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「エアソフトガン超入門」 第4回:エアソフトガンの原点を「エアコッキングガン」と、精密射撃の「ボルトアクションライフル」から学ぶ!

ボルトアクションの決定版! ロングセラー「VSR-10」で誰でもスナイパー気分

 「ボルトアクション」とは、ホンモノの銃では文字通り、「ボルト(遊底)」を動かして弾丸の装填、発射準備、空薬莢の排出を行なう機構のこと。実銃の世界では、19世紀から使われている伝統的な技術と言える。ボルトアクションは1発1発ボルトを手動で動かして次弾を装填する。

 オートマチック機構の発明により、ボルトアクション式の銃は主流からは外れていくが、機構が単純なため信頼性、整備性、価格などに優れている。精密な射撃を行なうのにも向いているため、現在でも狩猟用、射撃競技用、さらには“狙撃用”のライフルなどに使用されている。

 このボルトアクションを射撃の準備アクションに変換したのがエアソフトガンのライフルである。ガチャリとボルトを引き、再び戻すこの時に弾が装填される。ストックを肩に当て、ゆっくりと狙いをつけて、撃つ。まさに本物のライフルを撃っているかのような、緊張感のある射撃体験を楽しめる商品なのだ。

【ボルトアクションライフル】
横に突き出たボルトを前後させるのが「ボルトアクション。ホンモノの世界では、19世紀に生まれた機構だが、その精密性と信頼性で現在も狩猟や狙撃で使われている

 このボルトアクション、レバーを引き、戻す工程は、エアーコッキングのバネをたわめる動作に置き換えることができる。実際の銃を撃つためにボルトを引く作業でそのまま射撃体勢に入れるため、ライフルはエアーソフトガンにとってモチーフにしやすい題材だった。

【「エアソフトガン超入門」 ボルトアクションでコッキングを行なう「ボルトアクションライフル」】

 このためエアソフトガンでは「ボルトアクション」はその黎明期からあった。だが東京マルイは2003年までこのジャンルに参入しなかった。エアーコッキングハンドガン「ルガーP08」やガスブローバックマシンガン同様、開発に当たって他社製品や機構を徹底的に研究し、このジャンルの決定版となるべき商品を時間を掛けて開発したのだ。

【VSR-10】
「VSR-10 プロスナイパーバージョン」。2003年発売で、価格は19,800円(税別)
「VSR-10 リアルショックバージョン」。2003年発売で、価格は19,800円(税別)価格は同じだが、こちらは内部にウェイトを搭載し、射撃時の反動を再現している

 万を持して発売されたのが「VSR-10 プロスナイパーバージョン」、「VSR-10 リアルショックバージョン」であった。この銃の最初のアピールポイントは“価格”である。開発に当たって目指したのが「19,800円」というメーカー希望小売価格での「ボルトアクションの決定版」。「価格を先に決めてから開発をスタートする」というのは、東京マルイにおいては非常に珍しいと島村氏は語った。他社のエアコッキングボルトアクションライフルより低価格を打ち出すことで、最後発からのスタートという状況を覆す戦略でもあったという。

 もちろん低価格だけをウリにした商品ではない。まっすぐ飛び、当たる、その精密な射撃特性を追求。そして特に他社製品から改善点を目指したのが、ボルトの引き具合、つまりはスプリングを縮め、BB弾を発射位置に送るコッキングの“軽さ”の追求であった。強力な射撃を実現させるため、強力なスプリングをたわめるため、他社の商品は射撃をするのにかなりの力でボルトを引かねばならなかったのである。

 「VSR-10」は他社の製品とは段違いの軽さでボルトを引くことができる。スプリング、ピストンを格納しているシリンダーをフレームに接する面積を減らす特許技術「シリンダーサポートリング」を開発したことで、真っ直ぐ後ろにスムースにボルトを引くことができ、ずっと軽くコッキングができるのだ。

 さらに引き金を引く重さ(トリガープル)、引く長さ(トリガーストローク)が調整できる。こだわりの射撃を実現できる「VSR-10」は大ヒットとなり、エアコッキングライフルの代表的な存在となるのだ。

【射撃感の調整が可能】
取扱説明書に沿ってボルトを外した状態。この状態で引き金を引く重さ(トリガープル)、引く長さ(トリガーストローク)が調整できる。初心者は無論、上級者が極める楽しさもある
中に見える2本の白い丸いリングが特許技術「シリンダーサポートリング」

 ちなみに「VSR-10」は各機構などは実銃を参考にしているが、デザインそのものは東京マルイオリジナルである。これは、マガジンとチャンバーの位置の関係上、どうしてもホンモのスナイパーライフルのような設計にできなかったためだ。その後マガジンからBB弾を送る機構を開発しマガジンやチャンバーの位置を変えることが可能となり、実銃の姿をそのまま再現した「L96」、「M40」を製品化している。

【VSR-10】
黒いパーツがマガジン。当初はこの位置にマガジンを配置しなければエアコッキングによるボルトアクションを再現できなかったという

 なお、製品名の「VSR-10」は、銃と全く関係がない。MTR16は「マルチ・タクティカル・ライフル」の頭文字を名前としているが、VSRはそういった頭文字でもない。たまたま目にした「VGR-10」というABS(プラスチック樹脂)の原材料名を元に、真ん中をA→B……と変えていって、語感から「VSR」に落ち着いたとのこと。

 エアソフトガンファンにとって、東京マルイの製品名だった「ハイキャパ(ハイキャパシティの略)」が、ダブルカラム45口径の代名詞となった様に、今や「VSR」もボルトアクションライフルの代名詞となっている。しかし、その名前は実は語感のみの思いつきだったとは……驚愕させられるエピソードである。

【ダミーカート】
デザートカラーにオマケで付いてくる7.62mm弾のダミーカート。新規で制作されているコダワリの逸品

実際に「VSR-10デザートカラー」で狙撃してみる!

