特別企画

「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA 進捗報告会」レポート

「たかがメインカメラ」で失われた頭部が復元!? 動くガンダム、横浜に立つ!

 「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」というプロジェクトをご存じだろうか? 2014年より始まった、全高18m、実物大のガンダムを"動かす"という壮大なプロジェクトだ。巨大ロボットを実現する、何のために? どうやって? 正直「無理だ」と思う人も多かっただろう。しかしそれは実現しつつある。横浜・山下公園埠頭に、「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」という施設が作られ、そして徐々に「動く実物大ガンダム」が実現しつつあるのだ。

 今回、8月5日13時に配信された「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA 進捗報告会」では、横浜・山下埠頭のガンダム建造の進捗状況、そして”上頭式”というガンダム本体に頭部をドッキングさせる式典の映像が公開された。併せて関連グッズのガンプラの情報も紹介された。

 2014年の発表からずっとこのプロジェクトを注目していた筆者は、横浜に行く用事があれば(まだ何もないのに)可能な限り遠目から現場を見たりもしていたのだが、もうすでにガンダム本体は完成、頭部を乗せる段階にまで開発は進んでいたということで”……実現できるんだ!”という感慨を持って今日の配信を視聴した。実際の情報などは速報でお伝えしているが、本稿では改めて映像の内容と、自分の感想を語っていきたいと思う。

【『GUNDAM FACTORY YOKOHAMA』 進捗報告会】

ついに実現した"動く実物大ガンダム"!

 今回の番組にはサンライズ常務取締役の佐々木新氏と、BANDAI SPIRITS 取締役チーフ・ガンダム・オフィサー藤原孝史氏が登壇し、映像や商品を紹介した。映像ではまずはほぼ完成しつつあるガンダムに頭部を乗せる「上頭式」の様子を披露された。お祓いを行ない、徐々に吊り上げられた頭部は無事にガンダム本体にドッキングされた。

 ガンダム作品では「ターンエーガンダム」にて、戦場で頭部を本体にねじ込んで取り付けるシーンがあり、筆者もそのシーンを思い浮かべた。

 今回の実物大ガンダムのモチーフは「RX-78-2 ガンダム」。ア・バオア・クーでジオングに撃ち抜かれた「たかがメインカメラ」の頭部が復活を遂げる瞬間とも言える。実は今回組み立てられたガンダムには専用のバックストーリーがあり、型式番号も「RX-78-2 ガンダム」とは別なものが設定されている。

 動く実物大ガンダムこと「RX-78F00」は、戦後横浜に集結した技術者がガンダムのパーツを集めて修復・復元したものだという。つまり、失われたはずの頭部はなんらかの形でリビルドされたということなのだろうか。想像が膨らんでファン同士で語れる要素になりそうだ。

サンライズ佐々木氏、BANDAI SPIRITS藤原氏が登場、進捗とガンプラを紹介!
【頭部がついにドッキング!】
無事に頭部がドッキング、ガンダム横浜に立つ!

 佐々木氏は「動くガンダムに頭を乗せること自体が世界初、非常に興奮した」。藤原氏は「ドックのメカメカしさ、ガンダムの現物の動く関節のメカニカルなところが随所に見えてとても興奮した」とそれぞれコメント。外装の取付などは8月14日のメイキングの配信で伝えられるとのこと。こちらも楽しみだ。

 続いてポージングについて。今回は2つのポーズが披露された。1つ目は右手を振り上げた「ラストシューティング」、そしてターンエーガンダムでおなじみの両手を高く上げたさらに巨大感を演出するポージングだ。両手を上げるとガンダムの前方に両腕が張り出すことで眼前に大きく広がる立体感は現地で見たらとてつもない迫力なのではないだろうか。ぜひ現場で見たいと強く思った。

【2つのポーズ】
今回はまだ腕を動かしただけのイメージとなっているが、これに脚や頭部も動くだろうから期待が膨らむ!

