レビュー

ウッディジョー、「ミニ建築 水車小屋」レビュー

実際の水車にも興味がうまれる、つくって楽しい木製模型の世界

 水車は“食糧増産と産業発展”に重要な役割を果たしたという。明治時代、水車は全国で6万台もあったとのことだ。水車が日本にもたらされたのは7世紀といわれている。大きく日本で使われるようになったのは江戸時代。

 米やそばをすりつぶしたり、菜種の油を絞るなど様々な用途で使われた。人力以上に効率的に米を加工することができ、酒造業でなくてはならない存在だったという。米の精米など食糧関係だけでなく、火薬製造や鉱石の粉砕、ふいごの動力など、電気がくる前の日本の産業を支えたのが水車とのことだ。

 水車に“田舎の風景”、“昔の景色”というイメージがついたのはそれだけ水車が人々の間に定着し、電気が普及するにつれ使われなくなったから。木製模型の「水車小屋」をきっかけに、こういったことも調べてみたくなる。昔の生活を描写する際、欠くことのできない存在の1つと言えるだろう。

 水車は共同体の所有物であり、管理する人が住んでいるものもあれば、純粋に作業用の施設として建てられている場合もあっただろう。何らかの機械が中にあったことを考えると、今回組み立てた水車小屋は人が住むスペースはなく、作業場としてもかなり狭かったのではないだろうか。

【全身】
正面や側面を。昔の家屋の雰囲気が出ている。かやぶき屋根ちゃんとらしく見える。この模型を完成させられたという満足感は高い

 模型を見ていこう。台座は手のひらより大きいが、全体的にこじんまりとしていてかわいらしい大きさだ。壁板に掘られた板やワシの壁紙による窓枠や障子は小さいながらしっかりと造型され、質感もリアルで、ミニチュアらしい精密さがある。かやぶき屋根にきちんと見える麻紐。うまい人ならもっときれいに切り添えられると思うが、今回の筆者の工作だと、ちょっと荒れ果てた印象も与えてしまうボサボサだ。

 そして水車だ。直径6.5cmとこちらのサイズも小さいが、木が複雑に組み合わさっているように見える。隣に導水の桶が置いてあることで、イメージの中で水車が回る様子が再生される。ちなみに水車はきちんと手で回すことが可能だ。模型スキルが高ければ、小屋の内部にモーターを仕込んで電動で回すことも可能だろう。

【細部】
麻紐で作ったかやぶき屋根。切り込みを入れてほぐしてあるがまだ作り込みが甘い。もう少し練習することで完成度をより上げられそうだ
このキットの最大の見所と言える水輪。最小限のパーツで木が組み合わさった複雑な造型に見えるようになっているのは、設計者の技術を感じる
小屋は窓の描写が面白い。窓紙と壁の模様で日本家屋らしい質感を演出している

 やはり完成させたときの達成感がうれしい。かなり精密な作りで、自分の手で個の模型を作り上げたというのは満足感をもたらしてくれる。誰でも作れるように設計されたキットだし、作業として特s別な加工や調整もせず、こういった雰囲気のある模型が作れるのはスゴイ。ウッディジョーの木製模型の技術の一端に触れることができた気がした。

 木製の帆船や大きな寺社などウッディジョーの大型模型は惹かれるものがある。今回の。「ミニ建築」シリーズは入り口に過ぎないが、木製模型への憧れを実感させ、ここから先へと向かわせてくれるエネルギーがある。わがままを言えば、プラモデルのように接着位置がずれないようなガイドがあればもっと部品がきっちり組み合わさるのかなとも思うが、木という部品を考えると、非常に細かい精度を実現しており、設計者の工夫を強く感じる。

 ウッディジョーの製品はプラモデルとはひと味違う質感があり、組み立てたときの達成感も高い。だれでもきちんと組み立てられるし、こだわればさらに完成度を向上させられるだろう。是非挑戦して欲しい。

【色々なアングルで】
台を置いて見上げる感じで
水輪と小屋のコンパクトな組み合わせが味を生んでいる