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最短1時間で決着するボードゲーム! 「スピアヘッド」から「ウォーハンマーAoS」を始めよう【夏休み特集】
2024年8月3日 00:00
- 【ウォーハンマーAoS:スピアヘッド】
- 7月13日 ルール公開
みなさんはボードゲームは遊んでいるだろうか。夏休みともなると、友人やコミュニティーの仲間たちと共に何時間も話しながら遊んだり、実際に集まって遊ぶこともあると思う。筆者はここ1年ほど、毎週のようにオンラインでTRPGのセッションをしたり、月に1回はボードゲームを友人と遊んでいる。
そのボードゲームが「ウォーハンマー:エイジ・オヴ・シグマー」(ウォーハンマーAoS)だ。英国ゲームズワークショップが開発、製造するプラモデルを組み立て、必要ならば塗装し、ハイファンタジーをベースとした世界観を知り、実際に組み立てたプラモデルを動かしながらダイスを振って遊ぶゲームで、7月13日にルールが大幅に改訂された。
ルール改訂によって、「スピアヘッド」という、いわゆる「構築済みスターターデッキ」を使って遊ぶミニマムなゲームシステムが追加された。「スピアヘッド」のプラモデルセット自体は20,000円前後で購入でき、プラモデル用ニッパーと接着剤があれば組み立てられる。ここに2人用ゲームセット「炎と翡翠ゲームパック」が9,400円。これらと6面ダイス10個程度を購入すればゲームは始められる。塗装も楽しみたいなら必要な分の筆と、塗料5~6色を購入して合計5,000円程度になる。
大箱のボードゲームを何個も購入したボードゲーマーからしても、この「ウォーハンマー」という趣味は高価に見える。ただ、それ以上にコスパがいい。「スピアヘッド」でしか遊ばないならばプラモデル代はそのままカードゲームでいうデッキ1つを購入しただけだが、「AoS」本編の軍勢を編成するためのデッキパーツとして見ると合計1万円超の割引がされていたり、設定などを記した「コアブック」(10,000円)はそれだけで1週間は読み込めるほど濃厚な設定が書き込まれている。
また塗料であるシタデルカラーは12ml瓶(大きなものは18ml)で販売されていて1本540円、980円などと高価だが、筆者が1年間バリバリ塗装してやっと1瓶使い切るくらい物持ちがいい。水性エマルジョン系塗料なのでにおいもなく、水で薄められ、丁寧に塗れば発色もいいので様々な塗装に使えるのも魅力だ。塗りおえたプラモデルはカッコよく見栄えがするので、飾っておくと目の保養になる。
「でもやっぱり高いよね?」と思うのも無理はない。だが「コアブック」と「炎と翡翠ゲームパック」の合計19,400円に、拡張パックとして存在する「スピアヘッド」20,000円前後とみるとどうだろう。
「スピアヘッド」は10種類以上あり、それぞれが特徴的な能力とステータスを持っている。造形も人間、超人戦士、森エルフ、水エルフ、ハイエルフ、空飛ぶドワーフ、火山ドワーフ、悪魔に魔神とその眷属、ゾンビ、吸血鬼、怨霊、巨人、筋骨隆々のオークと様々で、さらに今後設定資料集の改訂と同時に新たな「スピアヘッド」の発売も予想される。その場合現行の「スピアヘッド」は終売となるはずだ。
ゲームが遊べないと意味がない! ならば、各地の直営店ウォーハンマーストアや公認販売店を訪ねるといいだろう。ゲームスペースを用意している所も多く、地域のコミュニティーも存在するため、Xなどで探してみるとよい。私たちウォーハンマーを遊ぶ趣味人は、おおよそ日本中どこでもあなたを歓迎する。
筆者がここまでゲームに誘う理由は「体感としてAoSユーザーが少ないから」というのに尽きる。「ウォーハンマー」にはSFベースの「ウォーハンマー40K」があるが、こちらの方がかなり存在感がある。ただ、「スピアヘッド」の登場によって状況は変わった。とんでもなく遊びやすいのだ。「スピアヘッド」は1時間~長くても2時間で決着が付くが、一方的な結末にはほとんどならない。状況に応じて勝利点を稼ぐか強力なアビリティを発動するかを選べるカードの存在や、倒れたモデルが戦線に復帰するルールがあることが大きい。10個、20個という大量のダイスの目に左右されるハラハラ感はなかなか味わえないものがある。
前置きは長くなったが、今回はみなさんを「ウォーハンマー:エイジ・オヴ・シグマー」と「スピアヘッド」の世界へ誘いたいと思う。夏休みの時間があるときに、ガッツリと組み立てて遊び始めるのがおすすめだ。気になったらお近くの公認販売店や、ウォーハンマーストアを訪ねてほしい。