 ポージングに関して佐々木氏は「実際に動いてみるとやはり迫力がある。いろんな角度から見れるのが見所だと思います。夜も見え方が変わります」とのこと。藤原氏は「Gドックから”ガンダム行きまーす”のポーズも見てみたい。24の可動箇所があるのでぜひ見てほしい」と語った。

早く手に取ってみたい!GUNDAM FACTORY YOKOHAMA Ver.のガンプラ登場!

 今回の映像での目玉は実際の実物大のガンダムに加え、このガンダムをモチーフとした2種のガンプラが発売されること。1つめが「1/144 RX-78F00 ガンダム&ガンダムドック」で、価格は2,750円(税込)。2つめが「1/100 RX-78F00 ガンダム」で、こちらの価格は3,960円(税込)。2020年内に公開が予定されている「 GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」で販売予定だが、それに先がけプレミアムバンダイで受注販売が行なわれ、9月より発送される。

 佐々木氏は「最初の実物大ガンダムは”ロールアウトしたばかり”の状態という設定だった。今回は”のちの世界の人たちが結集して過去のガンダムを再構築した”というバックストーリーがある」と語り、「F00」の意味は?と質問が飛ぶとそれは本公開のときに公開されるということで映像は途切れてしまった。とても気になるところだ。

 藤原氏は「全身のモールドを再現しなければGUNDAM FACTORY YOKOHAMAのガンダムじゃないというところでホビーセンターのスタッフが緻密に設計しています。現地で見たままのガンダムをおうちに帰って作ることができ、感動がよみがえってくるように作り込んでいます。1/144のGドックは簡易的な表現にはなっているが、ガンダムとGドック含めて緻密なディテールを楽しんでほしい。1/100はサイズが大きめになるのでよりパーツ分割するなど細かく再現しています。Gキャリアのモールドもあります。こちらにはビームライフルとシールドも付いています」と魅力を語った。

【動く実物大ガンダムのガンプラ発売決定!】
まさにGUNDAM FACTORY YOKOHAMAにある「RX-78F00 GUNDAM」がそのままガンプラに!
【ディテール】
ガンプラならではの作りやすさ、ディテール、可動を追及。早く手に取ってみたい!

 ガンプラは9月から順次発送とのことで、10月の本公開が延期された今となっては商品が届くまでは紹介ページを目をめいっぱい見開いて観察しながら”実物のディテールはどうか、可動はどこまでできるのか?”など妄想を膨らませながら商品の到着を待ちたいと思う。”ガンプラで予習しておいて、横浜で実物を確認する”という流れがとても楽しそうだ!なお、本商品はもちろん「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」イベント会場で販売される。

 そして最後に佐々木氏から「少し皆さんをお待たせしておりますが現在鋭意準備を重ねております。ぜひ皆さま楽しみにお待ちいただければと思います。」藤原氏は「現在着々と進行しています。次回9月下旬ごろにさらなる詳細の発表ができるものと思っております。」ということで、あと2カ月ほどあるが首を長ーくして続報を待ちたい。

 この配信終了後流された「Message from GUNDAM "BEYOND"」の映像が流された。このコロナ禍において世界中で耐え忍び、頑張っているみなさんに向けてのガンダムパイロットからの胸が熱くなるメッセージだ。とてもすばらしい内容なのでぜひご覧いただきたいとおもう。気持ちをひとつに!

【Message from GUNDAM “BEYOND”】

ガンプラももちろん大事!だけど現地に早く行ってみたい!

 1人のガンダムファンとして、今回の発表は特別に感慨深かった。その始まりは2014年だった。ガンダム35周年記念でいくつかのプロジェクトが発表されたが、その中で我々ガンダムファンが一番驚かされたのが「ガンダム グローバルチャレンジ」だったのではないだろうか。なにせそのプロジェクトは実物大のガンダムを”動かす”というものだったからだ。

 すでに”実物大 RX-78-2 ガンダム”はお台場潮風公園、東静岡駅前広場、お台場ダイバーシティ東京前(現在は実物大 RX-0 ユニコーンガンダム)と3カ所で公開されており、その初めての段階でさえ頭部は可動してデュアルアイをはじめ機体各所はLEDで光り、ミストを吹き出してプロジェクションマッピングと映像によって演出されてはいたので、”次は全身が動いて……歩いてほしいなぁ”と思っていたファンも多かったことだろう。

