レビュー
モデルガン「GLOCK 17 3rd HW “Evolution2改”」レビュー
音と煙と排莢、自動拳銃モデルガンならではの楽しさ
2022年1月31日 00:00
- 「GLOCK 17 3rd Generation Frame HW “Evolution2改”」
- 開発・発売元:タナカ
- 発売日:1月14日
- 価格:29,480円(税込)
- ジャンル:モデルガン
- 全長:201mm
- 重量:548g
- 装弾数:17発
今回レビューするのは、タナカが1月14日に発売した、モデルガン「GLOCK 17 3rd Generation Frame HW “Evolution2改”」だ。実銃と同じ17発のカートリッジを装填、スライドを引き、引き金を引けば火薬の破裂音と共にスライドがブローバック、勢いよくカートリッジが排出される。モデルガンの魅力は「まるで実銃を撃ったようなアクション」を楽しめるところにある。特に薬莢を排出する自動拳銃のその風景は派手だ。
ガスガンでも「ガスブローバック」といったシステムで、スライドをガスで動かし擬似的にブローバックを体験できるが、やはり煙と火薬音と共にカートリッジが飛び出すモデルガンならではの風景は独特の面白さがある。特に「GLOCK 17 3rd Generation Frame HW “Evolution2改”(以降、「GLOCK 17 Evo2改」)」は「快音カートリッジ」というものを採用しており、その"音"も注目だ。製品の魅力を紹介していこう。
「樹脂パーツを多用した自動拳銃」は、その後のハンドガンの歴史を一変させた
まずモチーフとなった「グロック17(GLOCK 17)」とはどんな銃かを紹介していきたい。ハンドガンの"流行"に大きく影響した銃なのである。本銃を開発したグロック社は、オーストリアのメーカーで、機関銃のベルトリングや、ナイフ、スコップのメーカーとして知られていた。銃器の開発はグロック17の原型であるオーストリア軍新制式拳銃「Pi80」が初めてとなる。
グロック社は樹脂素材の技術に優れており、1980年のオーストリア軍の制式拳銃トライアルに、プラスチック樹脂を多用した拳銃でエントリーした。創業者であるガストン・グロック氏は趣味として銃器に詳しく、そのアイディアを活かしたものとなった。
完成した銃はフレームやトリガーがプラスチック樹脂製、デザインも従来の自動拳銃と大きく違ったものとなった。トリガー中央にセーフティを設けるというアイディアもユニークで、注目を集めた。撃針が撃鉄を兼ねるストライカー方式も相まって他の拳銃以上にすっきりしたデザインも大きな特徴だ。
グロック社のPi80が他の老舗銃器メーカーを抑えオーストリア制式拳銃となったのは銃業界に大きな衝撃を与えた。そしてこの銃の北米の民間向けモデルが「グロック17」というわけだ。1985年の北米発売当初はその特異なデザインや、独特な機構に懐疑的な論評もあった。また、"樹脂を多用"という情報が1人歩きし、「金属探知機に探知されない」といった誤解もあったという。実際にはスライドなど金属部品も使用されており、金属探知機に感知される。
樹脂を使うことで、軽量化ができたのは使い手の大きなメリットとなった。生産性が向上し製造側のメリットもある。さらに「寒冷地での使い勝手の良さ」も注目された。極寒地の場合、金属製の銃は皮膚に触れると張り付いてしまう。樹脂製はそういった問題が起きない。こういった点も注目され、現在「樹脂部品の使用」は、多くの現代自動拳銃で採用されている。
グロック17は多くの派生モデルを生み出し、今や様々な軍・警察に採用されているだけでなく、北米の民間市場でも大きな人気を集めている。北米の刑事ドラマや映画でも頻繁に登場するし、様々なカスタマイズモデルもある。グロック17の最大の注目点は「その後各社からコンセプトを同じくする拳銃が発表された」というところだろう。
SIGの「P320」、FNの「FNS-9」、S&Wの「M&P(ミリタリー&ポリス)」、H&Kの「VP9」……。他にも多くの最新オートマチック拳銃はポリマーフレーム、ストライカー式などグロック17の特徴を取り入れている。ハンドガン業界で大きなムーブメントを起こした銃なのである。グロック17もモデルチェンジを重ね、現在最新は「第5世代」である。
北米の民間銃器の販売サイト「GunBroker.com」でもグロック17のコンパクトモデル「グロック19」が2021年の販売トップとなっている。民間でもグロックシリーズは強い人気を誇っているのだ。
スライドからのぞく金色のカートリッジ。リアルな感触を持つモデルガン
