インタビュー

「次世代電動ガン MP5A5」インタビュー"内部機構編"

電子制御、新たなリコイルシステム……。新技術による"革命"に迫る!

【次世代電動ガン MP5A5】
開発・販売元:東京マルイ

発売日:8月18日発売

価格:65,780円(税込)

種類:次世代電動ガン

全長:
ストック伸ばし時:660mm
ストック縮め時:500mm
銃身長:229mm(インナーバレル長)

重量:3,1000g

装弾数:72発

 ついに8月18日に発売となる東京マルイの「次世代電動ガン MP5A5」。登場から30年近く、今でも人気の高い「電動ガンスタンダードタイプ MP5A5」から、"現代の東京マルイ"の技術を結集して生み出されるエアソフトガンだ。

 本製品で東京マルイは"実銃のMP5A5の質感を再現する"、"安全性の高い電子トリガーを実現する"、"満足度の高いリコイルショックを生み出す"など様々な課題に挑戦している。このうち、実銃さながらの外観に関しては前回のインタビューで紹介した。

 本稿では引き続き東京マルイのデカ広報・島村優氏と、設計・開発を担当した神崎嵩士氏へインタビューを行ない、"内部機構編"として東京マルイが「次世代電動ガン MP5A5」のメカニズムに関してどんなチャレンジをしていったかを紹介していきたい。安全性に注力した「Mシステム」はどうして必要なのか、「電動ガン」をエアソフトガン業界にもたらした東京マルイが、本製品で提示する"電動ガンの未来"とはどんなものなのだろうか?

今回も東京マルイのデカ広報・島村優氏と、設計・開発を担当した神崎嵩士氏に内部システムの詳細を聞いた

従来の電子トリガーの問題点を解決し、新しい未来を提示したMシステム

 まず本製品の革新性を語る前に、そもそも「電動ガン」とは何かを紹介しておきたい。エアソフトガンはその名の通り「エアー=空気」でBB弾を飛ばす銃である。コッキング式と呼ばれ、圧縮空気で弾を飛ばすものが最初に開発され、空気の代わりにフロン等のガスを使ってそのガスが気化する瞬間の圧力で弾を飛ばす「ガスガン」、そしてバッテリーとモーターでピストンを動かして圧縮空気を作り弾を飛ばす「電動ガン」が生まれていった。

 電動ガンを世界で最初に商品化したのは東京マルイだった。「スタンダード電動ガン FA-MAS 5.56F-1」を世に出したのは1991年のことだ。当時はエアタンクを背負って銃につながれた管を通る圧縮空気で弾をばらまいている銃がある中、バッテリーで駆動し弾を連射でき、銃本体のフォルムを崩すことなく銃一丁ですべて完結する電動ガンは衝撃であり、その後様々なアイディアを加えられ、サバイバルゲームの主流へとなっていく。バッテリーによって1度の充電で数千発の弾を発射できる電動ガンは、コストの面や操作の面でもガスガンより初心者向けであった。

発表から話題を集めている「次世代電動ガン MP5A5」。東京マルイの最新技術を結集した電動ガンである

 一方ガスガンは「ブローバック」という射撃した際にリコイルを感じさせるアプローチが魅力だが、電動ガンスタンダードタイプにはこの機能はない。そこで東京マルイは「次世代電動ガン」を投入する。射撃時に銃の内部でウエイト(重り)を動かすことでガツンとしたリコイルショックを生じさせるメカを搭載。次世代電動ガンは大いに受け、東京マルイのメインストリームとなった。

 現在では、安価で軽い「電動ガンスタンダードタイプ」、リコイルショックが楽しい「次世代電動ガン」、より実銃に近い機構でリアルな感触が楽しめる「ガスブローバックガン」など、ユーザーの前に様々な選択肢が提示されている。電動ガンの誕生やその進化は弊誌の"「エアソフトガン超入門」 第3回:サバゲフィールドを一変させた「次世代電動ガン」"も併せて読んで欲しい。

 さて、そういった進化をしている電動ガンだが、「電子トリガー」という機構を海外メーカーが導入しはじめた。モーターでピストンを動かし弾を発射する電動ガンは、引き金を引くとモーターが回り機構が動くだけでは「フルオート」だけにしかならない。東京マルイは機械的な仕掛けで引き金を引くと1発だけ弾が出る「セミオート」を実現し、さらに1回引き金を引くと3発弾が出る「3点バースト」も再現した。

 しかしこれらはいわば「アナログ」的なシステムで、スイッチのON/OFFの組み合わせであり、トリガーを引くと=ONで電流が流れ、トリガーを離すと=OFF、止まるという単純な構造である。そのため一瞬でモーターを最大出力で稼動させるので、大きな電流が流れると接点に大きな負荷がかかるという問題点もあったと神崎氏は指摘した。

 これに対し電子トリガーは基盤による電子回路でモーターを制御する。これによりセミオートや3点バーストを実現できるようになった。機械的な仕掛けで作動させる従来のものと比べ、機構的にもシンプルになり、特に引き金を引いてからBB弾が発射されるまでのレスポンスが良くなる。

