インタビュー

「次世代電動ガン MP5A5」インタビュー【外観編】

外観部品のリベット止めまで再現、実銃をとことんまで追求した外見

 手触りや質感を追求したからこそ、銃そのものの外見もとことんまで追求している。銃口部は拡張性を考えれば14mmの逆ネジを切ってマズルオプションを付けられる様にするのが"正解"といえるが、実銃がそういった処理が行なわれていないため、製品も同じ仕様になっている。マズルオプションをつけたいユーザーのためには専用のマズルアダプターを同梱することで対応している。

あえてM14逆ネジによる拡張性を持たせなかった銃口部。こちらもエアソフトガンとは思えない質感だ
マズルアダプター。これを使用することでマズルオプションなどが取り付けられる。この機構に関しては特許を申請中とのこと

 外観の再現で、特に力を入れたのは銃本体の外装の上部、「アッパーレシーバー」だと神崎氏は語った。「実銃では鉄をプレスしていますが、東京マルイでは、組合の規約で主要部分に鉄を使う事が出来ません。そこで、亜鉛ダイキャストの成型品で、絶対にプレスレシーバーの質感を忠実に、正確に再現しよう! という想いを込めて造りました。海外製品だと、鉄のプレスで造ってある製品もありますが、実銃と形状が全然違ってたりするんです。再現性ではこっちが勝ってるぞ! という自負はあります」。

 アッパーレシーバーに関して島村氏は、「特にハンドガードの付け根の部分を注目して欲しい」と言葉を重ねた。「隠れてあまり見えないんですが、そこもより忠実に再現していて、電動ガンスタンダードタイプのMP5シリーズとは全然違います。より実銃に近い長さになっています」と言葉を重ねた。

神崎氏が自信を持っているというアッパーレシーバーを上から
ハンドガードを外した状態。内部にも様々な工夫が凝らされている

 実銃再現でユニークなポイントがマガジンを差す部分のところに固定されている「金具」。MP5A5の外見において大きな特徴である。島村氏は「"スリングクリップ"などと呼ばれているもので、HKの専用スリングを引っかけることで、3点から2点スリングに切り替えることができるというモノです。つまりHKの専用スリングを使わない限り不要な部品ということになります」と語った。

 それでもこのパーツの再現にも力が入っている。実銃はパーツが本体にリベット止めされていたので、製品では同じ形状のピンを使って圧入(ピンより若干狭い穴に押し込んで固定)している。納得いく形になるまで何度も造り直したという。

赤い丸で囲ったのが"スリングクリップ"などと呼ばれている部品。「次世代電動ガン MP5A5」では、リベット止めほどの強度がないため、取説上でもダミー扱いとしているので注意したい

 「このパーツ、実用性はあまりないように思えるんですが最新モデルのMP5でもデザインが少し変わってついているんですよ(笑)。サバイバルゲームの時も、枝や装備に引っかかるから使わない人からすると無い方が良いぐらいだとも思います。そんな部分なのに、再現するのにはスゴく大変でした(苦笑)」と神崎氏は語った。

 一方、実際にスリングを接続する金具「スイベル」もしっかりと再現されている。

リアに装着してあるスリングスイベル
東京マルイの3点式スリングベルト「タクティカルスリングセット」

バランスを重視した金属パーツと、本物の感触が楽しめる「粉体塗装(ふんたいとそう)」

 ロアレシーバーとハンドガードは樹脂素材を活かした実銃の感触を実現したが、金属部分は"塗装"で実銃に迫っている。エアソフトガンは亜鉛ダイキャストやアルミといった実銃とは異なる金属を使う。ここに「粉体塗装(ふんたいとそう)」という特殊な塗装で実銃らしさを追求していくのだ。

 「粉体塗装」はプラスチックの粉を静電気で付着させ焼き付けて、素材の表面をコーティングする工法。塗膜が強くなるのが特徴。実際に1990年代のドイツで使われていたMP5A5はこの塗装が使われていたのかは諸説あるのですが、実銃の質感や塗膜強度が近いと考え採用しました。

 粉体塗装を採用する上で課題になったのは、他の方法に比べて塗膜が厚いということです。塗膜が厚くなると言うことは、部品の厚さそのものが変わってしまう。エアガンを組み立てる際、いつ素材を組み合わせ、塗装を行なうかを考えなくてはいけない。図面上でも塗膜の厚さを考慮しなくてはいけないし、しっかり塗装を行なうためにあえて部品を組んでから塗装をするという工程の順番も考慮する必要があったとのこと。

 特に部品同士が組み合わされる部分は塗膜の厚みを計算して、寸法を決めています。粉体塗装すると、パーツの表面に0.1mmくらいの塗膜がついちゃうんですね。そうすると全部合体させた時に、累積して全長で1mmとか長くなってしまいます」と神崎氏は語った。

一見して素材の違いが解らない上部、↓で示した左右2カ所が、解り難い繋ぎ目

 金属の使い方に関しては、これまでの技術と経験も活かされている。電動ガンは比重の大きい亜鉛ダイカストを多用しており、実銃とは全く異なる構造で内部部品が詰まっているため、気をつけて設計しないと実銃より重くなってしまう。特に「次世代電動ガン MP5A5」では300gのリコイルウェイトが内蔵されているため注意したとのこと。このため先端は軽いアルミを使うことで銃の全体重量を調整し、トップへビーにならず、取り回しの良いバランスとしている。素材が変わる部分の"つなぎ目処理"は本来の実銃にはない部分なため、ここを目立たなくするのも腕の見せ所だという。

 「この繋ぎ目は塗膜の厚みを考えないと、凸凹になって、繋いである事が一目で解ってしまいます。詳しくは言えないんですけれども、特殊な技術を使って、綺麗に消せる様にしてあります」と島村氏は語った。

 金属部品をしっかり使い、次世代電動ガンならではのリコイルシステムを内蔵した「次世代電動ガン MP5A5」は実銃とほぼ同じ3.1kgという重さを実現している。一方ベストセラーとなった「電動ガンスタンダートタイプ MP5A5」は1.9kgと軽いのが特徴ではある。

 もう1つ、特に"強度"ににこだわった部分として「コッキングレバー」がある。MP5A5はリロード時、コッキングレバーを引いてから溝に倒して固定。弾倉を交換した後このレバーをたたいてロックを外す「HKスラップ」というアクションを行なう。「ダイハード」をはじめ映画作品でもこのアクションが行なわれたため、「電動ガンスタンダートタイプ MP5A5」でも真似をするユーザーが多かったが、強度が足りず折れてしまうことがあったという。

 「次世代電動ガン MP5A5」ではこのアクションを重要と考え、コッキングレバーの部品構成を見直したり、根元の強度を上げるといった対策を行なっている。映画の登場人物になりきり、手で勢いよくコッキングレバーをたたく、「HKスラップ」がたっぷり楽しめるようになっているとのことだ。

コッキングレバーを引いて固定した状態。手で叩いて戻すといわゆる「HKスラップ」となる。この部品の強度も本製品のセールスポイント