特別企画

「タミヤ 1/35 タイガーI 極初期生産型(アフリカ仕様)」をガイアカラーで全塗装

初心者にオススメ 「ガイアノーツ イージーペインター」を使用した塗装方法を紹介

【EP-01 イージーペインター】

発売元:ガイアノーツ

価格:1,650円

 戦車や飛行機といったスケールモデルは色分けが行われていないキットがほとんどであり、エアブラシを所有していない方には敷居が高く感じるかもしれません。ガイアノーツより発売されている「EP-01 イージーペインター」を使用することで簡単にスプレー塗装ができます。

 今回は、タミヤから発売中の戦車プラモデル「1/35 タイガーI 極初期生産型(アフリカ仕様)」(1998年5月発売、価格:4,400円)を使用して「EP-01 イージーペインター」の実力を紹介します。「イージーペインター」と筆塗りをメインに、エアブラシ不使用で設定どおりの配色で全塗装し、ウェザリングまで行ないます。

ガイアノーツの簡単スプレー塗装ツール「EP-01 イージーペインター」

 今回主役となる「EP-01 イージーペインター」を発売しているガイアノーツは、ラッカー系塗料を中心とした塗料を始め、エナメル塗料や塗装にまつわる様々なツールを発売しています。ラッカー系塗料やエナメル塗料となるガイアカラーシリーズには様々なアニメに登場するキャラクターの設定色を再現したシリーズがあり、簡単に設定色を表現できる塗料となっています。

 今回の作例にて使用する「EP-01 イージーペインター」は、ガイアノーツより発売されている塗装ツールです。希釈した塗料を専用ボトルに充填することで簡単にスプレー塗装を行なうことが出来ます。専用ボトルにはキャップが付属しているので塗装完了後にそのまま塗料を保管することも可能です。

今回使用したガイアノーツ製塗装ツール。イージーペインターの他、精密綿棒と多用途ミニブラシを使用しました。

「イージーペインター」を使用して「タミヤ 1/35 タイガーI 極初期生産型(アフリカ仕様)」を全塗装

 それでは「イージーペインター」を使用してキットを塗装していきましょう。今回はエアブラシを使用せず、基本塗装は「イージーペインター」を使用し、部分塗装やウェザリングを筆塗によって行ないます。

今回使用した塗料。金属製エッチングパーツを使用するため、「P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス」も使用しています。
今回使用した薄め液。塗料の種類に合わせてガイアカラー薄め液とメタリックマスターを使い分けました。また、洗浄にはマイルドツールウォッシュを使用、エナメル溶剤には速乾性エナメル系溶剤を使用しました。

 「タミヤ 1/35 タイガーI 極初期生産型(アフリカ仕様)」には特に改造等は行なわず、キットの素の状態で組み立てました。ここから、塗装によって様々な表現を行ないます。

塗装前のタイガーI 極初期生産型。一部パーツは接着固定が必要なため、取り外した状態としています。

金属パーツの塗装下地として「P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス」を塗布

 塗装作業に入る際の第1歩として、金属パーツへの下地処理をします。金属パーツは塗料の食いつきが悪く、下地処理を行なわないと塗膜が剥離してしまうリスクが発生します。そのための塗装下地として「P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス」を塗布しました。「P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス」により、金属パーツへの塗料の食いつきを向上させ、塗膜の剥離を防止する効果が期待できます。また、今回の作例では金属パーツへの塗装下地として使用しましたが、レジンキットの塗装下地としても「P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス」の塗布は有効な手段となります。

塗装前の車体。写真左側のグリル部分に金属製エッチングパーツを使用しています。
金属パーツ下地には「P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス」など、プライマーの塗布が必須です。

 「P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス」の塗布も「EP-01 イージーペインター」を使用して行ないます。「P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス」は希釈不要でそのまま噴霧することが可能なため、ボトルから直接イージーペインターのボトルに充填して噴霧できます。

「P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス」を噴霧する様子。エアブラシ塗装と同様の感覚で塗布できます。
「P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス」の塗布を行なった車体。無色透明のため、塗布後に変化は感じられません。

