レビュー
ウッディジョー、「ミニ建築 水車小屋」レビュー
木製模型ならではの質感! 麻紐でかやぶき屋根を表現する面白さ
2022年5月27日 00:45
- 【水車小屋】
- 2016年8月発売
- 価格:3,520円(税込)
- 全幅:150mm
- 奥行:120mm
- 製作参考時間:8時間
ウッディジョーは「木製模型」を販売する模型メーカーだ。「1/75 慈照寺 銀閣」といった日本の建造物、「1/120 黒船 サスケハナ」といった帆船の模型……。ホビーショーで取材をすると、「ウッディジョーのキットに挑戦してみたい」という気持ちがわき上がっていく。会場で見る完成品はどれもプラスチックモデルにはない独特な魅力がある。
しかし一方で「難しそう」とも感じた。船の横板を貼り付けるには板を火であぶって曲げるとか、帆船に張り巡らされたロープの処理、複雑な建物を構成する木の組み合わせなど、高い技術力が必要な感じがする。話を聞くとメーカーも初心者向けに様々な工夫をしているというのだが……。
筆者のような興味を持ちながら二の足を踏んでいるような人にぴったりのキットがある。「ミニ建築」シリーズという商品で、「合掌造り」や、「里の茶屋」など、手のひらサイズの、味のある建物を作ることができるのだ。その中から「水車小屋」を選んでみた。プラモデルとは方法が異なる部分もあったが、初心者の筆者でも組み立てることができ、木の模型ならではの“味”を感じることができた。今回はこの模型の感触を語っていきたい。
薄い木の外板、麻紐で作るかやぶき屋根……。マテリアルの使い方の面白さ
「ミニ建築」シリーズは木や合板など独特の質感を持った部品を組み立て、その雰囲気を味わえるキットだ。箱を開けると幾つもの板や小さな木の部品が入っている。麻紐など、他の模型では使わない部品が入っているのも面白い。
ウッディジョーのキットの大きな特徴が「レーザーによる裁断」である。プラモデルがランナーで部品をまとめているように、1枚の木の板をレーザーによって様々な形で切り取り、プラモデルのゲートのように少しだけ接続部分を残しているのだ。これにより、手で押すだけでも木の板から部品を取り外すことができる。
「水車小屋」は、基本的には用意されたパーツを組み合わせ接着していけば完成する。パーツはきれいに切断されているし、プラモデルに較べれば数が少ないので、組み立ても簡単だ。
プラモデル同様、本キットを作るためには工具が必要だ。接着するために木工用ボンドは必須だし、麻紐を切るためのはさみ、デザインナイフや定規、木のバリをなくすためにニッパーと紙やすりも用意したい。プラモデル用の工具に加えて、木工用のものも必要になってくる。
プラモデル感覚で組み立てられるが、木工用ボンドは粘度が高く量の調整も難しい。接着剤を多く出し過ぎて拭き取ったり、指についてしまったりと、子供の頃の工作を思い出した。改めて刷毛で塗るプラモデル用接着剤の便利さを感じた。接着剤を伸ばすための小さなへらなど、木工工作用の道具をもっとそろえておけばさらに楽に組み立てられただろう。
「水車小屋」では、組み立てでユニークな点は非常に多い。小屋本体はただ木の板でできているのではなく、木の粉を集めた合板で基礎が作られ、これに壁紙を貼り、薄い“壁板”を貼り付けることで、塗装をしなくても木の質感を活かした小屋が作れるようになっている。窓や障子による出入り口があり、板を貼り合わせた外壁が設定されているような雰囲気がある小屋になる。合板を使うのはコストの関係かとも思ったが、小屋の内壁の“漆喰”を再現したものなのかもしれない。
この貼り付ける壁板は本当に薄く、枠から外すときに折れてしまいそうでちょっと緊張した。合板、壁紙、壁板からなる素材を活かした表現は面白い。プラモデルとはひと味違う、昔の日本の建築物の表現としての工夫が感じられた。
そして本製品の注目ポイントである“屋根”の表現だ。かやぶき屋根を麻紐で表現しようという面白いアプローチをしている。このため麻紐を12cmで切り取り、何本も屋根に貼り付けていく。見本ではこの麻紐に切れ目を入れ、ほぐして平らにし、かやぶき屋根そのものに仕上げるのだが、筆者の技術ではうまくできなかった。これは慣れが必要な作業と感じた。
模型の面白さの1つに、「マテリアルをどう使うか」というものがある。模型は様々なマテリアルを効果的に使う。ロボットフィギュアのメカニカルな雰囲気を強調するのに金属パーツを使ったり、車のプラモデルでエンジンの金属感を出すのにエッチングパーツを使用したりする。そのアイディアやテクニックに感心させられることも多い。
麻紐でかやぶき屋根というのはとても面白いアイディアだ。12cmの長さの紐を少ない手間でできるだけ多く作るにはどうすれば良いか? というのも考えた。直径12cmの輪を作り、それを幾つも束ねてから切り離す、という形で量産したが、こだわる人は1本1本計ってやるかもしれない。こういうところでは性格が出そうだ。
さらに本製品の主役である“水輪”を作っていく。こちらも木の板をレーザーで切断してあるので、枠から取り外して組んでいける。ただ、12個の水輪の羽根をきっちり挟み込むのは大変だった。水輪は木が組み合わさる木製模型としてその構造が一番面白い部分だ。できあがってから何度も眺めてしまった。
いよいよ完成である。建物を台に固定してから水輪を小屋に取り付け、支柱で反対側を支える。そして水輪を回すための導水の桶だ。ここに水が流れることで水車が回る。独特の風情がある「水車小屋」の完成だ。次ページで完成品をじっくり見ていこう。