特別企画
「カラシニコフ突撃銃」への我が“偏愛”、26年のサバイバルゲーム歴の中で思い出に残るAKエアガンを語る
2021年1月28日 00:00
筆者は「AK」シリーズに特別な偏愛を持っている。AKは旧ソビエト社会主義共和国連邦(現ロシア連邦)で誕生した「AK=Автомат Калашникова(アブトマット・カラシニコフ=カラシニコフ突撃銃)」、「AK-47」という名前で知られるアサルトライフルから派生するバリエーションだ。AKの開発史などはは弊誌の短期集中連載「エアソフトガン超入門」の第6回「ガスブローバックマシンガン AKM」で詳しく書いている。
この取材の時、筆者は東京マルイで開発最終段階に仕上がった「ガスブローバックマシンガンAKM」を見て、普段より異様にテンションがあがって早口になってしまった。というのも筆者はAKに特別な想い入れを持ち、サバイバルゲーム用に7丁ものAK(当然エアガン)を所持しているのだ。
「なんでそんな思い入れがあるのか、どういった銃を持っているのか語って欲しい」。今回、編集担当とそういう話になった。そこで今回は1人のサバイバルゲーマー、1人のミリタリーオタクが、どうしてAKを気に入り、そしてトイガンメーカーはAKというモチーフに対してどのような商品を生み出してきたのか、筆者のコレクションから語っていきたい。
AKフリークの異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めてAKを愛するようになったか
1973年の米軍撤兵と1975年のサイゴン陥落でベトナム戦争が終結した1970年代後半は、ミリタリーがホビーとして熱くなっていった時代だった。「戦争のはらわた」、「地獄の黙示録」という未だに映画(戦争に限らず)のオールタイムベストに選ばれる様な傑作が公開され、タミヤ模型の1/35ミリタリーミニチュアシリーズの隆盛、モデルガンブーム……そんな時代に幼少期を過ごしてミリタリー少年になったアラフィフおじさんは少なくないと思うし、筆者もそうであった。
筆者のAK偏愛のキッカケは「地獄の黙示録」で、ヘリコプター部隊に急襲されて反撃する解放戦線の兵士が持っていた「AK47」か? と言うとそうではない。筆者はそれ以前、1枚の報道写真だ。それは紛争地帯でAKを携えた1人の女性の写真であった。
大きな銃を構えた1人の女性長い髪を風になびかせ、両手に銃を持っているその姿に強く惹きつけられた。女性がその銃を持つことで「戦う人」となる。そのイメージは筆者の心に刻み込まれたのである。それを見たのが1970年代のいつで、それが新聞だったか週刊誌だったか今となっては定かではない。
余りに有名な写真なので、様々な媒体で繰り返し使われ、近年もドキュメンタリー映画「革命の子どもたち」のポスターにも使用さされている。
1980年代は、インターネットも無い時代で、「武装した女性」の写真だけ一瞬で表示して眺めるなどという事は出来なかった。必然的に図書館で色々な本を見たりするうちに、その背景を学ぶ様になる。AKは、革命や抵抗運動の象徴である事を知っていく。
当時のミリオタは、趣味としてミリタリーを愛好する事と、実際の悲惨な戦争に反対する事が「たしなみ」でもあった。しかし例えば今迫り来る軍事的暴力に対抗する為にAKを手に取る事を否定出来るだろうか。軍事訓練を受けていない女性や民衆が取り扱えるAKが、皆兵思想を具現化するという現実がある。
日本のミリオタとして、良いか悪いかで一概に言えないグレーな存在であるAKにいつしか魅せられ、それが今も続いている。
筆者がサバイバルゲームを始めた1980年代半ばには、AKのエアガンは未発売だった。そして1980年代末、ようやく国内のエアガンメーカー・LS社からコッキングエアーの「AK74」「AKM」が発売された。しかし既にサバイバルゲームの主流はハイパワーのガスフルオート全盛期。エアコッキングはパワーと連射性で圧倒的に不利となる。
筆者はそれでも果敢に使った事もあったが、取材に来ていた某ミリタリー誌で「LSのエアコッキングAKでゲームに参加している人がいた!」と珍獣の様な紹介をされたりした時代だった。
その後LSは「AK」をガスガン化し、1991年にはこちらも国内のFTC社からも人民解放軍仕様の「五六式歩槍」が発売されたが実射性能は今ひとつで、いずれもサバイバルゲーム向きの商品では無かった。そんな中、1994年にようやく東京マルイから初の「AK-47」エアソフトガンとして発売されたのがスタンダード電動ガン「AK-47S」、「AK-47」だった。
ようやく「使えるAK」登場となった訳だが、今もサバイバルゲームで主流のM16系、MP5系に比べると、ハッキリ言って使い難い。精密射撃に向かない照準、取り回しが悪い、折りたたみストックにすると面倒くさい、マガジンチェンジは時間がかかる、拡張性は無い……。
しかしAKフリークにとっては「だがそれが良い」になる。2020年も未だに使われている木の風味も大きな魅力だ。AKは世界各地でローカライズされていて、それぞれの「ご当地AK感」も面白い。
サバイバルゲームにおいては装備にこだわる人が多い。第2次世界大戦の装備やベトナム戦争の装備などそれぞれのプレーヤーが自分の想いを込めてカスタマイズする。その中でAKは様々な装備に似合う“万能選手”なのだ。武装勢力、ゲリラ、民兵、さらには米軍まで、装備を問わずに似合うのも魅力だ。
筆者の場合は、逆にAKに合わせて色々な装備を追求していっている。AKを構えるのにどんな格好をすればいいかを考え、様々な装備品を集めている。AKのマガジンを入れられる特殊なタイプのチェストリグ(ベスト)がどうしても欲しくなった事があった。海外のメーカーだったのだが、まとまった数が揃わないと輸入できない為、1人でその条件をクリアするため、筆者のクローゼットに数十着のチェストリグが積まれる事になったりもした。“AKに似合う自分”を追い求めるのは筆者のライフワークと言える。
次のページではそんな筆者にとって特別な想い入れを持つAKコレクションから、東京マルイスタンダード含む、記憶に遺る4挺を紹介していきたい。