基本となるグロック17も現在は"第5世代"となっている。今回のモデルガンのモチーフとなったのは3rd Generation(第3世代))。銃身の下に拡張用のレイル(溝)が設定され、グリップ部分にフィンガーチャンネルが設定されているのが大きな特徴だ。
ここからはタナカの「GLOCK 17 Evo2改」をよりしっかり見ていこう。筆者がまずこの製品で主張したいのは"その感触"である。フレーム部分が金属を練り込んだ樹脂「HW(ヘビーウェイト)」製で、ずしりと、しっかりした重さがある。
このしっかりした重量感が本製品の大きな魅力だ。また、人間工学を活かしたというグリップの握り心地もとてもいい。グリップの滑り止めのチェッカリングは素手になじむ。握り込み、その触り心地を確かめてしまう。
そして何といってもその特別なデザインがグロック17の最大の特徴だ。他のオート拳銃の無骨でいかにも軍用という感じの攻撃的なデザインと比べ、無機質な箱のような四角さは、好き嫌いがあるかもしれない。筆者も最初そのデザインは驚かされた。樹脂製というイメージも相まって、ドリルなどの工具のような雰囲気も感じる。これは筆者の想像に過ぎないのだが、この攻撃的すぎない、「工具のようなデザイン」が北米での人気の秘密なのではないだろうか? 筆者自身、「他の拳銃と大きく違うデザイン」というところで、グロックを気に入っている。
実銃ではこの四角いスライド部分は金属製となっていいる。モデルガンの「GLOCK 17 Evo2改」は質感の違う樹脂で成型することで素材の違いを表現。真っ平らな銃の上部につけられた照準装置もとてもシンプルなデザインだ。チャンバー(薬室)カバー部分も四角形で、ここもグロックの味だと感じる。
スライドを引いてみる。銃身がわずかに上を向くのは、実銃の「ショートリコイル」と呼ばれる閉鎖機構を擬似的に再現しているためだ。実銃の場合は、スライドと銃身のロックを解除することで薬室が開放される時間を稼ぎ、銃身内の圧力を低下させスムーズな排莢を実現している。
スライドを引いたことでむき出しになったチャンバーがメカニカルな雰囲気で楽しい。弾を撃ち尽くした場合は、スライドストップが働きこの状態で固定され、射手に弾を撃ち尽くしたことを知らせる。この姿も独特のカッコ良さがある。
スライドを戻し、マガジンを引き抜いてみる。空のマガジンはびっくりするほど軽くて驚いてしまった。マガジンは樹脂製なので、ガスボンベを兼ねるガスガンのマガジンとの重さの違いは強い印象に残る。実銃もマガジンは樹脂とのことで、この"軽さ"がリアルなのだろう。
そしてマガジンにカートリッジを詰める。金色のカートリッジがマガジンに収められていくのはモデルガンならではだ。ちゃんとマガジンの背中部分に空けられた穴から薬莢が見え、装弾している数がわかる。マガジンにカートリッジを詰めるシーンはドラマや映画でよくあるが、慣れていないと結構手間取るし、カートリッジ同士がこすれて小さな傷ができてしまうのも気になる。こういうのはやってはじめて得られる感触だろう。ぐいっとカートリッジを押し込むこの独特の感触が良いのだ。
そして「GLOCK 17 Evo2改」の大きなセールスポイントが「ストライカー機構の再現」である。これはスライドを外すことで確認することができる。製品の取扱説明書には「部品分解図」も用意されており、カートリッジの中央部分を叩くためのストライカー機構、排莢するためのエキストラクターを作動させるための機構、などがきちんと再現されているのも確認できる。市販の「GLOCK 17」のガスガンでは外側の再現はしっかりしているが、内部機構はハンマー式とのこと。"実銃の機構を再現"しているのが、モデルガンならでは、「GLOCK 17 Evo2改」ならではなのだ。
もう1つ、「GLOCK 17 Evo2改」のカートリッジはしっかり紹介しておきたいところだ。これまで筆者が使っていたリボルバー用カートリッジに比べ、今回の「快音カートリッジ」は部品点数が多く、7つもの部品に分かれる。
使用する火薬は5mm火薬と、リボルバー用の7mm火薬より直径が小さなものだったが、中央のライナー部分に隙間なく入れるため、5mm火薬のゲート跡をしっかり削り密閉した状態でセットする。爆発した火薬の音が抜ける先端部分には小さな穴が4つ開いている。この小さな穴から絞り出されることにより音を響かせるという機構のようだ。
次ページではカートリッジに火薬を詰め、"発火"をしていく。ブローバックでの薬莢のアクションなど、自動拳銃のモデルガンならではの面白さを実感できた。動画と共に見ていただきたい。