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モデルガン「Mauser C96 Red9 発火モデル」の魅力に迫る!

歴史に残る名銃をこだわりを込めて再現、数百発の発火に耐えるモデルガンに!

【Mauser C96 Red9 発火モデル】

2月1日発売予定

価格:55,000円

仕様:発火タイプ

口径:9mm

銃身長:140mm

全長:308mm

重量:845g(カートリッジ含まず)

弾数:10発

素材:ヘビーウェイト樹脂

数百発の発火が可能なモデルガンを! 試行錯誤の末に生まれた快適発火システム

 「Mauser C96 Red9」は「ダミーカートリッジタイプ」が先に発売され、この機構を使って「発火タイプ」を製作するというのは最初からの予定だった。「ダミーカートリッジタイプ」の機構を使って、「発火タイプ」への調整を行なったのは、M氏という人物だ。M氏はトイガン設計のプロフェッショナルではなく、あくまで"趣味"としてこれまでモデルガンに関わってきた。

 M氏はモデルガン愛好家達には名前を知られた人物だ。彼は10年以上前に動画チャンネルでモデルガンの"改良"を行い注目を浴びた。M氏自身は町工場で金属やセラミックなどのプロフェッショナルであり、特にアルミニウムの表面処理に関わる仕事は長く関わっている。M氏はその素材工学や設計での知識を趣味のモデルガンに活かし、販売しているモデルガンを製造業のプロとして分析、改良を行い作動をスムーズにする動画配信を行い、モデルガンファンにその名を知られるようになった。A!CTIONは彼に白羽の矢を立て、M氏の協力の下発火モデルへの改良を行っていった。

【M氏】
今回ダミーカートリッジモデルから発火モデルへの改良を行ったM氏。モデルガンへの深い知識と愛を持つが製品開発は今回が初めてとのこと。素材工学や設計の深い知識と経験をモデルガンに活かすことで難しいプロジェクトを成功に導いた

 「当初、『発火タイプ』は『ダミーカートリッジタイプ』の数カ月後で発売する予定でした。しかし調整にまるまる1年もかかってしまいました。ダミーカートと、発火式は部品の内部部品の構成はほぼ同じです。設計も変わっていない。しかし実際は全く別物になっています。そうしなければ発火モデルにはならなかった。設計を変えずに発火の衝撃にいかに耐えられる機構を作るか、それが今回のチャレンジでした」。

 まず、「ダミーカートリッジモデル」と「発火モデル」の違いは何だろう? どちらも「Mauser C96の内部機構を再現した銃の模型」という点では同じだ。A!CTIONは「ダミーカートリッジタイプ」は実銃の設計をしっかり再現するため、北米でMauser C96の実銃を購入。分解し1つ1つの部品の3Dデータをとり、実銃の内部機構をコピーした。工場はこのデータを元に部品を作成、組み合わせていった。

【内部設計の違いは目ではわからない】
C96の内部機構。左がダミーカートリッジモデル、右が発火モデル。見た目や重量などはほとんど違いがない。しかし部品の微妙な形状や、貼り合わせなどで強度を増し火薬で作動するための調整が行われ、実はほぼ別物になっているという

 しかしモデルガンは「トイガン」である。製造には銃刀法による厳しい制限がかかっており、実銃で使われる鉄よりもはるかに強度の劣るプラスチックや亜鉛ダイキャストしか使えない。また3Dデータがあるといってもそれをただ組み合わせただけでは機構はスムーズに作動しない。実際、実銃でスライドを引っ張って排莢しようとすれば、かなりの力が必要となる。ダミーカートリッジタイプは手でスムーズに機構が作動するよう各部品の動作を軽くするための工夫や、スライドを戻すためのスプリングのテンションなどを細かく調整して作成された。

 発火タイプはこのダミーカートリッジタイプを発火用に調整する事が目標となる。発火タイプは薬室内でカートリッジの中の火薬を爆発させ、煙と音、火花を銃口から吹き出させ、さらにその火薬の勢いでスライドを押し、排莢と次弾の装填を行わせる。ダミーカートリッジタイプで手でやるアクションを火薬の爆発で行わせる。

