レビュー
「1/35 サンドランド国王軍戦車隊104号車」レビュー
BANDAI SPIRITSが送る、1/35スケールのミリタリーテイストあふれる戦車モデル
2024年3月14日 00:00
- 【1/35 サンドランド国王軍戦車隊104号車】
- 開発・発売元:BANDAI SPIRITS
- 発売日:2024年2月23日
- 価格:6,380円
- ジャンル:プラモデル
- サイズ:全高約110mm
鳥山明氏原作のコミックで、映画『SAND LAND(サンドランド)』に登場する戦車「サンドランド国王軍戦車隊104(ヒトマルヨン)号車」のプラモデルが、BANDAI SPIRITSから2月23日に発売された。
サンドランドを舞台に、悪魔の王子ベルゼブブ、魔物のシーフ、人間の保安官ラオの奇妙なトリオが砂漠の旅に出る物語の中で、一行が旅の途中に移動用の乗り物ととして乗るのがこの戦車で、作品のもう一つの主役ともいえる存在である。
現在はガンプラをはじめとするロボットやキャラクターが主流の同社のプラモデルだが、今回はミリタリープラモデルとジャンル付けして違和感のない、戦車をモチーフとしたプラモデルで、そのスケールも同ジャンル標準の1/35となっている。
鳥山作品で登場したメカのプラモデルは、過去にも「Figure-riseMechanics」や「メカコレクション」などで立体化されていて、今回はシリーズ名を冠さない単独の商品として発売となった。現代のBANDAI SPIRITSの技術力で再現されたフォルムや、1/35スケールで精密に立体化された主人公3人のフィギュアなど、魅力あふれるこのキットをレビューしていきたい。
※本稿は鳥山明先生ご逝去前の2月29日に組立・執筆したものです。鳥山明先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。(筆者)
砂漠をひた走る、車高の高い独特なフォルムの戦車を立体化。鳥山明氏のデザインセンスを細部まで再現
「SAND LAND」は、2000年に週刊少年ジャンプに掲載された、短期集中連載作品だ。1995年の「ドラゴンボール」連載終了後に描かれた作品の一つで、鳥山氏が描いていて楽しいという“老人と戦車”をテーマに据えている。
「SAND LAND」はサンドランド王国の悪政による水不足に悩む人々に懇願され「幻の泉」を見つけるために旅に出る老保安官のラオと、悪魔の王子ベルゼブブとお供の魔物・シーフの3人を主人公に据えたストーリーが展開する。鳥山氏自身がマンガを描くときの好みである「地味目で軽い内容」の「軽い」部分を抑え、ストーリー部分までしっかりと描いたという作品で、清涼感のあるストーリーとユニークなキャラクター達、そして細かく描き込まれた戦車を取り巻く描写は高く評価され、筆者も原作時代からその内容に魅了されたファンの1人として、時折読み返す愛読書として常に手元に置いている。
コミックはもちろん、昨年公開された映画も高評価で、この春には映画版に新たな物語追加したオリジナルアニメ「SAND LAND: THE SERIES」の配信や、その内容に則ったゲームの発売も決定している。
3人が旅の道中で手に入れる乗り物がこの「サンドランド国王軍戦車隊104号車」だ。物語の舞台となるサンドランド王国の最新鋭戦車で、武装は主砲と機関砲を装備。水を運ぶ飛行船を警備・護衛するためのもので、同じ戦車などとの戦闘は想定しておらず、攻撃対象に対し威圧感を出すために車高が高くなっている。そのため重量があり、重力をコントロールできる「反石(はんせき)」という特殊な鉱石を乗せて、車重をコントロールしている。
この104号車は、特別な機能のない一車輌にすぎないが、ラオの卓越した操縦技術とベルゼブブやシーフのサポートにより、同戦車隊の戦車3両を行動不能にした。
現実の戦車とは形状が大きく異なるこの104号車。特徴である車高の高いラウンドフォルムの車体は、キットではいくつかに分割されていて、パーツの中でもかなり目立っている。可動部分は少ないものの、色分けや戦車ならではの装備、そして内装の再現などによりパーツは比較的多めだ。さらにディスプレイ用の台座も付属している。
ジオラマテイストの台座から組み立てを開始。プラスチックシールを使ったロゴは美しく仕上がる
組み立ては台座から。パッケージイラストにもなっているベルゼブブが操縦してサンドランドを疾走する象徴的なシーンを再現できる台座で、土煙とともに履帯の跡がある地面が造形されている。また公式ロゴのパーツも付属していて、文字の部分に付属のプラスチックシールを貼って取り付けることで、立体感のあるロゴプレートが完成する。
車体下部足回りの組み立てに特に難しいところはない。ヘッドライトは素組みの場合クリアパーツの上にシールを貼る形で、接着面がやや小さめなのでちょっと貼りにくいことがあるかもしれない。シルバーカラーのマーカーなどで塗装すると仕上がりも綺麗なのでオススメだ。無限軌道は非可動だが、履帯は別パーツで塗装もしやすい仕様。履帯は7パーツに分けられていて、向きを確認しながら順番に取り付けていこう。
砲塔は劇中でも描かれた内部の主砲発射装置や座席も再現。キューポラのハッチは開閉可能で、主砲は上下に可動、スコープのカメラは劇中の通り上下左右に動かすことができるなど、芸が細かい。座席にフィギュアを座らせることはできないが、ハッチを開けて中を覗くと座席周辺を見ることができるので、内部を塗装して作り込むのも楽しそうだ。
(C)バード・スタジオ/集英社 (C)SAND LAND 製作委員会