プラモデルを組み立てる
ではまずプラモデルを組み立てて、その造形を見てみよう。今回は7月13日に発売した「AoS」新ルール開始を記念したボックス「スケイヴンタイド」で収録された不滅の超人戦士「ストームキャスト・エターナル」と地下に住まう鼠人の群れ「スケイヴン」を組み立てる。新ルール記念ボックスや、8月10日に発売予定の「アルティメットスターターセット」に同梱されるプラモデルは全てプッシュフィットで組み立てやすいが、ほとんどの「ウォーハンマー」プラモデルは接着剤を使うので買っておくとよい。製品によってレジンキャストのものもあるが、その場合は「アロンアルフア」などの瞬間接着剤を使う。
モデルは大体がプラモデルで、ランナーから切り出す必要がある。その後気になるゲート(パーツとランナーをつなぐ部分)をデザインナイフなどで切り落としておくと、組み立て時に不要な凹凸がなくなって見栄えが良くなる。筆者はパーツの切り出しにコトブキヤ「コトブキニッパー」、ゲートを整えるのにタミヤ「モデラーズナイフPRO」を使っている。
組み立ては1~5体で1ユニットのモデルならば1時間ほどで終わったが、「クランラット」は数が多すぎて20体3時間ほど掛かった。モデルの中には違った造形のパーツを組み込むことで、ゲーム中に攻撃回数が増えたり、拠点を制圧しやすくなったり、モデルを復活させる力を強化するものがある他、ただの装飾としても魅力的なパーツ違いが存在する。組み立てていて悩むところだ。
これらを「スピアヘッド」の種類によって20体(モデル単位)前後組み立てれば、「スピアヘッド」を遊ぶ準備は完了だ。「炎と翡翠ゲームパック」を購入した場合、同梱されているテレイン(情景モデル)も組み立てておく。
カッコよく塗装する
「ウォーハンマー」を遊ぶファンたちは、組み立ててゲームを遊ぶ他にもモデルをペイントして遊ぶことも好きだ。モデルの造形が筆塗りやシタデルカラーを使用したペイントに特化するように凹凸が多いので、立体塗り絵のように塗り進められるのが魅力といえる。
シタデルカラーを使用したペイントでは、筆者は大まかに「スプレー」、隠蔽力の高い「ベース」、凹凸に応じて流れ込み色味をワントーン落とす「シェード」、ハイライトを加える「レイヤー」、ベースに砂利や泥、芝を足す「ベースデコレート」と進めている。どれもゲームズワークショップが販売しているので、必要なだけ買いそろえよう。なお以下で示す作例はあくまで一例で、どんな色を塗ってもいい。
初めのうちはペイントも大変な作業なので、ゆっくりでいい。いきなり「スピアヘッド」1つを丸々完全に塗ろうとすると息切れするので、ゲームをしながら2カ月くらいをかける気持ちで少しずつ完成へ近づけていくと、週末の趣味をこなしつつ楽しめる。今回のゲームでこのユニットが活躍したから、もっと塗り込むといった指針を持っている人もいる。ペイントの際、スプレー以外の塗料は有機溶剤を使用しないためにおいがなく、筆者は食卓にペイントツールを広げて家族と話しながら塗ることもある。
筆者は学生の頃からアクリルガッシュを使って絵を描くことがあり、それと同じ要領で水で溶き、混色して遊んでいたが、シタデルカラーはこれに感覚が似ている。大量の色が専用の名前で用意されているので始めは混乱するが、塗ったときの色は瓶から見える色とほとんど同じなので、これを見ながら塗りたい色を揃えていく。
ちなみにシタデルカラーには塗料の種類によって特徴があり、おおまかに「BASE」は彩度がワントーン落ちているが隠蔽力が高く、発色もいい。「LAYER」は発色力には劣るが彩度が高く、ベースカラーの上に塗ると鮮やかな色を作れる。「SHADE」はウォッシング塗料で、既に塗った色の上にかけることで色味づけを行なえる。この他に「CONTRAST」は水彩塗料のような使い方ができ、白い部分を染めるように色づけられる。この特徴から、黒地のスプレーの上からドライブラシで白や灰色でトーンを作り、コントラストカラーで染めるといった塗り方もある。CONTRASTを使う方法を「コントラストメソッド」というのに対して、ベース、レイヤー、シェードカラーなどで仕上げる方法を「クラシックメソッド」という。
筆者はクラシックメソッドから始め、一時期簡単にペイントできるコントラストメソッドにハマっていたが、自分の表現方法に合っていたと感じてクラシックメソッドに戻っている。だが必要に応じてコントラストカラーも使用するため、やはり自分に合ったやり方が見つかればそれでよいと思う。
