特別企画

第5回「遊戯王」宇宙最強カード列伝! その名の通りまさしく遊戯王を“征”服した最強のドラゴン集団「征竜」をキミは知っているか!?

【「征竜」4種】

2013年2月16日 登場

 爆アドォォォ!アドえもんです!筆者は普段YouTubeにて遊戯王を中心にカードゲーム動画を投稿している愉快でうるさいオジサンだ。

今回もアルティメット長い歴史を持つ「遊戯王」カードの中でも(色んな意味で)特に名高い連中を、そのカードが生まれた日に合わせて紹介する企画「宇宙最強カード列伝」第5回をやっていこうと思う!

 今宵紹介するカードは今までと毛色を変えてカード単体では無く“テーマ”としての登場となり、遊戯王をプレイしている人間なら活躍していた当時を知らなくても一度は耳にした事があるであろう正に「最強の代表格」と言っても過言では無い連中だ。そんな訳で今回の主人公となるカードはコイツら! 11年前の今日、2013年2月16日発売のパック「LORD OF THE TACHYON GALAXY」にて登場したぶっ壊れドラゴン軍団「征竜」だ!

 きっ来たぁぁァァァァァァァァァ!!!本当の意味で一度遊戯王を破壊し尽くした最強集団!!!

 あまりにも威厳があり過ぎる風貌と、当時基準ではビックリするくらいのパワーテキストの数々で多くのデュエリスト達を楽しませた非常にエキサイティングなドラゴン達だぜ!

 現代遊戯王から始めたプレーヤーでも耳にした事はある人も多いと思うが、知らない人でもトーナメント環境が同じアーキタイプのデッキに固まったりした際に、SNS等で唐突に現われる遊戯王お爺ちゃん達が「それでも”征竜魔導”環境よりはバラけてる」と呟いている姿を見た事は無いだろうか?

 そう、何を隠そうその片割れである「征竜」がコイツらである。当時を知る人間からすると「最強と言えば『征竜』」、「『征竜』といえば最強」、と現代に至るまで脳に擦り込まれ続けてしまうほどの強烈なインパクトと伝説を残している奴らなのだ。

 今回はそんな多くのデュエリストを破壊し、多くのデュエリストを魅了し続けた最強のドラゴン集団「征竜」の最強っぷりを振り返りながら、現代遊戯王基準ではどれ位強いのか、どんなデッキを組めるのかを考察していこう!

 合わせて過去に紹介した最強連中も気になる人は下のリンクからそっちもチェックしてくれ!

実は「魔導征竜」最序盤の時期は筆者がお受験シーズンだった事もあり情報に少し不安があったので、今回記事を作製するにあたって当時バチバチにトーナメントシーンでデュエルしていた友人に取材しつつ実際に当時のデッキを全て組んで対戦もしてみたぞ!「マスターデュエル」では征竜全員がUR……計12枚を生成した我が覚悟の証を見届けてくれ(課金額5万円!)

各属性をサポートしようと思っただけなのに……全員揃ったら何でもできるようになっちまったテーマ「征竜」!

 まず最初にいくら有名とは言えもう10年以上も前のカードかつ、長年禁止カードとして牢獄にぶち込まれていたため、しっかりと効果を覚えている人も少ないと思うので、「征竜」達の特徴や各々が持つ固有の能力についておさらいしよう。

 基本的な事として「征竜」と呼ばれるモンスターは全部で8体存在し、その中でデッキの顔となるのが俗に“親征竜”と呼ばれる4体の竜だ。炎属性の「焔征竜-ブラスター」、水属性の「瀑征竜-タイダル」、風属性の「嵐征竜-テンペスト」、地属性の「巌征竜-レドックス」は全員がレベル7のドラゴン族という共通のステータスで、当初はそれぞれが該当する属性をサポートするモンスター群としてデザインされたと言われている。

