インタビュー

プラモデル「機首コレクション VF-25F」開発者インタビュー

機首の折れ角、バブルキャノピー……。河森正治氏最新のアイディアを再現!

「機首コレクション VF-25F」

開発・発売元:マックスファクトリー

発売:11月

価格:5,280円 (税込)

ジャンル:プラモデル

全長:約340mm

 マックスファクトリーの「PLAMAX MF-51 minimum factory 機首コレクション VF-25F(以下、「機首コレクション VF-25F」)」はアニメ「マクロスF」に登場する可変戦闘機「VF-25F」の"機首だけ"を再現したプラモデルである。VF-25Fは人気の高いモチーフだが、機首だけというユニークな切り取り方の商品はこれまでなかったろう。

 マックスファクトリーはこれまで本商品と同じ1/20スケールでフィギュアプラモデルも展開しており、その商品と並べることで、「機首と人物」を同スケールで並べることができる。こうすることで様々なドラマが展開可能だ。

「PLAMAX ランカ・リー」(右)と「シェリル・ノーム」。このフィギュアプラモデルのスケールは1/20。並べて楽しめるよう、「機首コレクション VF-25F」は同じ1/20スケールで設計されている

 今回本商品を企画したマックスファクトリーの竹下靖博氏と、高久裕輝氏に話を聞き「機首コレクション VF-25F」の企画の経緯や注目ポイント、今後の展開などを聞いた。アニメ「マクロスシリーズ」を手がける河森正治氏が、本商品を監修したエピソードも語られ、河森氏の物作りの姿勢の一端も聞くことができた。

企画担当者であるマックスファクトリーの竹下靖博氏(左)と、高久裕輝氏

1/20だからできる戦闘機の表現、フィギュアと並べて生まれるドラマ

 「機首コレクション VF-25F」は、「VF-31」や「YF-29」などと一緒に2019年の静岡ホビーショーで発表となった。企画は2019年初頭にスタートしたという。本企画のスタートは「PLAMAX minimum factory VF-1バルキリー」が商品化できたことから始まっている。1/20で全長約713mm、これまでにないサイズでVF-1を表現した商品は大きな話題となった。

 しかし、大きい。価格もファイターで2万円、ガウォークにスーパーパーツをセットして4万円という商品はやはり購入者が限られるという一面もあった。このサイズは魅力だが、コレクションするには大きさもサイズも規格外だ、商品開発で得たノウハウを活かした上で、コレクションしやすい商品はできないか、という方向性から生まれた企画だという。

「PLAMAX MF-25 minimum factory VF-1 スーパー/ストライク ガウォーク バルキリー」とMAX渡部氏。このサイズだからこそできた表現が、「機首コレクション VF-25F」に活かされている

 「機首だけのプラモデルがあれば買うかも」といったネットでのファンの意見も参考になったという。高久氏はプライベートでは飛行機のプラモデルを作ることが多い。その経験の中で、「飛行機プラモデルで一番作り込むところはどこだろう?」と自問した。やはりコクピットや、ランディングギアを収納する"脚収納庫"になる。この両方がそろってる場所と言えば機首だろう、という考えにたどり着いたという。「PLAMAX minimum factory VF-1バルキリー」を手がけたからこそ、その密度とディテールで、VF-25やVF-31といった可変戦闘機にチャレンジしてみたい、そう思ったとのことだ。

 この企画の原動力となったのが、「マクロスΔ」に登場する5人の戦術音楽ユニット「ワルキューレ」。彼女たちの2ndライブでワルキューレをバックアップする「デルタ小隊」、5機の可変戦闘機「VF-31ジークフリード」がデフォルトの塗装から瞬時にワルキューレ達のカラーに姿を変え飛んでいくシーンが両氏に強く衝撃を与えた。「この雰囲気をきちんと追体験ができるプラモデルが欲しい」。5人のワルキューレと、5機のジークフリードが並ぶシーンを立体物で欲しいと強く思ったという。

「特に『マクロスΔ』は、5人の戦術音楽ユニット『ワルキューレ』と彼女達をバックアップする5機のジークフリードが登場します。ワルキューレはすでに『PLAMAX』でフィギュアプラモデルとして商品化していたので、彼女たちと並べられる商品が欲しいと考えました」と竹下氏は語った。