ゲームを遊ぶ
ペイントし終わっていなくても、ゲームは遊んでいい。組み立ててすぐのプラモデル状態でも、スプレーを吹いたままでもいい。「ウォーハンマー」はペイントと組み立てを楽しめるプラモデルであるだけでなく、ボードゲームのコマだからだ。実際、今回一緒に遊んでくれた友人は組み立てたままの状態で持ってきている。
ゲームルールは公式ページから無料で日本語版をダウンロードできる。判定には6面ダイスを使用し、同じステータスの武器による攻撃や防御などはまとめて判定してよいため、1度に10個~20個ほどのダイスを振ることが多い。そのためウォーハンマーストアなどでは12mm立方の小さなダイスを20個セットで販売している。これを使ってもいいし、新たな資料集やルールの公開に伴って16mmダイスのセットを販売することもある。これは6の目が専用の紋章になっていたり、カラーリングが陣営ごとに特徴付けられたもののため、コレクション性が高いのが特徴だ。
ダイスを振るのはゲームボード上でもいいが、可能ならばダイストレイを用意したい。トレイはAmazonで1000円もせず購入できるし、ボードゲームショップなどでも売っていることが多い。また距離を測るためのインチメジャーも必要になる。
ゲームの流れは「指揮と魔法の詠唱」、「移動」、「遠隔攻撃」、「突撃」、「接近戦」、「ターン終了時の行動」と移る。この流れを自分、相手とターンを繰り返し、「スピアヘッド」では4回目の両者のターンが経過するとゲームが終了する。
移動はインチメジャーを使って、モデルを1個ずつ実際に動かして行なう。これは様々なウォーゲームでも採られている手法だが、自分が組み立て、塗ったモデルが戦場を闊歩するさまはなかなか見ていて面白い。
遠隔攻撃は、行うモデルと対象のモデルの間に直線を引いて何も遮るものがなければ「射線が通っている」として考えられ、攻撃できるようになる。このとき、味方や敵ユニットを挟んで先のユニットへの攻撃はできないため、弓兵のようなユニットは別の場所に置いておくことが必要となる。なお同じユニット内のモデル同士を通して射線を引く際は関係ない、とルールに記されている。
そこから敵に突撃する。突撃はダイスを振って移動距離を決定し、敵ユニットに取りつける状態にできるなら突撃が成功する。そこから接近戦を行う。接近戦は味方ユニット、敵ユニットの順番に交互に繰り返す。
さて、「ウォーハンマーAoS」で重視されているのは「魔法」と「接近戦」だ。ルールにもそれが現れており、ハイファンタジーの世界で剣と魔法を駆使して接近戦を戦い抜くのがメインで、射撃攻撃も存在するが接近戦を補助する意味合いが強い。またゲームボード上に置かれた「目標マーカー」を争奪して勝利点を獲得するのがメインの遊び方となるが、これを奪うときはほぼ必ず接近戦に持ち込まれる。
そう、「目標マーカー」を争奪するのが主目標であって、ただ相手のユニットを倒すだけではないのが面白い。ユニットにはモデルごとに「確保力」というステータスがあり、マーカー周囲にいるモデルの確保力の合計が相手の合計を上回ればその目標は自分が確保となる。つまり小さい確保力1のモデルを大量に並べてマーカーを埋め尽くしたり、敵陣側に押し込んだ状態で陣取って耐えきればよい。また戦場のあらゆる場所から相手の近くへユニットを移動させたり、召喚する戦術もあるので、いわゆる「お留守番」としてのユニットも大事になってくる。
そうして「ファンタジー要素を加えた中世スタイルの野戦」を演じるのが「ウォーハンマーAoS」の醍醐味だ。所々に火薬やSF的な要素もあるが、基本的には剣と魔法、人間とエルフとドワーフ、魔神とその眷属といったハイファンタジーの世界観で遊ぶのは面白い。
「スピアヘッド」でいえば、どんなルールなのかを確認しながらでも2時間程度、慣れれば1時間と少しで1戦が終わるのも手軽に思えた。ゲームボードのサイズは約762×568mmで、大きめのちゃぶ台があれば十分に遊べる。家でもゲームスペースでも、すぐ展開して遊べるのが持ち味といえる。
筆者が思い描いているのは、この「スピアヘッド」を起点に本編へ向かってコレクションを増やしたり、ゲームを遊んだり、ペイントをするファンが増えることだ。特に「ウォーハンマー」の造形を気に入って、ペイントする人口が増えてくれるとうれしい。貴重な夏休みの余暇を、ボードゲームに熱中して楽しんでみるのはいかがだろう。
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