このテキスト量かつ強力な効果をもちながら10年以上前のカードなのだから腰を抜かしてしまう

 そんな注目の能力だが、なんとそれぞれの征竜が1枚で“4つ”の効果を持つというなんと現代基準でもビックリなギチギチテキストとなっている。なのでまずは共通となる3つ効果から見ていこう。

 1つめの共通効果は各征竜が自分と同じ属性か“ドラゴン族のモンスター”を手札か墓地から合計2体除外する事で、自分自身を手札か墓地から特殊召喚できる効果だ。純粋に墓地のカードをコストに墓地から特殊召喚できるためリソースが減らない展開効果として十分すぎるほど強い。

 その上で2つ目の共通効果は、自分自身が除外された時に自身と同じ属性のドラゴン族をデッキからサーチする事ができる効果となっている。

 この時点でお気付きだと思うが各属性をサポートすると言いながらドラゴン族でも特殊召喚コストとして代用できちゃう事で「征竜をコストに征竜を出せる」デザインとなっているのだ。その上で除外されたら嬉しい効果を持っているんだから最早確信犯である。この時点で「属性サポート」という大義名分に疑いの目が向けられてくる事だろう。

 そして3つ目の共通効果が特殊召喚されている自身が相手のエンドフェイズに手札に戻ってしまう効果となっている。一件盤面から退場してしまう効果なので簡単に特殊召喚できる代償なのかなと思うかもしれないが、そんな事は欠片も無い。この効果は次に紹介する各征竜の固有効果とシナジーする効果となっているのだ。

 固有効果はそれぞれ異なるが、コストまでは似たような効果となり、手札に存在する同じ属性のモンスターと自分自身を一緒に墓地に送る事で効果を発動できる。

 その後の効果は各々異なり、ブラスターなら場のカードを何でも1枚破壊、タイダルならデッキからモンスターを1体墓地に送る、テンペストならデッキからドラゴン族モンスターをサーチ、レドックスなら自分の墓地からモンスター1体を特殊召喚……と、ものの見事に全てが強い効果なのだ。冷静に考えて多少の違いはあれど制限カードの「おろかな埋葬」や「死者蘇生」に近しい効果を持っているのは純粋に凄い。

 ただし少し難しいのがこれらの効果を全て含めて各「征竜」は共通して1ターンに1度しか効果を発動できないという点だ。サーチ効果を使えば特殊召喚も固有効果も使えないし、逆に固有効果を使うとサーチ効果も特殊召喚もできない。固有効果で手札から墓地に送ってそのまま墓地から特殊召喚といった極悪過ぎるムーヴはできない形になっている。

対応する各属性のテーマデッキに投入すれば展開サポートから盤面突破、高いステータスを活かしてそのままバトル要因に回したり各種EXモンスターを出す素材に使えたりと大活躍間違いなし! 色々なデッキで使えるようにデザインした結果全員汎用的な最強効果ばかりを盛ったという印象だ

 もう言うまでも無いと思うが、この「征竜」達は各属性をサポートするという役割以上に「征竜」とドラゴン族でデッキを固めた方が圧倒的に強いのが特徴であり、そこが問題だった。あまりに汎用性が強すぎる固有効果、簡単に高ステータスのモンスターを並べられる展開力、墓地から何度でも蘇り、除外されたら後続を用意できる持久力と……そのどれもが11年前に存在してはならないレベルのオーバーパワーだったのだ。

登場当初から暴れていたかと思いきや……。当時の環境はいかに

 「征竜」が出てきた当時は、この1つ前の環境が「3軸炎星」や「水精鱗(マーメイル)」が活躍していた。展開力は徐々にインフレを起こしていたが、ここまでの安定感・対応力・持久力を同時に併せ持ったカテゴリーは流石に存在していない。

 4体の征竜がこの世に解き放たれた瞬間環境は「征竜」デッキだらけになってこの世は地獄に……なる事は無く、実はパックが出た最初期の方は比較的平和だったという。むしろ同じタイミングでヤバすぎる最強カード「魔導書の神判」を貰った「魔導」テーマの方がイカれたムーヴをしていたため、破壊力で言ったらそちらの方が強かったようだ。