細かいヤスリ傷を埋め、塗料の食いつきを向上させるサーフェイサー

 金属パーツの下地処理が完了したらパーツ成型の際に発生した細かい傷の処理と、パーティングラインの処理忘れを見つけるためにサーフェイサーを塗布していきます。今回は「GS-01 サーフェイサーエヴォ」を使用しました。「GS-01 サーフェイサーエヴォ」はグレータイプのサーフェイサーとなっており、塗布後の傷の視認性も良く、筆者も普段のプラモデル制作において最も使用頻度の高いサーフェイサーです。また、ガイアノーツの販売するサーフェイサーエヴォシリーズはカラーバリエーションも豊富で混色することでそのまま仕上げ色としても利用可能なポテンシャルがあると思います。

「GS-01 サーフェイサーエヴォ」は細かいキズを埋め、下地を均一にする効果があります。
塗装前の希釈は計量カップが付属しているため、簡単に濃度調整が可能です。
「GS-01 サーフェイサーエヴォ」を使用した車体。パーツ加工時の傷やパーティングラインの処理忘れがなければ仕上げ色の塗装に入ります。

専用塗料を使用することで調色の手間が必要ないミリタリーカラーシリーズ

 仕上げ色の塗装はマスキングの手間を考慮し、履帯や転輪のゴム部分の配色となるブラック部分の塗装から行なっていきます。ブラック部分の塗装には「075 ニュートラルグレーV」を使用して塗装を行ないます。

今回使用した「075 ニュートラルグレーV」はガイアノーツより販売されているニュートラルグレーの中で最も黒に近い発色のグレーです。
「075 ニュートラルグレーV」を塗布した履帯。限りなく黒に近いグレーとなっています。

 「075 ニュートラルグレーV」の塗装が完了したら、本体色となるダークイエローを塗装していきます。塗料はミリタリーカラーシリーズから「201 ダークイエロー1(ドゥンケルゲルプ1)」を選択しました。この塗料はドイツの標準カラーチャートにて当時存在した戦車色で、ガイアノーツが当時のカラーチップを基に忠実に再現したカラーとなっています。

「201 ダークイエロー1(ドゥンケルゲルプ1)」は第2次大戦当時のドイツ標準色を忠実に再現したカラーです。
「201 ダークイエロー1(ドゥンケルゲルプ1)」を塗装した車体。調色不要で設定どおりの配色を再現可能です。

筆塗で細かい部分の塗分け

 仕上げ色の塗装が完了したらOVM等の部分塗装に入ります。今回の作例では機銃部分を「020 ガンメタル」、OVMの金属部分を「1002 ダークステンレスシルバー」、OVMの木材部分を「CB-20 マホガニー」、ペリスコープのレンズ部分を「4ARTIST MARKER シルバー 2mm」を使用して塗装します。

部分塗装に使用した塗料たち。「4ARTIST MARKER シルバー 2mm」はエナメル塗料となっており、その他はラッカー系塗料です。
部分塗装は希釈した塗料を筆塗にて行ないます。筆には「G-22 多用途ミニブラシ」を使用して部分塗装しました。

 また、「4ARTIST MARKER シルバー 2mm」を使用した部分塗装はそのままのマーカーでは細かい塗装が困難なため、一度塗料皿に出した塗料を爪楊枝にて塗布していきました。

ペリスコープの塗装派爪楊枝を使用して行ないます。

デカール貼り付け前に一度クリアーを塗布し、シルバリング防止

 部分塗装が完了したらデカールの貼り付けです。そのまま、水転写デカールを貼り付けても良いのですが、仕上げ色に使用したダークイエローは半光沢塗料のため、直接貼り付けるとシルバリング(デカールと塗膜の間に空気が入り白化する現象)を起こす可能性があります。シルバリング防止の保険として、デカール貼り付け部に一度クリアーを塗布して表面をなだらかにしておきます。塗料は「Ex-03 Ex-クリアー」を使用しました。

「Ex-03 Ex-クリアー」は通常の15mlサイズの塗料より高品質な樹脂を使用した塗料です。
クリアー塗布後に張り付けたデカール。シルバリングすることなく貼り付けることが出来ました。

