特別企画

第8回「遊戯王」宇宙最強カード列伝! 新時代の期待に応え過ぎた主人公エース「ファイアウォール・ドラゴン」の悲しき過去に迫る!?

【ファイアウォール・ドラゴン】

2017年4月15日 登場

 爆アドォォォ!アドえもんです!筆者は普段YouTubeにて遊戯王を中心にカードゲーム動画を投稿している愉快でうるさいオジサンだ。

 今回も超長い歴史を持つ「遊戯王」カードの中で特に名高い連中をそのカードが生まれた日に合わせて紹介する企画「宇宙最強カード列伝」第8回をやっていこうと思う!

 今回のカードは近現代遊戯王の中でもとびっきりの最強モンスターかつ人気者だ! アニメにおいては主人公のエースポジションを期待されたり、登場時は新システムだったリンクモンスターを象徴する存在だったにも関わらず、いくらでも悪用できてしまう性能で投獄されてしまった悲しき化け物である。

 そんな7年前の今日、2017年4月16日に発売した「CODE OF THE DUELIST」にて登場した「ファイアウォール・ドラゴン(エラッタ前)」だ!

様々なイラストが存在する大人気モンスター「ファイアウォール・ドラゴン」! 筆者的にはパックの表紙にもなったこのシンプルなデザインが一番好きだったりする

 「広がるVRAINS!!!Access!!!駆け出せデータストーム!!!」。「遊戯王OCG」のTVアニメ作品として最終作となる「遊☆戯☆王VRAINS」で登場した「ファイアウォール・ドラゴン」は、主人公「藤木遊作」を代表するようなエースモンスターになったような……ならなかったような活躍をしたカードだ!

 加えてOCG環境では最強カード列伝で紹介されてしまうような凶悪行為を“あらゆるデッキで行なった”黒い側面を持つカードでもあり、当時はほとんどのプレーヤーがお世話になっていたモンスターともいえる。むしろアニメよりもOCG環境での活躍の方が多いと言えるほどだ。現在ではエラッタされて比較的可愛い効果になったが、その強さの片鱗をしっかり残している事で特定のデッキでは全然採用されるレベルのパワーを保っている。

 ではエラッタ前はどんなだったのか……今回はそんな昔ブイブイ言わせてた系である「ファイアウォール・ドラゴン」の全盛期を振り返りながら、現代での活躍についても触れて行こう!

“汎用性”とはこういう事だ! 全てのカードを出力可能にした無限展開カード……それが「ファイアウォール・ドラゴン」だ!

 まずは手始めに今回の最強カード「ファイアウォール・ドラゴン」の現代版テキストを確認しておこう。

 「ファイアウォール・ドラゴン」はリンク4・闇属性・サイバース族の効果モンスターであり、リンク召喚期に入った最初期パックの表紙を務めた事もあって「リンクモンスター」の特性をフルで活用した2つのテクニカルな効果を秘めている。

 1つ目は自身と相互リンクしているモンスターの数までお互いの場・墓地のモンスターを手札に戻すバウンス効果。2つ目は自身のリンク先のモンスターが墓地に送られた際に、手札のサイバース族1体を特殊召喚できる効果だ。この2つの効果をそれぞれ同名ターン1で発動する事ができる。

 バウンス効果はお互いのターンにフリーチェーンで発動できるため妨害としても機能し、相手フィールドのモンスターをバウンスして戦力を減らす事は勿論、墓地のモンスターを活用する効果にチェーンして対象をバウンスさせる事で相手の思惑を潰す事もできる。

 展開効果もサイバース族限定とはいえレベルに関係なくモンスターを特殊召喚できるため範囲が広く、最初のバウンス効果と組み合わせる事で墓地の好きなサイバース族も特殊召喚できたりと器用な使い方が可能だ。2つの効果は単独での運用だけでなく、組み合わせてコンボもできる美しいデザインとなっている。

 召喚条件が「モンスター2体以上」とこの世の中で最も簡単な条件で出せる事もあって、非常に汎用性に長けているリンクモンスターと言えるだろう。

どちらの効果も“リンクマーカーの先”が重要となるため、まさにリンクモンスターの面白さを詰め合わせた効果と言える。単純な使い方以外にも自分の手札誘発の回収、墓穴の対象をバウンスして誘発を通す等、バウンス範囲の広さを活かして独自の強みを発揮できるカードだ

 ではそんな彼のエラッタ前効果だが……結論から言うと色んなテキストを書き忘れている。

 まずそもそもとして各効果に同名ターン1がついていない。バウンス効果には一応場に存在する限り1度しか発動できない誓約があるが、出し直せば何度も使う事ができ、展開効果に至っては何の誓約もないからスゲー普通に何度も発動する事ができる。

 これだけでも既に怪しい臭いがプンプンするが、さらに加えてリンク先が墓地に送られた際に発動する手札からの展開効果がサイバース族指定ではなく“誰でも”特殊召喚可能になっている。サイバース族を代表する存在なのに顔が広すぎる!