「次世代電動ガン MP5A5」はMシステムにより、レスポンスの良い射撃を実現した

 この引き金に対するレスポンスの良さは重要だと島村氏は強調する。サバイバルゲームでは敵が不意に現われることがある。そのとき0.1秒でも早く弾が出た方が有利だ。また時代と共にトリガーを引いてから弾が発射されるコンマ何秒のラグにストレスを感じる人が増え出した。このためサバイバルゲーマーは積極的に電子トリガーを取り入れた。エアソフトガンショップでは改造によって電子トリガーを導入するキットが販売されており、ショップが組み込んだりしている。

 しかし、実は電子トリガーに内蔵されるFETには「安全面」で問題があったという。一番最悪なのはFETが破損し通電しっぱなしになってしまう"暴走"の可能性だ。また基盤の耐久性の問題も抱えていた。弾が出続けてしまうような危険性があれば、商品として発売できない。このため東京マルイは電子トリガーの導入に慎重になっている面があったと島村氏は語った。

 ただ、電子トリガーは魅力的だ。電子制御ができれば機構への負担が低減できる。機構に対してあまりに大きい電流が流れると、内部の端子が熱で溶けてしまうのだ。3発同時発射をする「電動ショットガン AA-12」は内部接点の負担を低減するために、東京マルイではじめて電子トリガーの前段階となるFETスイッチを導入した製品となった。

東京マルイがはじめてFETスイッチを導入したのが2016年1月発売の「電動ショットガン AA-12」
「次世代電動ガン マーク46 モッド0」は2019年12月発売。FET、センサーによる安全装置など発展した技術を導入している

 「電動ショットガン AA-12」は3発の弾丸を同時発射するという機構の制御に加え、もしFETが電流により破損したら瞬時に電流をカットするというセンサーと連動した安全装置を組み込んだ。このシステムはさらにセンサーの数を倍に増やし「次世代電動ガン マーク46 モッド0」に導入されることとなる。

 「電動ショットガン AA-12」、「次世代電動ガン マーク46 モッド0」によりFET、センサーと連動した安全対策といった、エアソフトガンに組み込む電子トリガーに対する研究が進んでいく中で生まれたのが、「次世代電動ガン MP5A5」で採用された「Mシステム」と言うわけだ。

 「Mシステム(マグネティカル・ファイヤーコントロールシステム)」の大きな特徴は以下のような、安全面を重視したメリットと、機能面でのメリットが多数ある。

・FETを監視することで、FETの破損時の暴発を防ぐ
・バッテリーの電圧を監視することでバッテリーの過放電を防ぐ
・内部メカの動作異常を監視して異常時は動作を停止する
・「オートストップ」、「動作確認モード」、「3バースト」のコントロールも可能

 この電子基盤そのものは協力会社との共同開発となるが、電動ガンのような大電流を扱う基板技術を持っている会社は少なく、選定には苦労したという。その後商品開発と共に東京マルイ社内スタッフも経験を積む中で基板メーカーとの連携は密になっていき、お互いに学習を重ねていった。Mシステムはこれまでの経験により「東京マルイが求める電子制御」を実現させていると神崎氏は語った。

 神崎氏はさらにくわしくMシステムを解説してくれた。Mシステムの制御を司るのはマイコン(マイクロコントローラー)である。このマイコンには銃内部の7つのセンサーと連動しており、銃本体の異常を検知したらすぐ動作を停止させることができる。そしてこのマイコンは将来的に東京マルイが販売するリポバッテリー(リチウムイオンポリマー二次電池)との連動もすでに組み込まれており、バッテリーも監視している。

 リポバッテリーは従来のニッケル水素バッテリーに比べ、コンパクトにできパワフルで、保管していても放電が少ないなどのメリットがある新しいバッテリーだ。しかしこれまでのバッテリーに比べ破損した時の危険性や、高温や、物理的ダメージに弱いといった側面もある。Mシステムではリポバッテリーと連動しバッテリーのコンディションを監視することができる。過電流をカットし射撃を停止する機能もある。

 銃各所のセンサーとも連動している。射撃やウエイトを動かすギアが破損した時、その部分だけでなく全体が停止するので、壊れた部品により被害が拡大するといったことがない。

 そしてもちろん、銃の機能の再現にも使われている。セミオート、3点バースト、フルオートの制御に加え、BB弾が弾切れした時に引き金を引いても弾が出ない「オートストップ」もMシステムで再現しているし、"HKスラップ”でボルトを戻さないと弾が出ないという機構も、弾がない状態でリコイルが楽しめる「空撃ちモード」への変更も電子制御によるものだ。

マルフェスオンラインで公開されたMシステム。FETの暴走を防ぐためや、3点バーストなどの撃ち分け、キレのある射撃感などMシステムはさまざまなものをもたらす

 「次世代電動ガン MP5A5」の内部には7つのセンサーが搭載されている。BB弾の有無、モーターの状態の監視、セレクターレバーの位置、機構の監視など様々な状態をチェックし、マイコンで制御を行なっている。安全性だけでなく、従来のメカニズムで行なっていた制御も電子的に行なうことで銃内部のスペースも確保、これによりMP5A5では内蔵が難しかったリコイルシステムの搭載も可能になったのだと、神崎氏は語った。

