特別企画

ヘタ仙人の「プラモデルを楽しもう!」、失敗したら指で消せ! 簡単にプラモデルの魅力を倍増させる「スミ入れ」の世界

「ウォッシング」を使うと、メカの質感が向上!

 冒頭で申し上げたとおり、スミ入れはプラモデルのモールドを活かして楽しむ手法なのですが、スミ入れ的な手法でもうひとつ、ぜひ試していただきたいものがあります。それが「ウォッシング」です。こちらのほうが、スミ入れよりも簡単かもしれません。スミ入れは、プラモデルのモールドに沿ってスミを入れましたが、ウォッシングはもっと大胆な手法です。

 なんと「はみ出しも気にせずドバーッと塗料を流し込み、はみ出したらうすめ液をしみこませた綿棒でこする」これがウォッシングの手法です。こうすると、グッと見栄えが良くなり、映画のスター・ウォーズに登場するメカっぽい雰囲気になるのです。

 今回は、GSIクレオスの「Mr.ウェザリングカラーマルチブラック」418円(税込)を使用しました。Mr.ウェザリングカラーは、ひとことで言えば「薄い塗料」です。ですから、毛細管現象を利用するスミ入れにも当然使えますし、今回のウォッシングにも使用可能です。

【Mr.ウェザリングカラー】
Mr.ウェザリングカラーと専用うすめ液
Mr.ウェザリングカラーの説明書き。スミ入れとウォッシングの両方での使用について記述されています

 そして、使うプラモデルはこちら!

【AT-ST&スノースピーダー】
BANDAI SPIRITS ホビー事業部のスター・ウォーズ ビークルモデル008「AT-ST&スノースピーダー」 660円(税込)

 BANDAI SPIRITSのスター・ウォーズ関連プラモデルは、そのラインナップのいずれも、とても細かいモールドが特徴で、それを眺めるためにだけ買ってもいいくらいです。特に手のひらサイズのビークルモデルシリーズは価格も安く組み立ても簡単で(もちろん接着剤いらず)、この精巧な模型がこんな価格で手に入っていいのだろうか? と思えるレベル。一度は手にとっていただきたいシリーズなのですが、今回はこのすさまじいモールドを、グググっと引き立ててみたいと思います。

 と、その前にMr.ウェザリングカラーで、まずはスミ入れの実験をしてみましょう。惑星ホスで大活躍したスノースピーダーを取り出して……。

【ウェザリングカラーによるスミ入れ】
Mr.ウェザリングカラーを筆にとって(薄めなくても薄まっているので大丈夫です)、チョンと乗せます。サーッと塗料がモールドに沿って流れます
なんだか汚くなっていますが……
はみ出した部分を、専用薄め液を含ませた綿棒でこすって取っていけばスミ入れは完了です

 というわけで、Mr.ウェザリングカラーはスミ入れが普通にできてしまうので、ペン型ではなくこちらを使うのもいいでしょう。ペン型との違いは、流し込みペンよりも塗料がサラサラしているので、よりモールドに流れ込んでくれるのがよい点、一方で、筆や専用薄め液、綿棒を使わねばならないので、多少道具の用意が必要なのが面倒な点、というところです。

 では、いよいよウォッシングを。といっても、実はスミ入れよりも作業は楽なんですよね。どばーっと塗りたくって拭き取るだけですから。

【ウェザリングカラーによるスミ入れ】
Mr.ウェザリングカラーを、ムラも気にせず全体にドバドバと塗りつけます。もともと薄い塗料なので、ムラは絶対にできますし、むしろムラがよいのです
ティッシュ(不織布でも当然OK)でザッザッと拭き取ります
綿棒で細かい微調整を。綿棒には、専用薄め液を染み込ませてもいいですし、敢えて乾いている綿棒で拭いてもいいでしょう

 ……これでおしまいです。そうなんです。作業工程としては、スミ入れよりも断然楽勝なんです。ウォッシングをすることで、スミ入れ的な効果=モールドを際立たせるとともに、プラモデル表面全体にわたって細かいムラというか濃淡ができて、スター・ウォーズの乗り物的な汚れが再現できてしまうというわけです。

 また、ざっと塗って拭き取るだけとは言いましたが、この拭き取りが楽しいんです。「えーと、天面は少し明るめにしたいな、結構拭き取っちゃえ」とか、「影になってるところは残し気味にしよう」とか、「スピード感出すために前から後ろに向かって流れる感じで拭き取ってみよう」とか、何度も何度も、こちょこちょといじってプラモデルの質感を変えていくことができるわけです。そして完成したのがこちら。

【完成】

 これは私が作業をしたので、なんだか幼稚園児が間違えて色塗っちゃった……みたいな感じにも見えますが、プロモデラーがやるとまた、全然質感が違ってきてかっこいいのです。とはいえ――とはいえたとえ私がやったとしても! 見ようによってはここまでモールドが引き立ち、使い古された機体感は出てきます。