 要約すると、各効果の同名ターン1誓約が消えた上で、リンク先のモンスターが墓地に送られれば“何度でもどんな奴でも特殊召喚できる”モンスターという感じだ!

【「ファイアウォール・ドラゴン」(エラッタ前)】
改めて言語化するとそのヤバさが際立つなこのモンスター……! 登場初期はサイバース族が少なすぎた事もあって今のような誓約を付けられなかったにしろ、同名ターン1をつけなかったのは本当になぜなんだ……!?

 説明が不必要なレベルでヤバイモンスターだと感じ取ってくれてると思うのだが、一応解説すると“何度でもどんな奴でも特殊召喚できるカード”が場に着地すると大体のデッキで展開が止まらなくなるのが遊戯王である。OCGにおいてダイナミックなルールを採用した「ラッシュデュエル」ができてはいけないのである。

 この激ヤバ効果なクセに召喚条件は今と同じ「モンスター2体以上」とガバガバかつ、特定時期に入るまではこの状態で3枚使用できた事で数多のデッキがこのカードの恩恵を受けて無限展開をすることができたのだ。当時基準でも何でも良いから適当なモンスターを4体揃えるだけなら比較的簡単かつ、時代の進歩によって最強リンクモンスターが生まれた続けた結果、ドンドンこのカードの着地難易度が下がっていった事で数多のデッキが展開インフレを起こしたのだ。

 ではエラッタ前の「ファイアウォール・ドラゴン」が複数枚使えると具体的に何が発生してしまったのか。続いては当時の使われ方について触れていこう。

2体揃えば無限。1体だけでも無限。どうやっても出れば無限展開を始める汎用EXモンスターなのがダメ過ぎた!

 結論から書くと当時の「ファイアウォール・ドラゴン」が2体揃うとお互いがお互いをバウンスし続ける事で無限に展開を伸ばす事が可能だった。なにしろ出し直せば最大3枚まで回収できるバウンス効果が復活する事に加え、モンスターが離れる度にドンドン手札から出力ができるのだから当然の結果である。

 当時はこの特性を利用してターン1の無いサーチ効果を持っていたカードをグルグルしたり、1ループの中で特殊召喚するモンスターの頭数を増やせる手数を持ったテーマがひたすら展開をし続ける事で無限のアドバンテージを獲得する事ができていた。

 代表的な例を上げると「SPYRAL(スパイラル)」が有名だ。有名すぎて当時の記憶を持つプレーヤーはこの時点で泡吹いてぶっ倒れてしまうかもしれない。

 何故かターン1制限の無いサーチ効果と墓地から蘇る効果を持った「SPYRAL-ジーニアス」や、全身にサーチ効果を持った最強の女上司「SPYRAL-グレース」などを主軸に何度もモンスターを出し入れする事で、尋常じゃないほど長い展開をした後にアホみたいなリソースと制圧盤面を築きあげる事で一躍最強デッキとなった。テーマカードのほとんどがしっかり展開効果を持っていた事で件の「ファイアウォール・ドラゴン」を呼び出す事も超楽勝かつ、リンク召喚期に日本で生まれてしまった破格スペックすぎるリンクモンスター「SPYRAL-ザ・ダブルヘリックス」を当時新たに獲得してしまい、頭7つ位飛びぬけてリンク展開がハチャメチャなデッキだったのだ。

代表的な例としてこの3枚を上げているが、ぶっちゃけドローンもダンディもビッグレッドも救出もRESORTも全てがヤバイ!!! 全身ヤバイだらけだったのに「SPYRAL-ザ・ダブルヘリックス」とかいう都合の良いリンク2を与えてしまったらそらファイアウォールで遊びだすに決まってる……!