 デカールが乾燥したらつや消しコートを行ない基本塗装は完了です。ここからはウェザリングを行ない、キットに深みを与えていきましょう。

つや消しコートに使用した「Ex-04 Ex-フラットクリアー」。「Ex-03 Ex-クリアー」と同様に高品質な樹脂を使用した塗料です。

色数を増やしてキットに深みを与えるウェザリング

 まずはウェザリング前のタイガーⅠを見てみましょう。ウェザリング前のタイガーⅠは設定どおりの配色にはなっているもののどこか物足りなさを感じてしまいます。

ウェザリング前のタイガーⅠ。

 ウェザリングの一色目として全体の色味の変更とスミ入れを兼用し、「NE-002 シャドウブラウン」を使用してウォッシングを行ないます。希釈した「NE-002 シャドウブラウン」を全体に薄く塗布し、キムワイプなどにエナメル溶剤を含ませ、拭き取ることでなじませます。

「NE-002 シャドウブラウン」はプロモデラー、デザイナーとして活躍中のNAOKI氏プロデュースのエナメル塗料です。
「NE-002 シャドウブラウン」の塗布は平筆を使用して全体的に塗布していきます。
エナメル溶剤を含ませたキムワイプなどで軽くたたくように塗料を拭き取りつつ、ぼかしていきます。
「NE-002 シャドウブラウン」によるウォッシングが完了した車体。全体的な色味が落ち着きました。

 「NE-002 シャドウブラウン」によるウォッシングが完了したら、次は「GE-55 埃(ほこり)」を使用して更に汚していきます。方法は先ほどの「NE-002 シャドウブラウン」と同様ですが、埃が溜まる場所を意識してスポット的に色を乗せます。

「GE-55 埃(ほこり)」は希釈率が高く、ピグメント効果により乾燥後うっすらと埃が残っている状態になります。
「GE-55 埃(ほこり)」によるウォッシングが完了した車体。「NE-002 シャドウブラウン」によるウォッシングに比べ局所的に色を入れています。

 「GE-55 埃(ほこり)」によるウォッシングが完了した後は、サビの描き込みです。塗料は「GE-51 赤サビ」と「GE-52 黄サビ」を使用しました。最初に「GE-51 赤サビ」を使用してサビを入れる箇所を面相筆で塗ります。描き込む際は均一にならないようにランダムパターンを意識しています。

「GE-51 赤サビ」はピグメントの効果で乾燥後にリアルな質感となる塗料です。
サビの描き込みはエッジ部分を中心にランダムパターンになることを意識して描き込んでいきます。
描き込んでいく際に不自然に感じた個所や、塗料を乗せすぎたと感じた個所は溶剤を含ませた綿棒で拭き取ったりぼかしたりしていきます。
「GE-51 赤サビ」を描き込んだ車体。古ぼけた雰囲気が出てきました。

 サビ色は一色では単調なので2色目のサビ色として「GE-52 黄サビ」を使用して色数を足します。「GE-52 黄サビ」は先ほど描き込んだ赤サビに添えるように描き込みます。

「GE-52 黄サビ」は「GE-51 赤サビ」と同様の効果を持ちながら黄色くサビた状態をリアルに再現できます。
「GE-52 黄サビ」を描き込んだ車体。色数が増えることでよりリアルに感じます。

 サビの描き込みが完了したら、最後の仕上げとして地金の露出を表現していきます。先ほど描き込んだサビの一部に「4ARTIST MARKER シルバー 2mm」を面相筆に少量乗せていきます。

「4ARTIST MARKER シルバー 2mm」はウェザリングにも使用していきます。
地金の露出を表現した車体。いいアクセントカラーになりました。

 サビの表現が完了したら、次のウェザリングは「GE-54 オイル」を使用してオイルだまりを表現していきます。希釈した「GE-54 オイル」をワイヤーやヒンジ部などオイルが溜まる個所に流し込みます。

「GE-54 オイル」は乾燥後にもオイル特有の光沢を持たせることが可能です。
「GE-54 オイル」を流し込んだ車体。特にワイヤー部分の雰囲気が変化したと思います。

