特別企画

プラモデル写真を100倍ステキに仕上げよう!

完成度を高める彩色と質感調整

 プラモデルに対する基本的なRAW現像が終わったら、もう一段の高みを目指そう。「創彩少女庭園」のプラモデルは基本的な着色がなされているが、メガネなどは無色となっていて色を塗る楽しみも残されている。ただ、パーツが小さいのできれいに塗装するにはそれなりの技術やツールも必要だ。

 塗装に自信がないのであれば、画像編集で試してみてはどうだろうか。実物への塗装では失敗するとやり直しが難しいが、画像でなら失敗を恐れず何度でもやり直しができる。ここでは無色のメガネに彩色を試みた。

 写真に詳しい人なら、このような画像編集を行う場合はLightroomと同じアドビのPhotoshopを使うのが一般的だ。細かく自然な画像編集ができる。だが、今回はここまで紹介してきたLightroomでトライしてみよう。選択した部分だけ編集ができる「マスク」という機能を応用する。

 実際にメガネを描画した勝田さん。多少の苦労もしたようだが、その仕上がりには満足していた。手間はかかるが、色や明るさは気分次第でいくらでも変更できるのが、この手法の大きな利点だ。メガネに対するコトブキヤの色の指定は赤だが、写真の雰囲気に合わせて透明感のある青にしたり、濃い紫にしたり、はたまたシックな黒にすることなどが簡単に行える。バリエーション豊かなプラモデル写真を展開できるのは、大きな魅力といっていいだろう。

 メガネの彩色が済んだら、次に行うのはメガネの「影」の描画だ。きちんと影を描くことで写真のリアリティも高まり、プラモデル写真としての完成度も増す。
 3つめの作業は瞳だ。メガネの彩色によってその存在感が強まったため、瞳の印象が弱くなってしまった。瞳が暗いと表情も暗く見えてしまう。メガネに負けないよう瞳を明るく輝かせよう。

 最後に処理するのは、スカートの質感。シボ加工による質感再現がなされているといえど、プラスチッキーな印象を感じる。質感を変えるというのはLightroomでは難しいが、光沢を抑えるという方向でできる限りの処理を行ってみる。

 プラモデル本体を確認しながら、ゲート跡の修正やメガネの彩色を考える勝田さん。はじめは操作に戸惑いながらも完成度の高い写真に仕上げたことで、Lightroomを使ったプラモデル写真の表現力の豊かさを実感したようだ。

01 メガネを彩色する

処理前
処理後

 「メガネに対する彩色は本当に難しかったです」と勝田さん。マウスでは思うように曲線を描けず最終的にはペンタブレットを使った。今回のメガネは形状が難しいゆえに描画に手間取ったが、例えばスカートやスーツケースなど、色や輪郭がはっきりとしているパーツに対しては簡単に色や明るさを変えることができる。そして描画を完成させれば、その範囲の色や明るさはあとから自由自在に変えることができる。実物のプラモデルは難しい、写真ならでのはメリットだ。

 使う機能は、マスク機能のひとつである「ブラシ」というツール。ドラッグして選択した範囲を指定した色や明るさにすることができる。

 メガネの部分を表示し、「マスク」ボタンを押して「ブラシ」を選ぶ。

 ブラシの設定ならびに採色のための設定を行う。色を変えるためには「色相」や「彩度」のパラメーターを使った。描画しやすい大きさに表示を拡大して作業しよう。はみ出した部分に対しては「ブラシ」のモードを「消去」にすればドラッグして消すことができる。地道な作業だが、きれいに仕上がった時の満足度は高いはずだ。最後に「完了」ボタンを押す。なお「完了」後でも、描画の範囲や色の変更が可能なので、何度でもトライして納得のいくまで仕上がりを追求してほしい。

02 メガネの影を描く

処理前
処理後

 メガネの彩色前もうっすらと影が落ちているが、メガネに色が着いたことで影もより濃くなるははず。それを考慮して影を足していく。影は立体感や奥行き感を感じさせる影の主役だ。どこに影を描くかだが、顔に当たっている光の向きやその影を見ると、メインの光源は向かって右上からだとわかる。影はその反対側、つまりメガネの左下に影を描けば良い。使うのはメガネの彩色と同じ「ブラシ」だ。