 「SPYRAL」に限らずエラッタ前の「ファイアウォール・ドラゴン」で暴れ狂ってたテーマは数多く存在する。無限展開の申し子である「インフェルニティ」や「甲虫装機」は当然この時期もウキウキしながら意味のわからない展開を繰り広げていたし、何度もモンスターを出し直せる特性が噛み合って「ゼンマイ」等も飛びぬけて大量のモンスターを出力可能だった。

 新時代のリンクテーマである「剛鬼」も、共通で持つサーチ効果と中間地点として最強のリンクモンスター「聖騎士の追想 イゾルデ」が生まれた事で展開オバケになっており、その出力を使って自分たちのテーマエースを使うよりも「ファイアウォール・ドラゴン」を出し、展開を伸ばして妨害を敷いた方が圧倒的に強かったのは皮肉だろう。

無限展開といえばコイツらという「インフェルニティ」と「甲虫装機」だが「ファイアウォール・ドラゴン」の相性の良さは抜群すぎて笑ってしまう
ファイアウォールで回収したデーモンをそのまま出力してサーチ効果を使ったり、センチピードでサーチしたダンセルを出力+回収して使いまわしたり……簡単すぎる……!
「ゼンマイ」は何度も使える特殊召喚効果が、「剛鬼」は墓地に送られる度に発動できる共通のサーチ効果が「ファイアウォール・ドラゴン」と相性バッチリだった
「剛鬼」に関して言えば今後「ファイアウォール・ドラゴン」とは長い付き合いになり、とある時期の環境を破壊してしまう事態にまで発展する……

 もうお気づきだと思うが「ファイアウォール・ドラゴン」を3枚使えた時代は一定の展開力を持っていれば基本どんなデッキでも展開の連鎖を引き起こす事が可能であり、その中で何かしらの「ターン1の無い効果」が存在していればお手軽に無限を生み出せてしまう「無限インフレ」が発生していたのだ。筆者の周りにいた決闘者の中には当時の「ガジェット」や「セイクリッド」等のスペックの古いテーマでも「ファイアウォール・ドラゴン」で宇宙展開を行なっていたので、如何に「ファイアウォール・ドラゴン」の存在が展開と無限をお手軽にしていたかがよくわかる。

「ガジェット」はまだわかるが「セイクリッド・エスカ」レベルのカードパワーでも無限起こせるんだから凄すぎでしょ……。逆に言えば特殊召喚に対応しているターン1効果があれば何でも面白い事ができる素晴らしいパワーを持ったカードだったと言える

 このお手軽さを助長しているのが記事冒頭でも書いたが簡単すぎる召喚条件だ。なんだ「モンスター2体以上」って。効果モンスターすらも指定しないならもう条件でも何でもないだろ!

 簡単に「ファイアウォール・ドラゴン」を出力する方法として「スケープ・ゴート」等による頭数増加や、時代が進むと「トーチ・ゴーレム」を用いたリンクモンスターコンボ等がカジュアル環境含めて使われるようになっていく。そんなカードを使わなくても上記で上げた「SPYRAL-ザ・ダブルヘリックス」等のようにテーマ内で最強のリンクモンスターを貰った場合はそれを中継地点に、「聖騎士の追想 イゾルデ」のような種族リンクモンスターに対応するテーマデッキはそれらを中継点にする事で簡単に「ファイアウォール・ドラゴン」が出力できた。

 もっと言えば「ファイアウォール・ドラゴン」全盛期はリンクモンスターの全盛期と言っても過言ではないため、周りにいた連中も最強だった事が彼の強さを後押しする事になる。適当なチューナーモンスターを並べれば宇宙最強モンスターの1体「水晶機巧-ハリファイバー」を呼び出すことが可能。その後デッキから最強のチューナーをリクルートでき、そこから宇宙最強モンスターの1体「サモン・ソーサレス」に繋げればさらに最強モンスターにアクセスできるため、ぶっちゃけ当時のデッキはほぼ全てのデッキがこれらのカードを活用すると「ファイアウォール・ドラゴン」まで繋げられる展開力を持っていた。

 最強最強うるさいと思うがリンク全盛期に活躍していたモンスターは本当に出力オバケな連中が多く、誇張でも何でもなくガチで最強な連中ばかりだった事もあって新時代の遊戯王が始まったレベルの強さだったのだ。

あぁ……最強すぎる……でもコイツらをフルパワーで使えた時代も楽しかったんだ……
環境デッキは言わずもがなだが、色んなヘンテコデッキで意味わかんないモンスターを出力する際にもお世話になってたから今でも当時のまま帰ってきてほしいと願ってしまう2枚である

