レビュー
「HG 1/100 YF-21」レビュー
差し替え変形の特性を活かし、YF-21ならではの各形態のプロポーションを追求
2024年1月19日 00:00
- 【HG 1/100 YF-21】
- 開発・発売元:BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部
- 発売日:1月20日(土) 発売予定
- 価格:4,730円
- ジャンル:プラモデル
- スケール:1/100
BANDAI SPIRITSは1月20日に「HG 1/100 YF-21」を発売する。本商品はOVA/映画「マクロスプラス」に登場する試作機で、次世代主力機の座を「YF-19」と争う。ライバル機のポジションだが、作中、現用機を寄せ付けない性能や、脳波コントロールによる特殊な操作性など印象的なシーンが多く、「もう1つの主役機」といえる存在である。
本商品はHG「マクロス」プラモシリーズ第4弾。これまで同様、一部に差替パーツを使用することで変形シークエンスを簡略化する「差替三段変形(ショートカットチェンジ)」を採用することでファイター、ガウォーク、バトロイドの3形態を見事に再現している。
特にYF-21は変形が特殊で、変形モデルの立体化が少ない機体である。プラモデルでどのように表現されているか、今回、発売前のテストショットをレビューしていこう。
先進技術を積極的に投入、危うさと力強さを併せ持つYF-21
最初にモチーフである「YF-21」を掘り下げていきたい。「マクロスプラス」は作中の2040年、「超時空要塞マクロス」で描かれたゼントラーディとの宇宙戦争「第一次星間大戦」から30年後の世界が舞台となる。
この時代、可変戦闘機の主力はVF-1からVF-11に移っていたが、統合宇宙軍は次期主力可変戦闘機を決める「スーパー・ノヴァ計画」を進めていた。この主力機の座を争ったのが「YF-19」と「YF-21」である。新星インダストリーのYF-19は、最新エンジンやピンポイントバリア、アクティブステルスなど最新の機器を搭載しつつもVF-11の発展といえる機体となっている。
一方のYF-21はゼントラーディ系の技術を積極的に採り入れるゼネラル・ギャラクシーが製造した機体。最大の特徴はBDI(Brain Direct Image)システムの採用。パイロットがコクピット内で精神統一を行うことで機体と神経接続を行い、まるで自分の体のようにイメージするだけで機体を操ることができる。各種センサーを自分の感覚として捉えることができるため、目や耳にたよらず周囲の状況を把握できる。
変形システムも多くのVF(可変戦闘機)とは異なり、メインエンジンはバトロイドの足ではなくバックパックに装備されており、手足をカバー内に収納するという変形を行う。このため緊急時にはファイター形態でデッドウェイトとなる手足を切り離し高速移動に特化した「ハイ・マニューバ・モード」(リミッター解除モード)になることが可能。YF-19同様ピンポイントバリア、アクティブステルスなどの最新装備も搭載されており、YF-19以上に最先端の技術を誇示する機体と言える。
一方でBDIシステムはパイロットが意図せず心の中で考えた挙動を実現してしまったり、精神統一が乱れパイロットが動揺してしまうと操縦不能になるなど不安定さも劇中では描かれた。またこの時代の機体は人体の限界を超える挙動を実現できるポテンシャルに達しており、高起動時のGが有人機の限界を指し示している。こういったポイントはこれ以降のVFの課題となっていく。
「マクロスプラス」ではYF-19を駆るイサム・ダイソンと、YF-21のテストパイロットであり、開発主任を務めるガルド・ゴア・ボーマンが激しく争う。2人は過去に因縁があり、時には感情をむき出しにして激しく戦う。
YF-21は特にOVA1巻の描写が秀逸だ。BDIにより人機一体となった操縦描写、新素材の採用に大きく形状を変える主翼、前方から発射されるおびただしいミサイルをすべて把握し的確に回避、試験用ドローンをすべて打ち落とす圧倒的な戦闘力。従来機のVF-11ではロケットブースターを使っても追尾できない圧倒的な機動性などまさに「次世代VFとはどんなものか」がしっかりわかる描写になっている。未見の人はぜひチェックして欲しい。
差し替え変形ならではの各パーツのアレンジ
それではランナーをチェックし、組み立てていこう。「HG 1/100 YF-21」のランナー数は10枚、パーツ数もそれほど多くない。ランナーは多色成型のA1、A2。基本色である青のB1、B2、C1、C2、そしてF。関節などの可動部が多い灰色のDと2つのEランナーで構成されている。マーキングシールは2つ用意されており、色分けの細かいところを補足する。組み立てるだけで設定画に近いカラーリングが実現できる。
やはり驚かされるのは成型色での色分けの細かさだ。VFならではの機種のセンサーや、試作機らしい黄色の差し色がパーツを組み合わせるだけでとても細かく再現できる。また関節の自由度も高く多彩なポーズも可能。YF-21の魅力をしっかり体感できるプラモデルとなっている。
最初は頭部の組立だ。中央に赤いセンサー、周囲に緑のセンサーを配置したYF-21の特徴的な顔、そしてまるでフードをかぶったような頭部部分を組み立てていく。ここで驚いたのが側頭部の機体ナンバー。シールで表現されているが、シールの位置を間違わないように一度ガイド用のシールを貼ってから中にナンバーのシールを配置、ガイド用のシールを剥がす方式になっている。実際の塗装工程のようで面白かった。
次は胴体。ファイター形態では機首部分を組み立てていく。この機首だがバトロイド形態ではずいぶん短い。「HG 1/100 YF-21」は差し替えによる変形表現をしているため、この機首部分はバトロイド形態のみで使用するパーツで、ファイター/ガウォーク用には長いものが用意されている。各形態でのプロポーションを追求しているのがよくわかる部分だ。また色分けの見事さを実感できる部分でもあるだろう。
次は背中部分。YF-21のメインエンジンは足ではなく背中に背負っている。このためバトロイド形態ではエンジンが搭載された背部パーツがバックパックのように配置される。背面パーツはファイター形態の胴体を形成する大型のパーツになるが、スライドさせることで面積を小さくできる。主翼も内側に折畳んで配置する。
ここに先ほど作った胴体パーツを組み合わせ、さらにインテークとなる胸部パーツを取り付けていく。これで上半身の完成だ。次ページでは手足を組み立てバトロイド形態を完成させた後、ガウォーク形態へ組み換え変形を行っていこう。
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