 新たに描画をするために「マスク」ボタンを押し、次に「+」ボタンをクリックして「ブラシ」を選ぶ。

 「ブラシ」の設定は「サイズ:3.0」「ぼかし:70」「流量:50」「密度:100」。また、影を描くための設定は「露光量:ー0.60」。これは向かってメガネの右側とブリッジ部分の影を描いたところ。メガネの外側だけでなく内側部部分にも影を入れている。ここでは「ブラシ」の設定で「流量:50」としているが、これにより重ね塗りが可能となる。薄い影を描きたければドラッグは1~2回、濃い影を描きたければドラッグを3~4回とすることで影の濃さの調整が可能だ。影が濃くなりすぎた場合は「消去」を選んでドラッグして影を消してからもう一度影を描画する。メガネ全体の影を描いたら「完了」ボタンを押して終了する。

03 瞳を明るく輝かせる

処理前
処理後

 少し暗い印象になってしまったメガネの奥の瞳を輝かせよう。メガネの彩色や影の描画では「ブラシ」を使ったが、ここでは同じ「マスク」機能の仲間の「円形グラデーション」というツールを使う。その名称から想像できるように円形の部分補正ができる機能だ。指定した円の中心から円周に向かって次第に効果が弱まるので、自然な印象で瞳を明るくすることができる。

 「マスク」ボタンを押し、次に「+」ボタンを押して「円形グラデーション」を選ぶ。

 「円形グラデーション」は「ぼかし:60」とし、輝く瞳にするために「露光量:1.50」「コントラスト:20」「彩度:20」とした。その設定で瞳の中心から外側部分に向かってドラッグすると瞳が明るくなる。ドラッグした円の形状が瞳の大きさや形に合わなくても、マウスを白い点を合わせてドラッグすれば円の大きさや形、角度を変更できる。もちろん「露光量」「コントラスト」「彩度」も調整し直すことが可能だ。

 残ったもう一方の瞳も明るくしよう。「マスク」パネルで「追加」を押して「円形グラデーション」を選ぶ。先ほどと同じ設定が適用されるので、もう片方の瞳の上でドラッグすれば同じように明るくなる。最後に「完了」ボタンをクリックして終了する。

04 スカートの質感を調整する

処理前
処理後

 プラスチックの光沢感があるスカートの質感を変えてみよう。勝田さんが気になっていた部分だ。プラスチックを布に変えることはできないが、プラスチックの硬質感を抑えて印象を和らげてみた。

 この質感調整も「ブラシ」を利用する。ただ、これまでと違うのは「自動マスク」というオプション設定を利用すること。このオプションにより「描画したい範囲だけ」を処理できるようになる。この作例ではスカートの輪郭の外側(背景や太もも)には描画の影響を与えたくない。「自動マスク」を利用するとその判別が自動的に行われ、スカートだけを処理することが可能になる。メガネの場合は輪郭が曖昧でこの機能を使えなかったが、色や明るさが異なって輪郭がハッキリしているスカートに対してはこの機能を使わない理由がない。

 実際に勝田さんが操作してみると思わず「Wow!」。「プラモデル写真の作品世界を追求する上で欠かせない機能になるのでは」とLightroomへの期待を寄せた。

 「マスク」ボタンを押し、「マスク」パネルの「+」ボタンを押して「ブラシ」を選ぶ。

 「ブラシ」の設定をし、「自動マスク」にチェックを入れる。また質感調整をするために「露ハイライト:-30」「シャドウ:10」「テクスチャ:-50」「明瞭度:-80」とした。その「ブラシ」でスカート部分をなぞっていく。画面はスカートの上半分をなぞったところ。気をつけたいのは、なぞる際に「ブラシ」の中心を示す「+」がスカートからはみ出さないこと。「自動マスク」は「+」が置かれている部分と近似する色だけを処理しようとするためだ。これさえ気をつければスカートだけを処理することは簡単だ。スカートの先など狭くなる部分に対しては、表示倍率を大きくしたり「サイズ」を小さくしたりして、きちんと対処する。最後に「完了」ボタンを押して終了する。