 そんな訳で活躍の時期は前後しているが、あらゆる形で無限と宇宙を生み出し続けた「ファイアウォール・ドラゴン」は当然のように規制を受ける事になる。登場から約1年後となる2018年1月1日の禁止制限改定にて、制限カードへと指定された事で一部のデッキで許されていた2体の「ファイアウォール・ドラゴン」を用いたバウンスループはどうやってもできなくなった。当時は主人公エースの雰囲気を漂わせていたこのカードの制限改定は、カードパワーで考えれば当然と思われながらも、アニメエースに規制をかけるという史上初の出来事に驚かれていた印象だ。

 これで「ファイアウォール・ドラゴン」の脅威は過ぎ去った……なんて事は欠片もなく、この後の環境でも極悪違法パワーで暴れ回る事になる。

 2018年の制限改定後、次に「ファイアウォール・ドラゴン」が頭角を現わしたのが「FLAMES OF DESTRUCTION」に収録された「トロイメア」が登場した頃である。発売日が同年の1月13日なため制限になって実に半月後の出来事である。早すぎィ!

 それまで特定のデッキが無限を行なったり、展開・妨害のサポートをするために使われていた「ファイアウォール・ドラゴン」だが、全てのデッキで活用が可能な「トロイメア」の汎用効果とテーマモンスターがそれぞれ持っている相互リンク時の耐性が合わさって非常に強力な盤面を作りつつ「ファイアウォール・ドラゴン」のバウンス準備を行なえるようになったのだ。

 この時、今まで「ファイアウォール・ドラゴン」の最強効果に脳を焼かれていた一部の決闘者が正気を取り戻して同じことを思っただろう。「デュエルに勝つだけなら別に過度な宇宙展開をしなくて良い」のだと。

汎用効果をリンクモンスターに積み込みまくった「トロイメア」は除去以外にも手札を入れ替えたり追加召喚で新たに展開を伸ばせるようになったりなど新たな強みを大量に生み出した
これまで「ファイアウォール・ドラゴン」で宇宙をしてた展開デッキは「トロイメア」を同時に揃えられる堅実に強いデッキへと形を変え、余裕な顔をしてエクストラリンクを決めたりしていた

 さらに時代が進んでリンクモンスターのインフラが整い始めた時期に、「ファイアウォール・ドラゴン」はまたしても史上最強コンボを開拓してしまう。

 上記で取り上げた「トロイメア」に加え、先述した「水晶機巧-ハリファイバー」と「サモン・ソーサレス」等の展開オバケたちを組み合わせる事でモンスターの頭数をひたすら増やしていき、これらの展開を組み込んだ「ABC」デッキが「ファイアウォール・ドラゴン」1体で可能なループコンボを生み出し、「キャノン・ソルジャー」のバーン効果で先行ワンキルを比較的安定成立させるデッキが爆誕してしまったのだ。

 素のスペックの高さとコンボの成功率の高さで瞬く間に環境でも見受けられるようになったが、半年後の2018年7月には「キャノン・ソルジャー」と「トゥーンキャノン・ソルジャー」の2名が禁止カードにぶち込まれることになった。流石に先行ワンキルで使われるのは不健全と感じたのか公式も対応が早かったが、潰したのが展開基盤ではなくバーン効果持ちの「キャノン・ソルジャー」だった事でこの悪夢はまだまだ続く。

「ABC」はテーマモンスターが同名ターン1の無いデッキサーチ・墓地回収・手札展開を持つことで素のスペックも高くそもそもファイアウォールとの相性も抜群!
機械族だった事で「サモン・ソーサレス」から「キャノン・ソルジャー」へもアクセスしやすく、「A-アサルト・コア」が複数揃うと「ファイアウォール・ドラゴン」と合わせて無限射出ができてしまうお手軽さがマズかった

 「キャノン・ソルジャー」がダメならと次に目を付けられたのが「アマゾネスの射手」と「メガキャノン・ソルジャー」だ。もう展開カードとルートは無限にあるから射出できれば何でも良い状態なのである。

 「キャノン・ソルジャー」たちの規制では展開基盤に一切規制が掛からなかったため、デッキ自体のパワーが担保されたままだった結果、別のプランでこの2枚を場に出力して再び射出先攻ワンキルするデッキが登場してしまった。結局は同年の10月制限改定にて「アマゾネスの射手」と「メガキャノン・ソルジャー」の2枚と展開の基礎を支えていた「サモン・ソーサレス」が禁止カードとなってしまう。

