インタビュー
モデルガン「コルトライトニング」インタビュー
2023年11月7日 00:00
コルト初のダブルアクション、試作品から「コルトライトニング」の魅力に迫る
それではいよいよ「コルトライトニング」の試作品を見ていこう。今回撮影した試作品はダイキャスト部分に黒染めが行われておらず、刻印なども省略されているが、使用パーツそのものは製品版と同じものだ。
今回は比較として同じくハートフォードのモデルガン「SAA.45」と並べてみた。.45口径の弾丸を使うSAAと比べ、.38口径の弾丸を使うライトニングはシリンダー部分がはっきりと小さい。またシリンダーにストッパーがかかるノッチ(凹み)がないところもわかりやすい特徴だろう。シリンダーを⽌めるための銃身の下のベースピンの形状も違う。
比べてみるとシリンダーの下で、トリガーガードの上部分、銃として機構が詰まっているところはSAAとライトニングの大きさはそれほど変わらないし、厚みもほぼ同じとのこと。その容積でダブルアクションのメカニズムがきちんと収められるのも興味深いところだ。
カートリッジはSAA同様ゲートを開け装填する。ハンマーを半分起こすとカートリッジを収めるシリンダーが解放されるので、回転させ込めることができる。排莢は銃身の横についているエジェクターロッドを使って行う。モデルガンの場合はロッドを使わずともゲートを開けて銃を傾ければカートリッジは滑り落ちてくるが、実銃では射撃の影響で空薬莢を出すためにロッドが必要だった。現代銃では見られない機構だ。技術の進化の過程を感じさせる。
グリップは「バードヘッド」と呼ばれるSAAの通常のグリップより小型で、握り部分が突き出した形になっている。日本人の手には小ぶりなグリップは握りやすい。グリップ上部には馬のレリーフがあり、滑り⽌めのチェッカーが刻まれている。馬のレリーフはコルトを象徴する意匠だ。
ハートフォードはすべての設計をデジタルで実施している。グリップのチェッカーや湾曲した馬のレリーフ部も実物通り3次元化するのにずいぶん手間と時間がかかった。銃の印象を替えるのに一番効果的なのはグリップの交換という。自分の好みの木製グリップに変えたり実物は価格が高いのでプラスチックグリップを象牙風やパール調に塗装するのもありだ。こういったカスタマイズするのもモデルガンの楽しみの1つと言える。
実際に銃を手で持つとSAAより軽い。しっかり握り込めるバードヘッドのグリップ、ダブルアクション機構も相まって"早撃ち"ができる銃、という雰囲気が味わえた。ダブルアクションの場合、トリガーを引いてハンマーを起こすのでシングルアクションに比べトリガーが重く、引き金を引く際銃身が目標からずれやすい。
連射速度だけ見れば、熟練したガンマンのシングルアクションによるファニング(扇撃ち)の方が速いかもしれないが、引き金を引くだけで連続発射ができるダブルアクションは撃ち手としては使いやすい。銃を撃つような緊張状態ではより敷居が低い銃の方が有利だった状況も多いだろう。
故障しやすいという機構的な問題点を持ちながら、16万丁以上も売れる⼈気が出たのやはりコルトの製品というブランド力があったからこそだ。この銃で正確な早撃ちをしたというビリー・ザキッドの凄さなども改めて想像できる。歴史に思いをはせるというのもモデルガンの大きな楽しみ方に一つと言える。
今回は「コルトライトニング」ならではの特徴であるダブルアクション、シングルアクションを動画で撮影した。非常になめらかに作動しているのを確認して欲しい。
サンダラーやレインメーカー、シルバーまで! 今後のバリエーションにも注目
ライトニングは"コンシールドウェポン(隠し銃)"としても使われたという。短銃の2インチモデルなどは、ベストの中に忍ばせて隠し持ち、相⼿の隙を突いて引き⾦を引く。ハンマーを起こす必要のないダブルアクションは抜き撃ちもしやすい。ギャンブラーや銀行マンに愛用されたと聞く。
ハートフォードがコストを掛けて「コルトライトニング」を製作したのは、もちろんバリエーション展開を見越してのものだ。短銃身、長銃身といった銃身長によるバリエーション、.38ロングコルト弾「ライトニング」を皮切りに、.41ロングコルト弾の「サンダラー」、ひいては32口径ロング弾の「レインメーカー」までといった口径によるバリエーション、そしてシルバーバージョンなど仕上によるバリエーションそれぞれを展開する。こう考えるとバリエーションは無限に広がっていくようだ。
口径によるバリエーション、さらにシルバー塗装でのニッケルメッキの表現、銃身のバリエーション、エジェクターロッドの有無など、「コルトライトニング」は今後ハートフォードの看板商品と言える「SAA」と同じように様々なバリエーション展開を考えているとのこと。
さらに加藤⽒が考えているのが「内部機構の完全再現モデル」。分解・組⽴ができ内部機構までが理解できる、いわゆる1分の1の模型がハートフォードのテーマだ。今回、製品「コルトライトニング」は遊びやすさと耐久性を考えて新機構を考案したが、あえて耐久性を考え ず、原形そのままの内部機構の再現性を重視したバリエーションも、ユーザーの希望が多ければ考えるとのこと。こちらはパーツを交換する「交換キット」での提供が⾯⽩いのではないかとのことだ。うまく動かなくてもいい、壊れてもいいが実際のメカニズムが分かるモデル、ここで苦労した初期の設計が活かされるはずだ。
モデルガンの世界ではホルスターを自作したり販売する人達もいる。「ライトニング」はSAAより小型の銃なため、すでに専用のホルスターを製造している人もいるとのこと。「ライトニング」は腰に付ける通常のホルスターだけでなく、服の内側に隠し持つようなショルダーホルスターからの抜き撃ちも似合うということで、ショルダーホルスターも良いのではないかと加藤氏は語った。
最後にユーザーへのメッセージを加藤氏は「西部開拓時代はなにものにも負けない開拓者精神(フロンティアスピリット、チャレンジ精神)によって支えられた時代です。当社がこの古き良き開拓時代の銃にこだわる理由がここにあります。モデルガンというハードとともに精神もお届けできたらと考えています。今回、実銃メーカーすら作らない「コルトライトニング」のモデルガン化に当社はチャレンジ、具現化しました。ご購入いただく際に何かを感じていただけるなら鉄砲屋冥利に尽きます」と語った。
非常に面白いお話だった。トイガンメーカーだけでなく、実銃メーカーすらなしえなかった「ライトニング」のモデルガン化の面白さをはじめて知ることができた。銃の知識がある人はもちろん、本製品をきっかけに、西部劇の世界に踏み出してみてはいかがだろうか? ぜひ発火させ、ダブルアクションの楽しさも感じて欲しい。