 「まずダミーカートリッジタイプのC96に発火用カートリッジを装填して撃ってみたんです。きれいに発火し、ブローバック、薬莢が飛んだ。ああ、大丈夫じゃないか、このままで発火タイプへすぐ変更できるな。そう思いました。過去の記録やメモを見直すとものすごく楽観的でした。1発目がスムーズに動いたというのが大きかった。発火モデルにするのは簡単だと思いました。……しかしそこからがスタートでした。衝撃をどう逃がすのか、衝撃に耐えうる構造にするのか、そして大量生産する工業品でその耐久力を実現できるのか、様々な課題が出てきました」とM氏は開発初期の苦労を語った。

 どういったところが問題だったのだろうか? M氏は壊れた部品を見せてくれた。壊れた部分は銃のレシーバーの尻の部分。C96はライフルのような構造で、レシーバー内部でボルト(遊底)が動く。このレシーバー部分がブローバックの衝撃に耐えきれず割れてしまった。またボルトを手動で作動させるためのハンドルも壊れてしまう。ブローバックによる衝撃が真後ろに直撃するのがまざまざとわかる壊れ方だ。

 部品を取り上げてM氏は「見ていただくとわかるように、レシーバーの内部が四角いんですよ」。現代の銃はボルトは内部で動いたとき衝撃に強くするためにボルトが動く部分は弧を描いていて火薬が生む衝撃に強い設計になっている。対してC96のレシーバー内部は真四角で、この部分に衝撃が集中しそうだ。

 実は実銃でもこの問題は発生していたとのこと。ボルトが後退する勢いのままレシーバーが受け止められず、射手に当たってしまうことがあった。今回の発火モデルへの改良に当たり直面したのは同じ問題であり、この基本設計の問題が、50年間内部機構を精密再現したC96のモデルガンが生まれなかった理由の1つなのだ。

【破損したレシーバー】
レシーバーの右側面が大きく欠けてしまっている。内部のボルトの動きと火薬の圧力に耐えられなかったようだ
レシーバー内部が四角いのはその中を通るボルトも四角いから。ボルト自身や内部を丸く設計し圧力に強くすると言う考え方や技術がない時代の設計なのだろう
【ボルトと破損したハンドル】
四角いボルト。尾部のチャージングハンドルの付け根が折れている火薬で激しく押されるボルトの動きがどこに力がかかるかはっきりわかるこの圧力を抑えようとボルトを引き戻すスプリングを強化しても、今度はそちらに負荷がかかってしまう

 「Mauser C96は1896年の設計、100年以上前の銃です。なので、現代の銃以上に"鉄"という強度の高い素材に依存した設計になっていると言えます。このため、モデルガンで再現するのが難しい。マルシンさんは『M712』というフルオート射撃が可能な製品を過去に販売していますが、それ以降はどのモデルガンメーカーも挑戦していません。MGCさんは金属モデルを出しましたが、機構の動作に難があった。C96は素晴らしい機構ではあるけど、現代のモデルガンで再現するには非常に難しいモチーフと言えます」とM氏は語った。

 それならば衝撃に強くするために内部の設計そのものを変えれば良いのでは? と思ってしまうが、部品の形状を変えればそれは「モデルガン」ではなくなってしまう。内部の部品の形状そのものが、銃の進化の歴史であり、工業進化の歴史なのだ。「基本設計は動かさず、発火モデルとしての強度をきちんと確保する」という、矛盾すら感じさせる難題にM氏は立ち向かわねばならなかった。

 設計は変えられない。では何をするか? M氏が行ったのは部品の"調整"だ。金属の曲げの範囲を伸ばす、金属のプレートと樹脂を接着する。素材と部品の位置は変更できないが、金属と樹脂を接着することで複合素材のような耐久性を実現できるという。多くの制約の中、いかに強度の強い設計にしていくかの試行錯誤がこの1年だったとのことだ。

 改良のわかりやすい部分の1つが「エキストラクター」という、排莢の際にカートリッジをかきだす働きをする部品だ。ここも作動の衝撃で折れてしまう。ダミーカートリッジモデルと比較するとどのように形が変わっているのかしっかりわかる。中央にリブ(うね)が立っているのが確認できる。この構造にすることで割れに強い構造になったとのこと。実は強度そのものはダミーカートリッジモデルの部品の方が高い。この構造にすることで衝撃に強い設計になる。