「PLAMAX MF-51 minimum factory 機首コレクション VF-25F」の台座には、フィギュアをセットできるスペースが設けられている。別売りのフィギュアを並べることでドラマが生まれるのだ
「PLAMAX MF-08 minimum factory ランカ・リー」。フィギュアは色を塗ればよりキャラクター性を深めることができるが、成型色とデカールだけでもキャラクターの雰囲気が出るように工夫されている

 「5機作る」、「複数をそろえたい」というのがこの商品の根幹となる。このため「パーツ数を少なく、複数作りたくなるようなプラモデルにしよう」と言う方向性が決まった。パーツ分割などは「VF-1」での経験を活かしていけば実現できるという感触もつかめたという。

 「機首コレクション VF-25F」のサイズは全長約340mm。目の前にするととても大きく感じるが、実際には1/48スケールのジェット戦闘機プラモデルと大きさはあまり変わらない。完成品の"専有面積"も考えた上での商品展開だという。存在感、実在感があって、迫力があるのだ。

 本商品の特色を活かす部分として機首を支えるランディングギアが設置される台座部分に、"窪み"があるところ。これはPLAMAXのフィギュアプラモデルを置く場所として設計されている。「機首コレクション VF-25F」は台座の設計から、フィギュアと並べて置く前提となっているのだ。1/20のキャラクターと機首の対比の面白さこそ、本シリーズの根幹をなすコンセプトである。フィギュアを置くことで「実際の戦闘機のサイズ」を想像できるようにしているし、ドラマの幅が広がるのだ。

こちらはハセガワのプラモデル「VF-25F/S メサイア“マクロスF”」。「機首コレクション VF-25F」はこの機体の機首を再現している

 「機首コレクション VF-25F」は存在感と、「実際のVF-25Fが目の前にあったらこんな感じだろうか?」という想像力を刺激させられる存在だ。筆者は「ディテール表現なども新しく設定を書きおこし、より緻密にしたのではないか?」という質問をしたのだが、高久氏は「ディテール表現は設定画に準拠している」と答えた。

 筆者のような"ガンプラ世代"だと、「解像度を上げる」という原型のブラッシュアップを見てきた歴史がある。1979年のアニメで描かれたガンダムやザクが、時代を重ねるごと、さらに商品サイズによって、パネルラインや関節構造が刻々と変わり、内部メカ描写も緻密になりどんどん線が増えていった。「機首コレクション VF-25F」も大型モデル化にあたり、そういったデザインの変化や、オリジナルのメカ描写を入れているのかと思ったが、そうではないというのだ。

 「そもそも実在の航空機、そしてマクロスの可変戦闘機はそこまでパネルラインが細かいわけではないんです。そしてVF-25やVF-31は公式でCGモデルが設定されている。商品はこのCGモデルをベースに、設定されているディテールを盛り込んでいます。これまでサイズの関係で省略されていた部分や、描ききれていなかったようなところは立体化しましたが、パーツ分割などもこの商品のために足した、と言うところはありません。ただもちろん、このサイズの立体物として、設定されたディテールは入れられるだけ入れられた、という言い方はできます」と高久氏は語った。

ワルキューレの5人のキャラクターと5機のVF-31を並べたい、それが企画の発端だったと語った竹下氏
航空機のプラモデルについて強いこだわりを語る高久氏。本商品は両氏の強いこだわりが込められている

 「アニメの中で活躍しているVF-25Fを、1/20スケールで表現する際、できるだけ劇中の外見を表現する」そのテーマに関して"逃げなかった"というのは断言したいと高久氏は語った。商品化にあたり、表現を省略したり、立体化のための妥協はない。そのうえでモデラー達がさらなる作り込みをしてくれるのは充分ありだ。自分なりのVF-25を突き詰めて欲しいとのこと。

 「『VF-1』では私自身が感じていた飛行機プラモデルへの不満感や、パーツの分割、設計などを自分の中で咀嚼し、そのうえで自分が思い描くプラモデルを提示できたと思っています。飛行機モデルを組むことの楽しさを表現できた。『機首コレクション VF-25F』はそのノウハウを活かしています。組みやすく、作って満足感を得られるられるバランスが実現できています。ぜひ手に取って欲しいです」と高久氏は語った。

 2ページ目は「マクロス」を代表する人物である河森正治氏が、「機首コレクション VF-25F」にどんな思いを込めたかを掘り下げていこう。