 エアコッキングのスナイパーライフルというのはどういうものか、それを実感するにはやはり撃ってみるのが一番だ。今回はこの「VSR-10デザートカラー」と、「プロスコープ ズーム(3~9倍)」で、シューティングレンジで実写を行なってみた。今回は、千葉県白井市にあるサバイバルゲームフィールド「ホワイトベース」のシューティングレンジを使った。

 東京至近には珍しい森林型のフィールドで、「VSR-10」の様なボルトアクションでのスナイパーも活躍の幅が拡そうなシチュエーションだ。「ホワイトベース」のシューティングレンジは、セイフティゾーン側のおよそ25mの物と、フィールド内に最長60mのロングレンジで2種類ある。

【サバイバルゲームフィールド】
今回シューティングレンジを使用させてもらった「ホワイトベース」。公式ページはhttp://www.whitebase-sgf.com/
セイフティゾーン側の約25mのシューティングレンジ。茶色い人型の的は手前(真ん中)がおよそ10m、左が15m、右奥が25mとなっている
フィールド内のシューティングレンジ。20m~60mまで、10m刻みで距離が記されている
今回射撃を行なった、筆者のカミさん。サバイバルゲームも参加せず、普段はエアソフトガンは発射はおろか触る事も無い初心者

 なお、シューティングレンジはサバイバルゲーム中が開催されている場合はサバイバルゲーム参加者が中心となっていて使えない会場が多いので注意しよう。シューティングレンジのみ使用したいという場合は、事前に問い合わせよう。「ホワイトベース」の場合はHPの問合せフォームから連絡できる。平日でも相談可能だ。ルールとマナーも事前に公式ページで学んでおこう。

【ホップ調整し、狙う】
 先ずは10mの的を狙う。BB弾は0.25gで、ホップはこのぐらいかけた。VSR-10の扱いやすさの象徴が、自在に調整できるバレル横のホップレバー。ボルトを引いたり分解したりする必要がある電動ガンやブローバックガスガンに比べとても解り易い
こちらも東京マルイから借りた「プロスコープ ズーム(3~9倍)」
専用のマウントベースには傾斜が付いているので、マウントリングでスコープを取り付けると、そのまま狙う事ができる
スコープはまず、「ゼロイン」という、レンズ内の画像をBB弾が飛んでいく場所に合わせる必要があるが、ポン付け(調整もせずにそのまま載せただけ)で使えた。……もっとも本来はちゃんとゼロインが必要とのこと。スコープなどのオプションをつけた場合は調整をきちんと行なおう

【「エアソフトガン超入門」 ボルトアクションライフル「VSR-10」で10m先の的を狙う】

 最初は標準的な0.2gのBB弾から、ホップで上に上がりにくくなる0.28gの重量弾に変えて、ロングレンジへ移動。ホップも少し強くした。30mの的も的確に当たる。惜しくも外れても、人型には充分まとまっている。

【「エアソフトガン超入門」 ボルトアクションライフル「VSR-10」で30m先の的を狙う】
【スナイパーマニュアル】
「VSR-10」の取扱説明書には「スナイパーマニュアル」も付いていて、その気にさせてくれる仕様となっている。スナイパーマニュアルは取扱説明書とは上下逆に印刷されており、どちらを表紙としても読める仕様だ

 以上、エアソフトガンの基本、エアコッキングとボルトアクションライフルを駆け足で検証してきた。「エアーハンドガン」の手軽ながら侮れない実力、「VSR-10」の初心者から上級者まで、室内射撃やサバイバルゲームに幅広く楽しめる奥深さがお解り頂けたろうか。

 エアコッキングはエアガンの基礎を学べる。またこの機構を活用したライフルは本物さながら“狙撃”の楽しさを追求できる。実際はパワーの上限が法律で規定されている現在では、ガスガンや電動ガンに比べエアコッキングライフルの射撃でのアドバンテージはないし、連射できないので不利にもなりかねない。しかしスナイパーは“かっこいい”。このプレイスタイルに憧れ、一発必中を信条とするスナイパーとしてプレイスタイルを求める人は多いだろう。

 静音性を活かし、サイレンサーを付けての隠密射撃などは有効だし、昨今では実銃のように弾数を制限した「リアルカウントシチュエーション」や、持つ銃を限定した「セミオート限定でのゲーム」などあえてより濃いロールプレイを楽しめるゲームも増えている。敢えてスナイパーとしてボルトアクションにこだわるというのも、とても楽しい。1丁はスナイパーライフルを持つ、というのもありだ。

エアコッキングガンはエアソフトガンの入門用として今後も一定の人気を得続けるだろう