【エキストラクター】
銃上部にあるのが薬莢を書き出すエキストラクター。黒いのがダミーカートリッジモデル、銀色が発火モデルだ
エキストラクター部分のアップ。銀色の発火モデルのエキストラクター部分には中央にリブが立っているのが確認できる。この改良により、エキストラクターが割れずにスムーズに排莢できるようになった

 諦めずに改良を進められたのはマルシンの「M712」の存在が大きかったとM氏は語った。現代のモデルガンとして使用素材をクリアして、内部機構の再現、フルオート射撃の実現をしているこの製品はM氏にとってお手本になり、プロジェクト成功の心の支えになったという。他の製品を見ても自分たちと同じ問題に突き当たり、どう回避しているか、もしくはそのまま押し通しているかがわかるとM氏は言う。過去の製品を研究した上で自分たちの「Mauser C96 Red9 発火タイプ」の設計を煮詰めていった。

 聞いているだけで苦労の連続であることが伝わる話だが、「一番苦労したところはどこか?」という質問をM氏にぶつけてみた。「やっぱりレシーバーですね」とM氏は答えた。C96はカートリッジが弾倉から銃身に向け前進し、ボルトで前に押し込めることで薬室を密閉する。弾丸が発射されるとカートリッジはその火薬の爆発力でボルトを後退させる。この時の圧力は凄まじい。

 キャップ火薬は0.01mgほどしか火薬は入っていないが、細いピンで激しく打ち付けられることで爆発、煙と火花、そして爆音を響かせる。そしてボルトを後退させる力は樹脂のレシーバーを壊し、ボルトについているチャージングハンドルを破壊するほど大きい。前述のようにボルトが四角いのも衝撃に弱い理由だ。レシーバーの後部が割れてしまうのは後退するボルトを止めるためだ。

 この衝撃を弱めようとボルトを引っ張るバネの強度を上げ、衝撃を弱めようとしても今度はバネを引き留める構造が壊れてしまう。どこか一部を強化しただけではダメで、どこの部分に衝撃が集中するか、どの部品をどう強化していくか、調整は何度も行われた。「Mauser C96 Red9 発火モデル」はこういった難題をクリアして製品化にこぎ着けたのである。

 こうした試行錯誤の末に実現した「Mauser C96 Red9 発火モデル」は数百発の発火に耐え、連射も可能なモデルガンになった。工場の生産力とM氏の知識と研究、何千発もの試射によって磨き上げられた設計が結晶となった製品と言える。

【カートリッジ】
モデルガンのカートリッジ。左の銀色の部品はデトネーターという銃の部品だ。モデルガンで使用するためにはカートリッジを分解、キャップ火薬をセットする。M氏はテストに当たり毎回数十発を火薬に詰めて試射を行った。使用後は再び分解し内部を洗浄しなければ腐食してしまう。カートリッジは洗浄することで繰り返し使える

 ユーザーへのメッセージとしてM氏は「発売することができるようになりましたが、まだまだドキドキしているところがあります。モデルガン業界は製作するメーカーも少なくなっている現状がある。しかしだからこそ新しいモデルガンを生み出したいというA!CTIONの想いには共感しますし、モデルガンの楽しさを広めたい。少しでもユーザーを増やしたいという活動はできるだけ協力したいです」と語った。

研究と試作を繰り返し何百発の発火も可能となった「Mauser C96 Red9 発火モデル」。その発火と音の迫力が最大の魅力だ。ぜひ発火を楽しんで欲しい

 「Mauser C96ぼ発火モデルガンをこの世に出したい!」、「Mauser C96 Red9 発火モデル」はまさにその想いが結晶化した製品だ。モデルガンの発火は本体のダメージが小さくないため購入しても発火しないというユーザーも多いというが、「Mauser C96 Red9 発火モデル」はぜひ発火して製品のポテンシャルを味わって欲しい。ぜひ手に取りその快適な発火を自分の手で確かめて欲しい。