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「エアソフトガン超入門」 第4回:エアソフトガンの原点を「エアコッキングガン」と、精密射撃の「ボルトアクションライフル」から学ぶ!
2020年11月27日 00:00
エアソフトガンとは何だろう? エアソフトガンの基本を学び、その魅力に迫っていく「エアソフトガン超入門」。第4回のテーマは「エアコッキングガン」と「ボルトアクションライフル」だ。
「エアコッキングガン」という言葉に馴染みはないかも知れないが、これまで紹介したエアソフトガンのパワーソース、例えば「ガスガン」のガスや、「電動ガン」のバッテリーを使わず、手動でピストンを引き、ピストンが戻る力で空気を圧縮し、弾を撃ち出す方法と言えばストレートに意味が伝わるだろう。
昔実験で注射器の先端にコルクを詰め、ピストンを押してコルクを飛ばした経験を持つ人もいると思う。原理はあれと同じだ。空気の力で弾を出す、言わば「エアソフトガンの基本」を今回取りあげたい。
そしてこの「エアコッキングガン」のシステムを応用した「ボルトアクションライフル」。弾を込める動作をそのままバネを引くアクションに当てはめることで、狙撃ライフルのスタイルを再現した「ボルトアクションライフル」は人気の高い商品だ。「遠くのものに弾を当てる」というこちらもエアソフトガンの楽しさの“原初”のものと言えるかも知れない。
今回の教材はいずれもロングセラー製品である。2002年に発売されたエアコッキングハンドガン「コルト M1911A1ガバメント ハイグレード/ホップアップ」と、2009年に発売されたプレミアム限定ボルトアクションエアーライフル「VSR-10 プロスナイパーバージョン デザートカラー」となる。
エアソフトガンの原点である「エアコッキングガン」は「ガスガン」、「電動ガン」と何が違うのか、どんな魅力があるのか、その派生型である「ボルトアクション」とはどんなものか、さらに注意すべき点はどこか、様々なポイントを、東京マルイの広報を務めるデカこと島村優氏の解説で取りあげていきたい。
これまで「エアソフトガン超入門」は、ガスガン、電動ガンという、エアソフトガンの主流と言える商品をしっかり紹介している。今回その原点と言える「エアコッキング」のエアソフトガンを知ることで、それぞれの面白さがより深まるだろう。「エアソフトガン超入門」を読んで、魅力的なこの世界にぜひ飛び込んで欲しい。
スライドを引き1発1発バネの力で空気を圧縮する「エアコッキング」
これまで電動ガン、ガスガンを紹介してきたが、空気圧でBB弾を発射するエアソフトガンの仕組みの原型が「エアコッキング」である。人力でピストンを下げ、ピストンの後ろにあるスプリングが戻る力を利用して空気を圧縮し、その空気圧で弾を発射するのだ。空気=エアーで発射する銃だからエアガンと呼ばれる。
ガスガンは空気の代わりにガス圧で、電動ガンはモーターでピストンを動かす。エアコッキングガンは人力でピストンを引く。1回1回手で引かなくてはいけないため、ガスガンや電動ガンのような“連射”は厳しい。一方でリソースは人力のみなので、ランニングコストがかからない。
構造も極めてシンプルなので、メンテナンス性が高く、故障も少ない。結果として製品価格も低く抑える事ができるところは大きな魅力だ。サバイバルゲームにおいては、発射音以外にモーター音やブローバックの衝撃音がないので、静音性に優れている。といったメリットもある。
このようにエアソフトガン入門用であったり、安定した射撃ができるサバイバルゲームでのサブウェポンとして使われるエアコッキングハンドガンだが、今回教材として取りあげる2002年発売の「コルト M1911A1ガバメント ハイグレード/ホップアップ」は弾に回転を加え飛距離を伸ばす固定ホップ、一体成形のスライド、実銃を模したリアルサイズのマガジン、ハンマーのコック&ロックとグリップセーフティの再現など、モデルガンのような凝った外見と様々な機能で、エアコッキングハンドガンの完成形と言って良い商品だ。
そもそも本商品は、こちらもロングセラーとなるガスブローバック「M1911A1コルトガバメント」と共に同時に開発していた為で、それぞれ「決定版のガスブローバック1911A1」、「決定版のエアコッキングM1911A1」を造ろうという意欲があったから出来た事だったという。エアコッキングガンは低価格の商品だが、「コルト M1911A1ガバメント ハイグレード/ホップアップ」は実銃のリアル感を再現した、かなり満足度の高い商品と言えるだろう。
モデルとなる「M1911A1コルトガバメント」は、弾を発射する反動でスライドが引かれ次弾の装填とハンマーコックが行なわれるオートマチック(自動拳銃)の代表的な存在。米軍の制式拳銃として1911年から1985年まで使われ、今でも様々な派生モデルが使用され続けている人気の高い拳銃である。「決定版」として販売されたこの商品は、今でも人気が高い。
ゲームや映画で銃に憧れを持った人が、本物のような銃の玩具を手にしたいと思うのは自然な流れと言える。その際に、クラッシックな自動拳銃の代表的な存在である「M1911A1コルトガバメント」の本物のような外見を持ち、他のエアソフトガンと比べて安価な「コルト M1911A1ガバメント ハイグレード/ホップアップ」を選ぶ人は多いと島村氏は語った。