 前述した「3軸炎星」や「水精鱗」に対応している征竜を取り入れたデッキがまだまだ活躍できていたし、何ならその後もちょくちょく顔を出す「ヴェルズ」デッキも名ギミックが「征竜」や「魔導」と相性が良かった事でかなり使われていたようで、“このときは”まだ皆が想像するような地獄の「征竜魔導」環境は息を潜めていたのだ。

「征竜魔導」環境を代表するウルトラ最強魔法カード「魔導書の神判」。エンドフェイズとは言え平均で3~4枚のカードをサーチしながらエースを当たり前のように呼び出すこのカードも色々とおかしい。この1枚で「魔導」を環境トップに押し上げた事を考えると、単体パワーで言えば当時右に出るモノは居なかっただろう。今回は「征竜」が主役なため深くは取り上げないが、間違いなく宇宙最強カードの内の1枚だ
レベル5以上のモンスターの特殊召喚を封じる「ヴェルズ・オピオン」を手軽に出せる「ヴェルズ」デッキは「魔導」と「征竜」のどちらにも強く刺さり、サーチできる「侵略の汎発感染」の通りも良いため、この環境ではギリギリの所で喰らいついていく事になる。パックの発売直後はまだ「征竜」側にも足りないカードが多かった事もあってまだ余裕があったように思える

 では具体的にどの時期から「征竜」は暴れ回る事になるのか。それは各“親征竜”をサポートする“子征竜”が全員揃ったタイミングからだ。最初に征竜は8体いると書いたがその残りの4体がこの子征竜となる。

 子征竜は「炎征竜-バーナー」、「水征竜-ストリーム」、「風征竜-ライトニング」、「地征竜-リアクタン」の4体。親征竜と同じく4属性に1体ずつ存在し、全員がサポートする相手が違うという点を除いて共通の効果を持っている。その効果は手札から同じ属性のモンスターかドラゴン族と自分自身を一緒に墓地に送る事で、対応する属性の親征竜を特殊召喚するというモノ。お前らも属性を超えてドラゴン族とか言い始めるんか~い!

 この子征竜の存在は「征竜」デッキにおいては死ぬほど重要で、展開力の上乗せになるだけでなく展開の中で墓地にドラゴンを大量に供給できる事から親征竜自身の効果での展開も容易になるのだ。その上デッキから親征竜を呼び込める確率も高くなる事から動きの再現性と安定感が大きく上がり、当時の妨害カードでは展開の疎外にも限界があったため、何度も何度も展開し続けてくるこの親子基盤が凄まじく強かったのだ。

 そんな子征竜達だが、親征竜が登場した当時には地属性のリアクタンと水属性のストリームの2種類しか存在しなかったため不完全だったのだ。そこから1カ月後に炎属性のバーナー、風属性のライトニングが加わる事でフルメンバーが揃い、「征竜」の躍進劇が始まるのである。

最初に登場した2体。関連商品を一定金額以上購入した際に貰える特別パックにて登場した”子征竜”。前後で登場時期がズレた事でパック発売から1カ月はフルパワーでは無かったのだ
ちなみに筆者はの個人的な感覚で言えば、征竜のヤバさの半分は“子征竜”側にあると今でも感じている

 最強の展開力・安定感・持久力を揃えた当時の「征竜」のメイン戦術は親征竜によるパワープレイを主軸に、子征竜が展開上手札のドラゴンを大量に捨てる事を利用した「超再生能力」によるエンドフェイズ鬼ドローが鬼のような強さだった。

 その上でレベル7が容易に並ぶことから「No.11 ビッグ・アイ」や「幻獣機ドラゴサック」等の当時最強だったランク7のエクシーズモンスターを押し付けたり、召喚権がまぁまぁ余る事から当時の筆頭手札誘発である「エフェクト・ヴェーラー」を召喚して「クリムゾン・ブレーダー」をはじめとしたレベル8シンクロを出す、さらには「光と闇の竜」をアドバンス召喚してライバルである「魔導」や罠系デッキを牽制する……などかなり自由度の高い動きを可能としていたのも強み。下手なメタカードを出されても「焔征竜-ブラスター」で破壊できたり、環境に合わせてカードを入れ替えられる自由枠が相当多かったり等、暴力的な強さを持ちながら対応力まであるという部分が最強たる所以だった。

