特別企画
「ボトムズ40周年」にアイテム続々登場、今こそスコープドッグの革新性を語りたい!
2024年4月3日 00:00
汚し塗装とATの楽しさをぎゅっと詰め込んだ「ロボ道 ラビドリードッグ」
前ページでは「HI-METAL R スコープドッグ」を題材に、スコープドッグの玩具デザインとして優れたポイントを紹介したが、この機会に同じくボトムズフィギュアであるthree zeroの可動フィギュア「ロボ道 ラビドリードッグ」を紹介したい。本商品は2023年11月25日に発売、価格は20,280円。人気のため現在は入手が難しいアイテムだが、こちらも「ボトムズフィギュアの決定版」といえる商品である。
モチーフであるラビドリードッグとはアニメ「装甲騎兵ボトムズ」の終盤、主人公キリコ・キュービィーが乗る機体である。物語の開始からキリコが追っていた「秘密結社」とその黒幕である神・ワイズマンによって作られた番組で初めての「キリコ専用機」である。キリコはこれまで量産機であるスコープドッグやマーシィードッグ、そして敵のATを奪って戦ってきたが、終盤でついに彼の専用機が登場するのだ。
この機体はキリコのライバルであり、パーフェクトソルジャー・イプシロンの専用機「ストライクドッグ」の発展型であり、デザインや武装などでの共通点も多い。秘密結社を支配下に置いたキリコは神の後継者となるべく、バララントとギルガメスという銀河を2文していた勢力の連合軍を相手にラビドリードッグとわずかな部下を連れて対決するのだ。
ラビドリードッグはライバルのイプシロン専用機の発展型という、「劇中最強のAT」である。three zeroはアクションフィギュアブランド「ロボ道」において、「ボトムズ」の最初のモチーフとしてこの機体を選んだ。他のメーカーが主役機でありATの代表的な機体であるスコープドッグを選ぶ中、あえてのチョイスである。
なぜthree zeroはラビドリードックを商品の第一弾としたか? 一度three zeroでは過去1/12という非常に大きなサイズでスコープドッグを商品化しているからなのだ。アクションフィギュア「ATM-09-ST SCOPEDOG」は、全高約330mm、パイロットフィギュアは全高約15cmで、パイロットの耐圧服は布で表現している。ボトムズの玩具の歴史に残る商品の1つだ。この実績と技術で立体化が少ないラビドリードッグをまず商品化することでファンを驚かせよう、他社の商品と差別化しよう、という想いがあったという。「ロボ道 ラビドリードッグ」は「ATM-09-ST SCOPEDOG」の技術とテイストを継承、three zeroが得意とするハイディテールと汚し塗装で、ラビドリードッグを表現している。
「ロボ道 ラビドリードッグ」と「HI-METAL R スコープドッグ レッドショルダーカスタム」は表面の処理が大きく異なる。「HI-METAL R スコープドッグ」は成型色にデカールなのに対し、「ロボ道 ラビドリードッグ」は極端なまでの汚し塗装が施されている。そして肩には金属パーツを使用し、まるで鋳鉄のような質感を持たせている。
どちらの商品も関節部分などに金属パーツを使用し、遊びやすさとしっかりした強度を持たせている。こういったところは組み立て方によってはパーツが落ちてしまうプラモデルと違うところだろう。モデラー技術が高くなくてもハイクオリティな立体物を手にできるところは、完成品フィギュアの大きな利点だ。特に「ロボ道 ラビドリードッグ」は関節にわざとギラリと光る質感で金属パーツを使用しその存在をアピールしている。
ラビドリードッグはスコープドッグと似た機構を多数持っている。バイザーやハッチの可動、コクピットハッチの開閉、カメラの移動、アームパンチ、降着機構などなど、筆者が「ATデザインの玩具としての楽しさ」を実感したのは実は「ロボ道 ラビドリードッグ」を触ったからなのだ。ここで得た感触を、今回の機会で紹介しようと思ったのである。
加えて、ラビドリードッグとしての独自の面白いギミックもある。左腕のクローはストライクドッグからさらに大型化している。クローの開閉に加え、劇中通りに内部の機銃を露出させることも可能だ。そして専用装備であるソリッドシューター、バックパックの機雷投下ギミックも再現されている。
「HI-METAL R スコープドッグ」と「ロボ道 ラビドリードッグ」を比べてみると、関節部のアレンジが大きく異なる。特に「HI-METAL R スコープドッグ」は上半身の付け根に関節を追加しており、デザイン的にはできない上半身ののけぞりや、前屈することを可能にしている。また腕の付け根も大きく可動し、デザイン以上の自由度を持たせている。
アニメ「装甲騎兵ボトムズ」ではATは腰や上半身をかがめてローラーダッシュしたり、銃を両手持ちで激しく動かしたりと、デザイン上では難しいアクションを行っていた。「HI-METAL R スコープドッグ」はこのアニメでの"勢い"を再現しようと、かなり関節設計にアレンジが加えられている。このため従来のボトムズ商品では難しかったケレン味のあるポーズが可能となっているのだ。
一方「ロボ道 ラビドリードッグ」はこちらも最新フィギュアならではの関節設計はなされているが、比べればこれまでの商品の正統進化というところだ。好みもあるとは思うが、筆者はこの方向性の異なる2つの商品どちらも好きだ。筆者にとって「ロボ道 ラビドリードッグ」が「最高峰のボトムズフィギュア」であるという評価は全く変わらない。
しかし、この2つの商品を並べるとほんのちょっとだけ残念なところがある。設定ではスコープドッグは3.804mで、ラビドリードッグは4.137m。ラビドリードッグはH(ヘビー)級のATであり、M(ミッド)級のスコープドッグより1回り以上大きいはずで、アニメ劇中でも大きく描かれていた。
しかし立体物ではほとんど同じ大きさで、TVと印象が違ってしまう。これはどちらの商品もノンスケールであり、各社で厳密な縮尺が一致してないからこそだと思う。並べるまでサイズ差をかなり期待していたが、ちょっぴり残念だった。
ただ、three zeroは次回作として「ロボ道 スコープドッグ」の発売を決定している。こちらもノンスケールではあるが、「ロボ道 ラビドリードッグ」と設定上の大きさの違いをきちんと再現するという。今回体験できなかった機体のサイズ差を実感できるというのだ。汚し塗装や関節の金属感などの表現も共通しているため、ぜひ2つを並べてみたいところだ。
もう一方で、「HI-METAL R スコープドッグ」だが、イベントの魂ネイション2023ではストライクドックの前身であるH級AT「ブラッドサッカー」が参考出展されていた。こちらもブラッドサッカーや、その先のストライクドッグまで商品化されるかもしれない。とてもワクワクさせられる話だ。
本当に2023年、2024年は「ボトムズ」ファンにとって夢のような年だ。40年の時を経ても、最新技術によるボトムズ商品が次々と販売されるのだ。できればスコープドッグに留まらず、1/24サイズでのダイビングビートルやスタンディングタートルのフィギュアやプラモデルも出て欲しい。お財布が心配ではあるが期待したいところだ。
今回改めてスコープドッグ、ボトムズメカの魅力を紹介してみた。「ボトムズ」を知らない人、これまで触れてこなかった人も本稿をきっかけに商品を手にしてくれれば幸いだ。
(C)創通・サンライズ