インタビュー

「MS Li-Po バッテリー」開発者インタビュー

充電器、チェッカー、耐火バッグ。充実のアクセサリー

 ここからは「MS Li-Po バッテリー」に対応したアクセサリーの安全対策を紹介していきたい。「MS Li-Po セーフティーチャージャー」は裏表両面にQRコードが印刷され、スマホのカメラをかざすことでマニュアルが参照できるようにしている。

 「MS Li-Po セーフティーチャージャー」は、仮に説明書を読まなくても安全に使えるという設計思想があるという(もちろん必ず説明書は読んで欲しい)。開発チームが気をつけたのは使いやすさ、見やすさ、繋いで目的のボタンを押せばすぐに「MS Li-Po バッテリー」を望んだ状態にすることが可能だ。必要な機能を盛り込むために、こちらも独自開発の仕様となっている。

「MS Li-Po セーフティーチャージャー」。価格は14,080円。アクセサリーの発売はバッテリーと同じ5月17日

 これまで説明した点でも通常の充電に加え、「長期保存のためのバッテリーのセッティング」、「温度管理によって緊急時のバッテリーへの通電のシャットダウン」といった機能を持たせている。充電機能に加え、放電機能を持たせ、「MS Li-Po バッテリー」の状態に合わせ自動で判別する機能を持っている。過放電、過充電を防ぎコンディションを最適にさせる機能が備わっているという。

 「充電時などは90%くらいでランプが点滅し、その状態を知らせてくれます。Li-Po バッテリーは90%までは一気に充電ができ、その後100%に充電するには時間がかかる特性があります。すぐ充電して戦いたい、という人には点滅状態で使っていただける。こういった使い手を考えた機能を持たせています」と高島氏は語った。

 「MS Li-Po セーフティーチャージャー」は前面は3つのインジケーターランプと2つのボタンというシンプルな構成となっている。ただ、3つのランプの組み合わせでの状態異常表示は複雑で、これはマニュアルを参照する必要がある。「MS Li-Po セーフティーチャージャー」は3つのランプとビープ音で様々な状態異常を正確に知らせる機能を持っているという。

2つのボタンと3つのインジケーターランプ、ビープ音で状況を知らせる。QRコードを参照することでマニュアルが見れる
裏面にもQRコードを印刷
バッテリーに対応したコネクター

 「MS Li-Po バッテリー」と「MS Li-Po セーフティーチャージャー」があれば使用には充分だが、ここに「MS Li-Po バッテリーチェッカー」を使うことで機能が拡張される。あえて充電器とチェッカーを分離させたのは、コストを下げる意味合いもあったとのことだ。「MS Li-Po バッテリーチェッカー」は単体でも、中継コネクターを出すことで充電器とバッテリーを接続した状態でも使える。この状態では現在充電器を使って、どのように充電をしているのか、どのくらい放電をしているかなど、充電中のステータスがより細かく把握できるようになる。

  「電動ガンでも、細かくバッテリーをチェックし、ピーク性能から少し下がった状態のバッテリーはすぐ交換したい、というようなこだわりのユーザーにはチェッカーは重要だと思います」

 開発チームのこだわりは「充電ステータス」と「バッテリーチェック」の表記の違い。充電ステータス時は細かい数字を表示し充電時の様々なポイントを表示するが、単体でバッテリーを繋いだときは大きな字で電圧を表示するという、フォントを2つ用意している。

  「充電モードでは『充電電圧』、『充電電流』、『充電容量』、『経過時間』の4つのステータスを表示しています。そしてバッテリーとチェッカーのみを繋いだ場合は、電圧のみです。これは屋外での使用も想定しており、シンプルにバッテリーの現在の電圧をチェックできるようにしています」 と高島氏は語った。