 ここまで来ると同じ化け物染みた展開力とリソース力を持つ「魔導」しか勝負にならなくなるため実質2トップの戦いになり、ギリギリの所で踏みとどまれている「ヴェルズ」がワンチャンを掴めるかもね……といういわゆる「征竜魔導」の時代へと本格的に突入していくのだ。

「魔導書の神判」が良いなら良いよなぁ!?と言わんばかりにこちらも大量にドローを始める地獄絵図。「超再生能力」自体は当時からしても古いカードだったため偶然の噛み合いだとは思うが、エンドフェイズに毎回アホみたいな量のカードを加えるデッキだらけの環境怖すぎだろ……!
罠や魔法を大量に構えるタイプには「光と闇の竜」、巻き返しには「No.11 ビッグ・アイ」、ミラーには「クリムゾン・ブレーダー」等のように一部環境デッキへの対策カードを多く組み込める自由スロットの広さも楽しいところ

 もう大会に参加するプレーヤーの殆どが「魔導」か「征竜」になった事で、デッキ構築からこの2つのテーマに山張って対策を打つのがデフォルトになり、トーナメントシーンでは非常に面白い鍔迫り合いが多発する事になる。

 例えば一番最初に起こった変化だと、「征竜」を対策したい「魔導」側が特殊召喚を封じる「昇霊術師 ジョウゲン」や、墓地からの除外を禁止する「霊滅術師 カイクウ」など「征竜」を殺すためのスペシャリストを投入し始めたのだ。最初は神判でエースモンスターを出していたのに、いつの間にかジョウゲンなどのお坊さんを揃えるようになり、エンドフェイズに神判で抱えたリソースを有効活用するためには後攻1キルは断固として止めるため「和睦の使者」を入れたりなど、想定相手がしっかりしているからこその面白味が生まれていたのだ。

かの有名な「ゴッドジョウゲン」システムが生まれたのもこの時期の話。魔法ファンタジー(「魔導」テーマ)からの唐突の坊さんラッシュが面白すぎる絵面だ
「征竜」の根本を否定するようなカードを投入してより殺意が増している

 だがここで「征竜」側もその対策を繰り出す。白羽の矢が立ったのは古のスピリットモンスター「月読命(ツクヨミ)」だ。召喚時に相手モンスター1体を裏側守備表示にする効果を持っているため、これでジョウゲンやカイクウの効果を無力化してから自分の展開を通すのだ。月読命は自身の効果で手札に戻るため相手が厄介なモンスターを出した際に何度でも投げることができ、召喚権をほとんど使わない事から月読命は正に対策カードとしてピッタリな存在だったのだ。

 そんな中、この2テーマ以外で唯一「ヴェルズ・オピオン」のロック効果で何とか食い繋いでいた「ヴェルズ」は、ここから投入され始めたこの「月読命」のせいでオピオンを裏側にされてしまう事態が多発。ロックが脆弱になった事でついでのように対策されてしまう形となった。ヴェルズオピオーーーーーン!!!

「月読命」はこの時期に丁度準制限に緩和された事もあって正に待ってましたと言わんばかりの活躍を見せる。ブラスターの効果と合わせて出てくるロック系のモンスターさえいなければ自前のごり押し踏みつぶせるの本当強いよなぁ……

 しかしこの2デッキのデッドレースはまだまだ序の口。ここからお互いがお互いの事をメタる為に様々なカード達が入り乱れる事になる。「魔導」への対策として「闇のデッキ破壊ウイルス」や「封魔の呪印」などのそもそも魔法カードを使わせないようなカードが取り入れられたり、逆に「征竜」に対しての対策には「次元の裂け目」や「群雄割拠」といった今でもやられたくないような根本破壊系カードが投入されるようになってくる。