 なお、ビークルモデルには色再現用シールも付属していて、それを貼れば差し色も効いてきてさらによいのですが、モールドの上から貼らねばならない箇所もあるため、ウォッシングとの兼ね合いから、今回は機体後ろに赤いシールを貼るに留めました。シールは極薄なので、モールドにグイグイとフィットさせることはできるのですが、自分のウデではちょっと危険かなと。

 また、コクピットのキャノピーは、スミ入れペンの極細ブラックでカキカキと塗りつぶしています。塗装してもいいな、という方は、シールを参考に部分塗装をしてからウォッシングしてもいいでしょう。Mr.ウェザリングカラーであれば、塗装した上から塗ることができますから。

【比較】
今回ウォッシングしたスノースピーダー(手前)と、パチ組んでシールを貼ったもの(奥)。質感が全然違うのがおわかりいただけると思います。どちらがいいかは、好みですね

 続いて、まさかの立体化と騒がれたAT-STでも遊んでみましょう。さてこちらは、スノースピーダーと違ってディスプレイベースがありません。ゆえに、全身にMr.ウェザリングカラーを塗りたくると、どこを持ったらよいものやら、わからなくなってしまいます。そこで、模型店などで売られているクリップ付きの竹串を使います。百均で売っている竹串に両面テープを貼ったり目玉クリップを使ったりしてもいいのですが、クリップ付きの竹串は便利なので、おすすめです。

 そして、こちらもスノースピーダー同様、Mr.ウェザリングカラーをじゃぶじゃぶと塗りたくっていきます。

【AT-ST】
クリップ付きの竹串を、塗料を塗らない場所に噛ませました
何も考えずに、とにかくじゃぶじゃぶと。じゃぶじゃぶ過ぎてダマになっていたりしますが、気にせず進めました

 なお、今回は撮影のために頭部と脚部両方同時にMr.ウェザリングカラーを塗りたくっていますが、作業工程を分けてもいいでしょう。

 そして拭き取りです。実はこの拭き取り作業、スノースピーダーよりも楽しかったりします。なぜなら、頭部側面の面積が広いので、Mr.ウェザリングカラーの「流れ」を考えて作業できるからです。具体的には、上から下に、雨だれ跡みたいな形でムラを流していくと、これまたカッコいいわけです。

 こうして、AT-STもザッザと拭き取って完成! としたいところなのですがちょっと待てと。グレーの本体色にブラックのウォッシングだけでは、なんだか色も単調で面白みがありません。そこで取り出したのはこちら。

【AT-ST】
頭部側面の平らな部分を拭き取っているところ
Mr.ウェザリングカラーの、グレーズレッドとフェイスグリーン

 Mr.ウェザリングカラーは、ブラックやグレーのほか、こうした鮮やかな色も用意されています。そして、カラー自体が鮮やかだからといって、実際に使用した際に鮮やかなままとは限りません。こうした塗料を少し重ねてやると、俄然見た目が複雑になるのです。ただ、使う場所は気をつけねばなりません。今回は、フェイスグリーンを足まわりに、グレーズレッドを頭部付近に、気をつけながらほんの少しだけ「チョン!」と足してみました。そして出来上がったのが、こちら。

【完成】
頭部前面、少し赤みがかったところやグリーンが入っているのがわかるでしょうか? また、足元はもっと極端にグリーンが入っています
側面下側にも、うっすらと赤が入っていて、ブラックと混じり合うことでサビっぽい印象になりました

 さいごに、パチ組んだだけのAT-STと並べてみましょう。ここまで違ってきます。

【比較】

 なお、ウォッシングしたAT-STの脚部前面中央に、いらぬ縦線が入っています。これはパーティングラインといって、パーツが成形される段階で、金型と金型の間にできてしまう線であり、本来はヤスリなどで削って平面を出したりするのです。特にウォッシングをする時は、こういうパーティングラインにも塗料が伝わってしまうのでそういう処理は大事なのですが、まあ、ちゃっちゃと遊ぶことが目的なので、今回は見なかったことにして完成させてしまいました。

 よく見れば(見なくても?)、ゲート跡も、実はろくにきれいにしていないままです。とはいえ、逆に言えばそこまでちゃっちゃと作っても、手軽な作業ひとつでこれだけ雰囲気が変わって楽しめてしまうのです。そしてウォッシングは、ビークルモデルをはじめとしたスター・ウォーズ関連製品の美しいモールドを存分に楽しめる手法なので、ぜひとも試していただきたいところなのです。500円ですよ!(いや、「約」が付きますが)ワンコインの模型がこんなに凄まじいデキなんです。これを楽しまない理由はないですよね?

 長くなりましたが、これにてスミ入れのご紹介を終わります。後半はスミ入れから一歩進んでウォッシングまでやってしまいましたが、どちらもやりかたは簡単なので、模型をきれいに仕上げたい(スミ入れ)か、ちょっと汚してみたい(ウォッシング)かでチョイスしてみてください。今回ご紹介したツールはいずれも匂いがほぼしないので、そういう意味でもお手軽です。