レビュー

サンコー「全身水冷スーツ」サバゲーレビュー

加速する温暖化を水冷でクールに乗り切れ! 夏のフィールドのマストアイテム

【全身水冷スーツ】

4月15日発売

価格:
全身水冷スーツ19,800円
モバイルバッテリーセット22,800円
対応サイズ:
胸囲:65~130cm
ウエスト:65~150cm
太もも囲:40~65cm
重量:約1.1kg

 アイデア家電メーカー・サンコーから、ゴーグルが曇らず動作音も静かで真夏のサバイバルゲームにピッタリなアイテム「全身水冷スーツ」が4月15日に発売された。GAME Watchで取り上げた際にはホビー界隈でも発売前から話題となっていた。今回は製品版を使って初夏のサバイバルゲームで実戦投入してみたので、その実力をレポートしていく。

今回紹介する「全身水冷スーツ」

空冷vs水冷の長い歴史! 何故熱を冷やすには水冷が優れているのか?

 最初の着る空冷空調製品「空調服」は、ピーシーツービー(現在は株式会社空調服)によって、ナイロン生地の一見蒸れそうなジャケットに空冷ファンが付いたものが2004年に発売された。モバイルギア黎明期の当時は、バッテリーもファンも非力だったこともあり、半ばジョークグッズの様なアイテムだったと記憶している。

 しかし、年々暑くなる気候に比例するようにモバイルバッテリーやファンも低価格・高出力化が進み、東日本大震災の復興作業を期に作業現場を中心に一気に普及した。

 現在では夏場、屋外の作業現場では着ているのが当たり前となった。また、小型の空冷ファンも同じく低価格化・高出力化が進み、ライブやイベント会場では必須の定番空調アイテムとなっている。今回「全身水冷スーツ」を発売したサンコーは首にかける「ネッククーラー」の老舗で、空冷式「ネッククーラーEvo」は累計販売数110万個の大ヒット製品だ。加えて、同社からは空冷の空調ファン付きリュック、空調ファンとプレートを組み合わせた空冷冷却ベストなども発売している。

【サンコー製品】
ネッククーラーEvo USBモデル ブラック/ホワイト
ファンと冷却プレートで背中蒸れとおさらば「ひんやりュック」

 その空冷空調製品の雄であるサンコーが、今回万を持して「水冷」の空調製品を世に送り出したことになる。空冷でヒット製品を産み出したメーカーが何故水冷に舵を切ったかと言えば「空冷に比べ水冷はより冷える」からだ。

 液体の水と気体の空気には性質の違いがあり、水の密度は空気の820倍、比熱(1gの物質の温度を下げるのに必要な熱量)は水は空気の4倍、熱伝導率(物質内で1cm離れたところの温度が1℃上がる時間)は水は空気の20倍。水は空気より圧倒的に熱を伝えやすい(冷やしやすい)のだ。

 パソコンは水に弱く、空冷が主流だったが、配管技術が進歩してハイエンドのパソコンでは水冷が当たり前となったことからも水冷の優位性が伺える。技術の発展に伴い、空調ベストが空冷から水冷に変わるのは歴史の必然と言えるだろう。無論、空冷にも低価格帯であることや単純な構造などメリットもあり、一概にどちらが製品として優れているかを決めることはできない。

モーター・ポンプと全身を巡る水冷チホースによるシンプルな構造!

 早速サンコー「全身水冷スーツ」を仔細に見ていく。「全身水冷スーツ」は平らな段ボール箱にビニール袋にくるまれて入っている。同梱の説明書には使い方、注意書きが載っているので必ず熟読しよう。

 特に、「本製品は医器機ではありません」という点は必ず胸に刻もう。「全身水冷スーツ」は作業やレジャーを過ごしやすくするための製品で、熱中症を防いだりすることはない。本稿も、夏場のサバイバルゲームをより楽しめる、という趣旨で進めていく。徹夜明けなど、体調が思わしくないのにこのベストに頼ってフィールドに向かったりしないようにしたい。

説明書は熟読しよう

 「全身水冷スーツ」は約1.1kgと非常に軽い。黒い合成繊維の表面はハニカム構造で織られていて丈夫だ。現場作業用として考えられているので、ホビーユースではかなり安心感がある。今回参加したサバイバルゲームでもBB弾の直撃を受けたが問題はなかった。また、本体を取り外して丸洗いできるのも衛生的で嬉しい。