 それを見た「征竜」側がバック破壊の汎用札を多めに入れるようになる等……この2テーマがお互いを徹底的にメタり合うゲームが続いたのだ。最終的にはこの2テーマによるミラー戦も頻発するようになった事から、手札から自身を捨てる事で相手の魔法使い族のコントロールを得られる「パペット・プラント」や、同じ条件でドラゴン族のコントロールを奪う「エレクトリック・ワーム」等の局所的なカードも主流になるレベルだった。

 一方その頃、辛うじて喰らいついていた「ヴェルズ」は、お互いが投げ合うメタカードの影響をちょくちょく受けて半死ながらもギリギリ踏みとどまってはいた。だが環境が極まって「エレクトリック・ワーム」が飛んでくるようになると要の「ヴェルズ・オピオン」がドラゴン族であるため、またしても簡単にロックが解除されてしまうようになったのは流石に可愛そう過ぎたのを覚えている。ヴェルズオピオーーーーーーン!!!!!

本来、種族限定で発動するカードなため汎用性は高くはないが、この時のように環境上位のデッキがほぼ固定化されるとガン有利な局所的なカードが輝きだすのも面白い。マッチ戦かつトーナメントだからこその醍醐味と言えるだろう

 そんな神々の頂上決戦とも言うべき「征竜」と「魔導」のデットヒートは約半年間続き、その道中では「青き眼の乙女」等のブルーアイズギミックが投入された「青眼魔導」が生まれたり、「征竜」側がミラー対策で対象耐性を持つ殴り返されないモンスターとして「オベリスクの巨神兵」を使いだしたり、その年の世界大会の終盤ではかの有名な「機動要犀 トリケライナー」や「No.7 ラッキー・ストライプ」が活躍して勝利する試合が行なわれたりなど、ほとんどのプレーヤーがこの2つのデッキを握り続けた事でありえないレベルでこの2デッキでの環境研究が進み、意外性が強かったり面白いカードが数多く活躍するような環境でもあった。

 環境デッキがほぼ固定された時期として「征竜魔導」環境はよく槍玉に上げられるが、その実この「征竜魔導」環境自体を悪く言っているプレーヤーは余り居ない印象がある。この環境ならではの面白さや発見に毎日楽しまさせて貰っていたという感想の人も多いのではないだろうか。

 2013年9月の制限改定にて「征竜」側は子征竜が全員禁止に、「魔導」側は「魔導書の神判」が禁止にぶち込まれた事で苛烈ながらも楽しかった「征竜魔導」の時代は終わったのだ。まさに1つの歴史が終わりを告げた瞬間だったかもしれない。

ここで終わったのは征竜魔導時代……どれだけ体をもがれようが何度でも立ち上がる「征竜」の姿はまさに恐怖そのもの……!

 今までの「宇宙最強カード列伝」なら規制を受けたこのあたりで話が終わり、次に現代で使用した際のパターンなどを話し始めるのだが、実はある意味「征竜」の一番ヤベー部分はここからだったりする。

 子征竜を全て失い展開手段の半分を失った「征竜」だったが、大人しく各属性のサポートカードに戻る訳もなくここからまだ戦い続けるのだ。この時はまだ親征竜が3枚ずつ使えたのである。その結果「竜の霊廟」や「竜の渓谷」などの墓地肥やしと他の最強ドラゴン族達との絆の力によって全然戦えてしまったのだ。その結果、翌年の2014年の2月には親征竜全員が準制限カードとして規制を受けてしまう事になる。この頃はまだ「征竜ってやっぱ強いな!」と感動の眼差しで彼らを見ていたと思う。

墓地にドラゴンを大量に落とす手段さえあれば征竜の展開と持久力が消える事は無い
直前に発売されたブルーアイズのストラクチャーデッキでドラゴン族サポートを大量に貰った結果、「征竜」は全然余裕で戦えてしまった

