特別企画
杉山淳一の「鉄道ジオラマ旅情」、夏休みに見て欲しい「ロマンスカーミュージアム」
2023年7月22日 00:00
夜景が魅力的、デートスポットにもオススメ
ロマンスカーミュージアムのジオラマは夜が長い。約30分のプログラムは「小田急沿線の1日」として24時間を再現する。夜から朝の時間もしっかり見せる。その30分の合間に数分のショータイム「時間と距離のロマンス」がある。これは背景を存分に使ったプロジェクションマッピングと、音響、照明を組み合わせている。
このジオラマは日本でもっとも夜景が美しいジオラマだと思う。電車の各車両は照明を仕込んでいて車窓が明るく、走行場面はまるで銀河鉄道のようだ。約860棟の建物すべてLED照明を仕込んでいるから、新宿のまばゆい大都会と、箱根の静謐な夜の景色の対比もわかる。風景に組み込んだ人形は約7200体あり、そのうち1200体の人形は服装を着色し動作を表現していて、これらは何らかの物語を感じさせる。残り6000体がアクリルの人形で、いろとりどりの姿が夜景ににぎわいを出している。いわばモブキャラだけど、夜の主役は彼らだ。
ジオラマの「夜景のロマン」はデートスポットとしても適している。その意味で他の博物館ジオラマと一線を画する。ロマンスカーミュージアムは全館貸切の「Romancecar Photo Wedding」サービスを提供しており、夜景に2人のシルエットを描く写真を撮影できる。
風景の注目スポットを巡ってみよう。
新宿駅
高層ビル群が並ぶ新宿周辺。特徴的なデザインの建物はすべて許可を得ており、家電量販店の看板や垂れ幕も再現している。動くアイテムとして高速バスが1台。スーパーヒーローが蜘蛛のように壁を登る。駅前で少女がリードを離してしまった犬を追いかける。この犬と少女は、当初は警官と泥棒というアイデアもあったけれど、子どもの目線で見るものなので動物ネタに変更したとのこと。新宿駅1号踏切は、ジオラマで唯一の可動式踏切だ。
江の島
駅名は「片瀬江ノ島」、電車は「江ノ島電鉄」だけど地名は「江の島」だ。新宿発片瀬江ノ島行きロマンスカーは「えのしま」。江の島の地形、屋上のレジャー施設が再現されている。新江ノ島水族館ではイルカショーが行われている。海中ではダイビングを楽しむ人も。クラゲが動く姿も見つけられるだろう。
海老名
ロマンスカーミュージアムの地元として、かなりこだわって作り上げたとのこと。ショッピングモール「ビナウォーク」の広場でゆるキャライベントが開催されている。東名高速と海老名サービスエリアは、手前が約1/80スケールで、奥が約1/150スケールになっている。遠近法を巧みに使って違和感なく仕上げたところがすごい。
海老名上空
ジオラマの電車や建物に注目していると気付きにくいけれど、空を見上げると「小惑星探査機はやぶさ2」が上下している。はやぶさ2を研究しているJAXA(宇宙航空研究開発機構
)相模原キャンパスが沿線にある。はやぶさ2が持ち帰った「小惑星リュウグウ」の帰還カプセルと砂などのサンプルについて、2021年9月から巡回展示が行われている。その第1回はロマンスカーミュージアムで行われた。
ちなみに「はやぶさ2」の本体は「リュウグウ」の探査後、地球に降下しなかった。カプセルを投下しただけで、次の探査目的「小惑星1998 KY26」に向かっている。だからジオラマの「はやぶさ2」が上下する仕掛けは「地球にいったん近づいて、また旅に出る」というイメージでもある。
箱根エリア
箱根湯本駅前で「日本の伝統的な駅伝競技」が再現されている。正月のテレビ中継で、ランナーの奥にロマンスカーが映っている様子が再現されている。遠方で大涌谷の水蒸気が再現され、芦ノ湖では遊覧船が動いている。
江の島・鎌倉エリア
なお、ロマンスカーミュージアムでは2023年3月29日から2023年8月21日まで、企画展「ロマンスカーらしいデザインって何だろう?」を開催している。定期運用から離れたVSE(50000形)や、ロマンスカーSE(3000形)、NSE(3100形)の設計図などを展示するほか、京成スカイライナー(AE形)、名鉄パノラマカー(7000系)、西武Laview(001系)とのコラボ展示がある。私鉄指定席特急を運行する3社の展示を見る貴重な機会だ。ジオラマと合わせて楽しみたい。
ロマンスカーミュージアムのコンセプトどおりのジオラマだ。憧れのロマンスカーが颯爽と走る様子は気持ちいい。酷暑の夏は、涼しいミュージアムでジオラマを心ゆくまで眺めてすごそう。