 次でウェザリングは最後となります。戦車の履帯は地面と接する部分は削られ、独特の金属光沢が発生します。この金属光沢の再現には鉛筆を使用します。鉛筆の芯をサンドペーパー上で削り、黒鉛の粉を作成します。この粉を指で履帯の外周にこすりつけ、金属光沢を表現します。

鉛筆の芯をサンドペーパーにて削り、黒鉛の粉を作ります。サンドペーパーは240番を使用しています。
黒鉛の粉を指で塗広げていきます。この際には手袋を使用することをオススメします。
黒鉛塗布前(写真奥側)と黒鉛塗布後(写真手前側)の比較。履帯に独特の光沢が生まれました。

 これにてウェザリング作業も全て完了です。各パーツを組み上げて完成したタイガーⅠを見てみましょう。

エアブラシ不使用、「ガイアノーツ EP-01 イージーペインター」と筆塗にて仕上げたタイガーⅠ

 「イージーペインター」と筆塗りをメインに、エアブラシ不使用で「1/35 タイガーI 極初期生産型(アフリカ仕様)」を仕上げました。まずはキットの塗装前後を前後側面から見てみましょう。

正面(塗装前)
正面(塗装後)
側面(塗装前)
側面(塗装後)
背面(塗装前)
背面(塗装後)

 塗装前ではどうしてもプラスチックの質感が前面に出てしまっていましたが塗装により重量感や戦車としての威圧感が増しました。ここからはポージングをつけた状態と各部のアップを見ていきます。

少し砲塔を回転させ、斜めから撮影してみました。第2次大戦中の名機だけあってプラモデルでありながら威圧感があります。
背面のアップ。タイガーI 極初期生産型は背面がゴチャゴチャしていてかっこいいですね。
OVMのアップ。単色の戦車なのでOVMがいいアクセントカラーになってくれています。
ワイヤーのアップ。「GE-54 オイル」によりいい質感を表現できたと思います。
背面メッシュのアップ。プラスチックでは再現できない細さのパーツですが、金属製エッチングパーツならではの質感となりました。
側面デカールのアップ。光沢クリアーを一層入れることにより、シルバリングすることなく貼ることができました。
履帯のアップ。隙間にたまった「GE-55 埃(ほこり)」がリアルさを向上させています。

 いかがでしょうか。今回は「EP-01 イージーペインター」を使用してスケールモデルの塗装を行ないました。イージーペインターでの塗装は手軽に好きな塗料をスプレー塗装できるので、エアブラシ塗装の入門編としては十分な性能を有していると思います。しかし、一度に長時間作業を行なうとガス缶が冷えてしまい、十分な噴射圧力を得られないため、注意が必要です。また、今回の作例では3本のガス缶を消費したため、イージーペインターを使用して塗装を行なう際は「EP-02 スペアカートリッジ」を用意しておいた方がよいかと思います。

 筆者は塗装ブースといった設備を保有しているので、今回はそちらを使用して塗装を行ないました。塗装ブースがない方でも段ボール箱にクシャクシャにした新聞紙を詰めるなどして簡易塗装ブースを制作してやれば風通しの良い室内でも塗装可能です。これまで、エアブラシの導入が難しいと思っていた方でも簡単にスプレー塗装に挑戦できると思います。この記事をきっかけにスプレー塗装に挑戦してみてはいかがでしょうか。

今回使用した塗料一覧
工程使用塗料
金属用下地P-01a ガイアマルチプライマーアドバンス
下地GS-01 サーフェイサーエヴォ
上塗り(履帯等)075 ニュートラルグレーV
上塗り(車体)201 ダークイエロー1(ドゥンケルゲルプ1)
部分塗装020 ガンメタル
部分塗装1002 ダークステンレスシルバー
部分塗装CB-20 マホガニー
部分塗装4ARTIST MARKER シルバー 2mm
デカール下地Ex-03 Ex-クリアー
トップコートEx-04 Ex-フラットクリアー
ウェザリングNE-002 シャドウブラウン
ウェザリングGE-55 埃(ほこり)
ウェザリングGE-51 赤サビ
ウェザリングGE-52 黄サビ
ウェザリング4ARTIST MARKER シルバー 2mm
ウェザリングGE-54 オイル
ウェザリング鉛筆