レビュー
プラモデル「頭文字D 拓海のハチロク」、「頭文字D 啓介のFD」レビュー
初回特典にマンガ風ペーパークラフト付属! 作中そのままの雰囲気に!
2023年12月14日 00:00
- 【頭文字D 拓海のハチロク】
- 【頭文字D 啓介のFD】
- 11月30日発売
- 価格:2,200円
- スケール:1/32
- パーツ数:41(FDは34)
アオシマはしげの秀一氏のマンガ「頭文字D(イニシャル D)」をモチーフとしたプラモデル「頭文字D 拓海のハチロク」、「頭文字D 啓介のFD」を発売した。これまで実車をプラモデル化していた「ザ・スナップキット」初の、架空のキャラクターモチーフとした"キャラモデル"となる。
「ザ・スナップキット」はアオシマのカープラモデルの人気シリーズ。加工されたボディは塗装せずともツヤツヤに仕上げられ、シールを貼ることで実車さながらに美しく組み立てられる。簡単に組み立てられ、値段も手頃なためコレクションする人も多く、人気のシリーズだ。
この"簡単にかっこよく仕上げられるプラモデルシリーズ"に、「頭文字D」の主役のクルマ2台が登場する。しかも初回生産分にはマンガの背景そのままの「つながる!『峠』ジオラマペーパークラフト」が付属、マンガの1場面のような飾り付けができるのだ。今回はいただいたサンプルを組み立て、プラモデルやジオラマの魅力を紹介したい。
時代遅れのハチロクが走り屋達と熱いバトルを繰り広げる「頭文字D」
最初に「頭文字D」という作品と、モチーフとなった2つのクルマを紹介したい。本作は赤城山やいろは坂など"峠"を走る公道を使って改造車でレースを繰り広げる「走り屋」と呼ばれる若者達の"バトル"をテーマにした作品である。
レースはサーキットでレーサーが行うものだけではない。公道だからできるレース、峠のダウンヒル(下り)だから、ヒルクライム(上り)だから早く走れる方法と、クルマがある。「頭文字D」はしげの氏の知識を活かしながら「峠最速」という独自のロマンを追求する作品なのだ。
主人公・藤原拓海は「藤原とうふ店」の息子。中学の頃から無免許で秋名山の峠を越え、秋名山にあるホテルまで毎日車で豆腐の配達を行っていた。彼は元ラリードライバーの父親から"特訓"を受け、自覚せずにその天才的なドライビングテクニックを磨いていたのだ。拓海は秋名山の走り屋に挑戦してきた、高橋涼介と弟・高橋啓介の高橋兄弟率いる、「赤城レッドサンズ」との出会いを経て、公道バトル(レース)の世界にのめり込んでいくこととなる。
今回モデルアップされた「頭文字D 拓海のハチロク」は拓海の愛車だ。正式な車種は「トヨタ AE86型スプリンタートレノ」、1987年まで販売されていたクルマで、2000年代を舞台とした作中ですら古いクルマだ。「藤原とうふ店」という店の名前まで貼ってあるこのクルマが、腕に覚えのある走り屋達に連戦連勝を決めていく。次々と現れる個性豊かなドライバーとクルマとギリギリのバトルを繰り広げていくのが「頭文字D」の面白さだ。
もう1つの商品「頭文字D 啓介のFD」は、高橋兄弟の弟、高橋啓介の愛車「マツダ アンフィニ FD3S RX-7 Type R」をモチーフとしている。啓介はもう1人の主人公と言えるキャラクターだ。啓介と拓海は高橋涼介が提唱する"公道最速理論"を実践するチーム「プロジェクトD」の2人のドライバーとして、茨城、埼玉、神奈川まで遠征、地元の走り屋と激戦を繰り広げていくのだ。
「頭文字D」の面白さは、クルマやレースに深い知識を持つ作者による独特のケレン味にある。クルマはただ強いエンジンや最新の車種が強いわけではない。各メーカーのそれぞれのクルマには優れた点と共に、苦手な点がある。そして峠という特殊なコース。直線が少なくカーブも傾斜もきつい、ぐねぐねと曲がる上に、道路によっては落ち葉が降り積もったり、雨が降ったりといったこともある。レース場とも、ラリーコースとも異なる独特の環境で、いかに速く走るか? 非力なハチロクがいかに勝つか? 少年マンガさながらの個性豊かなライバルと、クルマも面白い。