 実際的な「MS Li-Po バッテリー」の使い方としてどうしても前もって充電したい場合は、サバゲー参加の前日に90%充電くらいで持って行って使用するというのが一番バッテリーの負荷が少ない使い方とのこと。100%の充電のまま放置すると寿命を縮める可能性がある。 「バッテリーが満充電の時って、一番化学変化が起きやすい状態なんです。満充電でかつ40度を超える高温状態だと、バッテリー製造時に混入した水分からガスが発生し、バッテリーが膨れてしまう場合があります。膨れるとバッテリーの性能は低下していきます。満充電の状態はできるだけ短いのが理想です」 とのことだ。

 電圧に関しては「MS Li-Po バッテリー」の出力で表示されている「7.4V」というのは基準となる電圧で、満充電時の出力をチェッカーで計ると8.4V近くまで電圧が上がっている。ここから電力を消費する事で電圧が下がっていくのだが、6Vくらいまで下がっていく。電圧が高い方がモーターを高速で動かすことができる。こだわる人は電圧の状態をチェックして高い電圧でのバッテリーを使うのが良いとのことだ。

 ちなみに、ニッケル水素バッテリーだと電圧の基準値は変わってくる。ニッケル水素の基準値は8.4V、満充電で10.5V近くまで上がり、放電すると7Vまで下がっていく。単純に電圧だけ見るとニッケル水素の方が高いが、モーターを動かすのは「電力(W:ワット)」であり、電力は「電圧(V)×電流(A)=電力(W)」であり、Li-Po バッテリーは放電できる電流が大きいため、電力も大きくできる。単純な電圧の比較ではない。電圧が下がってきても電流でカバーできるので、Li-Po バッテリーの方が安定した電力の供給、安定した長時間の射撃が可能なのだという。

「MS Li-Po バッテリーチェッカー」。価格は7,480円
充電器とバッテリーの間にチェッカーを接続することで、充電時の状態をチェックできる
チェッカーとバッテリーを繋ぐと大きな文字で電圧が表示される

 そしてアクセサリーとして「MS Li-Po セーフティーバッグ」だ。高島氏は 「『MS Li-Po バッテリー』と『MS Li-Po セーフティーチャージャー』の組み合わせは、お客様がスマートフォンと同じ感覚で気軽に安全に使っていただく環境を実現できたと考えています。しかしその安全は100%じゃない。持ち運んでいるときに強い衝撃を受けることがある。サバイバルゲームで転んで、硬いものにぶつけてしまう可能性もあるのです。また家庭用機器よりも放電のレートが高いため、内部的なダメージを受ける可能性が高い。このため万が一発火してしまった場合、極力火が出ないようにすることを目指して開発しました。技術者の本音を言えば安全を目指したのでセーフティーバッグは出したくなかったのですが、万が一を考え、安全を考えた商品としました」 と語った。

 「MS Li-Po セーフティーバッグ」の大きな特徴は"2種のバッグで封入する"ということ。高い耐火性能を持ったバッグに2重で包む事で炎を防ぐ。この時マジックテープの口は互い違いになるようにしなければならない。生セルのバッテリーなど外装が充分でないLi-Poバッテリーは側面から炎が吹き出すが、しっかりしたケースに包まれた「MS Li-Po バッテリー」は炎の噴出方向が限られるため、発火するとロケットのように炎の力で吹っ飛んで行ってしまう可能性がある。

 そういった場合でも極力セーフティーバッグから炎が出ないように、2重構造を採用したとのことだ。完全な密封ではなく、炎を防ぎつつ、圧力を逃がす構造となっている。それはマルイの実験で何度も検証し万が一でも限りなく炎を防ぐ結果として導き出した答えなのだ。

 バッグの素材も吟味している。現在市販されている最高レベルの耐火性能を持つ素材を採用し、瞬間的には800度までの炎に耐える力を持っている。最新型の消防士用のスーツに使われる素材と同等のものだという。厚みや大きさも検討を重ねた結果だ。