 「外観編で触れた溶接痕の再現や、表面の感触を再現するといった銃の表現はアナログ的なこだわりと言えます。職人技術を活かしたやり方です。一方で内部に関しては先端の電子技術が盛り込まれている。『次世代電動ガン MP5A5』はこれまで以上に東京マルイの現在の様々な技術を結集した製品と言えます」と島村氏はコメントした。

 Mシステムはさらに「スリープ機能」と「ブレーキ機能」を搭載している。ブレーキ機能はセクターギアの回転をセンサーで検知し、モーターへの通電時間を制御した上でブレーキをかける機能で、毎回セクターギアが同じ場所で停止する。従って、常に安定したコンディションで射撃を楽しむことができるのだ。また、バッテリーの低下時にたまに起こるギアロックもなくなるという。

内部のLEDで状態を知らせる機能も

 従来の電動ガンでは特にセミオートでの射撃の場合、内部のギアがロックしてしまい引き金を引いても弾が出なくなってしまう現象が起きることがあった。この場合はフルオートに切り替えることでギアを正常にできるのだが、原因はギアの停止位置やバッテリーの電圧低下で起きることが多い。Mシステムはギアの停止位置の調整、バッテリーの電圧監視を行なうので、従来のようなロックは起きにくくなる。

 スリープ機能は銃を使用していない時、万が一バッテリーがつなぎっぱなしになってしまった場合に、回路の消費電力を極端に抑えることで、バッテリーの過放電を軽減する機能。「あくまで万が一の過放電を軽減するための機能なので、使用してない時は必ずバッテリーを銃本体から外してください」と神崎氏は語った。

 今回の「次世代電動ガン MP5A5」はセンサーにも特徴がある。「電動ショットガン AA-12」や「次世代電動ガン マーク46 モッド0」でもセンサーは導入したが、今回はさらに磁気センサーによる高度な制御が加えられている。光センサーも検討したが、光を出しっぱなしにすると電力の消費が大きくなりすぎる。

 磁気センサーにおいても基礎実験は大変だった。7個の磁気センサーと、可動させる磁石の位置関係によっては磁力が干渉して誤作動を起こす可能性があるため、レイアウトは慎重に検討した。また、磁石自体の大きさ、磁力の強さ、検知範囲……。工場で部品に組み込むには部品が小さすぎるのも困る。こういった様々な点を考慮し、ちょうど良いサイズにしたとのことだ。

 神崎氏をはじめとした開発スタッフの多くはアナログ的なアプローチが得意だ。実銃を再現するために機構的な研究は盛んに行なっている。しかし電子的な制御技術に関しては経験が少ない。協力してくれる基板メーカーも「電動ガンの制御」は未知の領域だ。電子制御で何ができるのか、電子制御が電動ガンの作動のどこを助けてくれるのか、様々なことを試しながらシステムを開発していった。コロナ禍で打ち合わせも難しく、開発は難航した。プログラムのバグ取りなども新しい経験だったいう。

 今後導入される東京マルイ純正リポバッテリーのメリットについてももう少し聞いてみた。リポバッテリーは従来のバッテリーより軽く、小さくでき、変形もさせやすいため、これまでの電動ガン以上にスペースが確保できるようになる。また瞬時に大電流を発生させながらも持久力がある。今回は従来のバッテリーでの空撃ちを体験したが、それでもFETによるレスポンスの向上が確認できた。東京マルイ純正リポバッテリーを使うとさらに向上するとのことで、これは楽しみだ。

「次世代電動ガン MP5A5」はハンドガード内にバッテリーを収納する。もちろん従来のバッテリーにも対応しているが、今後発売される東京マルイの純正リポバッテリーへの対応が大きな魅力だ

 「次世代電動ガン MP5A5」はもちろん従来のバッテリーにも対応している。東京マルイの純正リポバッテリーは発売時期はまだ未定とのこと。リポバッテリーは優秀で電動ガンの可能性を広げてくれる存在だが、専用の充電器が必要で、保管などにも注意が必要だ。東京マルイ製の純正リポバッテリーは安全性も考えた製品になるということだ。

 「リポバッテリーは性能が良い代わりに、電動ガンに負荷をかけます。対応していない電動ガンにリポバッテリーを使用すると電動ガンの寿命を縮めてしまう。しかし、『次世代電動ガン MP5A5』はリポバッテリー使用で3万発以上を余裕でクリアできる耐久度を持たせています。Mシステムのキレのある射撃、決められた場所でギアが止まるブレーキなど、特にギア関係に耐久度が必要な設計ですが、きちんと耐久力を確保できた。こういったところも従来の電動ガンにはない点であると思います。この耐久性を持たせる点もかなり苦労した点ですね」と神崎氏はコメントした。

 次ページではサブマシンガンサイズに組み込みながら、しっかりとしたリコイルを感じさせるリコイルシステムや、「次世代電動ガン MP5A5」が提示する東京マルイの未来について取り上げていきたい。