開梱した状態
表面はハニカム構造で丈夫になっている

 スーツは、ベスト部分と腰ベルト部分、両太腿部分で構成されていて、それぞれがホース、ベルト、バックルで繋がっている。ベスト部分のみでの使用も可能だ。ベスト部分のみにするには、繋がっているホ-スを外す必要があるが、カプラー式でワンタッチで着脱可能なので、説明書通りにすれば専門的な知識がなくても簡単に取り外せる。

ベスト部分のみでも使用可能

 前開き式のベスト部分は本体を収納する背あてと、左右の胸あてで構成されている。両脇と前に2本づつのベルトが付いているが、調整幅が非常に広く、174㎝、80㎏の小太り体型の筆者でも余裕がある。

腰のベルト部分
着脱はワンタッチ
太腿部分のストラップも余裕がある
ベスト部分のサイズ。ゆったり着れる

 まずは、分離したベスト部分を見ていこう。背当てと胸当ての裏面にはウレタンホースが張り巡らされ、見るからに涼しげだ。水冷の心臓部であるポンプは両開きのファスナーを開けた背あて内の小ポケットに封入されている。

ベスト部分裏面にはウレタンホースが張り巡らされている
水を循環させる、文字通り本製品の心臓部であるポンプ

 電装系とポンプ本体はシュリンクされているので、破損させなければ内部への水の侵入は心配ない。背あて内には濃緑色の水タンクが一杯に入っていて、半透明と黒のホースが繋がっている。水タンクには500ml単位で目盛りがあり、水や氷を入れる際の目安になる。水タンクの蓋は大きく、500mlのペットボトルや大きな氷が余裕で入る。パッキンが付いた蓋のネジは緩みにくくなっていて、しっかり締めれば水漏れの心配はなさそうだ。

水タンクの蓋はぴっちり締まる

 胸当ての左側にはポケットがあり、ファスナーを開けるとUSBケーブルとスイッチが取り出せる。スイッチは長押しでオン/オフになり、ポンプの動きを3段階に調整可能だ。ボタンはせり上がっているので、視覚的に解りやすいのは勿論のこと、手袋をした状態でも操作しやすくなっている。

スイッチは手袋でも押しやすい。ファスナーにパラコードを着けると開け閉めがより便利になる

 USBケーブルにはモバイルバッテリーを繋げるので外出先で充電が切れても安心だ。モバイルバッテリーの収納部は比較的狭いので、サイズには注意が必要。本体とバッテリーのセット商品(22,800円)もあり、本体のみ(19,800円)とも差額が3,000円の違いなので、確実に収納できる純正のセットの購入をおすすめする。

角張ったり、大型のモバイルバッテリーは入らなかった

サバイバルゲーム実戦投入! 超快適な驚異の実力を体感

 今回は千葉県印西市の東京サバゲパークの定例会にて「全身水冷スーツ」を実戦投入した。当日は晴れで、気温は26℃程だったが、数日前に降った雨のため湿度が高く蒸し暑かった。そこで検証のために、さらに熱くなりそうな屋根のないセーフティの席を選び「全身水冷スーツ」をセッティングした。

午前中はベストのみで参加した

 午前中は、まずベストのみで参加した。冷蔵庫で冷やしておいた水300mlと、凍らせた500mlのペットボトルをタンクに入れてしっかり蓋をし、モバイルバッテリーを繋ぎ、ベストを着てスイッチを入れればポンプが動きだす。準備はスムーズに完了するので、会場についてから素早く着れるのがありがたい。

水を入れる前に緩衝材を外す
水を300ml入れる
凍らせたペットボトルを入れて蓋を閉める。あとはバッテリーを繋ぐだけで準備完了だ

 水タンクには凍らせたペットボトルを入れたので、背負っただけでもひんやり涼しい。しかし、スイッチを入れてポンプが作動すると冷水が上半身を駆け巡ってさらに爽快になる。

 というのも、人間には、三大局所冷却と呼ばれる熱中症対策として身体を効果的に冷やせる部位があり、そのうちの前頸部両脇(首の前面の左右)、腋窩部(両脇)をベストだけで冷やせるからだ。さらに、背中全面も冷やせるので、非常に涼しいのだ。26℃ぐらいであれば、少しポンプを付けて、冷えたらポンプを止めておけるぐらいに水冷の熱伝導効率の良さを実感できた。