「MS Li-Po セーフティーバッグ」。価格は7,480円。2つのバッグが1セットとなっている
入口を互い違いにすることでバッテリーが発火しても極力炎が出ないようにする
内部は製造時のガラス繊維の切れ端が入っていないようにチェックしている
難燃素材にシリコンコーティング。素材には特にこだわっている

 島村氏は 「私たちはこのセーフティーバッグを開発するにあたり、市販されている様々な商品をテストしたのですが、驚きました。中には一緒に燃えるものすらある。もちろんちゃんと耐火能力を持つ商品も多いのですが、それらと較べても、弊社の『MS Li-Po セーフティーバッグ』は高いレベルでの耐火能力、万が一発火した場合でもバッグから最小限の炎でくいとめる仕様となっています。高い安全性を持ったバッグになっています」 と島村氏は語った。

 もう1つのこだわりは"内部のチェック"。「MS Li-Po セーフティーバッグ」はガラス繊維であるケブラー繊維を使っているのだが、ちゃんとチェックしないと製造時の切れ端などが袋の内部に残留し、手を入れると刺さってしまう場合もある。本製品の場合、こういったことがないように気をつけて製造されているとのことだ。

 「MS Li-Po セーフティーバッグ」は無地の飾り気のない、言ってみれば無機質さを感じさせるシンプルなデザインだが、開発チームとしては東京マルイのロゴの印刷なども検討したのだが、印刷部分のインクが燃えてしまう可能性や、そもそも表面のシリコンコーティングで印刷できないため、このシンプルデザインになった。だからこそ耐火性能は折り紙付きというわけだ。

 「MS Li-Po バッテリー」はこのようにアクセサリーもしっかりしている。これだけの体制を整えたのは、今後東京マルイは「MS Li-Po バッテリー」対応製品をどんどん展開するためだ。現在、従来の電動ガンにFETの機能を盛り込む「プラス(+)」シリーズ、実銃さながらの操作を楽しめる「Mシステム」シリーズと、2つの方向性が提示されているが、「MS Li-Po バッテリー」の高性能を活用した新しいアイディアを盛り込んだ製品も期待したいところだ。

 最後にユーザーへのメッセージとして島村氏は 「今後東京マルイは『MS Li-Po バッテリー』対応商品を増やしていきます。何よりも私としてはこの新しいバッテリーを使って欲しい。このバッテリーと対応商品がどれだけ従来の商品と較べても使いやすく、性能が高く、多機能なのか、ここを体感して欲しいです。切れの良い射撃、1秒辺りの発射数も上昇しますし、"撃つ感触"が段違いに向上する。『P90プラス』に関しては『本来開発者が表現したかったP90ってこれだ』というものになっています。ぜひこの感触を味わって欲しいです」 と語った。

  「『MS Li-Po バッテリー』そのものも違う形の製品なども出していきます。これに合わせた電動ガンも登場予定です。安全に、安定したLi-Po バッテリーを使っていただきたいと思っています。単純に価格を見ると割高に感じるかもしれませんが、使っていただくことで価格に見合う商品だと言うことが分かっていただけると思います」 と高島氏は語った。

より安全な製品でエアソフトガンの未来に期待して欲しい。インタビューからは開発チームの想いが伝わってくる

 話を聞くと東京マルイが「MS Li-Po バッテリー」に対してどれだけ力を入れているのか、改めて圧倒された。Li-Po バッテリーの扱いの難しさ。それに対し安全な製品を供給したいというメーカーとしての東京マルイの責任感も感じることができた。

 サバイバルゲームに限らず、エアソフトガン業界での東京マルイの影響力は大きい。それは市場での生産規模や供給量もあるが何よりもしっかりした安全対策と品質管理あってのことだと思う。その東京マルイが力を入れて開発した「MS Li-Po バッテリー」と、このバッテリーに対応したFETは今後動きを加速していくだろう。電動ガンの未来に注目していきたい。