 恐らく「全員2枚しか使えないなら流石にそろそろ終わっただろう」と多くのデュエリストがそう思っていた。何せ本人達だけが準制限に行くのでなく、このタイミングの規制で潤滑剤になっていた「封印の黄金櫃」と「七星の宝刀」すらも制限カードになってしまったのだ。ここまで元々使っていたカードに規制が入ったら普通のテーマは止まるのだが、ここら辺からデュエリスト全員が「『征竜』って普通じゃないんだ」と自覚し始める事となる。

 この時期になると「征竜」達は、自分たちの枚数が減ってしまった部分を補うように様々なドラゴン族を取り込むようになっていった。メインデッキでは「ブルーアイズ」のパーツを取り込んで展開力を補填したり、当時の環境に合わせて「コアキメイル・ドラゴ」を投入して戦いを有利に進めたりなど、元々の征竜の戦い方とは異なるが“ドラゴン達を束ねる長”のような立ち振る舞いのデッキが構築されるようになったのだ。結果としては全然環境上位で戦う事が証明されてしまったため、準制限になったわずか2カ月後の2014年4月の改定にて“親征竜全員”が制限指定されてしまった。

よくよく考えれば征竜は本来属性サポートとして様々なデッキへの出張が考えられていたカードなので「ドラゴングッドスタッフ」みたいな形でデッキを組めば同じようにポテンシャルを活かせるんだよな……。組み合わせるのはドラゴン族であれば誰でもウェルカムなため、「コアキメイル・ドラゴ」のようなクセが強いが対面によっては刺さるみたいなカードも腐る事無く使いこなせるのが良い

 制限カードになっていよいよ年貢の納め時かと思われた征竜達。実際1枚だけだと除外してサーチ効果を使った場合、何かしらの手段で墓地に戻さない限り二度とフィールドに出せないため、慎重に扱うべき存在になってしまったと言える。

 流石にこの頃になると環境でバリバリ戦えるというレベルでは無かったが、制限改定を受ける前に主流になりかけていた「青眼征竜」デッキはドラゴン連合として面白くしっかり強いデッキだったし、制限カードになった事で逆に属性サポートとして色んなデッキに投入されて楽しく使われていた印象がある。暴れ回っていた征竜達もようやくこれで落ち着けるんだな……そう思って数年が経った時、大事件が起きてしまった。

 2015年3月発売の「PREMIUM PACK 17」に収録された最強カード「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン(以下:ダークマター)」が登場した事によって征竜達は再び環境デッキへと返り咲く事になるのだ。ダークマターの効果は「ギャラクシーアイズ」エクシーズモンスターの上に重ねて簡単に出せる効果に加えて、場に出た時にデッキからドラゴン族を3体墓地に落とす効果を持っている。そう、こいつ1枚で制限カードになってしまった征竜達を確実にデッキから叩き落とす事ができるようになってしまったのだ。召喚条件もランク8を立てれば簡単に出せるため既存の征竜デッキでも簡単に扱う事ができ、瞬く間にこのダークマター入りの征竜は再び環境に顔を覗かせるようになる。簡単に言ってるけど墓地に確定で落とせる手段があるならそれだけで環境レベルにすぐ戻ってこれるって……ハッキリ言ってヤバすぎだからな!

 最初の規制で翼をもがれ、次の規制で足、最期に腕……と数々の制限改定で弱体化を受けてきたにも関わらず、他のドラゴン達で体を補填しながら戦い続け、最期には体の大半をダークマターにしてまで環境に戻ってくる。その執念と生まれる時代を間違えたと感じるレベルの自力の高さは恐怖を超えて尊敬に値するだろう。ダークマター征竜と化して一定期間環境を暴れ回った後、2015年4月の改定でついに“親征竜”4体が全て禁止カードとなる事で征竜を巡る戦いは決着した。最初に規制を受けてから実に約1年半の間、何度制限改定で殺そうとしても姿形を変えて果敢に何度も環境に喰らい付いてくるその姿があまりに強烈過ぎた事で、今もなおデュエリストには「征竜は最強」というイメージが根強く残っているのだ。

ある意味征竜にトドメを刺したカード。下手な時期の征竜よりも確定で落とせるルートがあるコチラの方が強いパターンがあるため、このカードの影響はデカすぎた。ちなみにこのカードも征竜の1体であるテンペストが制限に戻った際に地獄みたいなコンボを生み出して禁止カードとなっている。最強列伝候補の1人だ

現代では良カードレベルの強さに落ち着いている征竜! 「マスターデュエル」では全てのカードが解除されてデッキを作る事も!?