ただ手でスライドを引いてピストン用のバネを縮めなければならないので、本銃を撃つためにはかなりの力が必要となる。しっかりスライドを掴み、まるで弓を引き絞るように力を込めないと発射位置までスライドが引けない。初めて引いた時は「ここまで力がかかるのか」と驚く人も多いだろう。エアコッキングハンドガンはその価格帯で気軽に買い求めるケースも多いが、「スライドが硬すぎて引けない」という声も多く寄せられるとのことだ。
また、1発1発スライドを引かなければいけないため銃を構えての連射がしにくい。馴れれば右手で銃を構えたまま左手で素早くスライドを引くことができるし、気温などの環境下で性能が落ちないエアコッキングは独特の魅力があるが、ゲームやドラマの様に連射をしたい、リアルにこだわりたいという人は、結局物足りずにガスブローバックガンや電動ガンにアップグレードする人も多いとのこと。
実は筆者はこの「コルト M1911A1ガバメント ハイグレード/ホップアップ」をかなり長く愛用している。このためちょっとしたコツを掴んでいる。この硬いスライドを素早く引くには、スライド後部のミゾを引っ張ると難しいので、銃口に近いスライド前半分を上から掴んで後ろに移動させる感覚だと比較的やりやすいと思う。
とはいえ、ガスやバッテリーを必要とせず気軽に射撃が楽しめるエアコッキングガンはコレクションもしやすい。またエアコッキングガンのみでサバイバルゲームを行なう特殊ルールがあったり、独特の魅力を感じるファンも多い。他の商品同様に、エアコッキングガンはエアソフトガンの定番商品として今後も一定の人気を得続けるだろう。
東京マルイにおいてもエアコッキングガンの歴史は長い。それまで、組み立てキットのモデルガンや、低価格ながら凝った外観の組み立てキットのエアソフトガン(銀ダマ鉄砲の様にバネの力でツツミ弾を発射する。厳密には「エアー」ガンではない)で好評を得ていた模型メーカー・東京マルイが、万を持してエアコッキングハンドガン「ルガーP08」を発売したのは1985年12月。
電動ガンの回で振り返った様に、当時のエアソフトガンは製品と呼ぶには未成熟な物が多かったが、1,900円という低価格、しかも良く当たるという革新的な製品で、大ヒットし、「エアソフトガンの東京マルイ」の礎となった。
「ルガーP08」が革新的だったのは、当時量産エアソフトガンではおざなりにされていた、狙った的に当たる命中精度を具現化した事。その命中精度を現実化したのは精度の保たれたアルミ製インナーバレルなど様々な要因があるが、革新的だったのがBB弾に対し充分なクリアランスのあるチャンバーパッキンであった。
当時、バレルの根元で、発射までBB弾を保持するチャンバーパッキンは肉厚で、球のBB弾を「面」で保持して空気圧の吹き出しに対する踏ん張りが大事だとされていた。それに対し東京マルイのルガーP08は「線」で支え、銃口からこぼれない程度の張力しか持たない薄いパッキンはまさに革命であったという。
今の電動ガンにも薄いパッキンが使われている事、他社製品でも同様の形状である事を考えれば、いかに当時の東京マルイの命中精度に対するコダワリが、革新的で本質を突いていたかがわかるだろう。「ルガーP08」以後も東京マルイは「当たる1,900円」というブランドを確立させていく。さらにSMG、ライフルのエアコッキングガンのヒット作を連発、90年代に電動ガン、ガスブローバックでエアソフトガン市場を席巻する下地が確立されたと言って良いだろう。
東京マルイは多くのエアソフトガンを現在も製造・販売している。古くからの銃も改良を加えながらも販売をし続けているが、「ルガーP08」は絶版となっている。今回はこの「ルガーP08」の金型を活用した「バイオハザード」シリーズとのコラボレーションアイテム2001年12月発売の「アシュフォード・ゴールドルガー」を見せてもらった。ちなみに、オリジナル版は東京マルイ製品永久保存倉庫に未開封カートンが現存しているという。
この他、こちらも絶版の「南部14年式」もエアソフトガンマニアには高い人気だ。販売時には他の機種に比べて人気が奮わず、リメイクされないまま生産終了となった。
現在、東京マルイが販売している「エアーハンドガン」は15種類。全て固定ホップが付き、国内自社生産にこだわりながら3,500円という作業工程から考えると非常に抑えた価格で販売している。価格は驚異以外のなにものでも無い。電動ガン、ブローバックガスガンの発展ももちろん偉業だが、良い品を安く品質を保って作り続けている部分も、「物造り」にとっては大事な点であろう。
エアコッキングハンドガンは「エアソフトガンの入門用」と位置づけられる商品だ。一方、このエアコッキングの特性を活かし、臨場感たっぷりに射撃感を追求した商品がある。それが「ボルトアクションライフル」である。バネをたわめ、射撃体勢を取るエアコッキングのアクションをボルトを引いて次弾を装填する動作に置き換えた「ボルトアクションライフル」はハンドガンとはまた違った魅力がある。そして東京マルイならではの工夫があるのだ。次のページで「ボルトアクションライフル」の魅力を掘り下げていこう。