 「サモン・ソーサレス」に関しては楽しいカードだが余罪もたっぷりだったので仕方ないと割り切れるが、他のバーンカードに関しては完全に無限ループに巻き込まれた被害者なので可愛そうに思える。(何かしらで先行ワンキルする可能性がある以上、一生帰ってこないと思うけど)

未だに禁止カードから帰ってこない射出系モンスターたち。先行ワンキルを可能にする効果なので現代遊戯王で悪さをしかねない事を踏まえると規制解除は絶望的だが、トドメを差したのは本記事の主役「ファイアウォール・ドラゴン」だった

 このようにあらゆる場面で無限&宇宙展開を生み出し続けるお手軽モンスターとして君臨し続けた「ファイアウォール・ドラゴン」だが、ついに2019年1月1日に施行された禁止制限改定にて禁止カードへと指定される。

 あらゆる展開・バーンカードも「ファイアウォール・ドラゴン」の影響で宇宙コンボが成立していた事を考えると、最たる元凶であるこのカードが規制を受けずに周りのカードばかりが禁止制限にぶち込まれ続けていた状況にヤキモキしていた決闘者も多かった印象だ。結果的に言えばあまりに多くの道連れを作ってしまったとも考えられる。コンボデッキの助け舟になっていた側面もあったので、多くの憎しみと喜びを同時に生み出していたモンスターだったと言えるだろう。

「アニメでも大活躍!」とは言い難い登場頻度。人気はあるのに何だか不遇な側面も……!

 「ファイアウォール・ドラゴン」はOCGで大活躍する一方、自身が登場していたTVアニメ「遊☆戯☆王VRAINS」では少し悲しい扱いを受けていたのも印象的だ。そのステータスや立ち位置から主人公「藤木遊作/Playmaker」のエースモンスターとして数多のデュエルで登場するかと思いきや、リンク召喚を主軸とした最初期ですらその活躍の機会は片手で数える程なのだ。

 今までのシリーズ作品のように1つのエースを主軸にする戦い方ではなかったため、「ファイアウォール・ドラゴン」と組み合わせて使う必殺カードやコンボなども特に存在せず、登場する際は能力が十分に発揮できない状況だったりする事が多かった。能力が全体的にサポート寄りかつテクニカルであり、十全に力を発揮するとパワーが高すぎる事で、作劇では使いづらかったのかなと筆者は個人的に予想している。

【Playback VRAINS TURN 05】
こちらはアニメのダイジェスト動画。9分55秒あたりに登場する
それまでのシリーズ作品だと例えばゼアルでは「No.39 希望皇ホープ」が切札兼エースとして数多のデュエルで使われたり、主人公の「遊馬」といえば「ダブル・アップ・チャンス」とのコンボ……!といったカードを使ったキャラ付けもファイアウォールには無かった。この役目はどちらかと言えば最初のリンクモンスターである「デコード・トーカー」が担当しているような印象だ。

 当時の「ファイアウォール・ドラゴン」はそこまでアニメには登場しないものの「遊作」の切札的ポジションには収まっていた事で、OCGでいくら暴れ回っても禁止制限にかけ辛いのではという説が浮上するほどだった。

 真実は誰にもわらないが、現実での暴れっぷりに合わせてアニメでの絶妙な扱いで変にヘイトを集めてしまっていた事は事実だ。カッコいいし面白いカードでもあった故に勿体ないと常に思っていた事を覚えている。

アニメのキービジュアルにも描かれているが扱いが難しくなっていたのかもしれない(画像はテレビ東京の「遊☆戯☆王VRAINS」のページより)

 その後アニメが後半期に入ると、主人公の「遊作」が様々な召喚方法を用いたエースを多用するようになり「ファイアウォール・ドラゴン」は現実の禁止改定に合わせたように全く登場しなくなっていく。あくまでも筆者の個人的な解釈にはなるが、最終話での活躍やメディアでの扱いを見るに「Playmaker」を代表するエースカードは「デコード・トーカー」へ移ったような雰囲気もある。その後、消えた「ファイアウォール・ドラゴン」の存在を埋めるかのように派生体である「ファイアウォール・X・ドラゴン」や、進化体である「ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード」が新たな切札として登場するなど、OCGの制限改定に合わせてアニメでも数奇な運命を辿ってしまったのだ。

 とは言え第一シーズンのリボルバー最終戦ではデュエルのフィニッシャーを担当したり、第二シーズンの一部のデュエルでは効果をフルに発動し相手を圧倒するなど非常にカッコいい場面も描かれた事で多くのファンが存在しているカードでもある。