そしてカーブやストレートの緊張感のあるやりとりを描写するしげの氏の画風。流線と大きな擬音の描き文字。初回特典の「つながる!『峠』ジオラマペーパークラフト」は、完成したプラモデルをこのペーパークラフトに置くことで、より作中の雰囲気を実感できる商品となっているのだ。
少ないパーツとシールでしっかりした質感、完成度を実現する「ザ・スナップキット」
それではキットのパーツを見て、「ザ・スナップキット」の特徴を紹介していこう。「ザ・スナップキット」はパーツ点数41パーツ、接着剤不要のプラモデル初心者にもオススメの商品だ。
第1の特徴は"マテリアル感"だろう。磨き込まれたボディ、つや消しの黒い素材で作られた車内パーツ、細かく造型されたホイール、そして効果的に使われるメッキパーツと、パーツ点数を減らしながら各パーツの質感を追求することで、組み立てるとミニカーのような独特の高級感が生まれる。
そして第2の特徴が「シール」だ。窓枠やライト、マークなど本来細かい塗装が必要なところをこのシールでカバーすることで誰でも簡単に仕上げることができる。シールは細かいものが多いのでピンセットが必要となる。耐久性も高いので、曲がってしまっても張り直す事も可能。シールを貼ることでグッと質感が上がる。
さらに「頭文字D」ならではのシールも注目。レッドサンズのステッカーや、藤原とうふ店のペイントが用意されているところが嬉しい。それではまず「頭文字D 拓海のハチロク」を組み立てていこう。
サイドにしっかり描かれた「藤原とうふ店」! 拓海のハチロクを組み立てる
拓海のハチロクは通称・パンダトレノ、白と黒のツートンカラーだ。「頭文字D 拓海のハチロク」では白いボディに黒シールを貼ることでこのカラーパターンを表現している。このためシールの面積が広い。このキットの場合、数本のラインで黒を表現している。
シールは黒のカラーパターンの再現だけでなく、作中にも描かれたマーク、ウィンカーなども表現する。そしてやはり「藤原とうふ店」のペイントだ。このペイントを貼ることで手の中のプラモモデルが一気に"拓海のハチロク"になるのが楽しい。
「ザ・スナップキット」の特徴の1つがクリアパーツに貼る窓枠のシール。窓枠にシールを貼ることで一気に実車感が増すのだ。ドアの上についている雨よけ「ドアバイザー」やワイパーもシールで再現しているので部品点数を抑え、組立を簡単にしている。ガラス部分をボディにはめ込めばよりクルマらしくなる。
次は室内だ。「ザ・スナップキット」の設計の面白さは思い切った車内パーツの設計も大きい。ダッシュボード、シート、車内レイアウトなど従来のプラモデルでは1つ1つ接着して作っていたところを1パーツで成型、折り曲げることで室内が一気にできてしまうのだ。
この簡単構造だけでなく、「頭文字D 拓海のハチロク」の室内には、もう1つ大事な造型が加えられている。「正面のクーラー前のカップホルダー」である。拓海は父親にこのカップホルダーに水の入ったコップを入れて、水をこぼさないで走ることを命令された。これにより拓海は車体を揺らさない重心移動をたたき込まれた。この重心移動のテクニックは、拓海の天才的なドライビングテクニックの根幹を成している。そのカップホルダーがプラモデルできちんと再現されている。ファンならばニヤリとしてしまう要素だ。
次はシャーシ部分。「ザ・スナップキット」ではシャーシは非常に簡素だ。タイヤ4つを2本のシャフトでつなぎ止めるだけで完成だ。シャフトの位置は2種類用意されており、車高を落とした「ローダウン」で組み立てることが可能。今回は走り屋であることも考え、ローダウンにしてみた。
室内パーツとボディを付け、前後のパーツを取り付けていく。「ザ・スナップキット」はシールの上からクリアパーツをはめ込むことで実車のライトの質感を再現している。後方のブレーキランプやウィンカーも良い感じだ。パーツと作業量を少なくしながら実車らしさを実現する「ザ・スナップキット」の設計の面白さを強く感じられる部分だ。
「頭文字D 拓海のハチロク」はこれで完成だ。次は「頭文字D 啓介のFD」を組み立てていこう。
(C)しげの秀一/講談社