 当時からガンダム・ガンプラ40周年を迎える2020年、オリンピックイヤーでの公開に合わせてその巨大なプロジェクトが脈々と進められてきた。この企画立ち上げ時に広くアイデアが募集されたのも何か懐かしいトピック。この壮大なプロジェクトにロマンを感じてテンションが上がってしまった筆者も恥ずかしながらアイデアを送ってはみたものの今に至る……ということもあったなぁと感慨深くなったのだが、途中企画の進み具合もあまり報告されない期間があったこともあり皆さんもやきもきされていたのではないだろうか。

初期のGUNDAM FACTORY YOKOHAMAのティザーイメージ

 合わせて新型コロナの影響で建造作業は一時的に中断、再開されたものの「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」は7月の事前限定プログラム「スペシャルエクスペリエンス」の中止と10月の本オープンも延期となり、現在その予定はまだ決まっていないが現在の状況を伝えるべく本日の進捗報告会という運びとなった。

 実際、企画発表時は誰もが絵空事のように思っていたのではないだろうか。設定ではガンダムは全高18m、本体重量約43tとなっておりそれが”動く”ということの現実感がないのは想像にかたくないところだろう。そして一番の問題は安全面ということで、実際に歩くなどしてもし転倒などすることがあればその影響力は計り知れないことになる。

会場のイメージ

 動くことに関しては”実際に巨大な重機はあるので実現はできるのではないか?”という意見もあるにはあったが、それを組み合わせて可動する18mの巨大な人型マシンを作り上げるのは想像やこういった文章で書くほど容易ではないだろう。しかし2020年にいたり様々なトライアルと技術革新、担当された方々のアイデアでついにここまできたのだ。

 ただ補助もなく”動く”というのはやはり無理があるようで、ガンダム自体は単独で立つわけではなく”ガンダムキャリアー”という補助機構を用意し、ガンダム本体を腰部から支持することで全体を支えている。こうすることで転倒の可能性を限りなく無くすことができ、可動部を妨げることもない。なんだか現代の技術で身長18mの”からくり人形”を作り出したかのようだ。

 その発想は昔から大差はないところにも驚かされるとともに、”ガンダムキャリアー”での支持と聞いたときはちょっとがっかりした方も多かったのではないだろうか。ただそれによって”動く”の定義がさらに広がったことに筆者は後になってから気が付いた。すでに初代実物大ガンダムの頭部は動いていたわけで、”あと少しだけ”動いたとしても感動は薄かったのではないか?支持機構を持つことによって”さらに”動かすことができたらそちらのほうが我々が期待する”動くガンダム”といえるのではないか?と考えが変わっていって、毎週のように配信されている「動くのか?ガンダム いい大人たちの夢への挑戦!」が楽しみでその動向に注目していた

 全身を可動させるために内骨格を持ち、そこにFRPとカーボン素材で成形された外装を取り付けていくことで設定では約43tから実機で約25tを実現する。2015年に行なわれた「ガンダム GLOBAL CHALLENGE PRESENTATION~第一次先行発表会~」において早稲田大学理工学院教授の橋本周司氏の発言を引用したい。

 「1.8mの人間を基準に考えれば、18mのロボットの大きさに単純に拡大すると重さは1,000倍になる。さらに、腕を振ったり、脚を振ると単純にモノを持ち上げるのとは異なる“慣性モーメント”が働く。これは半径の2乗の力がかかります。これを実現するには10の5乗の力が必要になります。」という発言があったのだが、この数年の間に様々なアイデアと技術でこれをクリアしてしまったということだ。なんとロマンとリアルが融合したものだろうか。

 動くガンダムをガンダムらしく実現し懸案事項だった安全面も考慮され、本来ならすでに特別公開が始まっているこの時期、現地で見れないのははなはだ残念ではあるが、想像よりはるかにリアルに動くであろうその”ガンダム”をはやくこの目で見てみたいという気持ちが一段と強くなった!