメリカで大きな娯楽となった「ウェスタンショー」でも早撃ちの「ファストドロウ」、くるくると華麗に銃を回す「ガンプレイ」など、サーカス的なショーの小道具として積極的に用いられ、「カウボーイ」の銃としてのイメージを確固たるものとした。

【パッケージ】
シブイ雰囲気のパッケージ
パッケージの中には仮組みされた銃身やグリップと共に、ネジやトリガー、ボルト、ハンマーなどたくさんの部品がビニール袋に入っている。銃本体は金属粉を樹脂に練り込んだ「ヘビーウェイト樹脂」と呼ばれるもの。組み立てにはヤスリやカッターでつなぎ目やゲート跡などを取り除く必要がある

 SAAは現在でも生産されており、北米の銃の定番商品だ。また、最新のトイガンとしては4月に東京マルイがエアーコッキングガンとして戦後のモデルをモチーフとした「SAA.45 アーティラリー 5-1/2インチ ブラック」を販売、こちらも大きな人気を得ている。

 ハートフォードは数年に一度のスパンでヘビーウエイトのSAAの組み立てキットを販売している。前述した早撃ちカスタムや、メッキモデルも合わせると1年に1~2回はSAA関連商品が発売されていることとなる。今回は「塗装」というアプローチで、キットを組み立てたいと思い立った。

 塗装の前に必要なのが「ヤスリがけによる合わせ目とゲート跡の除去」である。ヘビーウエイト部分は昔のプラモデルのようにバリがあったり、合わせ目がはっきり出ているところがある。まずはこういった部分をヤスリでけずっていく。

 ゲートやバリ部分など大きなところは金属製の「棒ヤスリ」やカッターでしっかりけずった後、紙やすりで整える。紙やすりは500番くらいで表面をしっかりけずった後、1000番くらいの目の細かいもので整えていく。

 ゲート跡や合わせ目ははっきり出ているのだが、金属ヤスリでこするとかなり削れる。改めて”樹脂”であることが実感できた。形を整えるだけでなく、全部をしっかり紙やすりでこすることで、塗装が定着しやすくなる。

【塗装準備】
今回用意したのは「キャロムショット」というトイガンカスタムメーカーが販売する「ケミカルカラー」という塗料。そして金属製品の仕上げに使う日本磨料工業の「ピカール液」だ
銃本体はゲート跡やバリをカッターや金属ヤスリでけずり、その後紙やすりを全体にかけた

 今回、筆者のモチベーションを大きく上げてくれたのが、この塗装の仕上がりである。ヘビーウェイト樹脂は、プラスチックにダイキャストの粉を練り込むことで"重さ"を持たせた特別な樹脂だ。このヘビーウェイト樹脂に対応し、特にモデルガン向けに開発されたのが「キャロムショット」というトイガンカスタムメーカーが販売する「ケミカルカラー」という商品だ。いくつかの種類が販売されているが、今回は「ブラックスチール」という色を使ってみた。

 前述のように、まず塗料が樹脂に定着しやすいように、銃本体とシリンダー、そして金属部品である”エジェクターチューブ”も表面を紙やすりでけずった。500番くらいの目の荒いものと、1000番くらいの細かいものの2種類のヤスリがけをしてから、「ブラックスチール」を吹き付けた。そして一日以上乾燥させてからさらに重ね塗りし、3度の重ね塗りを行なった。

 乾燥させ、塗料がしっかりと銃本体を覆ったのを確認した後、金属の磨き仕上げをする「ピカール液」という液体金属磨きをつけ、布でこすると……ピッカピカになるのである! 正直これはかなり興奮した。塗装前と質感が全然違うのだ。スプレーでさっと拭いただけでこうなのである。「塗装ってスゴイ!」と思った。

【本体、シリンダーの塗装】
ケミカルカラーを吹きかけ、1日乾燥、という工程を3日間繰り返した
ピカール液で磨くと黒光りする感じに! 無塗装とは大きく質感が変化した
シリンダーもギラリと光る感じに
こちらはダイキャスト製のエジェクターチューブ。同じくケミカルカラーで染め、ピカールで研磨した

 これだけ塗装がうまくいったので欲が出てきた。トリガーガードやバックストラップ(グリップ部分)は金属パーツを使っているのだが、これを”真鍮色”に染めてみたいと思ったのだ。ハートフォードのモデルガンで、SAA以前の古式銃で使われていた真鍮製のトリガーガードがカッコ良かったので、ぜひこの銃の金属パーツも真鍮風にしようと思った。

 金属パーツと言ってもモデルガンはダイキャスト(亜鉛合金)だ。鉄を前提とした金属用の塗料では定着が悪いかもしれないと、「プライマー(下地塗り)」も使ってみた。まず下地を塗って1日乾かし、2度塗り。そこからさらに丸2日かけて真鍮色のスプレーを吹き付けてみた。結果こちらもかなりきれいに仕上がった。

 しかしやはり金属への塗装は強くこすることを前提としてないようで、グッと掴むと塗料が少しはげた。SAAの組み立てキットでネットを探しているとき、塗装でトリガーガードを真鍮色にしていない人がいなかったのは、やはり塗膜が強くないからのようだ。……ただ、この塗装はかなりカッコイイ。あえてこのままキットを組むことにした。

 特に「ケミカルカラー」での銃本体の塗装はしっかりヘビーウェイト樹脂に塗膜が定着し、しかも磨くと光を放ちかなりオススメである。筆者にとって初めてに近いスプレー塗装だが、案外うまくいった。もちろん細かく見ると泡が出ていたり、塗料がたまってしまっているところもあるが、充分及第点だ。これがどのように組み上がるのか、次ページで紹介したい。

【トリガーガードとバックストラップ】
同じくハートフォードの古式銃モデルガン。こちらは完成品だ。この金色の真鍮のトリガーガードがカッコ良かったので、真鍮色に染めることにした
アサヒペンの「メッキ調スプレー」、定着を良くさせるため下地塗りとして「メタルプライマー」も用意した
無塗装のトリガーガード。紙やすりでこすると光沢を放つくらいまで研磨できる
下地塗りに1日、真鍮色を塗るのに2日かけた。どちらも5時間以上乾燥させてから次を吹きかけ、下地は2回、真鍮色は3度吹きかけた
バックストラップ。きれいに塗れたように見えるが、組み立てや撮影で手で強くこすった部分は剥がれてしまった。金属塗装スプレーは鉄には定着するようだが、あまり触らないことが前提なのかもしれない