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「エアソフトガン超入門」 第4回:エアソフトガンの原点を「エアコッキングガン」と、精密射撃の「ボルトアクションライフル」から学ぶ!
2020年11月27日 00:00
ボルトアクションの決定版! ロングセラー「VSR-10」で誰でもスナイパー気分
「ボルトアクション」とは、ホンモノの銃では文字通り、「ボルト(遊底)」を動かして弾丸の装填、発射準備、空薬莢の排出を行なう機構のこと。実銃の世界では、19世紀から使われている伝統的な技術と言える。ボルトアクションは1発1発ボルトを手動で動かして次弾を装填する。
オートマチック機構の発明により、ボルトアクション式の銃は主流からは外れていくが、機構が単純なため信頼性、整備性、価格などに優れている。精密な射撃を行なうのにも向いているため、現在でも狩猟用、射撃競技用、さらには“狙撃用”のライフルなどに使用されている。
このボルトアクションを射撃の準備アクションに変換したのがエアソフトガンのライフルである。ガチャリとボルトを引き、再び戻すこの時に弾が装填される。ストックを肩に当て、ゆっくりと狙いをつけて、撃つ。まさに本物のライフルを撃っているかのような、緊張感のある射撃体験を楽しめる商品なのだ。
このボルトアクション、レバーを引き、戻す工程は、エアーコッキングのバネをたわめる動作に置き換えることができる。実際の銃を撃つためにボルトを引く作業でそのまま射撃体勢に入れるため、ライフルはエアーソフトガンにとってモチーフにしやすい題材だった。
このためエアソフトガンでは「ボルトアクション」はその黎明期からあった。だが東京マルイは2003年までこのジャンルに参入しなかった。エアーコッキングハンドガン「ルガーP08」やガスブローバックマシンガン同様、開発に当たって他社製品や機構を徹底的に研究し、このジャンルの決定版となるべき商品を時間を掛けて開発したのだ。
万を持して発売されたのが「VSR-10 プロスナイパーバージョン」、「VSR-10 リアルショックバージョン」であった。この銃の最初のアピールポイントは“価格”である。開発に当たって目指したのが「19,800円」というメーカー希望小売価格での「ボルトアクションの決定版」。「価格を先に決めてから開発をスタートする」というのは、東京マルイにおいては非常に珍しいと島村氏は語った。他社のエアコッキングボルトアクションライフルより低価格を打ち出すことで、最後発からのスタートという状況を覆す戦略でもあったという。
もちろん低価格だけをウリにした商品ではない。まっすぐ飛び、当たる、その精密な射撃特性を追求。そして特に他社製品から改善点を目指したのが、ボルトの引き具合、つまりはスプリングを縮め、BB弾を発射位置に送るコッキングの“軽さ”の追求であった。強力な射撃を実現させるため、強力なスプリングをたわめるため、他社の商品は射撃をするのにかなりの力でボルトを引かねばならなかったのである。
「VSR-10」は他社の製品とは段違いの軽さでボルトを引くことができる。スプリング、ピストンを格納しているシリンダーをフレームに接する面積を減らす特許技術「シリンダーサポートリング」を開発したことで、真っ直ぐ後ろにスムースにボルトを引くことができ、ずっと軽くコッキングができるのだ。
さらに引き金を引く重さ(トリガープル)、引く長さ(トリガーストローク)が調整できる。こだわりの射撃を実現できる「VSR-10」は大ヒットとなり、エアコッキングライフルの代表的な存在となるのだ。
ちなみに「VSR-10」は各機構などは実銃を参考にしているが、デザインそのものは東京マルイオリジナルである。これは、マガジンとチャンバーの位置の関係上、どうしてもホンモのスナイパーライフルのような設計にできなかったためだ。その後マガジンからBB弾を送る機構を開発しマガジンやチャンバーの位置を変えることが可能となり、実銃の姿をそのまま再現した「L96」、「M40」を製品化している。
なお、製品名の「VSR-10」は、銃と全く関係がない。MTR16は「マルチ・タクティカル・ライフル」の頭文字を名前としているが、VSRはそういった頭文字でもない。たまたま目にした「VGR-10」というABS(プラスチック樹脂)の原材料名を元に、真ん中をA→B……と変えていって、語感から「VSR」に落ち着いたとのこと。
エアソフトガンファンにとって、東京マルイの製品名だった「ハイキャパ(ハイキャパシティの略)」が、ダブルカラム45口径の代名詞となった様に、今や「VSR」もボルトアクションライフルの代名詞となっている。しかし、その名前は実は語感のみの思いつきだったとは……驚愕させられるエピソードである。
実際に「VSR-10デザートカラー」で狙撃してみる!
エアコッキングのスナイパーライフルというのはどういうものか、それを実感するにはやはり撃ってみるのが一番だ。今回はこの「VSR-10デザートカラー」と、「プロスコープ ズーム(3~9倍)」で、シューティングレンジで実写を行なってみた。今回は、千葉県白井市にあるサバイバルゲームフィールド「ホワイトベース」のシューティングレンジを使った。
東京至近には珍しい森林型のフィールドで、「VSR-10」の様なボルトアクションでのスナイパーも活躍の幅が拡そうなシチュエーションだ。「ホワイトベース」のシューティングレンジは、セイフティゾーン側のおよそ25mの物と、フィールド内に最長60mのロングレンジで2種類ある。
なお、シューティングレンジはサバイバルゲーム中が開催されている場合はサバイバルゲーム参加者が中心となっていて使えない会場が多いので注意しよう。シューティングレンジのみ使用したいという場合は、事前に問い合わせよう。「ホワイトベース」の場合はHPの問合せフォームから連絡できる。平日でも相談可能だ。ルールとマナーも事前に公式ページで学んでおこう。
最初は標準的な0.2gのBB弾から、ホップで上に上がりにくくなる0.28gの重量弾に変えて、ロングレンジへ移動。ホップも少し強くした。30mの的も的確に当たる。惜しくも外れても、人型には充分まとまっている。
以上、エアソフトガンの基本、エアコッキングとボルトアクションライフルを駆け足で検証してきた。「エアーハンドガン」の手軽ながら侮れない実力、「VSR-10」の初心者から上級者まで、室内射撃やサバイバルゲームに幅広く楽しめる奥深さがお解り頂けたろうか。
エアコッキングはエアガンの基礎を学べる。またこの機構を活用したライフルは本物さながら“狙撃”の楽しさを追求できる。実際はパワーの上限が法律で規定されている現在では、ガスガンや電動ガンに比べエアコッキングライフルの射撃でのアドバンテージはないし、連射できないので不利にもなりかねない。しかしスナイパーは“かっこいい”。このプレイスタイルに憧れ、一発必中を信条とするスナイパーとしてプレイスタイルを求める人は多いだろう。
静音性を活かし、サイレンサーを付けての隠密射撃などは有効だし、昨今では実銃のように弾数を制限した「リアルカウントシチュエーション」や、持つ銃を限定した「セミオート限定でのゲーム」などあえてより濃いロールプレイを楽しめるゲームも増えている。敢えてスナイパーとしてボルトアクションにこだわるというのも、とても楽しい。1丁はスナイパーライフルを持つ、というのもありだ。
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