 歴史が濃すぎて長くなってしまったが、そんな征竜達は現代だと徐々に禁止制限が解除されている。OCGではタイダル以外の征竜が全員制限カードになっており、「マスターデュエル」ではなんと全てのカードが無制限という、現実よりも1歩先を進んだ改定が行なわれた。

 実際筆者は数年前からしつこく言い続けているが、現代パワー基準で考えたら征竜は全然問題ない。逆に言えば現代のパワーと比較してやっと良カードに落ち着くレベルだから、10年以上前には存在してたのはヤバすぎだよね。時折、OCGではまだ解除されてないタイダルは危ないという意見のプレーヤーもいるが、恐らく征竜達の歴史を実体験してしまって恐怖の記憶を植え付けられているだけなので安心して欲しい。タイダル1枚で墓地肥やしても現代なら大丈夫だ!!! もっとヤバイ初動&展開札はこの世に沢山ある!!!

 そんな現代では健全に生きる征竜くん達だが、使われ方としては当初の目論見通り各属性テーマのサポートになっている事が多い。一番わかりやすい例を上げれば「ドラグニティ」にテンペストを投入する等だろう。テンペストは一番最初に制限解除された事もあって長年ドラグニティを支え続けているため馴染み深いプレーヤーの方が多いのではないだろうか。他にも「春化粧(はるけしょう)」や「アダマシア」などの展開系の地属性デッキにはレドックスを入れても面白いだろうし、墓地の炎属性を除外する事に意義のある「ラヴァル」や「不知火(しらぬい)」などにブラスターを入れるのは理に適ってそうだ。長い時を経て本来想定されていた職務を全うできていると考えると何だか感慨深いとは思わないか?

 さて「マスターデュエル」では全て征竜が無制限になっているお祭り状態という事もあるので、今回はそんな無制限常態の「征竜」がどんな展開ができてどんなデッキになるのかを実際にデッキを組んでランクマッチを周りまくってみた感想を交えて考察していきたいと思う。

 まず現代遊戯王の観点で征竜のネックとなる部分は、展開すると順当に手札が減っていく事だ。当たり前かと思うかもしれないが、征竜はその特性上手札での効果を発動するためにもう1枚のコストが必要となる。子征竜の効果を連打しようモノなら爆速で手札が無くなってしまうし、手札誘発の「灰流うらら」をタイミング良く貰おうモノならその瞬間パリンパリン(サレンダー)してしまうだろう。直近で登場した「スネークアイ」等最近のテーマは、展開もできるしその後のリソースもある程度あるがベースなので、可能ならある程度リソースを担保できる形にはしたい。

 さらに差別化する相手が多いというのも悩みどころだ。単純にドラゴン展開に寄せるなら方向性が同じ「ドラゴンリンク」に軍配が上がるだろうし、単純に上級モンスターを出してシンクロを絡めた展開をするなら「深淵の獣」や「天威ローズ」等とも方向性を変えたい。そんな様々な思考の末、筆者が辿り着いた現状の「征竜」デッキの1つを公開しよう。

【征竜Verローズアームド】

 組み合わせたドラゴンテーマは「ローズドラゴン」と「アームドドラゴン」の2つだ。この2テーマはそれぞれ征竜と相性の良いポイントがあるため順に解説しよう。

 「アームドドラゴン」は先述した手札が足りなくなる問題をコストになった時の効果で補填してくれる。加えて、「アームド・ドラゴン・サンダー LV5」でテンペストにアクセスする事ができたり、特殊召喚が容易な「パイル・アームド・ドラゴン」が征竜と同じレベル7のためランク7を作って展開を伸ばす事が可能だ。