 禁止制限を受けてアニメに登場しなくなっても、「ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード」へと形を変えて「遊作」の切札として存在し続けた事からもわかる通り、非常に人気の高いモンスターである事も間違いないだろう。

全ての召喚方法を経て生み出された新たなエースが「ファイアウォール」を進化させたような風貌の「ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード」だった事はある種のエモを感じる。OCGで禁止にぶち込まれてアニメ的に使いづらくなっても、「ファイアウォール」をアニメで残し続けようとした努力は認められるべき功績だ

生み出され続ける進化形態! エラッタ後も活躍し続けたりとその人気は今でも健在!

 少し悲しい話題ばかりになってしまったが、現代の「ファイアウォール・ドラゴン」は非常に良い立ち位置にいる事を最後にお伝えしたい。

 序盤に記載した通り現代では一部の効果がエラッタされてオリジナルの「ファイアウォール・ドラゴン」も通常のデュエルで使用する事が可能になっている。しかもエラッタ内容が良いパワー調整だった事でサイバース族を主軸としたデッキでなら非常に強く扱えるバランスのカードとなったのだ。

 直近で採用されていたデッキで例を挙げれば「斬機」などが上げられる。サイバース族ならではの鬼展開で専用の妨害罠を構えながら「ファイアウォール・ドラゴン」をオマケに添える動きが非常に強く、リンク4のエースモンスターの1体として名が挙がる事も多い。

サイバース族の英雄「斬機サーキュラー」を用いた鬼展開は様々なファイアウォールを揃える事を可能にする! 元祖から最新の進化体まで一気に盤面に揃える事も可能なので圧巻のフィールドを作れるぞ!

 さらにはアニメ終了から時が経ち、様々な形でアニメテーマが強化される昨今の遊戯王では「ファイアウォール」テーマとしても強いカードをいくつも貰っている。

 中でもカード名やリンクマーカーの位置、「遊☆戯☆王VRAINS」のバックボーンなどを考えたらエモすぎて死んでしまう事で有名な「ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ」の存在は数多くの「ファイアウォール」ファンの心を救済しただろう。

 アニメでは存在しなかった遊作の最終エースのような形で新たに作られたこのカードが「ファイアウォール・ドラゴン」の到達点のような見た目と性能をしていた意味は非常に大きく、OCG的観点から見ても史上2体目のリンク6モンスターかつ能力も強力で特別感が強い。

 新たに登場した数多の「ファイアウォール」達と連携してデッキとしてもバチバチに強い動きができるため、当時「Playmaker」のように「ファイアウォール・ドラゴン」を駆使したいと思っていたプレーヤーには是非一度触ってみて欲しい。

もうエモポイントが多すぎて様々な「VRAINS」オタクを感動させた1枚。オリジナルの「ファイアウォール・ドラゴン」と合わせて使用しても非常に強く、一度効果を使い終わった「ファイアウォール・ドラゴン」を墓地経由で蘇生させれば再び効果が使用可能になったりなどシナジーも強い
「ファイアウォールディフェンサー」を始めとした「ファイアウォール」指定のカードも強力なカードが多く圧倒的な展開力を楽しめる!
最強キル能力を秘めた「ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト」も添えて、新旧「ファイアウォール」を場に揃えて戦う彼らの新たな雄姿を味わえるはずだ!

 という訳で今回は近現代遊戯王においても非常に強いインパクトを残した主人公エース「ファイアウォール・ドラゴン」について振り返ってみた。

 リンク召喚が登場した最初期はOCG自体の様々なルール変更が行なわれた影響で、一度ユーザーの心が離れかけた時期でもあり、その頃に生まれた超強力カードである「ファイアウォール・ドラゴン」は環境を破壊したとはいえ新たな面白さを開拓してくれた存在でもあった。「遊作」と同じく紆余曲折を経て数奇な運命を辿った彼だが、最強列伝で紹介されたモンスターにしては珍しく現代でもしっかり活躍しつつ進化体にも恵まれ愛されていて嬉しい気持ちでいっぱいである。これからも良い感じにサイバース族を支える守護者であってくれる事を願おう。もう変な無限は発生させるなよ!!!

 こんな感じで今後も(色んな意味で)ヤバすぎるカードの紹介記事を書いていく予定なので、その時はチェックしてくれると嬉しい!それではグッッッッ爆アドォォォ!!!