首の周りから両脇にかけて冷やすので快適だ

 背中にペットボトルと水を入れても重さは苦にならない程度だし、何と言っても空冷に比べて音が劇的に静かだ。空冷ファンは回していたらサバイバルゲームに支障をきたすが、水冷ポンプは耳を澄ますと微かに作動音が響いてくる程度で全く邪魔にならない。裏取りなどにも使えそうだ。

ペットボトルを入れてもコンパクトで邪魔にならない
横から見てもコンパクト

 お昼休憩に試しに表面温度をサーモセンサーで測ってみたところ、直射日光に当たった水冷ホースのない背面表面温度は50℃近くに上昇していたが、冷え冷えの背中に当たっている部分の表面温度は24℃と、その差は歴然だった。午後には、腰ベルトと太腿部分のパンツパーツを装着。水を足して、ペットボトルの代わりに今度は氷を1kg投入した。ベストのみの状態に比べると履くのに若干手間が掛かるが、一度着けてしまえばそのまま快適に過ごせる。ベルトを調整すれば太腿にフィットして邪魔になることもない。

背面は直射日光に曝されると50℃近くに上昇
背中に触れる面は24℃程度なので涼しい
3時間程経ったペットボトル。この日ぐらいであれば2本で1日保ちそうだ
午後は氷を1kg投入。利便性はペットボトルの方が高いと感じた
タンクには目盛りがあるのでわかりやすい
全身着た様子

 パンツパーツによって残っていた三大局所冷却となる鼠径部を冷やせたので、炎天下でもより涼しく快適に過ごせる。この日筆者は同僚の多いポンプアクション式のショットガンを使っていたが、ひんやりと快適に連射しながらゲームを楽しめた。パンツパーツでも表面温度を計ってみたところ、脛の辺りは41℃だったのに対して、水冷スーツ部は10℃程低い33℃となっていた。感覚としては「冷たいペットボトルを脇の下や鼠径部に当てている」という感じだ。

ポンプアクションの速射が苦にならない快適さ
脛の辺りは41℃
水冷スーツ部は10℃程低い33℃

 何より快適だったのが、ゴーグルと眼鏡がほとんど曇らなかったこと。筆者は真冬でもゴーグルが曇るほどの多汗症なので、ゴーグルと眼鏡の両方に曇り止めを塗り、ファンを回しっぱなしでサバイバルゲームに参加している。しかし、この日は水冷ベストの効果で顔にほとんど汗をかかず、眼鏡もゴーグルも曇り知らずだった。曇り止めファンを回さずサバイバルゲームをしたのはいつ以来かと思うほど。クリアな視界で一日サバイバルゲームを満喫することができたのは、最大の収穫だった。

冷却していない帽子にうっすら汗が滲む程度だった
汗をかかないのでゴーグルが極めて曇りにくい

夏場のサバイバルゲームに絶対おすすめしたい! 「全身水冷スーツ」は必須アイテム

 2022年に色々な暑さ対策グッズを試し、色々な製品を組み合わせて何とか涼を取ってきたのが、2023年までの屋外のサバイバルゲームだった。しかし、今年発売された「全身水冷スーツ」は、夏のサバイバルゲームに革命を起こす快適な空調アイテムだと感じた。

 水冷は空冷に比べて冷えやすいのは解っていたことだが、それを実用的な製品に仕上げ、手の届く価格で発売されたことは画期的だ。まずは本製品を買ったうえで、他のアイテムで頭を冷やしたりして足りない箇所補っていくことで、夏のサバイバルゲームにより快適に参戦できると断言できる。

 身体が冷えて快適な点に加え、サバイバルゲームでのメリットとして静かで動きやすくかさばらないという利点がある。何より繰り返しになるが、ゴーグルが曇りにくい環境になることは最高のメリットだ。

 また、サバイバルゲームの後日に自転車に乗って遠出してみたが、やはり汗をかかず、ペダルを漕ぐ邪魔にもならず、快適だった。一度買えば長く使えるし、サバイバルゲーム以の普段使いでも実用性が高い。今のうちに購入して、夏のサバイバルゲーム、イベント、ライブなどに備えることを強くおすすめしたい。