手札コスト兼ランク7作る際のサポート役もできる優秀なモンスター達! パイルアームドは特に自身の効果でアームドドラゴン達の効果を起動させてリソースを回復しながら、征竜のタネになるドラゴンを落とせるのもグッド

 「ローズドラゴン」は「天威ローズ」と同じ着想で投入している。各々の効果で連鎖的にチューナーを供給できる「レッドローズ・ドラゴン」と「ロクスローズ・ドラゴン」と召喚権を使わずにレベル7を複数回展開できる征竜を合わせる事でレベル10シンクロモンスターを連打する事ができるのが魅力。ドラゴン族なので征竜のコストになる事から無駄にならず、必要最低枚数の投入で仕事を果たしてくれるので今回はこちらも採用した。

「天威ローズ」との差別化としてはローズドラゴン側をテンペストの効果でサーチできるため初動に絡めやすく、天威よりもレベル7側のモンスターを一度に複数体並べやすい点や誓約の有無なども大きい

 初動として狙う盤面はランク7の「No.42 スターシップ・ギャラクシー・トマホーク」からのリンク展開か、ローズドラゴンと征竜を組み合わせたシンクロ展開のいずれかだ。片方にギミックを絞った方がデッキやEXのスロットが空くためメリットもあるが、征竜が特殊召喚が得意な所を伸ばして今回はギミックを両立して手数を増やし、ある程度の誘発なら貫通できるような構築にしてみた感じだ。何より思いついたギミック全投入は楽しいからやり得だしね!

 そして結論としてはかなり戦えるデッキだった。先攻は先述した通りの展開をするのだが、ハンド次第では最初にローズドラゴンのルートから入ってバロネスを立ててからトマホークに行けたり等の選択肢が多くかなり楽しい、後手に関しても想定通り手数が多めなので貫通力も悪く無かった。特に良かったのはランク7の「黒熔龍騎ヴォルニゲシュ」と「覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン-オーバーロード」だ。妨害効果にもなりながら相手の妨害を踏む事もできるヴォルニゲシュは活躍の機会が多く、そんなヴォルニゲシュやバロネスで妨害を踏んだ後に3000の3回攻撃が可能なオーバーロードの着地に成功すれば高確率で1キルができたのが最高に気持ち良かった。

 他にもトマホークから「アウロ―ラドン展開」、他にもドラゴン族に寄せまくって「ドラゴンリンク」などの展開プランも悪くは無さそうなので、気になる人はぜひ参考にして欲しい。

「黒熔龍騎ヴォルニゲシュ」は先攻後攻どちらでも出す選択に入るのが素晴らしい。上振れている時はパンプ効果をオーバーロードに振ってバカみたいな火力出すのも楽しそうだ
オーバーロードが走ってキルできた試合は数知れない! ドラゴン族レベル7を2体揃えるという征竜なら欠伸しながらできる準備で、いつでも高火力を出せるのはこのテーマの新しい強みになってるだろう

 今回改めて征竜について振り返りながら現代基準で自分なりにデッキを構築したが、ぶっちゃけ現代でも十分通用するレベルの効果すぎて、なぜ10年前にこんな化け物が生まれたのか不思議に感じてしまう程だった。やっぱ冷静に考えてあの時代のカードなのに計4つの効果を持つのやべぇって……

 改めて調べれば調べるほど征竜たちのヤバさを思い返せたのも個人的には嬉しい所だ。遊戯王お爺ちゃん達も改めて今回久々に征竜を触ってみても良いし、まだ使った事無いプレーヤーはぜひこの無限の可能性に挑んでデッキを組んでみてはいかがだろうか。

 こんな感じで今後も(色んな意味で)ヤバすぎるカードの紹介記事を書いていく予定なので、その時はチェックしてくれると嬉しい!それではグッッッッ爆アドォォォ!!!